2009年04月08日

The Quiet Nights Orchestra『Chapter One』

The Five Corners Quintetに対するスウェーデンからの回答☆The Quiet Nights Orchestra『Chapter One』
チャプター・ワン
発表年:2009年
ez的ジャンル:北欧系クラブ・ジャズ
気分は... :北欧が面白い...

当ブログでも紹介したRosalia De Souza『D'Improvviso』Annett Louisan『Teilzeithippie』はじめ、今年に入ってから(UK以外の)欧州モノの新譜購入が多くなっています。

きっと僕自身がロック、ソウル/R&B以外の音楽を強く欲しており、そんな嗜好の反映かもしれません。ロック、ソウル/R&Bはもちろん好きですが、もっとスタイリッシュな音楽を欲しているのでしょう。周囲でウケがいいのもクラブジャス/クロスオーヴァー、ジャジーHip-Hop、ブラジル、ラテンだし...

そんな流れで最近よく聴いているのがIngela Jansson『All These Choices』The Quiet Nights Orchestra『Chapter One』という2作品です。共にスウェーデン出身の新人アーティストであり、前述の作品が(世界)デビュー・アルバムとなります。

Ingela Janssonは、昨年ブレイクしたスウェーデン出身のキーボード奏者Roman Andrenの作品にも参加しているシンガーソングライターであり、『All These Choices』ではそのRoman Andrenがミックスを手掛けています。この情報だけで欲しくなる人もいるはず!

そして、もう1組が今日紹介するThe Quiet Nights Orchestraです。
The Quiet Nights Orchestraは、ストックホルムを拠点に活動するトロンボーン奏者Peter Fredrikssonを中心に結成されたアコースティック・ジャズ・バンド。

当初は3管(tb、tp、s)、リズム・セクション(p、b、ds)、パーカッション(per)という7人編成で活動し、『Prologue』、『Chapter One』という2枚の自主制作CDを国内リリースしていました。そして、女性ヴォーカリストSofie Norlingを加えた8人編成へパワーアップし、制作されたのが世界デビュー・アルバムとなる本作『Chapter One』です。

本作におけるメンバーは、Peter Fredriksson(tb)、Jonne Bentlov(tp、fl)、Magnus Dolerud(s)、Philip Neterowicz(key)、Peder Waern(b)、Carl Ottosson(ds)、Jacob Johannesson(per)、Sofie Norling(vo)の8名。

"フィンランドのThe Five Corners Quintetに対するスウェーデンからの回答"

というキャッチコピーで売り出しているようですが、確かにThe Five Corners QuintetNicola Conteあたりがお好きな人であれば、間違いなく気に入る1枚だと思いますよ。

特に、全14曲中7曲でSofie Norlingの女性ヴォーカルが入っており、聴きやすく、メリハリもあります。

基本がストレート・アヘッドな演奏をベースとしたジャズ・バンドというのがいいですね。ベースがしっかりしたメンバーが、21世紀スタイルのモダンなクラブジャスを聴かせてくれるという点にグッときます。

今年のマイベスト10の有力候補となりそうな1枚です。

全曲紹介しときやす。

「Looking East」
オススメその1。オープニングはアフロ・キューバンなラテン・ジャズ。低音ピアノとホーン隊のコントラストがいい感じ。昔ながらのラテン・ジャズに21世紀ジャズならではのスタイリッシュさが加わった感じがいいですね。

「Chapter One」
オススメその2。Sofie Norlingのピュアなヴォーカルが光るモーダルなワルツ・チューン。Sofieの素朴なヴォーカルはジャズ好きのみならず、SSW好きにもグッとくると思います。
http://www.youtube.com/watch?v=cGjMyuaxmf0

「Swell」
オススメその3。アルバムで一番好き!クロスオーヴァー系クラブ・ミュージック好きにはたまらないハウシーなボッサ・ジャズ。エレガントな演奏にSofieのヴォーカルが彩りを添え、トランペット・ソロもキマっています。
http://www.youtube.com/watch?v=SFW3TpvAweU

「The Search」
オススメその4。みんな大好き!軽快なブラジリアン・ジャズ。ブラジリアン・フレイヴァーといっても、しっかりジャズしているところがいいですね。パーカッション・メンバーの存在が光ります。
http://www.youtube.com/watch?v=iR-maHF3JzI

「New Friend」
ストレート・アヘッドな仕上がり。クラブジャズではなく、普通にジャズ・アルバムとしても楽しめます。

「Green Eyes」
Magnus Dolerudのサックスをフィーチャーしたロマンティックなバラード。うまく言えませんが、北欧ならではのロマンティック・ムードが伝わってきます。

「Stockholm」
Sofieのヴォーカル入りのモーダル・チューン。落ち着いた雰囲気が大人の夜を演出してくれそうです。
http://www.youtube.com/watch?v=tmRnEkaB4WE

「The Aggressive」
オススメその5。ラテン・フレイヴァーのファンキー・チューン。60年代ジャズ・ロックに21世紀スタイルのスタイリッシュさが加わった感じですね。

「Sun」
オススメその6。クラブジャズ好きは気に入るであろうジャズ・ボッサ・チューン。タイトルの通り、太陽を光を浴びながら聴きたい1曲ですね。Sofieのヴォーカルも絶好調です。
http://www.youtube.com/watch?v=6_OUOkunSU8

「Helsinki」
オススメその7。アルバムからの先行シングルにもなった1曲。モーダルな中にボッサなスパイスが効いている、センス溢れる仕上がりです。パーカッシヴな感じがいかにも僕好み!
http://www.youtube.com/watch?v=n1-1ts337As

「Fly Me To The Moon」
オススメその8。Frank Sinatra、Anita O'Dayから宇多田ヒカル、椎名林檎まで数多くのアーティストが取り上げている超有名スタンダード・ナンバー(Bart Howard作品)。『新世紀エヴァンゲリオン』のエンディング・テーマとしてもお馴染みですね。

そんな超有名曲をQuiet Nights Orchestraを大胆なアレンジでスタイリッシュに聴かせてくれます。ピアノとSofieのヴォーカルのみのスタンダード然とした出だしから、モーダル・チューンに切り換わる瞬間のスリリングなこと!その後のミステリアスな展開にもウットリです。これぞ21世紀ジャズ!という感じですね。
http://www.youtube.com/watch?v=xCvnLjsWdSo

「The Runner」
オススメその9。クラブジャズDJによって再評価が高まったLars Lystedt Sextetによる演奏のカヴァー(オリジナルはLars Lystedt Sextet『Jazz Under The Midnight Sun』収録、Berndt Egerbladh作品)。クラブジャズ好きには間違いないスリリングな1曲でしょう。
http://www.youtube.com/watch?v=nIE2d6fVdBA

「Quiet Nights」
オススメその10。Sofieのヴォーカルをフィーチャーしたクワイエット・ナイトな1曲。エレガントな雰囲気がいいですね。
http://www.youtube.com/watch?v=bBrzPhuz-pk

「Helsinki(Nils Krogh Reworks)」
オススメその11。日本盤にはボーナストラックとして「Helsinki」のリミックスが収録されています。手掛けるのはスウェディッシュ・クラブジャズの旗手Nils Krogh。当ブログでも彼のデビューアルバム『Disposition』を紹介し、『ezが選ぶ2007年の10枚』に選出したほどお気に入りの1枚でした。そんな彼が手掛けた「Helsinki」のリミックスは、エレガントながらもフロアライクな仕上がりです。さすがですな。

Ingela Jansson『All These Choices』も近々紹介したいと思います。

欧州が面白いと言えば、今日からサッカーのUEFAチャンピオンズリーグ準々決勝ですね。ちょうど今、「マンチェスターU対ポルト」、「ビジャレアル対アーセナル」を同時並行でTV観戦中!

アーセナルに勝ち進んで欲しいですが、ビジャレアルに先制点を奪われ苦戦中...大丈夫かいな?
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2009年04月07日

Ingram『Night Stalkers』

ファミリー・グループによる80年代ファンク佳作☆Ingram『Night Stalkers』
Night Stalkers
発表年:1984年
ez的ジャンル:ファミリー・グループ系アーバン・ファンク
気分は... :ややこしいですな...

今日はIngramが1984年にリリースしたアルバム『Night Stalkers』です。

Ingramは、その名の通りニュージャージー出身のIngramファミリーによる6人組ファンク・グループです。

The Ingram Kingdom名義で『The Ingram Kingdom』(1976年)、Ingram名義では『That's All』(1977年)、『Would You Like to Fly』(1983年)、『Night Stalkers』(1984年)といったアルバムをリリースしています。僕が彼らについて知っているにはこの程度...

Ingramについて、"(有名な男性R&Bシンガー)James Ingramが在籍していたグループ"という情報を見かけることがあるのですが、それって違いますよね?確かに本作のミュージシャンのクレジットにJames Ingramという名前がありますが、同姓同名の別人だと思います。

そもそもJames Ingramはオハイオ出身だし、本作『Night Stalkers』のジャケにも(有名な)James Ingramとおぼしき人物の顔はないし、中身のヴォーカルやサウンドも全然違う感じだし....なんて書きながら僕の勘違いだったらゴメンナサイ!

ちなみに今日紹介する『Night Stalkers』がリリースされた頃のJames Ingramと言えば、前年にPatti Austinとのデュエット「Baby, Come to Me」がヒットし、1stアルバム『It's Your Night』をリリースしています。そして、本作と同じ1984年にはMichael McDonaldとのデュエット「Yah Mo B There」がヒットしています。

Ingramに話を戻すと、本作『Night Stalkers』は80年代らしいエレクトリック/アーバン・ファンク・アルバムに仕上がっています。(僕の好きな)B級感が漂う感じがたまりません。

僕の場合、リアルタイムで聴き逃した分、80年代前半のアーバンなブラコン/ファンクに心トキメクことが多いのですが、本作も昨年ゲットして以来かなりグッときています。この頃のブラコン/ファンクのギラギラした感じに惹かれてしまうのでしょうね。

James Ingramのヒット曲はリアルタイムで聴いていましたが、どうせならばこちらのIngramをリアルタイムで聴きたかったですね。

80年代気分を満喫できる佳作だと思います。

全曲紹介しときやす。

「Night Stalkers」
80年代エレクトリック・ファンクしているオープニング。妖しげなムードが漂う感じが好きです。でもよく考えると、ヤバいタイトルですな...
http://www.youtube.com/watch?v=EbkxCBVcwf4

「With You」
おそらくアルバムで一番人気はこの曲なのでは?アーバン・ナイトな疾走感とパワフルなバリトン・ヴォーカルの組み合わせがグッド!Bob James「Take Me to the Mardi Gras」の有名なブレイク風の音色が響き渡るところも好きです。
http://www.youtube.com/watch?v=epi00gmCni0

「Drivin' Me Crazy」
セクシーなリード・ヴォーカルとそれに絡むコーラスがいい感じのスロウ。サックスの盛り上げ方が80年代らしいですね。

「When You're Hot You're Hot」
ほんのりブラジリアン・フレイヴァーの軽快な打ち込みサウンドが印象的なダンス・チューン。この手の打ち込みサウンドって、"今聴いても全然OK"と"古臭くて全くダメ"が紙一重なのですが、本曲は前者です。
http://www.youtube.com/watch?v=SDBliAPKxc8

「Just For You」
仰々しいイントロが80年代しているロマンティック・モードのスロウ。スロウではこの曲が一番好きですね。
http://www.youtube.com/watch?v=J4ApKsVI6Oo

「I Like IT」
80年代前半らしいダンサブルな打ち込みサウンドがいい感じのアップ・チューン。Michael Jackson「Rock with You」風なところも好きです。
http://www.youtube.com/watch?v=4WMqxi5brE4

「Fantasy」
アコースティック・ギターとトランペットの音色が黄昏モードのスロウ・チューン。

「Hot Body」
ラテン・フレイヴァーのアップ・チューン。アルバムで唯一イマイチな感じがします。

CDにはボーナス・トラックとして、「With You (Extended 12 Inch Mix)」「Girl What's Goin' on (12 Inch Mix)」の2曲が収録されています。前者は人気の「With You」を更に楽しめるお得感があります。後者は本編には未収録の曲ですが、僕好みの軽快かつキャッチーなダンス・チューンです。この曲もお得感がありますね。

個人的には『The Ingram Kingdom 』(1976年)を聴いてみたいですね。

ちなみにJames Ingramは、アルバム単位では殆ど聴いたことがありません。
僕の中でゲスト・シンガー、デュエット・シンガーというイメージが強く、それが彼の作品から僕を遠ざけているのかもしれません。先入観なしに聴かないといけないのでしょうが...
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2009年04月06日

Teenage Filmstars『Star』

超ヤバな世界を聴く?聴かない?☆Teenage Filmstars『Star』
Star
発表年:1992年
ez的ジャンル:鬼才系サイケ/シューゲイザー
気分は... :4月になったけど...

新年度の始まりということで、例年は4月になるとワクワク・モードなのですが、今年はイマイチそういった気分になれません。

今の経済情勢の中で周囲に辛酸をなめた人もおり、それに影響されて自分も複雑な思いなのかもしれません。

定額給付金如きで浮かれている場合ではありませんね...

さて今日はTeenage Filmstarsが1992年にリリースしたアルバム『Star』です。

Teenage Filmstarsはロンドン出身の鬼才Edward Ballによるサイケ/シューゲイザー・ユニット。

Edward Ballは1970年代後半から活動しており、Teenage Filmstarsも最初は1979年に結成され、シングルもリリースしていたようです。その後、Television Personalities、The Times等様々なバンド・ユニットで活躍していましたが、1990年代に入り再びTeenage Filmstarsとしての活動を再開します。

その第一弾アルバムが本作『Star』(1992年)です。
ネットでディスコグラフィ等を見ると、『Lift Off Mit Der Teenage Filmstars(aka Star)』と表記されているものを多く見かけますが、便宜上『Star』で表記しておきます。

ジャケが只者ではない感じを醸し出していますよね。
60年代後半のサイケ作品がお好きな人は期待していまいますよね。

ただし、内容はサイケ・モードは全開ですが、単なる60年代回帰ではありません。当時流行っていたシューゲイザー(ハッピーヴァレー)を採りれた90年代ならではのサウンドに仕上がっています。

シューゲイザーの代表作My Bloody Valentine『Loveless』がお好きな人であれば、気に入るであろう1枚だと思います。しかも、『Loveless』と同じCreation Recordsからのリリースです。巨額の制作費でCreationを経営難に陥れた『Loveless』とは異なり、低予算で制作されたと思いますが(笑)

『Loveless』同様、滅多に聴かないアルバムですが、一度聴いたら超ヤバな世界にずっぽりハマってしまいます。

超ヤバな世界を聴く?聴かない?

全曲紹介しときやす。

「Kiss Me」
まずはこのオープニングにハマってしまうと、本作の虜になるかもしれません。触れてはいけないとわかっていながら、ついつい触れてしまう....倒錯の世界へようこそ!
http://www.youtube.com/watch?v=OnPrdmgwoYQ

「Loving」
僕の一番のお気に入り曲。サイケなジャケのイメージそのままのアシッドな仕上がりです。案外ダンサブルなところもいいですね。本作をゲットする人は、こういった曲を期待していたのでは?
http://www.youtube.com/watch?v=bzuMCuEH-HE

「Inner Space」
内面から徐々に毒されてトリップ・モードになってしまう危ない仕上がり。

「Apple」
哀愁シューゲイザーといった仕上がりですね。アシッド・モード全開で脳ミソがユラユラしてきそうです。

「Flashes」
かなりお気に入りの1曲。サイケ・モードながらもキャッチー&ダンサブルな仕上がりがいい感じ。タブラ風のリズムが僕のツボです。妖しげな女性ヴォーカルも雰囲気を盛り上げてくれます。ロックファン以外にもアピール度高い1曲なのでは?

「Kaleidoscope」
ノイジーながらも、ちゃんとロックしています。個人的にはもうひとヒネりが欲しい気も...

「Vibrations」
ここからの4曲はトリップ・モードでかなり来ちゃってます。決してノーマル・モードの時には聴かないでください(笑)プッツンその1の本曲は、ノイジーなサウンド・コラージュといった感じです。

「Soulful」
プッツンその2。タイトルは全然"ソウルフル"ですが後半は全くソウルフルではありません(笑)。前半はスペイシー、後半はサイコといった雰囲気です。

「Hallucinations」
プッツンその3。ロックというよりもテクノの乗りに近いのでは?

「Moon」
プッツンその4。ノイジー・サウンドの中で、不気味に響くキーボードの音色の美しさに背筋が寒くなります。70年代ハードロック/プログレの形式美に似たものを感じるのが面白いですね。僕の趣味ではありませんが...

今日は気分転換に桜のキレイな所でランチorお茶でもしようっと!
第一候補は中目黒かな...
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2009年04月05日

Wanda De Sah『Softly!』

"ボサノヴァの妖精"がSergio Mendesをバックに制作した2nd☆Wanda De Sah『Softly!』
ソフトリー!
発表年:1965年
ez的ジャンル:"ボサノヴァの妖精"系ボサノヴァ
気分は... :清楚でキュートな感じがたまりません!

今日はかつて"ボサノヴァの妖精"と称されたブラジル人女性シンガーWanda Sa(Wanda De Sah)の2ndアルバム『Softly!』の紹介です。

Wanda Sa(Wanda De Sah)は、1944年リオデジャネイロ、イパネマの生まれ(文字通り"イパネマの娘"の娘ですね)。

偉大なギタリスト/コンポーザーRoberto Menescalにギターを師事していましたが、TV番組に出演したことがきっかけでレコード・デビューのチャンスを得ます。

そして、Roberto Menescalプロデュースで制作されたのが、デビュー・アルバム『Vagamente』(1964年)です。レコーディングでは、Menescalのグループのピアニストであった弱冠20歳のEumir Deodatoがオーケストラの編曲・指揮を手掛けています。

『Vagamente』で注目を浴びたWandaは、「Garota de Ipanema(The Girl from Ipanema)(イパネマの娘)」の大ヒットでで一躍"ボサノヴァの女王"となったAstrud Gilbertoと人気を二分する女性シンガーとなります。後続の女性シンガーへの影響も大きく、Nara LeaoJoyceGal Costaといった、その後のブラジル音楽シーンを牽引することになる女性シンガー達へ大きなインパクトを与えたようです。

さらにWandaへの関心を示したのが、当時アメリカ進出に意欲を見せていたSergio Mendesでした。当時ピアノ・トリオで活動していたMendesは、アメリカで成功するためには女性シンガーの存在が不可欠と考え、そこで白羽の矢を立てたのがWandaでした。こうしてWandaを迎えて制作されたアルバムが『Brasil'65』です。この作品でWandaは"Wanda De Sah"の名で大きくフィーチャーされます。

レコード会社のWandaに対する期待は大きく(おそらくSergio Mendesよりも関心を持っていた)、そんな流れで制作された2ndアルバムが『Softly!』(1965年)です(このアルバムのアーティスト表記もWanda De Sah)。しかし、そんな期待に反してSergio Mendes & Brasil '65名義のライブ・アルバム『In Person at El Matador』(1965年)を最後に、Wandaはブラジルへ帰国してしまいます。

その後、Edu Loboと結婚した彼女は70年代には音楽活動から引退してしまいます(Loboとは1982年に離婚)。しかし、1989年に音楽活動を再開し、師匠Roberto Menescalとの共演作『Eu E A Musica』(1995年)、Celia Vazとのとの共演作『Brasileiras』(1996年)、Bossa Tresとの共演作『Wanda Sa & Bossa Tres』(2000年)、『Bossa Do Leblon』(2005年)、再びRoberto Menescalと共演した『Swingueira』(2006年)等の作品をリリースしています。

さて、本作『Softly!』ですが、デビュー作『Vagamente』とセットで手元に置いておきたいアルバムです。

ジャケ写真からして、"ボサノヴァの妖精"と言うイメージがピッタリですよね。
素人っぽいイノセントな雰囲気にグッときます(笑)

中身もジャケの雰囲気そのままの清楚でキュートな歌声が響きわたります。

バックはSergio Mendes(p)、Sebastiano Neto(b)、Chico Batera(ds)、Rosinha de Valenca(g)といったBrasil'65のメンバーが努めています。また、1曲を除きJack Marshall編曲・指揮によるオーケスレーションが施されています。

前述のように、本作はUSマーケットを狙って制作されたものであり、多くは英語で歌われています。その意味ではコアなブラジル音楽ファンにとっては少しビミョーかもしれませんが、逆に親しみやすくボサノヴァ入門アルバムにも向いているのでは?

また、Sergio Mendesファンは、Sergio Mendes & Brasil '66でのブレイク前夜として、本作や『Brasil'65』を聴くと楽しいのでは?

タイトルの通り、まさにソフトリーなボッサ・アルバムを堪能しましょう。

全曲紹介しときやす。

「Ho-Ba-La-La」
Joao Gilberto作品。映画のサントラのような雰囲気がいいですね。夕暮れの海に浮かぶヨットなんて光景が似合いそうな...

「Sweet Happy Life (Samba de Orfeu) 」
映画『Orfeu Negro(黒いオルフェ)』収録曲としてお馴染みの「オルフェのサンバ」(Luiz Bonfa作)のカヴァー。この曲で言えば、約1ヶ月半前に紹介したDaniela Und Annによるロリロリ・モードのガールズ・ソフトロック・カヴァーが最近のお気に入りだったのですが、Wandaヴァージョンは晴れた青空がよく似合う爽快な仕上がりです。

「Quiet Nights (Corcovado) 」
Antonio Carlos Jobimの名曲カヴァー。Astrud Gilbertoも取り上げていますね(アルバム『Getz Au-Go-Gol』収録)。当ブログではJoanie Sommersのキュートな“なんちゃって”ボッサ・カヴァーも紹介しました。WandaヴァージョンはUSマーケットを意識したロマンティックなアレンジがいい感じです。

「Aruanda」
Carlos Lyra/Geraldo Vandrsa作品。アルバムの中でもかなりお気に入りの1曲。奴隷生活を強いられた人々が夢の楽園を思い描く社会派ソングですが、軽やかなテイストで聴かせてくれます。この曲もAstrud Gilbertoが取り上げています(アルバム『The Shadow of Your Smile』収録)。

「The Dreamer」
Antonio Carlos Jobim作品の2曲目(原題「Vivo Sonhando」)。『Vagamente』でも取り上げられていましたね。エレガントなオーケストレーションをバックにムーディーな仕上がりです。まさに夢心地な1曲。3曲続けて、この曲もAstrud Gilbertoが取り上げています(アルバム『The Astrud Gilberto Album』収録)。

「So Danco Samba (Jazz 'N' Samba)」
Antonio Carlos Jobim作品の3曲目。鉄板ボッサ・ソングですよね。ここでは英語ではなく、Vinicius De Moraes作詞によるポルトガル語で歌われています。Wandaのコケティッシュな魅力と曲がマッチしています。この曲で言えば、Sergio Mendes & Brasil '66のヴァージョン(アルバム『Equinox』収録)を聴くことが多いですが、本ヴァージョンの影響を聴き比べてみるのも楽しいかもしれませんね。

「Once I Loved」
Antonio Carlos Jobim作品の4曲目(原題「O Amor em Paz」)。憂いを帯びた哀愁モードの仕上がりです。この曲もAstrud Gilbertoが取り上げています(アルバム『The Astrud Gilberto Album』収録)。

「Who Knows」
ラウンジ系DJに人気の1曲なのだとか。確かにそれも頷けるスタイリッシュな仕上がりですね。

「Tem Do」
「Aruanda」と並ぶ僕のお気に入り曲。Baden Powell作品のカヴァー。この曲のみオーケストラなしです。そのせいか弾け具合が際立って聴こえます。日本人の感性にジャスト・フィットするボッサ・チューンに仕上がっていますよ!

「With Feeling」
ボサノヴァと言うよりもジャズ・スタンダードといった雰囲気の仕上がりです。

「Agua de Beber」
邦題「おいしい水」最後はAntonio Carlos Jobim作品で締め括ります。この曲も鉄板ですね。やはり、こういったボサノヴァらしい曲・アレンジがいいですな。この曲もAstrud Gilbertoヴァージョンと聴き比べると楽しいかもしれませんね(アルバム『The Astrud Gilberto Album』収録)。
http://www.youtube.com/watch?v=8_VK3kNnZtE

恥ずかしながら、復帰後の作品は殆どチェックできていません。
一度きちんとチェックしたいと思っています。

特に師匠Roberto Menescalとの共演作は興味深いですね。
僕が今最も気になるアーティストRosalia De Souzaの2ndアルバム『Brasil Precisa Balancar』(2005年)をMenescalがプロデュースしたことを知り、Menescalへの関心が高まっているもので...
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2009年04月04日

Kool & The Gang『Kool and the Gang』

剥き出しのKool & The Gangの魅力が詰まったデビュー作☆Kool & The Gang『Kool and the Gang』
Kool and the Gang
発表年:1970年
ez的ジャンル:インスト系ファンク
気分は... :テポドン間もなく発射!大丈夫か日本!

疲労がピークに達し、今日は昼まで寝ていました(泣)
そんなお疲れモードなのに昨晩も飲み歩いていたのが良くなかった...

今日はお花見している方も多いのでしょうね。
そう言えば、昨晩の帰りの電車は花見の酔っ払い客だらけでしたね。横にいた酔っ払ってご機嫌モードの姉ちゃんがうるさくて大迷惑でした(笑)

さて、人気ファンク・バンドKool & The Gangの3回目の登場です。

ファンクでも聴いて少し上げモードしないとね。

『Something Special』(1981年)、『Wild and Peaceful』(1973年)に続いて紹介するのは、グループの記念すべきデビュー・アルバム『Kool and the Gang』です。

Kool & The Gangは、デビュー直後のインスト路線、70年代中期のストリート・ファンク路線、70年代後半以降のコンテンポラリー路線とそれぞれの時代によって異なる魅力があるのがいいですね。

僕の場合、どうしてもリアルタイムで聴いた『Ladies Night』(1979年)、『Celebrate!』(1980年)、『Something Special』(1981年)、『As One』(1982年)あたりに愛着があるのですが、ファンク・グループという流れで考えれば、初期、中期の作品が魅力的ですよね。

僕が初期作品を聴くきっかけになったのは、Stetsasonic「The Hip Hop Band」。「The Hip Hop Band」を通じて本作収録の 「Chocolate Buttermilk」 を知り、それまで知らなかった初期Kool & The Gangへの興味が湧いてきたといった感じです。同じようなパターンで初期Kool & The Gangに辿り着いた方は多いのでは?

それ以外にもサンプリング・ネタとしてお馴染みの「Give It Up」「Let the Music Take Your Mind」をはじめ、ご機嫌なファンク・チューンがズラリと並んでいます。

何の加工もされていない、まんま剥き出しのKool & The Gangに触れることができるアルバムだと思います。

全曲紹介しときやす。

「Kool & the Gang」
オープニングは、バンド名をそのままタイトルにしたグルーヴィーなファンク・チューン。いきなりガンガン飛ばしまくってくれます。ヴォーカルがない分、ホーン隊のフレーズが実に印象的です。

「Breeze & Soul」
メロウ・テイストのミディアム・スロウ。タイトルの通り、ブリーズ感を満喫できます。

「Chocolate Buttermilk」
説明不要のクラシック。これを聴いたらアゲアゲ・モードにならないわけにはいきませんな。曲良し、ドラム良し、ホーン良し、全て良し!

前述のように、本曲と言えばStetsasonic「The Hip Hop Band」となりますが、それ以外にMarley Marl feat. Masta Ace「Simon Says」等でもサンプリングされています。

Marley Marl feat. Masta Ace「Simon Says」
 http://www.youtube.com/watch?v=EuNJcrLvOsQ

「Sea of Tranquility」
ロマンティック・ムードの中にも、らしさが光るスロウ・チューン。

「Give It Up」
「Chocolate Buttermilk」と並ぶ有名曲ですね。初期Kool & the Gangのカッチョ良さを存分に堪能できるディープな演奏を楽しめます。

そして何と言ってもサンプリング・ネタとして定番のドラムブレイクですよね。ホーン・ネタも含めて多くのアーティストがサンプリングしています。

主なところを挙げると、Eric B. & Rakim「Don't Sweat The Technique」、GangStarr「Take a Rest」、Cypress Hill「The Phuncky Feel One」A Tribe Called Quest「Scenario (Young Nation Mix) 」、Beastie Boys「Professor Booty」、Amerie「Hate 2 Love U」等です。

Eric B. & Rakim「Don't Sweat The Technique」
 http://www.youtube.com/watch?v=HpaylLOq6gE

GangStarr「Take a Rest」
 http://www.youtube.com/watch?v=NLmmbk3ZJuE

Cypress Hill「The Phuncky Feel One」
 http://www.youtube.com/watch?v=jzvLMpEBMH0

Beastie Boys「Professor Booty」
 http://www.youtube.com/watch?v=XxOG2NE2gmU

「Since I Lost My Baby」
Temptationsによる1965年のヒット曲カヴァー(Smokey Robinson作品)。「Give It Up」の後に聴くと和みます(笑)。

「Kool's Back Again」
この曲もファンク好きにはたまらない1曲。この曲を聴くと、Funk, Inc.「Kool Is Back」を聴かずにはいられません(笑)

「Gang's Back Again」
「Kool's Back Again」のPart.2といった感じのダメ押しの演奏です。

「Raw Hamburger」
ソウルフルな雰囲気がいい感じですね。後半にメリーさんの羊が聴こえてくるのが楽しいです。

「Let the Music Take Your Mind」
個人的には一番のお気に入り。心も体もファンキー・モード全開にしてくれます。イントロの畳み掛けるようなホーン隊のカッチョ良さがたまりません。途中のベース&ギターの絡みもサイコー!

Grant Greenがカヴァーしていますね(アルバム『Alive!』収録)。 Ice Cube「AmeriKKKa's Most Wanted」、Ice-T「Freedom of Speech」、Ultramagnetic MC's「MC Champion」等のサンプリング・ネタにもなっています。

Ice Cube「AmeriKKKa's Most Wanted」
 http://www.youtube.com/watch?v=6dNPsXwLlK8

Ice-T「Freedom of Speech」
 http://www.youtube.com/watch?v=NtUJ-n9Al0k

Ultramagnetic MC's「MC Champion」
 http://www.youtube.com/watch?v=BQDcQ5aePWM

間もなくテポドンが発射みたいですね。
呑気に構えていて平気なのかなぁ???

それより疲れているから、また寝ようっと...
posted by ez at 16:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする