発表年:1967年
ez的ジャンル:爽快コーラス系サイケ・ポップ
気分は...:レモネードの湖を飛び交う蝶の気分?
今日は60年代ブリティッシュ・ビートを代表するグループThe Holliesです。
Holliesの紹介は『Evolution』(1967年)以来2回目となります。
セレクトしたのは1967年のアルバム『Butterfly』です。
『Evolution』、『Butterfly』は、当時流行のサイケデリック・サウンドを取り入れた作品です。
Beatlesで言えば、『Revolver』(1966年)に相当する作品が『Evolution』であり、『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』(1967年)に相当する作品が『Butterfly』といったところでしょうか。
個人的には『Evolution』が好きなのですが、一般的には『Butterfly』の方が評価が高いのではないでしょうか。
逆に、大ヒット曲「Bus Stop」に代表される躍動感のあるポップなビート・サウンドと爽やかなコーラスワークのHolliesがお好きな方にとっては、いささか戸惑うアルバムかもしれませんね。
ただし、従来のポップななサウンドも聴くことができ、Holliesらしさを踏まえたポップ・サイケ作品といった仕上がりになっています。
本作時点でのメンバーは、Allan Clarke(vo)、Graham Nash(vo、g)、Tony Hicks(g)Bernie Calvert(b)Bobby Elliott(ds)の5名。作品も全曲オリジナル(Clark-Hicks-Nash作品)です。初期の頃はRansford名義でしたが、『Would You Believe?』(1966年)以降はClark-Hicks-Nash名義のクレジットが認められたようです。
特にグループの主導権を握っていたGraham Nashの頑張りが目立つアルバムです。しかし、メンバーとの確執が深まったNashは、本作を最後にHolliesを脱退し、Crosby Stills & Nash(CS&N)を結成することになります。
ちなみにアメリカでは『Dear Eloise/King Midas in Reverse』のタイトルで、曲構成、曲順も異なるかたちでリリースされました。
『Sgt. Pepper's〜』的作品として、Zombies『Odessey And Oracle』(1967年)あたりと一緒に語られることの多い作品ですが、個人的には寓話的な歌詞世界、ラーガ・ロック、サイケ・フォーク的な展開などDonovan作品との共通項を感じます。
それほど"サイケ"を意識しなくても十分楽しめるアルバムだと思います。
全曲紹介しときやす。
「Dear Eloise」
イントロ&アウトロでのハーモニウムの音色がサイケな世界を予感させます。しかし、本編はHolliesらしいポップなメロディと爽やかなコーラスが炸裂し、従来からのHolliesファンも大満足の仕上がりだと思います。僕もこの曲が一番好きですね。アメリカではシングルにもなりました。
http://jp.youtube.com/watch?v=SB1G9A3zxRw
「Away Away Away」
小粋なポップ・チューン。従来のHolliesらしさに、ほんの少し変化を加えているのが好きですね。カラフルなサウンドがサイケ時代らしいのでは?
「Maker」
シタールとタブラを取り入れた当時流行のラーガ・ロック。中盤の幻想的な雰囲気も含めてDonovanっぽいですね。
「Pegasus」
珍しくTony Hicksがリードヴォーカルを務めています。彼の下手くそヴォーカルが、架空の動物ペガサス(翼を持った馬)をテーマにした歌詞にマッチしています。童心に戻りたくなる1曲。
「Would You Believe」
基本はフォーキーなバラードなのですが、エコーとストリングスにより幻想的な雰囲気が強調されています。
「Wishyouawish」
小鳥の効果音で始まるフォーキー・チューン。ヴォードビル調のアレンジが印象的です。
「Postcard」
この曲も僕のお気に入り。前曲の小鳥に続き海辺のカモメの鳴き声で始まります。メロディは「Bus Stop」の変形ヴァージョンといった感じですね。軽くラテン・テイストのアレンジが僕好み。
「Charlie And Fred」
この曲は馬の蹄の音で始まります。美しいコーラスと分厚いオーケストレーションで寓話の世界へ誘ってくれます。
「Try It」
効果音や逆回転音を駆使してスペイシーかつサイケな雰囲気を漂わせています。このあたりもいかにも1967年らしいですね。
「Elevated Observations」
サイケ・フォークな仕上がり。シタールやタブラを使っていないにも関わらず、ラーガ・ロック的な雰囲気を生み出すことに成功しています。アシッド感覚を満喫できます。
「Step Inside」
この曲は従来からのポップなHolliesですね。キャッチーなメロディと素晴らしいコーラスワークが堪能できます。日本では「飛び出せ初恋」の邦題でシングルにもなりました。逆にこのアルバムの中では違和感がありますが(笑)
「Butterfly」
タイトル曲はGraham Nashがオーケストラをバックにただ一人で歌う哀愁チューン。おとぎの世界のような歌詞を一人でしんみりと歌うNashには孤独感が漂います。本作を最後にグループを離れるNashのその後を暗示しているようですね。
初期作品はベスト盤で済ませてしまっている僕ですが、機会があれば初期作品もちゃんと聴きたいですね。とりあえず3rdアルバム『Hollies』(1965年)あたりをゲットしたいですね。