2009年07月14日

Van Morrison『A Period Of Transition』

約3年の沈黙を破った、アーシー&ブルージー&ファンキーな快作☆Van Morrison『A Period Of Transition』
A Period of Transition
発表年:1977年
ez的ジャンル:ニューオリンズ系ファンキー・ロック
気分は... :酔いどれ気分で....

男が惚れる男性シンガーVan Morrisonの5回目の登場です。

これまで当ブログで紹介してきたVan Morrison作品は以下の4枚(発売年順)。

 『Astral Weeks』(1968年)
 『Tupelo Honey』(1971年)
 『Saint Dominic's Preview』(1972年)
 『Avalon Sunset』(1989年)

5枚目の紹介となるのは、『A Period Of Transition』(1977年)です。

『A Period Of Transition』は、前作『Veedon Fleece』(1974年)から約3年という異例の沈黙期間を保っていたVan Morrisonが、その沈黙を破ってリリースしたアルバムです。そのあたりはアルバム・タイトルにも反映されています。沈黙の背景には、妻Janetとの離婚、ヒット曲を求めるレコード会社との軋轢など音楽創作に集中できる環境では無かったことがあるようですね。

本作では、ニューオリンズを代表するミュージシャンである、お馴染みDr. Johnを共同プロデューサーに迎えています。

レコーディング・メンバーも一新し、Dr. John(Mac Rebennack)(p、el-p、g)以下、Marlo Henderson(g)、Reggie McBride(b)、Ollie E. Brown(ds)、Jerry Jumonville(ts、as)、Joel Peskin(ba)、Mark Underwood(tp)という名うてのミュージシャンが集いました。特に、Reggie McBride(b)とOllie E. Brown(ds)のファンキーなリズム隊が本作の魅力アップに大きく貢献していると思います。

内容としては、南部サウンド、ニューオリンズ・サウンドを反映した、アーシー&ブルージー&ファンキーな仕上がりです。きっと、Little Featあたりがお好きな人は気に入る作品なのでは?

それにしても、本作がアメリカではなく、イギリス録音というのが意外ですね。
このメンツ、サウンドならば、アメリカ南部で録音すればいいのに!なんて素人は思ってしまうのですが...

何故かVan Morrison作品の中では、あまり注目されることがないアルバムですね。本作収録曲をYouTubeやimeemで探したのですが1曲も無かった事実が象徴的かもしれません。

そんなアルバムですが、Dr. Johnとの出会いをきっかけに、Van Morrisonが次なるステージへ進んだ、隠れ名盤という気がします。

Van Morrisonのアルバムを聴くと酒が飲みたくなる僕ですが、本作は他の作品以上に酒が進む、酔いどれ気分の1枚です。

ジャケもいいですね。個人的には『Saint Dominic's Preview』と並び、Morrison作品の中でも一、二を争う格好良さだと思います。

全曲紹介しときやす。

「You Gotta Make It Through the World」
泥臭く、ブルージーかつファンキーな南部サウンドを堪能できるオープニング。メンバー全体がセッションを楽しんでいる感じがサイコーです。前述のReggie McBrideとOllie E. Brownのリズム隊がカッチョ良すぎです。Dr. Johnのエレピもいい味出しています。

「It Fills You Up」
ニューオリンズの香りがプンプンする1曲。酔いどれのヘロヘロ状態だけど、ご機嫌だぜ!って雰囲気のタルさがサイコー!Dr. Johnのピアノも冴えまくり(本作ではギターもプレイ)!ニューオリンズ好きの方はぜひ!

「Eternal Kansas City」
Morrisonのディープなソウル魂を堪能できる1曲。ソウルフルなコーラス隊、ジャズ的なイントロ、Morrisonのヴォーカルを盛り上げるホーン隊など聴きどころ満載の1曲。

「Joyous Sound」
タイトルの通り、陽気なヴォーカル&サウンドが聴けます。こういった楽曲を歌うこと自体、Morrisonの復調を印象づけてくれます。

「Flamingos Fly」
一瞬、「Crazy Love」を思わせるイントロにゾクっとするファンキー・チューン。気負わず、リラックスしたMorrisonのヴォーカルを堪能できます。

「Heavy Connection」
個人的には一番のお気に入り。数あるVan Morrisonソングの中でもマイベスト10に入る感動バラード。これぞVan Morrison!って気がします。聴いていると何か熱いものが胸に込み上げてきます。♪ラララァ・ララララァ〜ラ♪の部分は思わず、一緒に歌ってしまいます。この1曲を聴くことができるだけで、本作は買いだと思います。

「Cold Wind in August」
男の色気が漂うアーシーなバラード。男が惚れる男性シンガーVan Morrisonらしいエンディングです。

Van Morrisonを聴くと、いつでも男気と信念と優しさを同時に感じることができます。
「男気」「信念」「優しさ」、僕自身生きている限り、常に心の中で留め置きたいキーワードですね。
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2009年07月13日

Grace Jones『Slave To The Rhythm』

Trevor Hornの手腕が光る1枚☆Grace Jones『Slave To The Rhythm』
Slave to the Rhythm
発表年:1985年
ez的ジャンル:Trevor Horn流R&B
気分は... :この大口ならば...

モデル出身のクール・ビューティーGrace Jonesの2回目の登場です。

『Nightclubbing 』(1981年)に続き紹介するのは、『Slave to the Rhythm』(1985年)です。

本作『Slave to the Rhythm』では、『Warm Leatherette』(1980年)『Nightclubbing 』(1981年)、『Living My Life』(1982年)と3作続けてプロデュースしてきたALex Sadkinに代わり、Trevor Hornがプロデューサーに起用されています(さらにZTT RecordsのStephen Lipsonがアシスタント・プロデューサーとして参加)。

当時のTrevor Hornと言えば、UK音楽シーンを象徴するトップ・プロデューサーでしたね。自らのグループThe Bugglesによる「Video Killed the Radio Star」(1979年)の大ヒットを皮切りに、Yes復活のきっかけとなった世界的なビッグ・ヒット「Owner of a Lonely Heart」(1983年)、Trevor Hornが立ち上げたZTT Recordsより送り出したFrankie Goes to Hollywoodによるセンセーショナルな大ヒット「Relax」(1983年)などを生み出していました。

そんなTrevor Hornプロデュース作の中でも、今日ベストワークの1つとして評価が高い作品がGrace Jones『Slave To The Rhythm』(1985年)です。

Grace Jonesのアルバムと言うよりは、Grace JonesをフィーチャーしたTrevor Hornのアルバムと言った方が適切かもしれません。

Grace Jonesのアルバムのお楽しみと言えばアルバム・ジャケですが、本作における顔写真の頭部と口腔部を裁断して再構築した、超縦長顔Graceも相当インパクトがありますね。

このアートワークは『Nightclubbing 』『Living My Life』に続きJean Paul Goudeが手掛けています。

アートワーク同様、中身も"Slave To The Rhythm"というマテリアルを、Trevor Hornが一度分解して、それを再構築したような作りになっています。アルバム全体で"Slave To The Rhythm"というテーマの曲を構成している印象ですね。

シングル「Slave To The Rhythm」はGrace Jonesの代表曲であり、クラブ・クラシックとして今日でも人気の高い曲です。

しかし、我々がシングル「Slave To The Rhythm」として聴いている曲に最も近いのは、本作における「Ladies And Gentlemen: Miss Grace Jones」であり、(本作における)「Slave To The Rhythm」ではないので注意しましょう。

そのせいか、通常のアルバムというよりもミニ・アルバムや様々なリミックスが収録された12インチ・シングルを聴いている感覚に近いかもしれません。そのあたりに物足りなさを感じる方もいるかもしれませんが、僕はそんな構成を結構楽しんでいます。

まずはシングル「Slave To The Rhythm」を聴いてみて、それが気に入った人はアルバムも通しで聴いてみて下さい。

シングル「Slave To The Rhythm」
http://www.youtube.com/watch?v=QPgnmmqUym0

リミックス的な発想でコンセプチュアルな作品に仕上げたという点で、なかなかユニークなアルバムではないかと思います。

楽曲単位ではなく、アルバム全体として聴くべき作品であり、各曲のコメントが書きづらいのでが...一応、全曲紹介しときやす。
(オリジナルLPとCDで曲順が異なりますが、オリジナルLPの曲順で紹介します。)

「Jones The Rhythm」
オープニングは直線的なノリで突っ走ります。ジャケの超縦長顔Graceのように、かっ飛んでいます!

「The Fashion Show」
エレガントなイントロから、お馴染みのあのリズムへと展開されます。シングル「Slave To The Rhythm」のインスト・ヴァージョンのような位置づけでしょうか。

「The Frog & The Princess」
テクノ/ニューウェイヴ的な仕上がり。リズムのピコポコ感が印象的です。

「Operattack」
気合いの入った掛け声のコラージュといったところでしょうか。音楽的ではありませんが面白いですね。

「Slave To The Rhythm」
皆さんご存知の「Slave To The Rhythm」とは異なる印象の「Slave To The Rhythm」です。より重厚でドラマティックなTrevor Hornらしいサウンドに仕上がっています。

「The Crossing (ooh the action...) 」
アルバムの中で唯一穏やかな印象を受ける仕上がり。エキゾチック&コズミックです。

「Don't Cry - It's Only They Rhythm」
次の「Ladies And Gentlemen: Miss Grace Jones」を盛り上げるための繋ぎの1曲といった感じです。

「Ladies And Gentlemen: Miss Grace Jones」
皆さんお馴染みのあのリズム&ヴォーカルをようやく堪能できます。このラストで盛り上がるために、それまでの7曲があったのでは?と思われる構成です。

僕自身全くフォローできていませんが、シングル「Slave To The Rhythm」自体にも様々なリミックスが存在します。

本作をiTunesに取り込んだら、オリジナルLPとCDで曲順が異なるせいか、曲名と実際の楽曲が異なっているものがいくつかありました。こういうのって気を付けたいですね。
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2009年07月12日

Cal Tjader『Sounds Out Burt Bacharach』

ラウンジ気分のBacharach作品カヴァー集☆Cal Tjader『Sounds Out Burt Bacharach』
サウンズ・アウト・バート・バカラック(紙ジャケット仕様)
録音年:1968年
ez的ジャンル:ラウンジ系ライト・ジャズ
気分は... :まるで温泉気分!

人気ヴァイブ奏者Cal Tjader(1925-1982年)の2回目の登場です。

『The Prophet』(1968年)に続いて紹介するのは、『Sounds Out Burt Bacharach』(1968年)です。

50年代から70年代まで聴くべき作品が多く、何処から聴くべきか迷うアーティストですが、90年代以降の再評価という点では、前回紹介した『The Prophet』や本作Cal Tjader『Sounds Out Burt Bacharach』のような洒落たラウンジ感覚を堪能できる作品が良いのかもしれません。

本作『Sounds Out Burt Bacharach』は、タイトル通りBurt Bacharach作品のカヴァー集です。お馴染みのBacharach作品をCal Tjaderの魅惑のヴァイヴを中心としたラウンジ感覚の小粋なジャズとして堪能できます。

本作は同じくヴァイヴ奏者のGary McFarland、ギタリストのGabor Szaboと立ち上げたSkyeレコードで制作されたものです。

Skyeレコードと言えば、Creed TaylorのCTIほど有名ではありませんが、CTIと同じくポップス/イージーリスニングに接近したジャズ作品のリリースで知られているようです。僕はあまり詳しくありませんが...

本作では、Skyeの総帥であるGary McFarlandがプロデューサーを務め、アレンジも担当しています。McFarland以外にもMike AbeneAlan Foustという2人のアレンジャーが起用されています。このアレンジャー3人体制がサウンドの幅を広げ、本作の魅力アップに大きく貢献している気がします。メランコリックなGary McFarland、ヒップなMike Abene、上品なAlan Foustといった印象ですかね。

参加ミュージシャンはCal Tjader(vib)以下、Mike Melvoin(org)、Jim Keltner(ds)、James Helms(g)、Harvey Newmark(el-p)、Ray Alongee(frh)、Marvin Stamm(flh)、Garnett Brown(tb)、Albert Wagner(vl)、Henri Aubert(vl)、George Marge(reeds)、Jerome Richardson(reeds)、Jerry Dodgion(reeds)、Walter Kane(reeds)、Lew Del Gatto(oboe)、George Berg(bassoon)、Joseph Grinaldi (bassoon)という顔ぶれです。ドラムがJim Keltnerというのが意外ですね。

とにかく今聴いても約40年前の作品とは思えない、モダンな感覚がたまりませんね。

サバービア系リスナーに人気の「What the World Needs Now Is Love」「I Say a Little Prayer」やHip-Hopファン必聴の「Walk on By」など聴き所満載です。

意外とインパクトのある顔アップ・ジャケもお気に入りです。

ゆったり、マッタリ、まるで温泉気分のような心地好さを持った1枚ですよ!

全曲紹介しときやす。

「Moneypenny Goes for Broke」
オリジナルは映画『007/カジノ・ロワイヤル(Casino Royale)』(1967年)の挿入歌です(邦題「マニーペニーは破れかぶれ」)。本ヴァージョンはMike Abeneのアレンジによるマッタリ感がグッドな仕上がり。ラウンジ気分を味わいたい方はぜひ!

「What the World Needs Now Is Love」
邦題「世界は愛を求めてる」。オリジナルはJackie De Shannonのヴァージョンであり、1965年にUSシングル・チャート第7位のヒットとなっています。本ヴァージョンはGary McFarlandの素晴らしいアレンジが光る哀愁メロウ・チューンに仕上がっています。優しく切ないサウンドにグッときます。サバービア・ファンは外せない1曲。

「Anyone Who Had a Heart」
邦題「恋するハート」。オリジナルはUSシングル・チャート第8位となった1963年のDionne Warwickヴァージョン。同年にリリースされたCilla BlackのヴァージョンがUKシングル・チャートNo.1に輝いています。本ヴァージョンは、Alan Foustのアレンジによる映画音楽のような仕上がりがいいですね。

「Don't Make Me Over」
オリジナルは1962年のDionne Warwickヴァージョン。本ヴァージョンは、寂しげなオルガンの音色と、そこに絡むTjaderのヴァイヴの響きが心に刺さります。
http://www.youtube.com/watch?v=xaY0C2Og7ZE

「A Message to Michael」
多分、オリジナルは1964年のLou Johnson「Kentucky Bluebird (Send A Message To Martha)」。後年、男性シンガーが歌う場合には「Message To Martha」、女性シンガーの場合には「Message To Michael」というタイトルが使われるようになりました。本ヴァージョンは全体的に抑えた雰囲気のポップな仕上がりが印象的です。フォーキーなギターの響きもいいですね。(関連のない曲ですが)MJが亡くなった直後だけに、このタイトルは感慨深いですね。

Scientifik「Yeah Daddy」のサンプリング・ネタにもなっています。
Scientifik「Yeah Daddy」
 http://www.youtube.com/watch?v=qwciwLqE3VY

「My Little Red Book」
オリジナルは映画『何かいいことないか仔猫チャン?(What's New Pussycat?)』(1965年)のサントラ収録のManfred Mannヴァージョン。本ヴァージョンは小気味良いテンポがいいですね。60年代ポップス好きの方は気に入る仕上がりなのでは?Tjaderのヴァイヴも快調です!

サントラ『What's New Pussycat?』は改めて当ブログでも紹介したいと思います。

「I Say a Little Prayer」
USシングル・チャート第4位となったDionne Warwickのオリジナル(1967年)、同第10位となったAretha Franklinのヴァージョン(1967年)でお馴染みの名曲。聴き慣れた楽曲だけに、本ヴァージョンではMike Abeneのヒップなアレンジ・センスが実感できるのではと思います。「What the World Needs Now Is Love」同様、サバービア・ファンは必聴の1曲です。

「Walk on By」
USシングル・チャート第6位となったDionne Warwickのオリジナル(1964年)をはじめ、様々なアーティストがカヴァーしている名曲。「I Say a Little Prayer」同様、お馴染みの楽曲だけにアレンジャーのセンスを堪能できます。本ヴァージョンではAlan Foustによる上品なアレンジを堪能できます。
http://www.youtube.com/watch?v=-cOKgZfzURY

前述のようにGang Starr「Full Clip」、当ブログでも紹介したジャジー&メロウHip-Hopの名曲Time Machine「Reststop Sweetheart」といった有名Hip-Hopチューンのサンプリング・ネタにもなっています。

Gang Starr「Full Clip」
 http://www.youtube.com/watch?v=U76Nde6rMTw

Time Machine「Reststop Sweetheart」
 http://www.youtube.com/watch?v=vOPhDMtJSTA

「You'll Never Get to Heaven (If You Break My Heart) 」
オリジナルは1964年のDionne Warwickヴァージョン。 Mike Abeneによるグルーヴ感溢れるアレンジがグッド!若いリスナーの方はこういう曲にグッとくるのでは?

さぁ、今日は都議会選挙の投票日。
都民の義務として、しっかり自分の意思表示を行いたいと思います。
本作のように、ゆったり、心地好く、安心して暮らせる東京にするためには...

来週は政局が相当動きそうですな...音楽ばかり聴いているわけにはいけませんね!
と言いつつ、変わらず記事投稿し続けるつもりですが(笑)
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2009年07月11日

Pleasure P『The Introduction Of Marcus Cooper』

元Pretty Rickyのリード・ヴォーカル、華麗なるソロ・デビュー!☆Pleasure P『The Introduction Of Marcus Cooper』
The Introduction of Marcus Cooper
発表年:2009年
ez的ジャンル:期待の若手男性R&Bシンガー
気分は... :胸に刺さる充実作!

今回は久々に若手男性R&Bシンガーの新作を紹介します。
Pretty Rickyのリード・ヴォーカルPleasure Pの1stソロ・アルバム『The Introduction Of Marcus Cooper』(邦題:マーカス・クーパーの告白)です。

Pleasure P(本名:Marcus Ramone Cooper)は1984年フロリダ生まれのR&Bシンガー。2005-2007年はマイアミ出身のR&B/Hip-HopグループPretty Rickyのメンバーとして、1stアルバム『Bluestars』(2005年)、2ndアルバム『Late Night Special』(2007年)に参加していました。

Pretty Rickyは当ブログでも以前から大人気のアーティストであり、特にデビュー作『Bluestars』の圧倒的な人気ぶりに当時驚いた記憶があります。

僕自身もメロウ・トラック&ヴォーカルとサウスなラップの組み合わせに、相当グッときていたお気に入りグループでした。

昨年秋に発売される予定であったPretty Rickyの3rd『Eighties Babies』が結局リリースされないまま年が明けてしまい、どうなったんだろう?なんて思っていたら、Pleasure Pのソロ・アルバムのニュースを知りました。

僕は全然知りませんでしたが、Pleasure P自身は『Late Night Special』がリリースされた2007年には脱退していたんですね。僕は幻の3rd『Eighties Babies』も、てっきり同じメンバー構成だと思い込んでいました。

今年に入り、自身の作品以外にTeairra Mari、Flo Ridaの作品にフィーチャーされています。正直、Pleasure Pの持ち味が生きたフィーチャリングだとは思いませんが...

Teairra Mari Feat. Pleasure P「Hunt 4 U」
http://www.youtube.com/watch?v=B21YT5L7O7Y

Flo Rida Feat. Pleasure P「Shone」
http://www.youtube.com/watch?v=nZmNBsREpHI

さて、肝心の1stソロ『The Introduction Of Marcus Cooper』ですが、相当イケています。今年聴いた男性R&B新作の中ではCharlie Wilson『Uncle Charlie』と並ぶ充実作だと思います。

変に流行のサウンドに乗るのではなく、ヴォーカリストとしての魅力をしっかり伝える落ち着いた内容になっているのがいいですね。美しいメロディとヴォーカル・プロダクションを重視したミディアム〜スロウ中心の構成は、今時のダンサブルなサウンドに首を傾げたくなるR&Bファンにはかなりグッとくると思います。

僕自身も今年に入って男性R&Bの新作にイマイチな印象を受けるものが多かったのですが、ようやく胸に刺さるiPodヘビロテ級の新作に出会えて、歓喜の雄叫びを上げたくなります(笑)

プロデューサーには、Adonis ShropshireRico LoveDon VitoTankStatic MajorThe Co-Stars等が起用されています。特にRico Loveはソングライティング、バック・ヴォーカルも含めて大活躍です。また、Tankプロデュースの2曲も相当イケてます。さらに、昨年惜しくも亡くなった故Static Majorによるプロデュースは感慨深いものがありますね。

今後の更なる飛躍を予感させる若手男性R&Bシンガーの華麗なるソロ・デビュー!
ぜひご賞味あれ!

全曲紹介しときやす。

「I'm A Beast」
オープニングはAdonis Shropshireプロデュース。サウス・ラッパーYung JocをフィーチャーしたPretty Ricky時代を彷彿させる1曲。意外にグッときます!
http://www.youtube.com/watch?v=GOjJkWYKYDg

「Boyfriend #2」
アルバムからの先行シングルとして全米R&Bチャート第2位となったヒット曲。Rico Loveプロデュースによる哀愁のミディアム・スロウです。美しいメロディと切ない鍵盤の響きと畳み掛けるヴォーカル・プロダクションに相当グッときます。名曲の雰囲気が漂いますな。
http://www.youtube.com/watch?v=jW4D0T5mhCw

「Tender Roni(Handcuffin)」
Don Vitoプロデュース。切々と歌い上げるスロウ。このあたりは今時の若手R&Bシンガーという感じですね。
http://www.youtube.com/watch?v=KT0jWqjK314

「Under」
最新シングル。間もなく自身も新作『All Night』をリリース予定のTankがプロデュースしています。セクシーな美メロ・スロウに仕上がっています。Tankもバック・コーラスで加わるパートはかなり盛り上がります。
http://www.youtube.com/watch?v=gAeHoMny28c

「Let Me」
Rico Loveプロデュースによるスロウ。切ないヴォーカル&サウンドがいいですな。サウンドとファルセット・ヴォイスが同化している感じが好きです。
http://www.youtube.com/watch?v=yj3Dmu_Lvqw

「Gotta Have You」
一番のお気に入り曲。Tankプロデュースの必殺ミッド・チューン。前曲「Let Me」からの流れで聴くと、イントロを聴いた瞬間に相当グッときます。サウンド、ヴォーカル・プロダクション共に完璧!Tankがいい仕事をしてくれました。
http://www.youtube.com/watch?v=vWfkp-D9a0s

「Did You Wrong」
アルバムの先行シングルにもなった感動バラード(1852 Productionsプロデュース)。オールドファンには懐かしい、MFSB等でお馴染みのチェロ奏者Larry Goldがストリングスを手掛けています。その感動的なストリングスをバックに、Pleasure Pが堂々と歌い上げます。
http://www.youtube.com/watch?v=J4U9HpNz__s

「Your Love」
Jack Rabbit Slim/Rico Loveプロデュース。かなりのお気に入り曲。キュートな女性コーラスとの絡みに相当グッとくるミディアム・スロウ。
http://www.youtube.com/watch?v=YzVQ0E7EBmo

「Fire Lovin」
故Static Majorプロデュース。Pretty Rickyも手掛けていただけあって、この曲もどこかPretty Rickyっぽい?あとはバックのサウンドが80年代っぽいですね。ソングライティングにはSean Garrettの名もクレジットされています。
http://www.youtube.com/watch?v=vSyTapyE7Kc

「Birthday Suit」
The Movementプロデュースによるキャッチーなミディアム・スロウ。バックのピコピコ・サウンドが実に心地好く、聴いていると心が温かくなる感じがグッド!
http://www.youtube.com/watch?v=uOGLuxwvO6o

「Illusion」
この曲も故Static Majorプロデュース(こちらもソングライティングにSean Garrett参加)。さり気なく格好良いミッド・チューン。クールに盛り上がっていくのがたまりません!
http://www.youtube.com/watch?v=rJNc08AkSyg

「Dream In The Air」
エンディングはThe Co-Starsプロデュースによる壮大なバラード。個人的にはこういった王道バラードはあまり好みではないのですが...
http://www.youtube.com/watch?v=lFMGH6HEVLg

Pleasure Pが抜けたPretty Rickyも『Eighties Babies』に代わる新作を今年リリースするみたいですね。

YouTubeに『Eighties Babies』収録予定だったシングル「Cuddle Up」と新作に収録予定の「Tipsy」があったので紹介しておきます。

Pretty Ricky feat Butta Creame「Cuddle Up」
 http://www.youtube.com/watch?v=Q935uRwu6qk

Pretty Ricky「Tipsy」
 http://www.youtube.com/watch?v=cGcHIonsAAE
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2009年07月10日

Deodato『Love Island』

心はラブ・アイランドへ...夏らしいフュージョン作品☆Deodato『Love Island』
Love Island
発表年:1978年
ez的ジャンル:軽快&メロウ系ブラジリアン・フュージョン
気分は... :心はラブ・アイランドへ...

昨日は暑かったですね。
思わず夏全開の作品を紹介したくなります。

今回は人気ブラジル人ミュージシャンEumir Deodatoです。

Eumir Deodatoは1943年、リオデジャネイロ生まれのアレンジャー/プロデューサー/コンポーザー/キーボード奏者。10代の頃からブラジル音楽シーンでキャリアをスタートさせ、Marcos Valle、Quarteto Em Cy、Robert Menescal等の作品に参加しています。

1967年、当ブログでも紹介した偉大なブラジル人ギタリストLuiz Bonfaに呼ばれてDeodatoは渡米し、Creed TaylorのCTIとの契約に成功します。アレンジャー/コンダクターとして参加したWes MontgomeryAntonio Carlos Jobim、Milton Nascimento等の作品でCreed Taylorにその才能を認めさせたDeodatoは、自身のリーダー作録音のチャンスを得ます。

こうしてCTIから『Prelude』(1972年)、『Deodato 2』(1973年)等の作品をリリースしています。その後もソロ作品をリリースする傍ら、Earth,Wind & FireKool & the Gang等の作品でアレンジャー/プロデューサーとして活躍しました。90年代にはBjork作品なども手掛けていましたね。昨年(2008年)には来日公演も果たし、健在ぶりを見せてくれました。

当ブログでもプロデューサー、アレンジャー、サンプリング元ネタとしてEumir Deodatoの名を紹介することが多々ありましたが、何故かDeodato自身の作品を紹介する機会を逸していました。

今回、『Deodato 2』『Love Island』(1978年)のどちらにしようか迷いましたが、夏らしい軽快なブラジリアン・フュージョンが聴ける『Love Island』をセレクト!

本作『Love Island』はTommy LiPumaを共同プロデューサーに迎えたワーナー移籍第一弾アルバムです。

レコーディングには、Eumir Deodato(key, vo, perc)以下、Larry Carlton(g)、John Tropea(g)、Ray Gomez(g)、Pops Popwell(b)、Gordon Edwards(b)、Harvey Mason(ds)、Rick Marotta(ds)、Joe Correro(ds)、Jimmy Maelen(per)、Ray Armando(per)、Victor Feldman(per)、Charlie Conrad(per)、Randy Brecker(tp)等が参加しています。また、「Tahitti Hut」 ではAl McKay(g)、Verdine White(b)、Freddie White(ds)、Philip Bailey(per)といったEW&F勢が参加しています。

このメンバーから想像がつくように、夏にピッタリ!軽快&メロウなフュージョン・サウンドを存分に聴かせてくれます。

さぁ、夏らしいフュージョン作品で心はラブ・アイランドへ...

全曲紹介しときやす。

「Area Code 808」
オープニングは灼熱のフュージョン。本作で一番熱く、照り返しが眩しい仕上がりなのでは?聴いているだけで汗ばんできます!

「Whistle Bump」
「San Juan Sunset」と並ぶハイライト曲。本作らしい軽快なジャズ・ファンク・チューンに仕上がっています。Larry Carltonの軽快なギターが真夏へと誘ってくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=mKtAsMFOkIg
(音質悪いです!)

ダンス・クラシックであると同時にMoodymann「Forevernevermore」、Rick Wade「Whistle Bump Track」等のネタにもなっています。
Rick Wade「Whistle Bump Track」
 http://www.youtube.com/watch?v=Uh5fRrhDrY8

「Tahitti Hut」
EW&FのMaurice Whiteとの共作です。前述のように多くのEW&F勢がレコーディングに参加しています。いかにもMaurice White、EW&FらしいメロディとDeodatoらしいアレンジが融合した素晴らしいメロウ・グルーヴに仕上がっています。EW&F好きの人は間違いなく気に入ると思います。出来れば、ヴォーカルはDeodato本人ではなく、Philip Baileyが担当した方がベターだったと思いますが(笑)
http://www.youtube.com/watch?v=6aXayCXvBO4

「San Juan Sunset」
「Whistle Bump」と並ぶハイライト曲。正にサンセットなメロウ・チューンに仕上がっています。都会の喧騒を忘れさせてくれる、バカンス気分を満喫するのにピッタリな1曲。
http://www.youtube.com/watch?v=IoNg6hk_Z8k
(音質悪いです!)

Lord Finesse「Game Plan」、Pudgee「On The Regular」等のサンプリング・ネタにもなっています。
Lord Finesse「Game Plan」
 http://www.youtube.com/watch?v=WQacbtNuPpU

「Love Island」
タイトル曲もバカンス・モードのメロウ・フュージョン。波の効果音も含めてギター、フェンダー・ローズ、パーカッション、ホーン隊と全てが相当ベタなサマー・フュージョンですが、そこに相当グッときます。気分は既に南の島へ...
http://www.youtube.com/watch?v=2Jv6pw9pttU

「Chariot of the Gods」
軽快なフュージョン・チューン。個人的には以前に紹介した新生Full Moon(Larsen-Feiten Band)「The Visitor」と一緒に聴きたくなる1曲です。

「Pina Colada」
邦題「パインのコーラ」は"そんなアホな!"とツッコミ入れたくなりますね(笑)。Pina Colada(ピナコラーダ)は、以前にRupert Holmes「Escape(The Pina Colada Song)」 でも紹介した通り、パイナップル&ココナッツ&ラム酒のカクテルのことです。この邦題は...担当者がダジャレ好きだと思いましょう(笑)。肝心のサウンドの方は、ファンキーなジャズ・ファンクに仕上がっています。

「Take the "A" Train」
お馴染みのスタンダード「A列車で行こう」のカヴァー。それにしてもこの有名曲をこんなに大胆なアレンジで素敵なメロウ・チューンにしてしまうとは脱帽です。ある意味、Deodatoの才能を最も実感できる1曲なのでは?

今晩は遅まきながら、北野武監督の映画『アキレスと亀』を観ながら記事を書いています。久々にグッとくる北野作品ですね。
人生は険しく、辛い...それでも人は楽しく生きることができる...
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