発表年:1992年
ez的ジャンル:元祖Hip-Hop Soul
気分は... :チェンジ!
2009年の幕開けに相応しい1枚って何だろう?
今年最初の1枚を何にするか迷いました。
2008年の漢字に「変」が選ばれたように、昨年はマイナス方向への"変化"が多い年でした。今年はオバマ次期米国大統領に大きな期待が集まっているように、それをプラス方向へ転換させる"変化(チェンジ)"をしなければならない年ですよね。
ということで、音楽シーンに"チェンジ"をもたらした1枚をセレクトしました。
現代のR&BクイーンMary J. Blige(MJB)のデビュー・アルバム『What's The 411?』(1992年)です。
MJBに関して、これまで以下の4作品を紹介してきました。
『My Life』(1994年)
『Mary』(1999年)
『The Breakthrough』(2005年)
『Growing Pains』(2007年)
今日紹介するデビュー・アルバム『What's The 411?』(1992年)は、90年代から現在に至るR&Bの流れを決定付けた、まさに"チェンジ"な1枚。皆さんご存知の通り、Hip-HopとR&B/Soulを見事に融合させた元祖"Hip-Hop Soul"アルバムです。R&Bファンの方ならば避けては通れない1枚ですね。
このアルバムのインパクトの大きさは現在30代半ばあたりのR&Bリスナーに聴くとよくわかると思います。僕の周辺にも中学、高校の時に『What's The 411?』を聴いてR&Bに目覚めたという人が数多くいます。また、20代前半のそれほど洋楽を聴かないような人でも、本作収録の「You Remind Me」、「Real Love」といったヒット曲を当たり前に知っている状況を目の当たりにすると、このアルバムの影響力を再認識させられますね。
リリース当時20代半ばだった僕の場合、ちゃんとリアルタイムで本作を購入し、それなりに聴いてはいたものの、それほど画期的なアルバムという認識は無かったですね。個人的には『What's The 411?』よりも次作『My Life』の方をよく聴いていました。Sean "Puffy" Combs(現Diddy)が嫌いな僕にとって、『What's The 411?』はPuffyの陰がチラつく分、一定の距離を置いて聴いていたのかもしれません。と言いつつ、好きな曲は結構多かったのですが(笑)
ただし、今になってR&Bシーンの流れを振り返ると、『What's The 411?』が現在のR&Bのプロトタイプ的作品であったことは疑う余地がないと思います。今聴くと、当たり前のR&Bサウンドに聴こえるところが本作の真の価値でしょうね。
Sean "Puffy" Combsがエグゼクティブ・プロデューサーとなり、実際のプロデュースではDave "Jam" Hall、Mark C. Rooney & Mark Morales、Devante Swingらが手腕を振るっています。特にDave "Jam" Hallの貢献が大きいですね。
画期的サウンドに負けないMJBの存在感も忘れてはいけません。ストリート感覚の骨太ヴォーカルは、歌唱力云々では語ることができないR&B新世代のヴォーカリストという感じでしたね。
「You Remind Me」、「Real Love」、「Reminisce」、「Love No Limit」といったヒット曲を中心に、R&Bシーンの"チェンジ"を振り返ってみましょう!
全曲紹介しときやす。
「Leave a Message」
アルバムのプロローグ。電話音を合図にHip-Hop Soulのリズムに体を軽く慣らすといったところですな。
「Reminisce」
アルバムからの3rdシングルであり、全米R&Bチャートの第6位となりました。Hip-Hop Soulならではのゆったりとしたグルーヴが実に心地好いですね。Dave "Jam" Hall/Sean "Puffy" Combsプロデュース。
http://jp.youtube.com/watch?v=-Ovq9-dWTKY
「Real Love」
説明不要のHip-Hop Soulクラシック。全米R&Bチャート第1位、同ポップチャート第7位のヒットとなりました。ストリート感覚とキャッチーなポップ感覚がうまくバランスしていますね。定番サンプリング・ネタAudio Two「Top Billin'」のビートとピアノ・ループが印象的なトラックをバックに、初々しいながらもパンチのあるMJBのヴォーカルが加わった鮮烈な印象の1曲でした。Mark C. Rooney & Mark Moralesプロデュース。
http://jp.youtube.com/watch?v=CQkRQdLkuYw
個人的にはBetty Wright「Clean Up Woman」ネタのリミックスも大好きです!
「Real Love(Remix)」
http://jp.youtube.com/watch?v=_JiyM39pC-E
また、本曲をサンプリングした曲としてRomeo feat. Christina Milian「It's All Gravy」、Mad Lion「Real Lover」等があります。
Romeo feat. Christina Milian「It's All Gravy」
http://jp.youtube.com/watch?v=HV9VzsXCFh4
「You Remind Me」
全てがこの曲から始まった!記念すべきMJBのデビュー・シングル。全米R&BチャートNo.1に輝いたクラシック。元々は映画『Strictly Business』(1991年)のサウンドトラック収録曲です。Patrice Rushen「Remind Me」を軽く流用した哀愁メロディ&ヴォーカルがたまりませんね。聴くたびに胸にグッと来るものがあります。プロデュースを手掛けたDave "Jam" Hallの手腕が光ります。
http://jp.youtube.com/watch?v=meTs9NO12uA
この曲は様々なリミックスが存在しますね。個人的にはDennis Edwards「Don't Look Any Further」をサンプリングしたBentley's Remixが好きです。
「You Remind Me(Bentley's Remix)」
http://jp.youtube.com/watch?v=rCXfPvP_1d8
「Intro Talk」
Busta Rhymesのラップが聴けるインタールード的な曲。
「Sweet Thing」
Chaka Khan(Rufus)のカヴァー(オリジナルはアルバム『Rufus featuring Chaka Khan』)収録。オリジナルに忠実なカヴァーですね。Chakaほどのダイナマイト・ヴォーカルではありませんが、MJBのヴォーカルもなかなかパンチ力があって健闘していると思います。
「Love No Limit」
この曲もクラシックですね。シングルとして全米R&Bチャート第5位となりました。しっとりとした大人のR&B/SoulをHip-Hopのグルーヴ感で創り上げた時点で勝ち!って感じですね。Hip-Hopビートのアーバン・ナイト感覚はかなり新鮮でしたよね。Dave "Jam" Hallプロデュース。
http://jp.youtube.com/watch?v=843fCYNyvFo
Fugees「Fu-Gee-La (North Side Mix) 」でサンプリングされています。
Fugees「Fu-Gee-La (North Side Mix) 」
http://jp.youtube.com/watch?v=PBaNP2_SPd4
「I Don't Want to Do Anything」
JodeciのDeVante Swingがプロデュースし、同じくJodeciのK-Ci(K-Ci & JoJo)がデュエット・パートナーを務めています。当時期待の若手男性R&BグループであったJodeciと共演させるというのは、なかなか面白い仕掛けだと思います。内容はオーソドックスながらもJodeciらしい濃いスロウに仕上がっています。
「Slow Down」
Mark C. Rooney & Mark Moralesプロデュース。語られることが少ないですが、美しいメロディとしっとりとしたアレンジが光るグッドソングだと思います。
「My Love」
Dave "Jam" Hallプロデュースの小粋なミディアム・スロウ。3582(Fat Jon and J.Rawls)「Yesterday」でサンプリングされています。
「Changes I've Been Going Through」
Sean "Puffy" Combs/Mark C. Rooney & Mark Moralesプロデュース。アルバムの中で唯一イマイチだと思うのがこの曲ですね。
「What's the 411?」
タイトル曲はGrand Pubaをフィーチャー。Ohio Players「Pride & Vanity」ネタを使った少しダークなHip-Hopチューン。中盤にはDebra Laws「Very Special」のフレーズも使われています。Sean "Puffy" Combsプロデュース。
http://jp.youtube.com/watch?v=KmdB3BUYCHI
本作をリリースした翌年には本作のリミックス・アルバム『What's the 411? Remix』もリリースしています。
What's the 411? Remix