2009年06月17日

Tina Turner『Private Dancer』

UKシンセ・ポップとの素敵な出会い!見事なカムバック作☆Tina Turner『Private Dancer』
Private Dancer
発表年:1984年
ez的ジャンル:ダイナマイト系ソウル/ロック・シンガー
気分は... :奇跡のカムバック!

たまにはベタなヒット・アルバムを!ということでTina Turner『Private Dancer』(1984年)です。

Tina Turner(本名:Anna Mae Bullock)は1939年テネシー生まれ。1959年にIke & Tina Turnerを結成し、1976年に解散するまで夫婦デュオとして活躍しました。その後、今日紹介する『Private Dancer』(1984年)で大ブレイクし、ソロ・シンガーとして今日まで活躍しています。

以前にIke & Tina Turnerの記事でも書きましたが、Ikeの麻薬問題や家庭内暴力に悩まされ続けたTinaは、1978年にIkeと正式に離婚します。しかし、Ike & Tina Turner時代の権利は全てIkeが保有するというTinaにはあまりに辛い結末でした。

Ike & Tina Turner時代の曲を全く歌えないという不遇時代を過ごしたTinaですが、彼女を勇気づけたのはRolling Stonesのメンバーはじめとする彼女を慕うUKのミュージシャン達でした。

そんな中、1982年にUKのシンセポップ・ユニットB.E.F.がTinaをフィーチャーしたシングル「Ball of Confusion」(Temptations、1970年のヒット曲カヴァー)をリリースします。

B.E.F.は元Human LeagueのメンバーだったMartyn WareとIan Craig Marshによるユニットであり(Heaven 17の別プロジェクト的な位置づけでしたね)、ソウルの名曲を次々とシンセ・ポップで調理し、一部ファンから高い支持を得ていました。

B.E.F. Feat.Tina Turner「Ball of Confusion」
 http://www.youtube.com/watch?v=lLEH15xb4G0

このコラボをきっかけにMartyn Wareは、Tina復活の第一歩となったシングル「Let's Stay Together」をプロデュースします。さらにUKロック界のプロデューサー、ミュージシャンが中心となり、ロンドンで復活アルバム『Private Dancer』が制作されました。

1984年にリリースされた『Private Dancer』は、皆さんご存知の通り、多数のシングルヒットを生み、アルバムもビッグ・セールスを記録します。さらに1985年のグラミーでは4部門を受賞し、Tinaは奇跡のカムバックを成し遂げたのでした。

僕もリアルタイムでLPを購入し、Tinaのダイナマイト・ヴォーカルに歓喜していた一人です。特に購入当初は「Let's Stay Together」を毎日のように聴いていた記憶があります。

Tina=ソウル・シンガーのイメージが強く、当時はソウル・アルバムを聴いているという感覚だったのですが、基本はソウル・シンガーが歌うポップ/ロック・アルバムですね。特にRupert Hine、Rupert Hine、Terry Britten、John Carter等のUkプロデュース陣によるシンセ・ポップ・サウンドが本作を大きく特徴づけています。Tina自身もソウル・クイーンではなく、ロック・クイーンになることを望んでいたのでしょうね。

今聴くと、このシンセ・ポップ・サウンドが好き/嫌いの別れるところかもしれませんが...
UKロックとTinaが化学反応している作品として聴くと、かなり楽しめると思いますよ!

Tinaのダイナマイト・ヴォーカルはいつ聴いてもサイコー!

全曲紹介しときやす。

「I Might Have Been Queen」
Rupert Hineプロデュースによるドライブ感の効いたオープニング。ロック色の強いこの曲をオープニングに配することで"ロック・クイーン"として第一線に戻ってきたことをアピールしたかったのかもしれませんね。
http://www.youtube.com/watch?v=dxfJ5frqKFc

「What's Love Got to Do With It」
シングルとして全米ポップ・チャート第1位、同R&Bチャート第2位となったキャリア最大のヒット曲。そして、グラミーのBest Female Pop Vocal Performance、Record of the Year、 Song of the Yearに輝いた名曲です。「Let's Stay Together」同様、Tinaの魅力を見事に引き出したシンセ・ポップですね。いつ聴いてもグッとくるものがありますね。
http://www.youtube.com/watch?v=oGpFcHTxjZs

「Show Some Respect」
シンセ・サウンドを効かせたロック・チューン。いかにも80年代の音ですね。Terry Brittenプロデュース。

「I Can't Stand the Rain」
Ann Peebles、お馴染みのヒット曲をカヴァー。当ブログでこの曲のカヴァーを紹介するのは、Ron WoodCassandra WilsonGraham Central Stationに続き4度目になります。Tinaのダイナマイト・ヴォーカルを爆発させるにはいい曲かもしれませんが、この曲に限ってはプロダクションはイマイチかも?Terry Brittenプロデュース。

「Private Dancer」
タイトル曲はMark Knopfler(Dire Straits)の作品です。シングルとして全米ポップ・チャート第7位、同R&Bチャート第3位のヒットとなりました。大人の落ち着きを持ったエレガントなロック・チューンといった仕上がりがグッド!John Carterがプロデュースし、Jeff Beckが見事なギター・ソロを聴かせてくれます。Mel Collinsのサックスもなかなかです。
http://www.youtube.com/watch?v=d4QnalIHlVc

「Let's Stay Together」
Al Green、1972年の大ヒット曲カヴァー。Tina復活の第一歩となったシングルでもあります。前述のようにB.E.F. 、Heaven 17のメンバーMartyn WareがGreg Walshと共にプロデュースしています。またHeaven 17のリードシンガーGlenn Gregoryもバックコーラスで参加しています。

UKシンセ・ポップとダイナマイト・ソウル・シンガーの素敵なコラボは名曲に新たな命を吹き込んでくれました。正直、Al GreenのオリジナルよりもTinaのカヴァーの方が断然好きです。今聴いても全く古さを感じないのはMartyn Wareの手腕でしょうね。B.E.F.も含めてMartyn Wareのセンスの良さは抜群だと思います。
http://www.youtube.com/watch?v=OQwOS9QE-Ow

「Better Be Good to Me」
シングルとして全米ポップ・チャート第5位、同R&Bチャート第6位のヒットとなりました。オリジナルはSpiderというグループが1981年にリリースしています。ソングライティングはMike Chapman & Nicky Chinnの売れっ子コンビと、Spiderのメンバーであり、売れっ子ソングライターでもあるHolly Knightの共作です。

ここではRupert Hineがプロデュースし、そのRupertのプロデュースでブレイクしたThe FixxのCy Curninがバックコーラスで参加しています。良くも悪くもRupertらしいシンセ・ポップに仕上がっています。また本曲でTinaはグラミーのBest Female Rock Vocal Performanceを受賞しました。
http://www.youtube.com/watch?v=9Rvxb-J-fJs

「Steel Claw」
ハイスピードで突っ走るロック・チューン。ベタな感じですがTinaのキャラに良くマッチした仕上がりでかなり好きです。John Carterがプロデュースし、Jeff Beckが「Private Dancer」に続き、カッチョ良いギターソロを聴かせてくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=wGnPrlqGPlk

「Help!」
ご存知Beatlesの大ヒット曲をカヴァー。シングルにもなりました。プロデュースはJoe Sample & Wilton Felder & Ndugu Chancler。ギターでDavid T. Walkerも参加しています。このメンツからも想像できるように、アルバムの中でも異質のソウルフルな仕上がりになっています。

「1984」
エンディングはDavid Bowieのカヴァー。1984年に「1984」をカヴァーという安直なセレクトという気もしますが(笑)。Martyn Ware & Greg Walshプロデュース。
http://www.youtube.com/watch?v=7G7miUs83Yo

僕が持っているのはUK盤ですが、US盤は「Help」が未収録で曲順やジャケ写真も異なります。また、最近のCD(Centenary Edition)にはボーナス・トラックが7曲追加されています。

本作のようなシンセ・ポップとソウルの融合にグッとくる方は前述のB.E.F.あたりもオススメです。『Music Of Quality And Distinction Vol.1』(1982年)、『Music Of Quality And Distinction Vol.2』(1991年)という2枚のアルバムをリリースしています。個人的には今でもVol.2を愛聴しています。

ちなみにVol.2でTinaは「A Change Is Gonna Come」を歌っています。それ以外にVol.2はChaka KhanLalah Hathaway、Tashan、Mavis Staples、Billy Presyon、Green Gartside(Scritti Politti)、Terence Trent D'Arbyらがヴォーカルでフィーチャーされています。

ただし、現在は入手困難なようですが(泣)
posted by ez at 03:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 1980年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする