2009年04月25日

The Baker Brothers『Avid Sounds』

UKファンキー・ミュージック・マシーンの最新作はカヴァー集☆The Baker Brothers『Avid Sounds』
アヴィッド・サウンズ
発表年:2009年
ez的ジャンル:UKジャズ・ファンク
気分は... :選曲にニンマリ!

今日はDan Baker(g、org)、Rich Baker(ds)、Chris Pedley(g、b)というトリオ編成のUKジャズ・ファンク・グループThe Baker Brothersの最新作『Avid Sounds』です。

この新作を聴きながら、7月の来日公演を心待ちにしている方もいるのでは?

The Baker Brothersの紹介は『Transition Transmission』(2008年)に続き2回目になります。

前作『Transition Transmission』は、『ezが選ぶ2008年の10枚』にセレクトしたほどのお気に入り作だったので新作を待ちわびていたのですが、意外と短いスパンで最新作『Avid Sounds』が届けられ嬉しい限りです。

4thアルバムとなる本作はファンク・チューンを中心としたカヴァー集です(1曲のみオリジナル)。レア・グルーヴ好きの人は、曲リストを眺めただけでも思わずニンマリしてしまうはずです。

『Transition Transmission』からの流れでヴォーカル入りの曲が多く、その分聴きやすい作りになっています。

基本的にはオリジナルの雰囲気を受け継いだ演奏が多いですね。勿論、そこに今時のUKジャズ・ファンクらしさが加味されていますが。

カヴァー・アルバムの中には安易な企画のものもありますが、本作や先日紹介したLeela Jamesの全曲カヴァー・アルバム『Let's Do It Again』等は、カヴァー・アルバムでありながらしっかりアーティストの個性が出ているのがいいですね。

その意味で『Avid Sounds』にはBaker Brothersらしい熱いファンキー・ミュージックがぎっしり詰まっています。

オリジナルを知っている方は聴き比べてみるのと楽しいし、知らない方はこれを機会にオリジナルも聴いてみると楽しさ倍増になると思います。

全曲紹介しときやす。

「Family Tree」
オリジナルは女性ヴォーカリストSharon BrownをフィーチャーしたFamily Treeによるファンク・チューン(1976年)。 ガラージ・クラシックとして人気が高く、Norman CookによるDisco Editもリリースされています。

本カヴァーでは西ロンドンのクラブシーンではお馴染みの女性ヴォーカリストVanessa Freemanをフィーチャーしています。オリジナルと比べて、よりスマートな仕上がりになっています。フルートの音色が印象的ですね。

Family Tree feat. Sharon Brown「Family Tree」
 http://www.youtube.com/watch?v=pa135zzqf3w

「Shack Up」
オリジナルはBanbarraによるファンキー・ソウル(1975年)。定番ドラムブレイクとしてお馴染みですね。あるいはA Certain Ratioによるカヴァーでお聴きの方もいるのでは?本カヴァーではカッチョ良いオルガン・グルーヴに仕上がっています。Rich Bakerによるブレイクもばっちりキマっています。

Banbarra「Shack Up」
 http://www.youtube.com/watch?v=Q8Y5J3WkgZs

「Couldn't Get It Right」
オリジナルはClimax Blues Bandによる1976年のヒット曲。サビの少しイナたい感じがいいですよね。オリジナルがお好きな方ならば本カヴァーも気に入るはず!

Climax Blues Band「Couldn't Get It Right」
 http://www.youtube.com/watch?v=BgjSEbyWDeI

本作とは関係ありませんが、Climax Blues Band「I Love You」の動画がYoutubeにあったので紹介しておきます。僕にとっては青春の思い出が詰まった1曲なもので...
Climax Blues Band「I Love You」
 http://www.youtube.com/watch?v=sZub3M3jSdw

「Space Funk」
オリジナルはレア・グルーヴ・ファンやHip-Hopファンに人気のManzelによるスペイシー・ディスコ(1977年)。本カヴァーはシンセの音色がスマートな分、多少オリジナルとは異なる雰囲気の仕上がりかもしれません。ボーナス・トラックとしてFreefall Collectiveによるリミックスも収録されています。こちらもなかなかの出来です。

Manzel「Space Funk」
 http://www.youtube.com/watch?v=9LJKlY7E8OU

「Street Player」
Rufus & Chaka Khanのヴァージョンでもお馴染み、Chicago作品のカヴァー(1977年、アルバム『Chicago 13』収録)。リミックスはガラージ・クラシックとしても人気がありますね。本カヴァーは、クラブ系リスナーに人気のデュオTalcをフィーチャーしており、実にスタイリッシュな出来栄えです。オリジナル同様、ホーン隊が大活躍しているのは勿論のこと、後半のブラジリアン・フュージョン的な展開も僕好みです。

Chicago「Street Player」
 http://www.youtube.com/watch?v=zO80gvxPvBs
Chicago「Street Player(Remix)」
 http://www.youtube.com/watch?v=F9mdQjmHxbs

「Rock Creek Park」
The Blackbyrdsのカヴァー(1975年、アルバム『City Life』収録)。レア・グルーヴやサンプリング・ネタとしてお馴染みの1曲ですね。本カヴァーは女性ヴォーカルをフィーチャーした爽快な仕上がりです。

The Blackbyrds「Rock Creek Park」
 http://www.youtube.com/watch?v=Z9YgWDMsAEI

「Lady Day & John Coltrance」
当ブログでも紹介したGil Scott-Heronの名曲カヴァー(1971年、アルバム『Pieces Of A Man』収録)。オリジナル同様、心地好い疾走感を堪能できます。

Gil Scott-Heron「Lady Day & John Coltrance」
 http://www.youtube.com/watch?v=cMFN2e4wMnw

「Fly Like An Eagle」
Steve Miller Bandの1977年の大ヒット曲をカヴァー。若い世代のリスナーの方にはサンプリング・ネタとしてもお馴染みですね。Chris Pedleyのヴォーカルがオリジナルの雰囲気にそっくりです。今までさほど好きな曲ではなかったのですが、本カヴァーを聴いていたら素晴らしい曲だと思いはじめているので不思議です(笑)

Steve Miller Band「Fly Like An Eagle」
 http://www.youtube.com/watch?v=6zT4Y-QNdto

「Cola Bottle Baby」
オリジナルはEdwin Birdsongが1979年にリリースしたファンキー・ディスコ・チューン。Daft Punk「Harder, Better, Faster, Stronger」の元ネタ、つまりKanye West「Stronger」の元ネタの元ネタ(ややこしい?)としてお馴染みですね。Daft Punkのイメージが強いので、本カヴァーを聴いていると生演奏による人力Daft Punkって感じに聴こえて面白いですな。

Edwin Birdsong「Cola Bottle Baby」
 http://www.youtube.com/watch?v=sklZ-f6Wstw

「The Mexican」
Ennio Morricone作品(映画『夕陽のガンマン』より)。本カヴァーはBabe Ruthによるカヴァー(1972年)がベースになっていると思います。Katie Holmesの女性ヴォーカルをフィーチャーしたスパニッシュなファンク・チューンに仕上がっています。

Babe Ruth「The Mexican」
 http://www.youtube.com/watch?v=LPVI73Ocxg8

「Blandford Super Fly」
ラストは本作唯一のオリジナル。本作唯一メンバーのみの演奏によるスペイシーなインスト。各メンバーのソロを堪能できます。

今日から大型連休みたいですね。
周囲に大型連休となる人がいないので全然ピンときませんが...
僕も今日はフツーに仕事です(泣)
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2009年04月24日

Beck『Midnite Vultures』

Beckらしいミクスチャー感覚&ローファイ感を堪能しましょう!☆Beck『Midnite Vultures』
Midnite Vultures
発表年:1999年
ez的ジャンル:ミクスチャー&ローファイ系オルタナ
気分は... :酒はほどほどに!

昨晩は新宿某所で飲んでいましたが、さすがに脱ぎたくなるほど深酒はしないように気をつけました(笑)

Beckの2回目の登場です。
『Odelay』(1996年)に続いて紹介するには、『Midnite Vultures』(1999年)です。

発売当時は賛否両論分かれた作品でしたね。
Beckらしさに溢れた作品として僕は支持していましたが...
(と言いつつ、熱心なBeckファンでもないのですが)

前作『Mutations』(1998年)は、アコースティック・サウンドを前面に打ち出したフォーキーな味わいのアルバムでした。決して悪くはない出来でしたが、『Odelay』からのギャップに肩透かしを食らった感がありましたね。その意味では本作『Midnite Vultures』を聴いて、"これがBeckだよね!"とスッキリした記憶があります。

まぁ、『Mutations』で一息ついたからこそ、『Midnite Vultures』のような突き抜けた作品を生み出すことができたのかもしれませんが。

中身としてはGeorge ClintonPrince、70年代後半〜80年代初めのニューウェイヴ/エレポップをBeck風に調理したサウンドという印象です。僕の中でBeckの持つミクスチャー感覚&ローファイ感って"90年代版ニューウェイヴ"というイメージがあるんですよね。

プロデューサーはBeck本人に加え、殆どの曲でTony Hoffer又はMickey Petraliaが共同プロデューサーとしてクレジットされています。Dust Brothersも2曲でプロデュースに関与しています。

山塚EYE(ボアダムス)のデザインによるジャケも大好き!
グリーンとピンクが目立つジャケってそんなに無い気がします。

昔は僕もピンクのパンツをよくはいていたのですが(笑)

全曲紹介しときやす。

「Sexx Laws」
オープニングはシングルにもなったご機嫌なファンキー・チューン。フジテレビ系のスポーツ・バラエティ番組『ジャンクSPORTS』の挿入歌としてお馴染みですね。能天気なホーンが浜ちゃんや内田恭子のキャラにぴったりですな。バンジョーとシンセの組み合わせというのがBeckらしいのでは?
http://www.youtube.com/watch?v=XC7ucvAAVvw

「Nicotine & Gravy」
ダーク&クールなミッド・グルーヴ。Sly & The Family Stoneを意識した作りかもしれませんね。重く響き渡るベースとチープなエレクトリック・サウンドが僕好み。
http://www.youtube.com/watch?v=CJu3Z9o4uJM

「Mixed Bizness」
この曲もシングルになりました。シングル向きのキャッチーな仕上がりです。ノリの良さが魅力ですな。変態チックなコーラスも大好き!
http://www.youtube.com/watch?v=FgRQAnFQS48

「Get Real Paid」
80年代風エレクトリック・サウンドで徹底した1曲。80年代をリアル体験した僕などはこのレトロなピコピコ感がたまりませ〜ん。
http://www.youtube.com/watch?v=I8BzQoz8LHE

「Hollywood Freaks」
G-Funk風のラップ・チューン(Dust Brothersプロデュース)。悪くはないけどBeckらしさという点ではどうなんでしょうかね?

「Peaches & Cream」
怪しげな雰囲気がいいですね。ヴォーカルはPrinceしています。

「Broken Train」
アーシーな味わいをベースにしたエレクトリック・サウンドがいいですね。ローファイ感もあってBeckらしい仕上がりなのでは?

「Milk & Honey」
Beckらしいミクスチャー感覚が堪能できる1曲。チープなスペイシー・サウンドがクセになりますな。
http://www.youtube.com/watch?v=7hIg_fdT8PA

「Beautiful Way」
アーシーな味わいのマッタリとした1曲。これもBeckの持ち味!

「Pressure Zone」
70年代後半〜80年代初めのニューウェイヴ/エレポップ・サウンドあたりを彷彿させる仕上がり。

「Debra」
この曲は完璧にPrinceしています(笑)。Ramsey Lewis「My Love For You」をサンプリング。Dust Brothersプロデュース。
http://www.youtube.com/watch?v=H8YaaUYiELw

今日を乗りければ、気分はGWモードですな!
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2009年04月23日

Graham Central Station『Ain't No 'Bout-A-Doubt It』

ダイナマイト・ファンク炸裂の3rdアルバム☆ Graham Central Station『Ain't No 'Bout-A-Doubt It』
Ain't No 'Bout-A-Doubt It
発表年:1975年
ez的ジャンル:ダイナマイト・ファンク
気分は... :ゲロンチョリー!

僕の場合、月に1、2回最寄のブックオフの250円、500円CDコーナーをチェックしているのですが、4月はかなり収穫がありました。きっと転居に伴い手持ちCDを処分される方が多く、掘り出し物が出回りやすい時期なのでしょうね。

1時間以上チェックしていると、目がクラクラ、足がパンパンでぐったりしてしまうのですが、ここ数回はウキウキ気分で店を後にしています。

収穫ゼロという日も多くあるのですが、たまに当たりがあるので止められないですね。

さて、今回はLarry Graham率いるGraham Central Stationの2回目の登場です。

『Release Yourself』(1974年)に続いて紹介するのは、3rdアルバム『Ain't No 'Bout-A-Doubt It(邦題:ダイナマイト・ミュージック)』(1975年)です。

『Ain't No 'Bout-A-Doubt It』は彼らの3rdアルバムになります。

ジャケが印象的ですよね。個人的には『Graham Central Station』や『Release Yourself』のジャケの方が好きですが、本作のイラスト・ジャケは良くも悪くもインパクトはありますよね。僕にはLarry Grahamの頭髪部分の不自然さが気になって仕方ないのですが...

『ダイナマイト・ミュージック』という邦題はどうなんですかね。Larry Grahamのベースを中心にダイナマイトなド迫力ファンクを聴かせてくれるというニュアンスは十分伝わってきますが(笑)

やはり、聴きどころは「The Jam」「It's Alright」をはじめとするダイナマイトなファンク・チューンです。ただし、一本調子にならないための配慮からか、ファンク・チューンとソウル・バラードが交互に登場する構成になっています。特にシングル・ヒットした「Your Love」あたりはグッときますね。

Larry Graham以下、Patryce Banks(vo)、Hershall Kennedy(g、clavinet)、David Vega(g)、Willy Sparks(ds)、Robert Sam(key)というメンバー6名の一体感もいいですね。また、前作同様Tower Of Powerのホーン隊が参加しています。

グループとしてのGraham Central Stationの絶好調ぶりを堪能できる1枚なのでは?

全曲紹介しときやす。

「The Jam」
本作のハイライトと言えば、このオープニング曲ですよね。メンバー紹介をしながら、ソロ回しで聴かせていく大盛り上がりのファンク・ジャム。楽しく盛り上がれるのがいいですね。Larryのベースがブリブリで絶好調なのは勿論のこと、Robert "Butch" Samのオルガンがファンキー度を更に高めてくれます。

また、中盤のドラムブレイクは定番サンプリング・ネタとしてお馴染みですね。Eric B. & Rakim.「Move the Crowd」、Jungle Brothers「Sounds of the Safari」、LL Cool J「Fast Peg」、DJ Jazzy Jeff & the Fresh Prince「Numero Uno」、Biz Markie「Pickin' Boogers」、The Notorious B.I.G.「Friend of Mine」等でサンプリングされています。

「Your Love」
シングルにもなった胸にしみるソウル・バラード。Patryce "Chocolate" Banksのキュートなヴォーカルがサイコーです。

「It's Alright」
曲のキャッチーさで言えば、このファンキー・ディスコ・チューンが一番なのでは?Larryのベースにだけ注目して聴いても相当グッときます。Tower Of Powerのホーン隊も大いに盛り上げてくれます。

「I Can't Stand the Rain」
Ann Peebles、お馴染みのヒット曲をカヴァー。Patryce Banksのヴォーカルを堪能できます。僕の場合、"Ann Peeblesのオリジナルは少し渋すぎー!でもEruptionのディスコ・カヴァーは少しやりすぎー"という印象があり、その意味ではこのGCSヴァージョンくらいが丁度いいのかもしれません。とか言って、Missy Elliott「The Rain (Supa Dupa Fly)」が一番良かったりして(笑)

「It Ain't Nothing But a Warner Brothers Party」
Sly & The Family Stone時代を彷彿させるファンク・チューン。Sly & The Family Stoneがお好きな方ならば気に入ると思います。Tower Of Powerホーン隊がサイコー!

「Ole Smokey」
イナたい味わいが魅力のソウル・チューン。ファンク・チューンの合間で小休止といったところでしょうか。

「Easy Rider」
イントロがめちゃめちゃキマっているロックン・ロール調の1曲。

「Water」
密かに好きなのがこの曲。腰にグイグイくる重心の低いファンク・ナンバー。もっと長尺で聴いていたい1曲。

「Luckiest People」
ラストは壮大のバラード。後年のバラード路線を予感させる?この大味な仕上がりは僕の好みではありませんが。

Sly & The Family StoneTower Of Powerの作品もしばらく紹介していないですね。近々取り上げたいと思います。
posted by ez at 02:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年04月21日

The Critters『Younger Girl』

ソフト・ロック・ファンに人気のデビュー作☆The Critters『Younger Girl』♪
ヤンガー・ガール
発表年:1966年
ez的ジャンル:メロディアス系ソフト・ロック/ビート・ロック
気分は... :奇妙な奴ら???

今日はソフト・ロック・ファンに人気のThe Crittersのデビュー・アルバム『Younger Girl』です。

The Crittersはニュージャージー出身のグループ。当初はThe Vibratonesとして、Jim Ryan(vo、g)、Chris Darway(org)、Kenny Corka(b)、Jack Decker(ds)、Paul Iovino(g)の5人で活動していました。その後Paul Iovinoが抜け、新メンバーBob Podstawski(sax)、Don Ciccone(vo、g)が加わったことを契機に、グループ名をThe Crittersと改名します。

その後数曲のレコーディング経験(リリースは後年)を経て、1965年にKama-Sutraプロダクションとの契約に成功し、シングル「Children and Flowers」 でデビューします。その後1966年に2ndシングル「Younger Girl」、3rdシングル「Mr. Dieingly Sad」が全米チャート・インし、注目されるようになります。そして、1966年8月には今日紹介するデビュー・アルバム『Younger Girl』を発表します。

順調に階段を上がっているように見えたグループですが、実際にはグループ存続の危機を迎えていました。何とメンバー6人のうち、Bob、Don、Jackの3人が相次いで徴兵で軍隊に召集されてしまう事態に陥ったのです。『Younger Girl』のジャケにメンバー5人の写真しかないのも、そういった事情と関係しているのかもしれません。

特にJim Ryanと共にソングライティング面で大きく貢献していたDon Cicconeが居なくなった穴は相当痛かったようです。その後、外部ライターを迎え、何枚かのシングルをリリースしますが大きな成功を収めることなく、シングル「Little Girl」のリリースを最後にレコード会社との契約を終了します。

その後レコード会社を移籍し、新メンバーを迎えてアルバムを2枚リリースしていますが、実質的にはシングル「Little Girl」までがCrittersの歴史と考えて良いのでは?

Jim RyanDon Cicconeという優れたソングライター二人がいたことが魅力のグループであり、その意味で二人が揃ってレコーディングに参加した本作『Younger Girl』こそがCritters本来の姿だと思います。

「Mr. Dieingly Sad」というドリーミーな名曲が収録されているため、どうしてもソフト・ロック名盤という印象が強い本作ですが、ソフト・ロック調の曲以外にもフォーク・ロックあり、ビート・ロックありとバラエティに富んだ内容になっています。

ソフト・ロック好き以外にも、Lovin' Spoonful好き、Beatles好き等多くの人が楽しめる、間口の広い1枚だと思います。

全曲紹介しときやす。

「Younger Girl」
2ndシングルになったのはLovin' Spoonfulのカヴァー(John Sebastian作品)。Lovin' Spoonfulのオリジナルは当ブログでも紹介した『Do You Believe In Magic』に収録されています。デビュー・シングル「Children and Flowers」同様、オリジナル曲で勝負したかったメンバーの意思に反して、プロデューサーArtie Rippがシングル用に本曲のレコーディングを強行しました。そのため、Jim、Jack、Bob、Chrisの4名はレコーディングに参加せず、残ったDon、Kennyにセッション・ミュージシャンを加え、レコーディングが行われた模様です。

個人的にはLovin' Spoonfulのオリジナル自体が好きなので、裏事情があるにせよCrittersヴァージョンも好きです。オリジナルと比較すると、よりソフト&メロウに仕上がっているのがらしいですね。また、同時期にHondellsも本曲をカヴァーしていました。Hondellsヴァージョンはかなりのんびりモードです(笑)
http://www.youtube.com/watch?v=gEFnsdHN5-s

Lovin' Spoonful「Younger Girl」
 http://www.youtube.com/watch?v=b53EbA1NBRk

Hondells「Younger Girl」
 http://www.youtube.com/watch?v=Cig8NNumrQ4

「It Just Won't Be That Way」
Jim Ryanによるオリジナル。小気味良いビート・ロックに仕上がっています。こうした曲を聴くと、Crittersを"ソフト・ロック・グループ"として括ってしまうのは一面的なように思えてきます。

「Gone for Awhile」
Jim Ryan/Don Cicconeによる絶品オリジナル。Beatlesのメロディに惹かれる人であれば絶対に気に入るはず!彼らのメロディ・メイカーとしての才能を存分に堪能できる1曲です。この曲を聴けば、外部ライター作品など不要に思えるのですが...
http://www.youtube.com/watch?v=8h-MTSJibWc

「Children and Flowers」
Crittersの記念すべきデビュー・シングル。The Searchersがヒットさせた「When You Walk In The Room」等で知られる女性シンガー/ソングライターJackie DeShannonの作品です。前述のようにプロデューサーArtie Rippの意向で、この曲がデビュー・シングルに決まったようです。ポップな仕上がりですが少し型にハマりすぎの印象も受けます。

「Everything but Time」
Don Ciccone作による躍動するビート・ロック。この曲もBeatles好きの人は気に入るはず!

「Come Back on a Rainy Day」
Jim Ryan作によるソフト&メロウ・チューン。実にスマートで小粋な仕上がりです。彼らのセンスの良さが光る1曲だと思います。

「Mr. Dieingly Sad」
アルバムのハイライトはこの曲でしょう。3rdシングルにして、ようやくオリジナル曲(Don Ciccone作)で勝負することができました。彼らのソフト&メロウな魅力が最良のかたちで音になっていると思います。素敵なメロディと抜群のヴォーカル&コーラスにウットリです。これぞソフト・ロック・ファンが待ち望んでいた1曲なのでは?
http://www.youtube.com/watch?v=A7sQ-ply8Ho

「I Wear a Silly Grin」
哀愁メロディがグッとくるJim Ryan作。オルガンが哀愁モードを高めてくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=mhKdqiINSio

「Best Love You'll Ever Have」
Chris Darway作品。Jim RyanやDon Cicconeのソフト&メロウな楽曲とは異なるので、アルバムのいいアクセントになっています。ある意味、1966年という時代を最も反映している曲かも?

「Forever or No More」
「He'll Make You Cry」
Jim Ryan作の哀愁フォーク・ロック作品が2曲続きます。こうした哀愁モードにJim Ryanの持ち味があるのかもしれませんね。特に「He'll Make You Cry」がいい出来だと思います。
http://www.youtube.com/watch?v=72jp7iS6sbM

「Blow My Mind」
アルバム中では異質なリラックス・モードの仕上がり(Chris Darway作)。ストレス発散といった感じでしょうか(笑)

オリジナルLPはここまでですが、CDにはアルバム未収録のシングル等8曲がボーナス・トラックとして追加されています。これがなかなかの充実ぶりで、購入者には嬉しい限りです。個人的には「Bad Misunderstanding」「Marryin' Kind of Love」「Don't Let The Rain Fall Down On Me」というシングル3曲と、Martha Reeves & The Vandellasの大ヒット曲「Dancing in the Street」のカヴァーがお気に入りです。あまり紹介されることはありませんが、「Dancing in the Street」のカヴァーは相当カッチョ良いですよ。

「Bad Misunderstanding」
http://www.youtube.com/watch?v=qBidnYqW_bQ

「Marryin' Kind of Love」
http://www.youtube.com/watch?v=1cwElZmrVsE

「Don't Let The Rain Fall Down On Me」
http://www.youtube.com/watch?v=reZzptq9IlM

Crittersを支えたJim RyanDon Cicconeのその後ですが、JimはCarly Simonのサポート・ギタリストとして活躍しました。大ヒット曲「You're So Vain」(1972年)でもJimのギターを聴くことができます。一方のDon CicconeFour Seasonsのベーシストとして迎えられ、大ヒット曲「December 1963 (Oh, What a Night)」(1975年)では Frankie Valliらと共にリード・ヴォーカルをとっています。さらに1990年代にはソロ・アルバムもリリースしています。
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2009年04月20日

Ingela『All These Choices』

シンプル&ナチュラルなスウェディッシュSSWのデビュー作☆Ingela『All These Choices』
オール・ディーズ・チョイシズ
発表年:2009年
ez的ジャンル:スウェディッシュSSW
気分は... :シンプル&ナチュラル

今日はスウェーデン出身のシンガーソングライターIngela(Jansson)のデビュー・アルバム『All These Choices』です。

以前にThe Quiet Nights Orchestra『Chapter One』の記事でも少し触れた、期待の若手シンガーソングライターです。

Ingela Janssonを語るうえで欠かせないのが、Roman Andrenの存在かもしれませんね。本人は迷惑かもしれませんが(笑)

昨年ブレイクした同じスウェーデン出身のキーボード奏者Roman Andrenのアルバム『Juanita』Ingelaは参加しています。本作『All These Choices』でも、そのRoman Andrenがミックスを手掛けています。

ただし、Roman Andren作品のような、思い切りブラジリアン・フュージョンしているサウンドを期待すると、肩透かしを喰うかもしれません。

一部、ブラジリアン・サウンドの曲もありますが、ジャズ、フォークの要素が強いシンプル&ナチュラルなシンガーソングライター・アルバムに仕上がっています。

話が少し逸れますが、スウェーデンと言えば、デザイン先進国として知られています。
IKEA、H&Mといった日本進出で話題になっているスウェーデン企業も、優れたデザインと低価格を同時実現することで成功を収めていますよね。

そんなデザイン力に強みを持つスウェーデン企業を取材したTV番組が昨晩放送されていましたが、いろいろな意味で興味深い内容でした。

単に形がスタイリッシュというのではなく、機能性や使い心地を重視したシンプルなデザインがスウェディッシュ・デザインが特徴といったところでしょうか。

そんなスウェディッシュ・デザインに通じる、シンプル&スタイリッシュな魅力が本作『All These Choices』にも溢れています。

US、UKのシンガーソングライターには無いフレッシュな印象を受ける1枚ですよ!

全曲紹介しときやす。

「When I Just Want You」
オープニングはブラジリアン・フォーキー・チューン。クラブ系の音が好きな人ならば、間違いなく気に入るフォーキー・グルーヴだと思います。途中のエキゾチック&ミステリアスな展開はIngelaの個性かもしれません。
http://www.youtube.com/watch?v=PgmMu-S_4dY

「Don't Give Me Up」
Ingelaのシンプル&ナチュラルな魅力がよく出た1曲。Yael Naim(AppleのCM曲で注目されたフランス出身、イスラエル育ちのSSW)を引き合いに出されることが多いIngelaですが、この曲あたりはそんな雰囲気があるかもしれませんね。

「All These Choices」
タイトル・チューンは憂いを帯びたトラッド・フォーク的な仕上がり。この淡々とした哀愁感が新鮮に聴こえるから不思議です。

「In A Strong Womens Shoes」
本作にRoman Andrenのような音を求める人であれば、一番フィットするのが本曲。僕もなんだかんだ言っても、このブラジリアン・グルーヴが一番のお気に入りです。

「Life Goes On」
ジャズ・テイストもIngelaの持ち味のようです。このスウィンギーな魅力は先日紹介したThe Quiet Nights Orchestraに通じるものがあります。

「Sun Came」
幻想的な雰囲気が魅力の1曲。音数の少なさが実に効果的だと思います。北欧で眺める太陽って幻想的なのかもしれませんね。

「Talking Eyes」
この曲もシンプル&ミステリアス。ジャケ・デザイン同様、余白を味わう曲という印象を受けます。

「Misery Maker」
この曲もYael Naim的な雰囲気の曲ですね。iPodあたりのCMに流れていても違和感ないかもしれませんね(笑)

「Black Pepper Song」
この曲は絶品ですね。アコギの弾き語りでこれだけ独特の雰囲気を出せるあたりにIngelaの才能を感じます。リズム隊やホーン隊が加わり徐々に盛り上がっていく中盤以降の展開もグッド!

「Your Words」
ラストは気だるいジャジー・チューンで締めくくります。美しいピアノと悲しげなホーン隊をバックに歌うIngelaの声を聞いていると、僕にはRickie Lee Jonesの歌声が重なります。

音楽もビジネスもスウェーデンから目が離せませんね。
posted by ez at 04:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 2000年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする