2009年05月25日

Terry Callier『What Color Is Love』

スケール感を増したCadetからの2枚目☆Terry Callier『What Color Is Love』
ホワット・カラー・イズ・ラヴ
発表年:1973年
ez的ジャンル:ニューソウル系黒人シンガー・ソングライター
気分は... :深い慈愛が...

今日はフォーキーなソウルを聴きたい気分...ということでTerry Callier『What Color Is Love』(1973年)をセレクト。

90年代の再評価以降、世代を超えた支持を集める黒人シンガー・ソングライターTerry Callierの紹介は、『Occasional Rain』(1972年)に続き2回目となります。

やはり、Cadetからリリースされた『Occasional Rain』(1972年)、『What Color Is Love』(1973年)、『I Just Cant Help Myself』(1974年)の3枚は、いつ聴いてもジャズとフォークとソウルを見事に融合した傑作という印象です。

この独特のクロスーヴァー感覚があるからこそ、今聴いても鮮度が高く、若いリスナーの支持も高いのでしょうね。僕がTerry Callierに惹かれるのもこの部分だと思います。

本作『What Color Is Love』は、前作『Occasional Rain』同様Charles Stepneyがプロデュースしていますが、レコーディング参加メンバーも増えて、前作以上にスケール感の大きな仕上がりになっています。このあたりはCharles Stepneyの手腕に拠るところが大きいのでしょう。

一般的には「You Goin' Miss Your Candyman」「Dancing Girl」の2曲が人気だと思いますが、それ以外の曲もいい曲が揃っており、聴きどころ満載の1枚になっています。

いつ聴いてもTerry Callierの歌には"深い慈愛"を感じます。

全曲紹介しときやす。

「Dancing Girl」
「You Goin' Miss Your Candyman」と並ぶ人気曲。メランコリック&スピリチュアル&ドラマティックな仕上がりに大感動です。1曲でフォーク、ジャズ、ソウルを全て堪能できる密度の濃さです。アレンジの素晴らしさが際立ちますね。
http://www.youtube.com/watch?v=Evi0zHjssS4

「What Color Is Love」
タイトル曲は、美しさと憂いを帯びた哀愁ヴォーカル&メロディにグッときます。
http://www.youtube.com/watch?v=ozaLAy0XKeY

「You Goin' Miss Your Candyman」
おそらくアルバムで一番の人気曲でしょうね。オールド・ファンからフリーソウル世代の若いリスナーまでを虜にするスピリチュアルなフォーキー・グルーヴです。Terryの熱唱を支えるファンキーなベースラインとパーカッシヴなリズム隊が織り成すグルーヴ感がサイコー!
http://www.youtube.com/watch?v=HY2VfzBWKXM

90年代Acid Jazz/Hip-Hopファンの方は、MC SolaarをフューチャーしたUrban Speciesの名曲「Listen」ネタとして聴いているかもしれませんね。当ブログでも紹介したアルバム『Listen』に収録されているので、ぜひチェックしてみてください。。

Urban Species feat.MC Solaar「Listen」
 http://www.youtube.com/watch?v=2u9f0xLSyV8

「Just as Long as We're in Love」
Dellsのシングル曲にもなった感動バラード。個人的には「You Goin' Miss Your Candyman」に次いでグッときます。とにかく曲が素晴らしいですね。壮大なオーケストレーションも感動を増幅してくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=ORncqAvMB8M

「Ho Tsing Mee (A Song of the Sun)」
大編成レコーディングの長所を生かしたスケール感の大きな1曲。 このあたりはさすがにCharles Stepneyですな。

「I'd Rather Be with You」
この曲も大好き!初めて聴いたのに懐かしさが込み上げてくるフォーキー・グルーヴ。この曲もDellsが取り上げています。
http://www.youtube.com/watch?v=X8Ufi80zi54

「You Don't Care」
ラストはエンディングに相応しい感動バラード。感動ドラマのエンディング曲のようですな。

ジャケだけ観ると夏のイメージを抱くかもしれませんが、個人的には梅雨の時期にTerry Callierの歌を聴きたくなります。
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2009年05月24日

Pseudo Slang『We'll Keep Looking』

アングラ・ジャジーHip-Hopファン注目の1枚☆Pseudo Slang『We'll Keep Looking』
We'll Keep Looking
発表年:2009年
ez的ジャンル:アングラ・ジャジーHip-Hop
気分は... :!ジャジーよりもジャズ!

今回はアングラ・ジャジーHip-Hopファン注目の新作、Pseudo Slang『We'll Keep Looking』です。

本作をゲットしてから約1ヶ月が経ちますが、Kero One『Early Believers』と並んでアングラHip-Hopのヘビロテになっています。

Pseudo Slangは、MCのEmcee SickとプロデューサーのTone Atlasの2人からなるニューヨーク・バッファロー出身のHip-Hopユニット。

2004年にセルフ・リリースした『Catalogue』は、1994年から2004年かけてレコーディングされた作品ということらしいので、かなり長いキャリアを誇る二人なんですね。

2006年にはミニ・アルバム『Thank God Its Not Another Mixtape』をリリースし、評価を高めていきます。そして2009年、満を持してリリースしたデビュー・アルバムが本作『We'll Keep Looking』です。

Sound ProvidersJazz Liberatorz以来の衝撃!!」

といった類のコピーで説明されることが多い彼らですが、確かにSound ProvidersJazz Liberatorz等のアングラ・ジャジーHip-Hopがお好きな人であれば、間違いなく気に入る内容だと思います。

"ジャジーな雰囲気のHop-Hop"という以上に"ジャズしているHop-Hop"という印象が強いですね。その意味ではアングラ・ジャジーHip-Hopファンに加えて、クラブジャズ好きの方が聴いてもグッとくる内容だと思います。

国内盤には「Venice」「Saku Koivu Rides Again」の2曲がボーナス・トラックとして追加収録されています。

アングラ・ジャジーHip-Hopの魅力と底力を再認識できる充実作!

全曲紹介しときやす。

「Venice」
オススメその1。エレガントなピアノとループが何とも心地よい"ジャズ"Hip-Hop。ギターとサックスによる味付けのシブさにもグッときます。国内盤ボーナス・トラック1曲目。

「Saku Koivu Rides Again」
ブラシ・ドラムのトラックがシブすぎ!真夜中に静かに酒でも飲みながら聴きたくなりますな。国内盤ボーナス・トラック2曲目。前述のミニ・アルバム『Thank God Its Not Another Mixtape』にも収録されていました。

「Myth of Web-Slinger」
オススメその2。ピアノHip-Hop好きには相当グッとくる1曲。50年代〜60年代のジャズ・ピアノ・トリオの魅力を上手にHip-Hopチューンへ昇華させているのがサイコー!

「Walkin'」
オススメその3。ウッドベースがスピーディーにグイグイ牽引するトラックがカッチョ良すぎ!擦り具合もグッド!

「Omelette」
オススメその4。「Walkin'」からのつなぎが実にスリリングなピアノHip-Hop。抑え気味の淡々とした感じが好き!

「K.I.M.」
アブストラクトな仕上がり。気分転換の1曲といった感じでしょうか。

「Myterious Lude」
インタールード的な1曲。

「Perfect Beat」
オススメその5。この曲のグルーヴ感は"ジャズ"より"ジャジー"の表現が似合いますね。ギターのループが心地よく響き渡ります。

「Bedouin」
オススメその6。色に例えれば、モノクロ&セピアな仕上がりの曲が多い中で、本曲はカラフルな仕上がりです。

「Out A Touch」
オススメその7。ジャズの小粋な雰囲気を生かしたトラックがグッド!クラブジャズと一緒に聴きたい曲ですね。
http://www.youtube.com/watch?v=87nxDpbSTYE

「Broke & Copasetic」
オススメその8。2006年にシングルとしてリリースしていた曲。Vinia Mojicaの女声ヴォーカルをフィーチャーした哀愁メロウ・チューン。
http://www.youtube.com/watch?v=D9KFIkCXyVU

「Yes Doubt」
オススメその9。ジャジーHip-Hop好きであれば気に入るであろうグルーヴ感に、思わず体が揺れてしまいます。

「Put It On」
「Chill Out $」
インタールード「Put It On」を挟んで「Chill Out $」へ。ジワジワ盛り上がってくる上モノがいい感じです。

「Good Night」
「Ogallala」
オススメその10。インタールード「Good Night」を挟んで「Ogallala」へ。パーカッシヴ&スペイシーなトラックに、ソウルフルな女声ヴォーカルが加わった僕好みの仕上がり。こういった曲も出来るんですね。

Tone AtlasはNick Zero、DJ Cutlerと結成したPseudo Intellectuals名義でも作品をリリースしています。その中からDiana Ross「I'm Coming Out」ネタのスクラッチが聴ける「No Money, Mo' Problems」を紹介しておきますね。Pseudo Slang同様のジャズ・フィーリング溢れるHip-Hopを聴くことができます。

Pseudo Intellectuals「No Money, Mo' Problems」
 http://www.youtube.com/watch?v=wS7-2jcs4Pw
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2009年05月23日

Dusty Springfield『Where Am I Going』

ジャケにグッと来た人はゲットすべし!☆Dusty Springfield『Where Am I Going』
Where Am I Going
発表年:1967年
ez的ジャンル:スウィンギング・ロンドン系女性シンガー
気分は... :ジャケ買い大正解!

今回はスウィンギング・ロンドンのムーヴメントを代表する白人女性シンガーDusty Springfield『Where Am I Going』(1967年)です。

Dusty Springfield(1939-1993年)はロンドン生まれ。1960年に二人の兄とフォーク・トリオThe Springfieldsを結成しますが、1963年にグループを脱退し、ソロ歌手として活動するようになります。ツアーで訪れたアメリカでモータウン・サウンドに感化されたことが彼女を新たな方向へ誘ったようです。

そして1963年にソロ・デビュー・シングル「I Only Want To Be With You(邦題:二人だけのデート)」をリリース。1970年代のBay City Rollersのヒットでも知られるこの曲がUK、USチャート共にTop10に入るヒットとなり、ソウルフルなハスキー・ヴォーカルと共に一躍注目のシンガーとなりました。

「I Only Want To Be With You」
http://www.youtube.com/watch?v=3XQon5NsYVw

以降は「I Just Don't Know What to Do with Myself」(1964年、UKチャート第3位)、「You Don't Have To Say You Love Me」(1966年、UKチャート第1位、USチャート第4位)、「The Look Of Love」(1967年、Hal David/Burt Bacharach作品。映画『007/カジノ・ロワイヤル』主題歌)、「Son Of A Preacher Man」(1969年、UKチャート第3位)等ヒットチャートの常連シンガーとなります。

「The Look Of Love」
http://www.youtube.com/watch?v=a28kY1-s-Vc

「Son Of A Preacher Man」
http://www.youtube.com/watch?v=dp4339EbVn8

1970年代には低迷していましたが、1986年に人気ポップ・ユニットPet Shop Boysが彼女との共演を熱望します。そして、レコーディングされたシングル「What Have I Done To Deserve This?」がUK、USチャート共にTop3に入る大ヒットとなり、彼女は見事に復活を果たしたのでした。

Pet Shop Boys & Dusty Springfield 「What Have I Done To Deserve This?」
http://www.youtube.com/watch?v=Wn9E5i7l-Eg

残念ながら乳癌との闘病の末、1999年に59歳で死去。

死後10年となる現在でも多くファンから支持され、多くの女性シンガーに影響を与えている偉大なシンガーですね。

僕の場合、名前や代表曲は知っているもののアルバムまでは手が出ず...といった状況が長かったですね。そんな中でようやくゲットしたDusty Springfieldのアルバムが本作『Where Am I Going』です。

『A Girl Called Dusty』(1964年)、『Ev'rything's Coming Up Dusty』(1965年)という前2作(UK版)と比較すると、目立ったヒット曲も収録されておらず、商業的には不発に終わった作品です。しかしながら、90年代以降に再評価の高まっているアルバムであり、モロにスウィンギング・ロンドンしているジャケも含めて若いリスナーからも受け入れられている作品なのでは?

僕もやはりジャケに惹かれてゲットした部分が大きいかもしれません(笑)

内容的には、ソウル、ポップス、ジャズ、フォークの世界を自由かつ柔軟に行き来しているような構成です。

バック・ヴォーカルを務めるMadeline BellLesley Duncan、との息もピッタリです。黒人シンガーMadeline Bellは当ブログでも紹介したフリーソウル人気作『This Is One Girl』でお馴染みですね。白人シンガーLesley Duncanもソロ作品をリリースしていますし、Pink Floyd『Dark Side Of The Moon』のバック・コーラスでお聴きの方もいるのでは?

シングル・ヒット曲はありませんが、Dusty Springfieldという一時代を築いた女性シンガーの魅力を存分に堪能できる1枚だと思います。

ジャケにグッと来た人はゲットすべし!

全曲紹介しときやす。

「Bring Him Back」
ノーザン・ソウルしているオープニング。この1曲だけで相当グッとくるはずですよ!パーカッシヴなアレンジがカッコ良すぎ!
http://www.youtube.com/watch?v=36oVw94zMKk

「Don't Let Me Lose This Dream」
Aretha Franklinのカヴァー。『I Never Loved a Man the Way I Love You』や『Aretha in Paris』でArethaヴァージョンを堪能されている方も多いと思いますが、Dustyヴァージョンも親しみやすいソウル・チューンに仕上がっていて大好き!
http://www.youtube.com/watch?v=uHYAPXA2iyk

「I Can't Wait Until I See My Baby's Face」
本作のハイライト。Saint Etienneのヒット曲「Nothing Can Stop Us」(1991年)でサンプリングされたことで、一気にこの曲への注目が集まりました。メロウ・ソウル・サウンドとDustyのハスキー・ヴォーカルの相性バッチリといった感じですね。

本曲はAretha Franklinも歌っています。また、バック・コーラスを務めるMadeline Bellが本作と同じ1967年に本曲をリリースしています(アルバム『Bell's a Poppin'』収録)。MadelineヴァージョンとDustyヴァージョンは、リード・ヴォーカルが異なるだけで殆どトラックは同じなのでは?YouTubeにDustyヴァージョンが無いのでMadelineヴァージョンを紹介しておきます。

Madeline Bell「I Can`t Wait Until I see My Baby`s Face」
 http://www.youtube.com/watch?v=6zNL2Abb_q0

Saint Etienne「Nothing Can Stop Us」
http://www.youtube.com/watch?v=bSuxnF8dOPU

「Take Me for a Little While」
ライナーノーツに書いてある通り、Dusty、Madeline Bell、Lesley Duncanの3人が、まるで黒人ガールズ・グループのように聴こえてしまいます。素晴らしいチームワーク!

「Chained to a Memory」
ロマンティック・バラード。エヴァーグリーンな魅力に溢れています。胸キュンな感じがたまりません。

「Sunny」
Bobby Hebbの1966年のヒット曲のカヴァー。ビッグ・バンドを従えたスウィンギーな仕上がりがサイコー!オリジナル以上に好きです。以前に紹介した北欧ボッサの人気作Birgit Lystager『Birgit Lystager』にも本曲のカヴァーが収録されていますが、おそらくDustyヴァージョンをお手本にしているのでは?
http://www.youtube.com/watch?v=ehy6VjLU8DY

Bobby Hebb「Sunny」
http://www.youtube.com/watch?v=IbUl_E-R91Q

「(They Long to Be) Close to You」
Carpentersの大ヒット曲で知られるHal David/Burt Bacharach作品。驚くべきは本ヴァージョンがCarpentersヴァージョンに3年先んじているという点ですね。それだけでも興味津々な1曲なのでは?
http://www.youtube.com/watch?v=u53zaLpKpxM

「Welcome Home」
エレガントなストリングスを従えたスタンダード風のスロウ。

「Come Back to Me」
かなりお気に入りの高速スウィンギー・チューン。こうしたジャズ・ヴォーカルも難なくこなしてしまうあたりがスゴいですな。
http://www.youtube.com/watch?v=Y0XVwK-y4Sg

「If You Go Away」
一転して、しっとりとした哀愁チューン。雨の午後に聴くとピッタリな感じ!
http://www.youtube.com/watch?v=BCcbrnqSgYw

「Broken Blossoms」
トラディショナルを兄のTom Springfieldがアレンジしたもの。このあたりはSpringfieldsの名残りでしょうか。

「Where Am I Going?」
タイトル曲は1966年のブロードウェイ・ミュージカル『Sweet Charity』挿入歌。ライナーノーツに"イントロがピチカート"と書いてありましたが、確かにそんな雰囲気です。

オリジナルはここまですが、CDには「I've Got a Good Thing」「Don't Forget About Me」「Time After Time」の3曲がボーナス・トラックで収録されています。

「Time After Time」
http://www.youtube.com/watch?v=5PK_ZhXkGxs

Dusty SpringfieldのアルバムはUKとUSでリリースが異なるので気をつけましょう。ちなみに本作はUKリリース盤ですが、本作と同じ1967年にUSでは 『The Look Of Love』 というアルバムがリリースしており、約2/3の曲が本作と被っています。

他のアルバムではメンフィス録音 『Dusty in Memphis』 (1969年)やKenneth Gamble/Leon Huffプロデュースの 『From Dusty... With Love』 (1970年、US盤は 『A Brand New Me』 )あたりも聴いてみたいですね。
posted by ez at 07:19| Comment(5) | TrackBack(0) | 1960年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年05月22日

Jorge Dalto『Chevere』

ひたすら気持ち良い!至福のメロウ・フュージョン☆Jorge Dalto『Chevere』
CHEVERE
発表年:1976年
ez的ジャンル:ブラジリアン・メロウ・フュージョン
気分は... :都会の喧騒を忘れて...

今回はアルゼンチン出身のジャズ・キーボード奏者Jorge Daltoのアルバム『Chevere』(1976年)です。

Jorge Daltoは1948年生まれ。幼少よりピアノを習い始め、10代半ばから本格的に音楽活動をスタートします。70年代に入り渡米し、N.Y.ではTito Puente、Machitoといったラテン系ミュージシャン、アルゼンチン出身のサックス奏者Gato Barbieriらと演奏していました。

名作『Breezin'』へのレコーディング参加を皮切りに、約4年間George Bensonのサポートを務めました。その後も様々なセッションに参加すると同時に、妻Adelaのヴォーカルをフィーチャーしたグループを率いていましたが、癌に蝕まれ1987年に39歳の若さで死去しています。

ソロとしては、『Chevere』(1976年)、『Rendezvous』(1983年)、『New York Nightline』(1984年)、『Urban Oasis』(1985年)等の作品を発表しています。

その中でも初のソロ作となる本作『Chevere』(1976年)は、フュージョン・ファンのみならずクラブ系リスナーからも注目されている作品ですね。今回遂に世界初CD化が実現し、歓喜している方も多いのでは?

前述のGeorge Benson『Breezin'』の前後にレコーディングされた作品であり、そんな流れも汲んだ爽快なメロウ・フュージョン作品となっています。アルゼンチン出身のJorgeですが、全体的にはブラジリアン・フレイヴァーが目立ちます。

レコーディングには、Bernard Purdie(ds)、Rahsan Jemmott(Jerry Jemmott)(b)、Carlos Martin(conga)、Ronnie Foster(syn)、Tom Malone(tb)、Sheldon Powell(ts)、Jerry Dodgion(as、f)、Ernie Royal(tp)、Victor Paz(tp)、Tony Jiminez(per)、Adela(vo)、Ruben Blades(vo)といったメンバーが参加しています。Bernard Purdie、Ronnie Fosterの参加が目を引きますね。個人的には当ブログでも紹介したサルサ歌手Ruben Bladesの参加が興味深いです。

全8曲中、Jorgeのオリジナルが5曲。残り3曲がスタンダードです。

素晴らしすぎるオリジナル「I've Got You On My Mind」「I Only Care For You」の2曲だけでも購入する価値のあるアルバムだと思いますが、それ以外の曲も粒ぞろいです。特に有名スタンダードのフュージョン・カヴァーは新鮮な印象を受けました。

至福のメロウ・フュージョンと呼びたくなる1枚です。

全曲紹介しときやす。

「Stella by Starlight」
「星影のステラ」という邦題でお馴染みのスタンダード(Ned Washington/Victor Young作品)。この曲と言えば、ジャズ・スタンダード然とした演奏をイメージしがちなので、爽快かつスペイシーなフュージョン・カヴァーは実に新鮮です。

「I've Got You On My Mind」
本作のハイライト。DJのミックスCD等でもお馴染みの人気曲ですね。いつ聴いても幸せな気分になれるブラジリアン・フレイヴァーのメロウ・フュージョン。都会の喧騒をしばし忘れてバカンス気分になれる感じがサイコーですね。妻Adelaらの爽快なヴォーカルもグッド!

Hip-Hopファンの方は本曲をモロ使いしたStreet Smartz「Problemz」でお聴きかもしれませんね。

Street Smartz「Problemz」
 http://www.youtube.com/watch?v=uLgLTvopC-U

「For Openers」
ピアノ、フェンダー、シンセと鍵盤楽器の魅力を堪能しまくれるフュージョン・チューン。ホーン隊も大活躍です。

「Dolphin Dance」
Herbie Hancockの名曲をカヴァー。このスタンダードもひたすら心地よいメロウ・フュージョンで聴かせてくれます。

「Time For Some Changes」
かなり僕好みの1曲。長年、ラテン・アーティストのバックを務めたJorgeらしいラテン・フレイヴァーな仕上がりは"サルサ・フュージョン"とでも命名したくなります。

「I Only Care For You」
「I've Got You On My Mind」同様、一瞬にしてバカンス気分にさせてくれる至福のメロウ・チューン。こういう曲を聴きながら、何も考えずボーッと過ごせたらサイコーですね。

「Theme In Berlin」
タイトルからは重々しいですが、疾走するスペイシー・フュージョンです。

「Love For Sale」
ラストはCole Porterのスタンダード。この曲もスタンダード然とした演奏のイメージが強いので、フュージョンとして聴くと実に新鮮です。言われなければ、「Love For Sale」だと気づかないかも?

アルゼンチンの音楽事情については全く明るくないので、機会があれば調べてみたいですね。
posted by ez at 06:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年05月21日

The Folk Implosion『Dare To Be Surprised』

ゆるキャラなジャケもグッド!ローファイなUSオルタナ・ロック!☆The Folk Implosion『Dare To Be Surprised』♪
Dare to Be Surprised
発表年:1997年
ez的ジャンル:ローファイ系オルタナ・ロック
気分は... :ゆるキャラ...

今日はThe Folk Implosionが1997年にリリースした『Dare To Be Surprised』です。

The Folk Implosionは、Lou BarlowJohn Davisの二人によって結成されたUSオルタナ・ロック・ユニット。

Lou Barlowは、The Folk Implosion以外にもDinosaur Jr.Sebadohでの活動で知られるUSインディ/オルタナ・ロックの重要人物ですね。当ブログでもSebadoh『Harmacy』(1996年)を紹介しています。

もう一人のメンバーJohn DavisLou Barlowは80年代後半から交流があり、1993年からThe Folk Implosionとして活動するようになりました。

1993年にUKのレーベルからリリースしたカセット『Walk Through This World with the Folk Implosion』The Folk Implosion名義のデビュー作です。LouにはSebadohでの活動があり、Johnもソロ・アルバムの準備を控えており、当初はその合間のお遊びプロジェクトの色彩が強かったようですが...

その意味では1994年にリリースしたアルバム『Take a Look Inside』(1994年)が本格的なユニットのスタートと考えていいのかもしれませんね。その後、『Dare to Be Surprised』(1997年)、『One Part Lullaby』(1999年)といったアルバムをリリースしています。さらに2003年にはJohnが抜け、代わりのメンバーを補充するかたちでの最新作『The New Folk Implosion』をリリースしています。

ローファイなUSオルタナ・ロックを堪能できるのが魅力のユニットですよね。
ゆるキャラ・ジャケがお気に入りということもあり、僕が最も頻繁に聴く彼らの作品が本作『Dare to Be Surprised』です。

そう言えば、数ヶ月前に20代前半のLou Barlow好きの女性とThe Folk Implosionの話題で盛り上がったことがありました。僕の中では、20代前半の女性がローファイなオルタナ・ロックにハマっているというのは少し意外でしたね。

ゆるい脱力感とスリリングなカッコ良さの同居するオルタナ・ロックを堪能しましょう。ポスト・ロック的な味わいがある曲があるのもグッド!

全曲紹介しときやす。

「Pole Position」
ローファイ感の中にスリリングなロックのカッコ良さがギュッと詰まっている、Folk Implosionの魅力を存分に堪能できるオープニング。シングルにもなりました。メロディ&コーラスもしっかりしているのもグッド!
http://www.youtube.com/watch?v=23XhS8dcnjA

「Wide Web」
陰鬱なスペイシー感が90年代オルタナっぽいのでは?チープなドライブ感がいい感じです。
http://www.youtube.com/watch?v=4uigPOJySqs

「Insinuation」
シングルにもなった「Pole Position」と並ぶハイライト曲。フォーキー感と90年代ロックらしいダークな世界が哀愁メロディ&サウンドに収斂されたFolk Implosionの名に相応しい仕上がりだと思います。
http://www.youtube.com/watch?v=2bugif1Fn2I

「Barricade」
ローファイな脱力感がたまりません。この脱力感もFolk Implosionの魅力ですね。

「That's the Trick」
2分足らずの曲ですが、なかなか聴き応えアリ。波の音を歪んだギターの音色が突き破るイントロがカッチョ良いですな。

「Checking In」
購入当時はこの曲が一番好きだったかも?メランコリックな哀愁メロディがなかなかグッとくる仕上がり。

「Cold Night」
1分半とあっという間ですが、ロック持つカッコ良いドライブ感を堪能できます。ローファイなレコーディングを逆手に取った感じがサイコー!

「Park Dub」
エレクトロニカな雰囲気も漂う実験的なインスト。最も長尺で聴きたいですね。

「Burning Paper」
「(Blank Paper) 」
同じ曲のバージョン違い。ローファイ感たっぷりの仕上がりです。作り込みすぎていないデモ・テープのような魅力がありますね。対比して聴くと楽しめます。

「Ball & Chain」
Janis Joplinでお馴染みのアノ名曲とは違います(笑)。シンプルながらもしっかりロックしています。
http://www.youtube.com/watch?v=A_Id1dMRh10

「Fall into November」
脱力モードながら、メロディ、コーラス、サウンドと結構練られています!大好き!

「Dare to Be Surprised」
タイトル曲はオルタナ・ロックとポスト・ロックがローファイなテイストで融合した侮れない1曲。素材の味そのまま!って感じが好きです!

「River Devotion」
ラストは小粋な哀愁メロディ。Aluminum GroupSea and Cakeあたりと一緒に聴いても全然違和感がないかもしれません。
http://www.youtube.com/watch?v=ClGoyiKRgso

ところでこのジャケに描かれているのは犬?それとも...(笑)
posted by ez at 01:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 1990年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする