2009年03月31日

Anita O'Day『This Is Anita』

センス抜群の女性ジャズ・ヴォーカル☆Anita O'Day『This Is Anita』
ジス・イズ・アニタ
録音年:1956年
ez的ジャンル:奔放系女性ジャズ・ヴォーカル
気分は... :落ち着きのない年度末ですが...

今日は女性ジャズ・ヴォーカルが聴きたい気分...

今日は偉大な女性ジャズ・シンガーの一人Anita O'Dayの代表作『This Is Anita』(1956年)です。女性ジャズ・ヴォーカルの名盤として紹介されることの多い彼女の代表作の1枚です。

Anita O'Day(1919-2006年)はシカゴ生まれの女性ジャズ・シンガー。Billie HolidayElla FitzgeraldSarah Vaughanらと並び称される偉大な女性ジャズ・シンガーの一人ですね。正直、細かい経歴については詳しくないので割愛しますが、僕の中では生き方も歌い方も"奔放なジャズ・シンガー"というイメージが強いです。

あとAnita O'Dayと言えば、やはり映画『真夏の夜のジャズ(Jazz On A Summer's Day)』(1959年)ですね。第5回ニューポート・ジャズ・フェスティバル(Newport Jazz Festival)の模様を収めた、このドキュメンタリー映画の中でもAnitaの存在感は抜群です。

Anita O'Day「Sweet Georgia Brown」
http://www.youtube.com/watch?v=xuzWegDm2HY

Anita O'Day「Tea for Two」
http://www.youtube.com/watch?v=1UP8c_cU0-c

華奢な体型からもわかるように、決して声量があるシンガーではありませんが、ジャズ・シンガーとしてのセンス抜群という感じが映像からも伝わってきますよね。

Anita O'Dayのアルバムと聞いて、僕が思い浮かべるのは本作『This Is Anita』(1956年)と『Anita Sings the Most』(1957年)の2枚です。

Anita Sings the Most
Anita Sings the Most

『Anita Sings the Most』のジャケこそが、Anita O'Dayのイメージという気がします。それと比較すると清楚な雰囲気で腰掛けている本作『This Is Anita』のジャケは完璧に猫をかぶっていますね(笑)

ノリノリのスウィンギーな曲のみならず、しっとりとした大人のバラードまで聴かせる本作の構成を考えれば、このジャケもアリなのかも?

本作では編曲担当Buddy Bregmanの手腕が光ります。バックはそのBuddy Bregman & his Orchestraをはじめ、Paul Smith(p)、Barney Kessel(g)、Joe Mondragon(b)、Alvin Stoller(ds)のカルテット、Milt Bernhart、Lloyd Elliot、Joe Howard、Si Zentnerというトロンボーン隊が務めます。Paul Smithのピアノ、Barney Kesseのギターにもグッときます。

女性ジャズ・ヴォーカル・アルバムの醍醐味を存分に堪能できる名作だと思います。

全曲紹介しときやす。

「You're the Top」
オープニングはCole Porter作品。1934年のミュージカル『Anything Goes』のために書かれた曲です。その後映画『海は桃色』(1936年)とそのリメイク『夜は夜もすがら』(1956年)でも歌われています。

トロンボーンのアンサンブルをバックにスウィンギーに歌うAnita版の楽しさは、何と言っても途中から歌詞を改変し、Sarah Vaughan、Charlie Parker、Miles Davis、Billy Eckstine、Lester Young、Lena Horne、Benny Goodmanといったジャズ・ミュージシャンの名前が次々と登場する点ですね。

個人的にはBarbra Streisand版(映画『What's Up, Doc?(おかしなおかしな大追跡)』挿入歌)も好きです。
Barbra Streisand「You're the Top」
http://www.youtube.com/watch?v=b2_GCClUPyk

「Honeysuckle Rose」
Andy Razaf作詞、Fats Waller作曲のスタンダード(1928年作品)。Ella Fitzgerald with Count Basie His Orchestraのヴァージョンも有名ですが、ベースのみの伴奏から、カルテットが加わり、トロンボーンが加わり...という展開と共にAnitaのフェイクが冴えまくってくるAnitaヴァージョンは相当カッチョ良いと思います。「Nightingale Sang in Berkeley Square」らと並ぶ本作のハイライトの1つなのでは?小粋なヴォーカルという言葉がピッタリのスウィング感がたまりません。
http://www.youtube.com/watch?v=Mc_efbzjDAE

「Nightingale Sang in Berkeley Square」
Eric Maschwitz作詞、Manning Sherwin作曲のスタンダード(1940年)。オリジナルはJudy Campbel。Anitaの代表的レパートリーであり、本作のハイライトです。ロマンティックなストリングスをバックに情感たっぷりのヴォーカルを聴かせてくれます。イントロのオルゴールのような響きをバックにしたAnitaの歌声だけで相当グッときます。サイコー!

「Who Cares?」
George Gershwin/Ira Gershwin作品。Paul Smithの絶妙なピアノとピッタリ息の合ったAnitaのヴォーカルが絶好調です。こういう曲を聴くとジャズ・シンガーの"センス"を実感できますね。

「I Can't Get Started」
Ira Gershwin作詞、Vernon Duke作曲(1935年作)。当初は「I Can't Get Started With You」のタイトルだったようですね。切々と語りかけてくるかのようなAnitaのヴォーカルにうっとりのロマンティックなバラード。

「Fine and Dandy」
Kay Swift作品。アップテンポで飛ばしまくります。アップ度ではアルバム中一番ですね。このスピード感のAnitaの奔放さが見事にシンクロしている感じですね。Paul SmithのピアノとBarney Kesselのギターが大活躍です。

「As Long as I Live」
Ted Koehler作詞、Harold Arlen作曲(1934年作)。ミディアム・テンポの軽快なスウィング感が魅力ですね。

「No Moon at All」
邦題「月とでもなく」。David Mann/Redd Evans作。出だしのスキャット、トロンボーン・ソロが印象的です。

「Time After Time」
Sammy Cahn/Jule Styne作のスタンダード。1947年の映画『It Happened in Brooklyn』で使われたのが最初です。エレガントなオーケストラをバックにし、落ち着きのあるしっとりとしたヴォーカルを聴かせてくれます。

「I'll See You in My Dreams」
Isham Jones/Gus Kahn作のスタンダード。1925年にIsham Jones & The Ray Miller Orchestraがヒットさせました。Anitaは期待通りスウィンギーな歌を聴かせてくれます。

「I Fall in Love Too Easily」
Sammy Cahn作詞、Jule Styne作曲。季節外れのクリスマス・ソングですが....オーケストラをバックにしみじみ聴かせます。

「Beautiful Love」
Victor Young等の共作。Bill Evansの演奏でもお馴染みの曲ですね。Anitaの少し憂いを伴ったスウィング感にグッときます。Paul SmithのピアノとBarney Kesselのギターも大活躍です。個人的にはかなり好きな演奏です。

落ち着きのない年度末になってしまいました。
でも1つの区切りなので、明日から決意を新たに頑張ります。
posted by ez at 14:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 1950年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする