発表年:1978年
ez的ジャンル:N.Y.スタイル・サルサ
気分は... :コメディなのに泣ける...
久々にサルサ作品の紹介を!
サルサ・シーンを代表する歌手Hector Lavoeの人気作『Comedia』(1978年)の紹介です。
Hector Lavoe(本名Hector Juan Perez Martinez)は1946年プエルトリコのポンセ生まれのサルサ歌手。
彼のステージ・ネーム"Lavoe"は、憧れであったプエルトリコ人のボレロ歌手Felipe Rodriguezのニックネーム"La Voz" ("The Voice")に由来するものです。
14歳の頃には地元プエルトリコで歌手として活躍していたLavoeは、17歳となった1963年にN.Y.行きの飛行機に乗り、合衆国進出を果たします。N.Y.のラテン音楽シーンで次第に頭角を現すようになったLavoeはFniaの創設者Johnny Pachecoの紹介で、その後のサルサ・シーンを牽引することなる運命の男Willie Colonに出会います。
そして、Colonのデビュー作『El Malo』(1967年)に参加し、El Malo(悪党)イメージで一躍ニューヨリカンのヒーローとなったColonと共にLavoeも注目されるようになります。当時Colonは17歳、Lavoeは20歳でした。
その後Colonのグループのコンビで次々とヒット作をリリースすると共に、伝説のオールスターグループFania All-Starsの一員にもなり、サルサブームの中でN.Y.サルサを代表する人気歌手の地位を確立します。
しかしながら、スーパースターのプレッシャーからか次第にドラッグに溺れるようになり、音楽活動にも支障をきたすようになります。遂にはColonとのコンビを解消せざるをえなくなってしまいました。
コンビ解消後もColonからのサポートを得たLavoeはソロ活動を開始します。
ソロ第1作『La Voz』(1975年)を皮切りに、『De Ti Depende』(1976年)、『Comedia』(1978年)、『Recordando a Felipe Pirela』(1979年)といった人気作をColonのプロデュースでリリースしています。
その後もLavoeの人生にはドラッグ、自殺未遂、息子の死(射殺)、エイズと常に悲劇が付きまとうことになります。1993年に永眠(享年46歳)。
僕の中ではサルサ歌手と聞いて真っ先に思い浮かぶ名前が、Hector LavoeとRuben BladesというColonとのコンビで名を馳せた2人です。2人とも張りのあるハイトーン・ヴォーカルが魅力ですね。
Lavoeのソロ作では、前述の『De Ti Depende』(1976年)、『Comedia』(1978年)、『Recordando a Felipe Pirela』(1979年)という3枚の人気が高いと思います。
特にチャップリンに扮したLavoeの姿が印象的な本作『Comedia』は、ついついジャケ買いしてしまいそうな1枚ですね(笑)。1978年はチャップリンが死去した年であり、タイトルも含めてチャップリンへの哀悼の意を示しているのでしょうね。
中身の方もLavoeの代表作というに止まらず、N.Y.サルサの成熟ぶりを示す1枚として評価が高い作品です。前述の通りプロデュースはWillie Colonが手掛け、Luis Perido Ortizらがアレンジを担当しています。
ラテンならではの男の色気が漂うLavoeのヴォーカルとゴージャズ&スタイリッシュなN.Y.サルサ・サウンドを聴けば、凍てつく寒さも吹っ飛ぶはずです!
全曲を紹介しときやす。
「El Cantante」
本作のハイライトと言える大ヒット曲。Marc Anthony & Jennifer Lopez夫婦が揃って主演したLavoeの伝記映画『El Cantante』(2007年)のタイトルにもなりました。"El Cantante De Los Cantantes(歌手の中の歌手)"と呼ばれていたLavoeに相応しいタイトルですよね。そんなLavoeの代表曲の作者がRuben Bladesというのが面白いですね。
10分を超える長尺ですが、オーケストレーション・アレンジも見事なダイナミックなサウンドとLavoeの艶やかなヴォーカルにうっとりです。
http://www.youtube.com/watch?v=wB17N9nutPQ&feature=related
前述の映画の中で使われたMarc Anthonyのヴァージョンもあります。Lavoe役を務めたMarcですが、見た目はかなり似ていると思います。
Marc Anthony「El Cantante」
http://www.youtube.com/watch?v=5RAinWanMg0
「Comedia」
タイトル曲は雰囲気たっぷりのボレロ。Lavoeの艶やかなヴォーカルを堪能するためには、この手のスロウ・テンポがいいかもしれませんね。
http://www.youtube.com/watch?v=Wz4XSEpQutY&feature=related
「La Verdad」
スピーディな疾走感がカッチョ良い1曲。前半〜中盤はスマートなのが、終盤ギア・チェンジ一気に盛り上がるところが好きです。
http://www.youtube.com/watch?v=W98Hau9426k&feature=related
「Tiempos Pasados」
僕の一番のお気に入り曲。サルサ+サンバといった雰囲気の爽快なメロウ・グルーヴ。ブラジル音楽ファンの方も気に入ってくれる仕上がりだと思います。♪ララララ〜♪
https://www.youtube.com/watch?v=hSPD0B31Ab0
「Bandolera」
直球ど真ん中!といった感じのサルサ然とした仕上がりです。軽く哀愁モードのLavoeのヴォーカルとコーラス隊の掛け合いにグッときます。サルサの醍醐味を十二分に堪能できます。
http://www.youtube.com/watch?v=78xxm8ZUnSA
「Proque Te Conoci?」
オーケストレーションをバックにロマンティック・モードのヴォーカルを聴かせてくれます。個人的に仰々しいサウンドはあまり好きではないのですが、Lavoeのヴォーカルにはこのサウンドがマッチしますね。
http://www.youtube.com/watch?v=Q_3z8lKGtD8&feature=related
「Songoro Cosongo」
パーカッション類が豪快に鳴り響く、明るく陽気な仕上がりです。缶ビール片手に聴きたい曲ですね。
ファンの方はご存知の通り、ハウス・シーンを代表する人気プロデューサーLouie VegaはLavoeの甥になります。
偶然ですが、現在Topページに表示されているエントリーのうち、George Benson、Queen Latifah、そして今日のHector Lavoeの記事中にLouie Vegaの名前が登場します。
ジャズ、Hip-Hop、サルサと全く異なるジャンルの3人のアーティストが、ハウス・シーンのプロデューサーでつながっているとは面白いですね。