2009年01月07日

Fingazz『Classics For The Og's Vol.2』

全編トークボックスによるソウル・カヴァー・アルバム第2弾☆Fingazz『Classics For The Og's Vol.2』
クラシックス・フォー OG’S Vol.2
発表年:2008年
ez的ジャンル:ソウルクラシック・トークボックス・カヴァー
気分は... :Fingazzがキタ〜!

チカーノ・ラップ系トラックメイカーFingazzの2回目の登場です。

昨年紹介した『The Late Night Hype Vol. 2』(2008年)に続いて紹介するのは、昨年11月末にリリースされた全編トークボックスによるソウル・カヴァー・アルバム『Classics For The Og's Vol.2』です。

チカーノ・ラップについてはあまり詳しくない僕ですが、最近CDショップでも通常のHip-Hop売り場とは別にチカーノ・ラップのコーナーが設置されているのを見ると、Hip-Hopシーンの一大勢力として確かな地位を築いていることを認識させられます。

そんなチカーノラップ・シーンで活躍するプロデューサー/トラックメイカーがFingazzです。

前回紹介した『The Late Night Hype Vol. 2』は、ローライダー系のジャケ写真のイメージとは異なり、メロウなトラックづくりに相当グッきました。年末の『ezが選ぶ2008年の10枚』でも最後まで候補としてセレクトするか迷っていた作品でした。

今日紹介する『Classics For The Og's Vol.2』もメロウHip-Hop好きにはたまらない1枚です。元々はファンク・グループでトークボックスを担当していたFingazzが、自分のお気に入りソウル・クラシックをトークボックスで再現したアルバムです。Hip-Hopファンのみならずソウル/R&Bファンも十分に楽しめる作品になっています。

本作は『Classics For The Og's Vol.1』(2004年)の続編となります。Vol.1同様かなりベタな選曲ですが、逆にそれが素直でいいですよね。特に Vol.2は前作以上にトークボックスが全体のサウンドにフィットしていると思います。

ある意味企画モノ的な作品ですが、僕のようにZapp/Roger大好き(=トークボックス大好き)人間にとっては、まさにど真ん中なアルバムです。しかも、選曲も僕の嗜好と見事に合致しており、完璧なアルバムですね。

オリジナルをご存知の方は、オリジナルと比較しながら聴くのも楽しいでしょうし、オリジナルを知らない方でも純粋にメロウ・チューン満載のアルバムとして楽しむことができると思います。

全曲紹介しときやす。

「Intro」
「Curious」
イントロに続きオープニングを飾るのはMidnight Starによる名スロウ。オリジナルはアルバム『Planetary Invasion』(1984年)に収録されています。いかにもトークボックス・カヴァー向きの楽曲ですが、その期待を裏切らない素晴らしい出来栄えです。やはり80年代エレクトリック・ファンクはトークボックスとの相性抜群ですよね。
http://jp.youtube.com/watch?v=pBCJr-AOJZM&feature=related

「Footsteps In The Dark」
Isley Brothersの名曲カヴァー。オリジナルはアルバム『Go For Your Guns』(1977年)に収録されています。ここでのカヴァーは「Footsteps In The Dark」に少しZapp「Computer Love」のテイストを加えた感じの仕上がりになっています。
http://jp.youtube.com/watch?v=cuz9rjd3A5k&feature=related

「Summer Breeze」
オリジナルはSeals & Croftsによる1972年のヒット曲です。ただし、ソウル名曲カヴァーという本作の主旨から言えば、Isley Brothersバージョン(アルバム『3+3』収録)のカヴァーと言ったほうがいいのかもしれません。この曲もトークボックスが良く似合いますね。Fingazzのトークボックスにより名曲が新たな輝き放っています。
http://jp.youtube.com/watch?v=_PWxjmLFVuk&feature=related

本作では「Footsteps In The Dark」、「Summer Breeze」という2曲のIsleysナンバーを取り上げ、さらに前作『Classics For The Og's Vol.1』でも「Between the Sheets」、「For The Love Of You」という2曲Isleysナンバーを取り上げています。FingazzにとってIsleysはフェイバリット・アーティストなのかもしれませんね。

「The Homeboy (skit) 」
Fingazzが手掛けたチカーノラッパーLil Robをフィーチャーしたスキット。

「Didn't I (Blow Your Mind This Time)」
Delfonics、1970年のヒット曲のカヴァー。オリジナルの味わいとは異なるトークボックスならではの温かさが胸に染みてきます。
http://jp.youtube.com/watch?v=muVqygk-37Y&feature=related

「Cold Blooded」
Rick Jamesのヒット曲のカヴァー(1983年、全米R&Bチャート第1位)。メロウなスロウ・チューンが多い中で「Rock With You」と並ぶ数少ないアップ・チューン。オリジナルに近い雰囲気でヴォーカルがトークボックスに置き換わったという仕上がりです。
http://jp.youtube.com/watch?v=T71Bx-f2SHw&feature=related

「Yearing For your Love」
昨日紹介したGap Bandによるメロウ・クラシック(1981年、全米R&Bチャート第1位)。昨日記事でも書きましたが、僕のイチオシの1曲。オリジナルの持つメロウネスを失わずに、トークボックス・チューンらしい魅力が加味されている感じです。みんな大好き!メロウ・クラシックの新たな楽しみ方が増えましたね。
http://jp.youtube.com/watch?v=92j3OcpvN-o&feature=related

「Ooh Baby Baby」
オリジナルはThe Miraclesの1965年のヒット曲(Smokey Robinson作品)。ただし、トークボックスによるカヴァーということで言えば、Zappによる1989年のカヴァー(アルバム『Zapp Vibe』)がベースになっているのだと思います。トークボックス・カヴァーがハマることはZappヴァージョンで証明済みですね。それだけにフレッシュ感には欠けるかも?
http://jp.youtube.com/watch?v=0sqxiXN_g50

「The Homegirl (skit)」
『The Late Night Hype Vol. 2』にも参加していた注目の女性チカーノ・シンガーLa Laをフィーチャーしたスキット。

「Nobody」
Keith Sweatのヒット曲のカヴァー(1996年、全米R&Bチャート第1位、全米チャート第3位)。本作唯一の90年代作品のカヴァーです。トークボックスが実にフィットする出来栄えです。Keith Sweatのヴォーカル・スタイルってトークボックスに置き換えやすい感じがしますよね。
http://jp.youtube.com/watch?v=763zTlr1dPc&feature=related

「Love TKO」
Teddy Pendergrassのヒット曲のカヴァー(1981年、全米R&Bチャート第2位)。前曲のKeith Sweatとは逆にTeddy Pendergrassのトークボックス・カヴァーはフィットしないのでは?という印象があったのですが、見事に期待を裏切られました。僕の中では「Yearing For your Love」に迫る出来栄えだと思います。
http://jp.youtube.com/watch?v=WajayH5f7Kc&feature=related

「Rock With You」
説明不要、Michael Jacksonの大ヒット曲のカヴァー(1980年、全米R&Bチャート第1位、全米チャート第1位)。この曲もいかにもトークボックス・カヴァーが似合いそうな曲ですよね。これは大勢で盛り上がりながら聴きたいですね!
http://jp.youtube.com/watch?v=RnsP-YfIbVo

「Outro」
本来ならば、ここで本編終了なのですが...さらに国内盤にはボーナス・トラック2曲が追加されています。

「Sexy Buddy」
ボートラ1曲目は、Roscoeをフィーチャーした『The Late Night Hype』収録の人気曲をトークボックス・カヴァー。従来からのFingazzファンにとっては嬉しい1曲ですね。まさにセクシーなメロウ・チューンに仕上がっています。本編に負けないハイライト曲の1つになっていると思います。
http://jp.youtube.com/watch?v=zYC-cUS4m3s&feature=related

「I Miss You」
コレは新曲。哀愁モードのトークボックス・チューンに仕上がっています。
http://jp.youtube.com/watch?v=dIfblBwhZCk&feature=related

本作の発売に合わせて、『Classics For The Og's Vol.1』(2004年)もボーナス・トラック付の『Classics For The Og's Vol.1-Revisited』として再発されました。「Watching You」Slave)、「Sexual Healing」Marvin Gaye)という2曲のボーナス・トラック追加は嬉しい限りです。

クラシックス・フォー・オージーズ Vol.1 ワン・リヴィジテッド
クラシックス・フォー・オージーズ Vol.1 ワン・リヴィジテッド

『Classics For The Og's Vol.1-Revisited』収録曲
 ※カッコ内はオリジナル曲アーティスト
「Intro」
「Low Rider」War
 http://jp.youtube.com/watch?v=yXp2nHXwIVY
「Be Thankful For What You Got」(William DeVaughn)
 http://jp.youtube.com/watch?v=pGQZB2-p-pw&feature=related
「Pocos Peros Locos (Interlude)」
「Between the Sheets」Isley Brothers
 http://jp.youtube.com/watch?v=x1uCapZRnuQ
「Cutie Pie」One Way
 http://jp.youtube.com/watch?v=J9T3dcT3P7w
「Natural High」(Bloodstone)
「4 the Love Of you」Isley Brothers
 http://jp.youtube.com/watch?v=6nCOP7szsqc&feature=related
「Raza Radio (Interlude)」
「Cruizin」Smokey Robinson
 http://jp.youtube.com/watch?v=Hdu9qZPPXlY
「La La Means I Love You」Delfonics
 http://jp.youtube.com/watch?v=e0euScSgqe0&feature=related
「Interlude」
「Thin Line Beween Love And Hate」(Persuaders)
 http://jp.youtube.com/watch?v=vYKtNCR5g3I&feature=related
「Shining Star」(Manhattans)
 http://jp.youtube.com/watch?v=HXuV2FZ5lOY&feature=related
「Let's Stay Together」(Al Green)
 http://jp.youtube.com/watch?v=JRK9XmddEzU&feature=related
「Outstanding」Gap Band
 http://jp.youtube.com/watch?v=fpHvVhbsR5w&feature=related
「Outro」
「Watching You」Slave
「Sexual Healing」Marvin Gaye

絶対Vol.1、2の2枚セットでゲットすべきと思います。
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2009年01月06日

The Gap Band『The Gap Band III』

メロウ・クラシック「Yearning for Your Love」収録! ☆The Gap Band『The Gap Band III』
III
発表年:1980年
ez的ジャンル:3兄弟ファンク
気分は... :ドルフィンズ敗れる...

昨日は朝からNFLのワイルドカード・プレイオフをTV観戦!
しかしながら、我がマイアミ・ドルフィンズはボルティモア・レイブンズに敗れてしまいました。

ミスの少ない戦いでレギュラー・シーズンを勝ち抜いてきたドルフィンズですが、昨日は攻撃陣が自滅した結果となりました。4インターセプトを喫したのをはじめ、ファンブル、キックミス...これだけミスをしたら負けて当然です。最悪のプレーコール、不要な反則も重なり、観ていてフラストレーションがたまる試合でしたね。

まだまだプレイオフを勝ち抜くだけの実力(特に攻撃力)はないというのが現状でしょう。終始レイブンズの強力守備陣に圧倒されていた印象を受けました。

まぁ、昨シーズン1勝しかできなかったチームがプレイオフ進出したということだけでも良しとしないとね!来シーズンに向けて、課題を1つずつ克服して欲しいですね。

逆にレイブンズ守備陣は素晴らしいの一言です。
特にSエド・リードのプレーはミラクルでした。
次戦のタイタンズ戦はガチガチの守備合戦を楽しめそうです。

さて、今日はThe Gap Bandの久々の登場です。

Charlie、Robert、RonnieのWilson兄弟から成るファンク・グループGap Bandの紹介は『Gap Band IV』(1982年)に続き2回目になります。

今日紹介するのは名曲「Yearning for Your Love」 を含む1980年のアルバム『The Gap Band III』です。

本来であれば今頃Gap Bandの中心メンバーであったCharlie Wilsonの新作アルバムがリリースされているはずだったのですが、3月に発売延期になったようですね。タイトルは『Uncle Charlie』になる模様です。

アルバム収録予定の先行リリース曲「Supa Sexy」、「There Goes My Baby」を紹介しておきますね。「Supa Sexy」はT-Painが客演&プロデュースしたアゲアゲ曲(Jamie Foxxが加わったリミックスもあります)。「There Goes My Baby」はGap Bandファンも納得のメロウ・チューン。

Charlie Wilson feat.T-Pain「Supa Sexy」
http://jp.youtube.com/watch?v=fT3e_aL2WS4&feature=related

Charlie Wilson feat.T-Pain &Jamie Foxx 「Supa Sexy」
http://jp.youtube.com/watch?v=2H-aaKkIVgI&feature=related

Charlie Wilson「There Goes My Baby」
http://jp.youtube.com/watch?v=slVv5T7rq04

前作『Charlie, Last Name Wilson』(2005年)も蜜月関係にあるSnoop Doggをはじめ、Will.I.Am(Black Eyed Peas)、Twista、Justin Timberlake等が参加していましたが、新作にも現在のR&Bシーンのトップ・プロデューサー&アーティストが数多く参加予定です(収録曲が変更になるかもしれないので、具体名は控えておきますが)。

最近のR&B/Hip-Hopをお聴きにならない方にはピンと来ないかもしれませんが、現役R&B/Hip-Hopアーティスト達のGap BandおよびCharlie Wilsonに対するリスペクトぶりには驚かされますね。70年代、80年代に活躍したファンク/ソウル系アーティストの中でも別格の扱いという気がします。

そうしたリスペクトの源泉となっているのが70年代後半から80年代半ばにかけてのGap Bandの充実ぶりです。

数あるGap Band作品の中でも、「Outstanding」と並んで最も人気のある曲が「Yearning for Your Love」 だと思います。オールド・ファンから今時のR&B/Hip-Hopリスナーまで世代を超えたメロウ・クラシックとなっている名曲ですね。

その「Yearning for Your Love」を収録したアルバムが『The Gap Band III』(1980年)です。

「Yearning for Your Love」以外にも全米R&Bチャート第1位となった「Burn Rubber (Why You Wanna Hurt Me)」等が収録されています。ブリブリのファンクからメロウ・チューン、EW&Fばりのポップなダンス・チューン、ラテン・フレイヴァーな楽曲まで幅広い内容で楽しめます。

「Yearning for Your Love」をとことん楽しむも良し!
アルバム全体を楽しむも良し!
いろんな楽しみ方ができるはずです。

全曲紹介しときやす。

「When I Look in Your Eyes」
オープニングは軽快なファンク・チューン。今聴くと少し古臭いノリですが、気にせず盛り上がりましょう(笑)

「Yearning for Your Love」
説明不要のメロウ・クラシック。シングルとして全米R&Bチャート第5位のヒットとなりました。爽快なギター・カッティングととろけるようなCharlie Wilsonのリード・ヴォーカルがたまりません。胸キュン度200%の名曲です!
http://jp.youtube.com/watch?v=eV5rG0QDpoI

サンプリングやカヴァーの人気ぶりでもこの曲がいかに名曲であるかがわかると思います。主なサンプリング等使用曲としては、Nas「Life's a Bitch」、Heavy D.「Keep It Comin」、Paris「Outta My Life」、Mia X Feat. Charlie Wilson「Whatcha Wanna Do」、J & Phat Man「Keep It Coming」、Qua Billz「Can I Live」などがあります。また、カヴァーとしては前述のGuyFingazz等のヴァージョンがあります。

個人的にはCharlie Wilson本人をフィーチャーしたMia X Feat.Charlie Wilson「Whatcha Wanna Do」、昨年末にリリースされたFingazzによるトークボックス・カヴァーがオススメです。

Mia X Feat.Charlie Wilson「Whatcha Wanna Do」
※Charlie Wilson本人をフィーチャー
http://jp.youtube.com/watch?v=dF8czajjNq8

Fingazz「Yearning For Your Love」 ※Gap Band+Zappといった雰囲気!
http://jp.youtube.com/watch?v=92j3OcpvN-o&feature=related

Nas「Life's a Bitch」
http://jp.youtube.com/watch?v=nCnqDvvZrcM

Heavy D.「Keep It Comin」
http://jp.youtube.com/watch?v=eDNGhGZirCE

J & Phat Man「Keep It Coming」
http://jp.youtube.com/watch?v=MYrG-TzMvGQ

Paris「Outta My Life」
http://jp.youtube.com/watch?v=5fU1iDSW8aQ

「Burn Rubber (Why You Wanna Hurt Me)」
「Yearning for Your Love」があまりに有名になってしまったために、やや存在感が薄れてしまっていますがシングルとして全米R&Bチャート第1位となったグループの代表曲です。シンセベースが唸りまくるファンク・チューン!エロエロな雰囲気がたまりませんな。
http://jp.youtube.com/watch?v=somgxatYeCs&feature=related

「Nothin' Comes to Sleepers」
ロマンティックなスロウ・チューン。美しいハープの音色をバックにしたCharlie Wilsonのヴォーカルにうっとりです。

「Are You Living」
EW&Fばりのライト・タッチのポップなダンス・チューン。 シングル曲以外であればこの曲が一番好きですね! EW&F好きの人であれば必ず気に入る曲だと思います。

「Sweet Caroline」
この曲名を見ると、どうしてもNeil Diamondのヒット曲(MLBボストン・レッドソックスの試合等でもお馴染みですね)を思い浮かべてしまいますが同名異曲です。でも何となくイナたく親しみやすい感じは似ているかも?

「Humpin'」
ブリブリのファンク・チューン。こういった妖しげなファンク・チューンと「Yearning for Your Love」のようなメロウ・チューンとのギャップが魅力ですよね!
http://jp.youtube.com/watch?v=kSy16P_m0PQ

「The Way」
軽くラテン・フレイヴァーの効いたライト・グルーヴ。アルバムの中でいいアクセントになっています。

「Gash Gash Gash」
この曲のみRobert Wilsonがリード・ヴォーカルです。なかな格好良いダンス・チューンに仕上がっています。

Charlie Wilsonの新作が楽しみです。
posted by ez at 00:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 1980年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年01月05日

The Hollies『Butterfly』

Holliesがサイケ・ポップに挑んだ意欲作☆The Hollies『Butterfly』
Butterfly
発表年:1967年
ez的ジャンル:爽快コーラス系サイケ・ポップ
気分は...:レモネードの湖を飛び交う蝶の気分?

今日は60年代ブリティッシュ・ビートを代表するグループThe Holliesです。
Holliesの紹介は『Evolution』(1967年)以来2回目となります。

セレクトしたのは1967年のアルバム『Butterfly』です。
『Evolution』『Butterfly』は、当時流行のサイケデリック・サウンドを取り入れた作品です。

Beatlesで言えば、『Revolver』(1966年)に相当する作品が『Evolution』であり、『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』(1967年)に相当する作品が『Butterfly』といったところでしょうか。

個人的には『Evolution』が好きなのですが、一般的には『Butterfly』の方が評価が高いのではないでしょうか。

逆に、大ヒット曲「Bus Stop」に代表される躍動感のあるポップなビート・サウンドと爽やかなコーラスワークのHolliesがお好きな方にとっては、いささか戸惑うアルバムかもしれませんね。

ただし、従来のポップななサウンドも聴くことができ、Holliesらしさを踏まえたポップ・サイケ作品といった仕上がりになっています。

本作時点でのメンバーは、Allan Clarke(vo)、Graham Nash(vo、g)、Tony Hicks(g)Bernie Calvert(b)Bobby Elliott(ds)の5名。作品も全曲オリジナル(Clark-Hicks-Nash作品)です。初期の頃はRansford名義でしたが、『Would You Believe?』(1966年)以降はClark-Hicks-Nash名義のクレジットが認められたようです。

特にグループの主導権を握っていたGraham Nashの頑張りが目立つアルバムです。しかし、メンバーとの確執が深まったNashは、本作を最後にHolliesを脱退し、Crosby Stills & Nash(CS&N)を結成することになります。

ちなみにアメリカでは『Dear Eloise/King Midas in Reverse』のタイトルで、曲構成、曲順も異なるかたちでリリースされました。

『Sgt. Pepper's〜』的作品として、Zombies『Odessey And Oracle』(1967年)あたりと一緒に語られることの多い作品ですが、個人的には寓話的な歌詞世界、ラーガ・ロック、サイケ・フォーク的な展開などDonovan作品との共通項を感じます。

それほど"サイケ"を意識しなくても十分楽しめるアルバムだと思います。

全曲紹介しときやす。

「Dear Eloise」
イントロ&アウトロでのハーモニウムの音色がサイケな世界を予感させます。しかし、本編はHolliesらしいポップなメロディと爽やかなコーラスが炸裂し、従来からのHolliesファンも大満足の仕上がりだと思います。僕もこの曲が一番好きですね。アメリカではシングルにもなりました。
http://jp.youtube.com/watch?v=SB1G9A3zxRw

「Away Away Away」
小粋なポップ・チューン。従来のHolliesらしさに、ほんの少し変化を加えているのが好きですね。カラフルなサウンドがサイケ時代らしいのでは?

「Maker」
シタールとタブラを取り入れた当時流行のラーガ・ロック。中盤の幻想的な雰囲気も含めてDonovanっぽいですね。

「Pegasus」
珍しくTony Hicksがリードヴォーカルを務めています。彼の下手くそヴォーカルが、架空の動物ペガサス(翼を持った馬)をテーマにした歌詞にマッチしています。童心に戻りたくなる1曲。

「Would You Believe」
基本はフォーキーなバラードなのですが、エコーとストリングスにより幻想的な雰囲気が強調されています。

「Wishyouawish」
小鳥の効果音で始まるフォーキー・チューン。ヴォードビル調のアレンジが印象的です。

「Postcard」
この曲も僕のお気に入り。前曲の小鳥に続き海辺のカモメの鳴き声で始まります。メロディは「Bus Stop」の変形ヴァージョンといった感じですね。軽くラテン・テイストのアレンジが僕好み。

「Charlie And Fred」
この曲は馬の蹄の音で始まります。美しいコーラスと分厚いオーケストレーションで寓話の世界へ誘ってくれます。

「Try It」
効果音や逆回転音を駆使してスペイシーかつサイケな雰囲気を漂わせています。このあたりもいかにも1967年らしいですね。

「Elevated Observations」
サイケ・フォークな仕上がり。シタールやタブラを使っていないにも関わらず、ラーガ・ロック的な雰囲気を生み出すことに成功しています。アシッド感覚を満喫できます。

「Step Inside」
この曲は従来からのポップなHolliesですね。キャッチーなメロディと素晴らしいコーラスワークが堪能できます。日本では「飛び出せ初恋」の邦題でシングルにもなりました。逆にこのアルバムの中では違和感がありますが(笑)

「Butterfly」
タイトル曲はGraham Nashがオーケストラをバックにただ一人で歌う哀愁チューン。おとぎの世界のような歌詞を一人でしんみりと歌うNashには孤独感が漂います。本作を最後にグループを離れるNashのその後を暗示しているようですね。

初期作品はベスト盤で済ませてしまっている僕ですが、機会があれば初期作品もちゃんと聴きたいですね。とりあえず3rdアルバム『Hollies』(1965年)あたりをゲットしたいですね。
posted by ez at 00:56| Comment(4) | TrackBack(1) | 1960年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年01月04日

Jimmy Smith『Root Down』

オルガン・グルーヴ極めつけの1枚!☆Jimmy Smith『Root Down』
ルート・ダウン
録音年:1972年
ez的ジャンル:ファンキー・オルガン・ジャズ
気分は... :今年はどんな音楽を聴こうかなぁ?

毎年、年明けに今年はどんな音楽を聴こうかなぁ?と考えます。

ここ数年は基本的にR&B/Hip-Hopの新譜を中心に聴いてきましたが、今年は自分の気分として、クラブ・ジャズ/クロスオーヴァー、ブラジル、ラテンあたりを聴く頻度が多くなる気がします。R&Bは女性シンガーの充実作を聴きたいですね。Hip-Hopはアングラ・シーンから掘り出しものを見つけるのが楽しみです。

ロックの話題が全く出てこないのが今の僕の嗜好を反映しているのかもしれません。でも、全くロックに興味がないわけではないんですよ(笑)。例えばThe Mars Voltaあたりは機会があれば全作品制覇したいし、ロックの枠に収まらないロック作品に期待はしています!

ジャズ・オルガンの神様Jimmy Smith(1925-2005年)の2回目の登場です。

『Crazy! Baby』(1960年)に続き紹介するのは、1972年発表のライブ・アルバム『Root Down』です。

僕の場合、『The Sermon!』(1958年)、『Midnight Special』(1960年)、『Back At The Chicken Shack』(1960年)、『Crazy! Baby』(1960年)、『I'm Movin' On』(1963年)、『The Cat』(1964年)、『Dynamic Duo』(With Wes Montgomery)(1966年)といった50年代後半から60年代後半の作品を中心に聴いてきました。

ただし、ジャズ好き以外の人であれば本作『Root Down』の方が聴きやすいかもしれませんね。特に70年代ソウル・ファン、70年代のエレクトリック・マイルスやジャズ・ファンク好きの方が一番フィットする作品だと思います。

本作におけるメンバーは、Jimmy Smith(org)、Arthur Adams(g)、Wilton Felder(b)、Paul Humphrey(ds)、Buck Clarke(per)、Steve Williams(hca)というラインナップです。CrusadersのWilton Felderの参加が目を引きますね。

ジャケ写真同様、演奏もカッコ良くキメてくれます。
オルガン・グルーヴ極めつけの1枚だと思います!

全曲紹介しときやす。

「Sagg Shootin' His Arrow」
僕のオススメその1。オープニングからファンクネス十分のオルガン・グルーヴを堪能できます。個人的にはタイトル曲、「Slow Down Sagg」と並ぶ本作のハイライトだと思います。同時期のMiles Davis作品のファンク・グルーヴが好きな方ならば気に入ると思います。不穏な空気を醸し出す重心の低いファンク・グルーヴの中でSmithのハモンドが唸りを上げて駆け巡ります!Arthur Adamsのワウワウ・ギターもカッチョ良いですね。Smithのオリジナル。
http://jp.youtube.com/watch?v=O9n-eYidtPk

「For Everyone Under the Sun」
Peter Chase作のバラードをソウルフルなテイストで聴かせてくれます。パーカッシヴながらも抑えたバッキングの中でSmithのハモンド・ソロを堪能できます。しみじみと腹にしみてくる感じが好きですね!

「After Hours」
1940年にピアニストAvery ParrishがErskine Hawkins Orchestraのために書いた曲です。Glenn Miller、Dizzy Gillespie、Woody Herman、Ray Bryant等も数多くのアーティストがレコーディングしています。ここではブルージーにキメてくれます。Steve Williamsのハーモニカがシブすぎますな。

「Root Down (And Get It) 」
僕のオススメその2。やはり本作のハイライトはこのタイトル曲(Smithのオリジナル)なのでは?最高にファンキーなオルガン・グルーヴを満喫しましょう。

Hip-Hopファンにとって本曲はBeastie Boys『Root Down』(アルバム『Ill Communication』収録)の元ネタとして有名ですね。それ以外に3rd Bass「Steppin' To The A.M.」でもサンプリングされています。
Beastie Boys『Root Down』
http://jp.youtube.com/watch?v=XUrBt0VSjlA

「Let's Stay Together」
僕のオススメその3。ご存知Al Greenの全米チャートNo.1ヒットのカヴァー。メロディが流れた瞬間、オーディエンスから歓声が起こるのが臨場感あっていいですね。オリジナルのソウルフルな雰囲気を損なわずにSmithならではのオルガン・グルーヴを聴かせてくれます。

「Slow Down Sagg」
僕のオススメその4。ラストはSmithオリジナルのファンキー・チューン。「Sagg Shootin' His Arrow」同様ファンクネス溢れるグルーヴでヒート・アップしまくり!スロウダウンなど全くせずにアゲアゲで突っ走ってくれます(笑)

ジャズ・ミュージシャンと言えば、昨年末にトランペット奏者Freddie Hubbardが亡くなってしまいましたね。当ブログでも『Hub Tones』『Breaking Point』といった作品を紹介しましたが、僕にとっては洋楽を聴き始めて間もない頃に聴いたBilly Joel「Zanzibar」でのプレイが鮮烈でした。謹んでご冥福をお祈りいたします。
posted by ez at 06:47| Comment(2) | TrackBack(1) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年01月03日

Mary J. Blige『What's The 411?』

90年代以降のR&Bシーンの流れを作った歴史的作品☆Mary J. Blige『What's The 411?』
What's the 411?
発表年:1992年
ez的ジャンル:元祖Hip-Hop Soul
気分は... :チェンジ!

2009年の幕開けに相応しい1枚って何だろう?
今年最初の1枚を何にするか迷いました。

2008年の漢字に「変」が選ばれたように、昨年はマイナス方向への"変化"が多い年でした。今年はオバマ次期米国大統領に大きな期待が集まっているように、それをプラス方向へ転換させる"変化(チェンジ)"をしなければならない年ですよね。

ということで、音楽シーンに"チェンジ"をもたらした1枚をセレクトしました。
現代のR&BクイーンMary J. Blige(MJB)のデビュー・アルバム『What's The 411?』(1992年)です。

MJBに関して、これまで以下の4作品を紹介してきました。
 『My Life』(1994年)
 『Mary』(1999年)
 『The Breakthrough』(2005年)
 『Growing Pains』(2007年)

今日紹介するデビュー・アルバム『What's The 411?』(1992年)は、90年代から現在に至るR&Bの流れを決定付けた、まさに"チェンジ"な1枚。皆さんご存知の通り、Hip-HopとR&B/Soulを見事に融合させた元祖"Hip-Hop Soul"アルバムです。R&Bファンの方ならば避けては通れない1枚ですね。

このアルバムのインパクトの大きさは現在30代半ばあたりのR&Bリスナーに聴くとよくわかると思います。僕の周辺にも中学、高校の時に『What's The 411?』を聴いてR&Bに目覚めたという人が数多くいます。また、20代前半のそれほど洋楽を聴かないような人でも、本作収録の「You Remind Me」「Real Love」といったヒット曲を当たり前に知っている状況を目の当たりにすると、このアルバムの影響力を再認識させられますね。

リリース当時20代半ばだった僕の場合、ちゃんとリアルタイムで本作を購入し、それなりに聴いてはいたものの、それほど画期的なアルバムという認識は無かったですね。個人的には『What's The 411?』よりも次作『My Life』の方をよく聴いていました。Sean "Puffy" Combs(現Diddy)が嫌いな僕にとって、『What's The 411?』はPuffyの陰がチラつく分、一定の距離を置いて聴いていたのかもしれません。と言いつつ、好きな曲は結構多かったのですが(笑)

ただし、今になってR&Bシーンの流れを振り返ると、『What's The 411?』が現在のR&Bのプロトタイプ的作品であったことは疑う余地がないと思います。今聴くと、当たり前のR&Bサウンドに聴こえるところが本作の真の価値でしょうね。

Sean "Puffy" Combsがエグゼクティブ・プロデューサーとなり、実際のプロデュースではDave "Jam" Hall、Mark C. Rooney & Mark Morales、Devante Swingらが手腕を振るっています。特にDave "Jam" Hallの貢献が大きいですね。

画期的サウンドに負けないMJBの存在感も忘れてはいけません。ストリート感覚の骨太ヴォーカルは、歌唱力云々では語ることができないR&B新世代のヴォーカリストという感じでしたね。

「You Remind Me」「Real Love」「Reminisce」「Love No Limit」といったヒット曲を中心に、R&Bシーンの"チェンジ"を振り返ってみましょう!

全曲紹介しときやす。

「Leave a Message」
アルバムのプロローグ。電話音を合図にHip-Hop Soulのリズムに体を軽く慣らすといったところですな。

「Reminisce」
アルバムからの3rdシングルであり、全米R&Bチャートの第6位となりました。Hip-Hop Soulならではのゆったりとしたグルーヴが実に心地好いですね。Dave "Jam" Hall/Sean "Puffy" Combsプロデュース。
http://jp.youtube.com/watch?v=-Ovq9-dWTKY

「Real Love」
説明不要のHip-Hop Soulクラシック。全米R&Bチャート第1位、同ポップチャート第7位のヒットとなりました。ストリート感覚とキャッチーなポップ感覚がうまくバランスしていますね。定番サンプリング・ネタAudio Two「Top Billin'」のビートとピアノ・ループが印象的なトラックをバックに、初々しいながらもパンチのあるMJBのヴォーカルが加わった鮮烈な印象の1曲でした。Mark C. Rooney & Mark Moralesプロデュース。
http://jp.youtube.com/watch?v=CQkRQdLkuYw

個人的にはBetty Wright「Clean Up Woman」ネタのリミックスも大好きです!
「Real Love(Remix)」
http://jp.youtube.com/watch?v=_JiyM39pC-E

また、本曲をサンプリングした曲としてRomeo feat. Christina Milian「It's All Gravy」、Mad Lion「Real Lover」等があります。
Romeo feat. Christina Milian「It's All Gravy」
http://jp.youtube.com/watch?v=HV9VzsXCFh4

「You Remind Me」
全てがこの曲から始まった!記念すべきMJBのデビュー・シングル。全米R&BチャートNo.1に輝いたクラシック。元々は映画『Strictly Business』(1991年)のサウンドトラック収録曲です。Patrice Rushen「Remind Me」を軽く流用した哀愁メロディ&ヴォーカルがたまりませんね。聴くたびに胸にグッと来るものがあります。プロデュースを手掛けたDave "Jam" Hallの手腕が光ります。
http://jp.youtube.com/watch?v=meTs9NO12uA

この曲は様々なリミックスが存在しますね。個人的にはDennis Edwards「Don't Look Any Further」をサンプリングしたBentley's Remixが好きです。
「You Remind Me(Bentley's Remix)」
http://jp.youtube.com/watch?v=rCXfPvP_1d8

「Intro Talk」
Busta Rhymesのラップが聴けるインタールード的な曲。

「Sweet Thing」
Chaka Khan(Rufus)のカヴァー(オリジナルはアルバム『Rufus featuring Chaka Khan』)収録。オリジナルに忠実なカヴァーですね。Chakaほどのダイナマイト・ヴォーカルではありませんが、MJBのヴォーカルもなかなかパンチ力があって健闘していると思います。

「Love No Limit」
この曲もクラシックですね。シングルとして全米R&Bチャート第5位となりました。しっとりとした大人のR&B/SoulをHip-Hopのグルーヴ感で創り上げた時点で勝ち!って感じですね。Hip-Hopビートのアーバン・ナイト感覚はかなり新鮮でしたよね。Dave "Jam" Hallプロデュース。
http://jp.youtube.com/watch?v=843fCYNyvFo

Fugees「Fu-Gee-La (North Side Mix) 」でサンプリングされています。
Fugees「Fu-Gee-La (North Side Mix) 」
http://jp.youtube.com/watch?v=PBaNP2_SPd4

「I Don't Want to Do Anything」
JodeciのDeVante Swingがプロデュースし、同じくJodeciのK-Ci(K-Ci & JoJo)がデュエット・パートナーを務めています。当時期待の若手男性R&BグループであったJodeciと共演させるというのは、なかなか面白い仕掛けだと思います。内容はオーソドックスながらもJodeciらしい濃いスロウに仕上がっています。

「Slow Down」
Mark C. Rooney & Mark Moralesプロデュース。語られることが少ないですが、美しいメロディとしっとりとしたアレンジが光るグッドソングだと思います。

「My Love」
Dave "Jam" Hallプロデュースの小粋なミディアム・スロウ。3582(Fat Jon and J.Rawls)「Yesterday」でサンプリングされています。

「Changes I've Been Going Through」
Sean "Puffy" Combs/Mark C. Rooney & Mark Moralesプロデュース。アルバムの中で唯一イマイチだと思うのがこの曲ですね。

「What's the 411?」
タイトル曲はGrand Pubaをフィーチャー。Ohio Players「Pride & Vanity」ネタを使った少しダークなHip-Hopチューン。中盤にはDebra Laws「Very Special」のフレーズも使われています。Sean "Puffy" Combsプロデュース。
http://jp.youtube.com/watch?v=KmdB3BUYCHI

本作をリリースした翌年には本作のリミックス・アルバム『What's the 411? Remix』もリリースしています。
What's the 411? Remix
What's the 411? Remix
posted by ez at 15:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 1990年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする