2009年09月06日

Black Star『Mos Def & Talib Kweli are Black Star』

Hip-Hopシーンを再生すべく立ち上がった二つのブラック・スター☆Black Star『Mos Def & Talib Kweli are Black Star』
Black Star
発表年:1998年
ez的ジャンル:ブルックリン系コンシャスHip-Hop
気分は... :立ち上がった二つのブラック・スター☆

今回はBlack StarによるHip-Hop史上に輝く名盤『Mos Def & Talib Kweli are Black Star』(1998年)です。

Black StarMos DefTalib Kweliというブルックリン出身の二人のラッパーによるユニット。二人ともBlack Starのメンバーという肩書き抜きでも、ソロ作や他アーティストとの共演でお馴染みの二人ですね。

Mos Def(1973年生まれ)は、『Black on Both Sides』(1999年)、『The New Danger 』(2004年)、『True Magic』(2006年)、『The Ecstatic 』(2009年)といったソロ・アルバムでもお馴染みですね。今年リリースしたばかりの『The Ecstatic 』は賛否両論分かれていますが、僕はなかなかいいアルバムだと思います。

Mos Def『The Ecstatic』(2009年)
The Ecstatic

Mos Def「Casa Bey」
 http://www.youtube.com/watch?v=95YNQrEVmYg

一方のTalib Kweli(1975年生まれ)も、『Quality』(2002年)、『The Beautiful Struggle』(2004年)、『Eardrum』(2007年)といったソロ・アルバムをリリースしています。当ブログではMadlibとの共演アルバム『Liberation』(2007年)を紹介しています。

Talib Kweli & Madlib「Soul Music」
 http://www.youtube.com/watch?v=W8B7PJSP8eI

そんな二人が組んだBlack Starのデビュー・シングル「Definition」1998年)は、ビーフ(中傷合戦)が横行し、襲撃、発砲事件などにも発展するなど暴力的なイメージが増大していったHip-Hopシーンに対して、Stop The Violence !を強く呼びかけたものであり、シーン再生への強力なメッセージとして多くの関係者、リスナーから賞賛されました。

そんな「Definition」を含むデビュー・アルバム『Mos Def & Talib Kweli are Black Star』も、沈滞ムードのHip-Hopシーンに渇を入れた傑作アルバムに仕上がっています。

プロデュースはHi-Tekを中心にTalib Kweli、Da Beatminerz、J. Rawls、Ge-ology、88-Keysが起用されています。特にHi-Tekの素晴らしい仕事ぶりが光ります。

本作のヒットはBlack Starのみならず、Hip-HopレーベルRawkus Recordsの名も一躍有名にしました。

骨のあるHip-Hopを聴きたい方はぜひお試しを!

全曲紹介しときやす。

「Intro」
傑作アルバムはジャジー&ダークに幕を開けます。

「Astronomy (8th Light) 」
ミステリアスなキーボード・サウンドを聴かせてくれるのはレア・グルーヴ・ファンにはお馴染みのキーボード奏者Weldon Irvineです。そんな浮遊感のあるトラックをバックにTalib Kweli、Mos Defがスムースなフロウを聴かせてくれます。Da Beatminerzプロデュース。
http://www.youtube.com/watch?v=4-hVkorqicw

「Definition」
前述ように本作のハイライト。Boogie Down Productions「The P Is Free」のビートと「Stop The Violence」のメッセージを用いて、当時のHip-Hopシーンへ警鐘を鳴らしたこのヒット・シングルであり、Hip-Hop史に残るクラシック。サウンド的にはラガ・テイストのトラックがクセになります。Hi-Tekプロデュース。
http://www.youtube.com/watch?v=Rx5aVI2zsFE

本曲を気に入った方は元ネタのBoogie Down Productions「The P Is Free」、さらに「The P Is Free」の元ネタYellowman「Zungguzungguguzungguzeng」もチェックすると3倍楽しめると思います。

Boogie Down Productions「Remix For P Is Free」
 http://www.youtube.com/watch?v=GoJeThDfdzk
Yellowman「Zungguzungguguzungguzeng」
 http://www.youtube.com/watch?v=tUjIl4_DYiU

「RE: DEFinition」
「Definition」からの流れにグッときます。彼らがHip-Hopシーン再生の救世主であったことを実感できる力強い1曲ですね。Hi-Tekプロデュース。
http://www.youtube.com/watch?v=fr6SrRQnZv4

「Children's Story」
タイトルの通り、当ブログでも紹介したSlick RickのHip-Hop史に残るクラシック「Children's Story」へのリスペクトを感じる1曲です。Shawn J. Periodプロデュース。
http://www.youtube.com/watch?v=ivzGnHtN8Mk

Slick Rick「Children's Story」
 http://www.youtube.com/watch?v=eRC4ziQpb5I

「Brown Skin Lady」
Common「The People」と同じくGil Scott-Heron & Brian Jackson「We Almost Lost Detroit」ネタのソウルフルなトラックがリリックを際立たせます。J. Rawlsプロデュース。
http://www.youtube.com/watch?v=qTR-9VuwVjo

「B Boys Will B Boys」
B boysへのメッセージ!Ge-ologyによるリズミックなトラックにグッときます。

「K. O. S. (Determination) 」
De La Soulのクラシック「A Roller Skating Jam Named "Saturdays"」等でお馴染みの女性シンガーVinia Mojicaをフィーチャー。Minnie Riperton「Baby, This Love I Have」ネタのメロウ・チューンに仕上がっています。Hi-Tekプロデュース。
http://www.youtube.com/watch?v=gwTHVE_wrco

「Hater Players」
Shawn J. Periodプロデュース。チープ&エレクトリックなトラックが印象的です。

「Yo Yeah」
1分強の短い曲ながらも、J. Rawlsプロデュースのトラックにグッとくきます。Scientifik「Downlo Ho」ネタ。

Scientifik「Downlo Ho」
 http://www.youtube.com/watch?v=0rhGjLCp36M

「Respiration」
「Definition」と並ぶクラシック。Commonをフィーチャーしています。 Mos Def & Talib KweliにCommonが加わるなんて、まさに最強トリオの共演という気がします。言霊のように三人のリリックが突き刺さってきます。Hi-Tekプロデュース。Don Randi「The Fox」ネタ。
http://www.youtube.com/watch?v=a468KFhbhXQ

オリジナル・ヴァージョンと並んで要チェックなのが、Black Star、Commonに加えてThe RootsBlack Thoughtが参加し、Pete RocKがプロデュースを務めたFlying High Remixです。メンツを見ただけで鼻血ブーですね(笑)
Black Star, Common & Black Thought「Respiration (Flying High Remix) 」
 http://www.youtube.com/watch?v=bJ8sz1KLJP4

「Thieves in the Night」
88-Keysプロデュース。ジャジーなトラックをバックを二人の力強いフロウを聴くことができます。
http://www.youtube.com/watch?v=_LQiuQ1xIBM

「Twice Inna Lifetime」
Hip-HopクルーeMCのWordsworth、 Punchlineらをフィーチャー。ダークな雰囲気が漂うトラックが不気味です。Hi-Tekプロデュース。
http://www.youtube.com/watch?v=uukITnI9Dq8

wikiを見ると来年12年ぶりとなるBlack Starの2ndアルバムがリリースされる予定のようですね。本当かなぁ???
posted by ez at 00:02| Comment(2) | TrackBack(0) | 1990年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年09月05日

The Gentle Waves『Swansong For You』

ベルセバの歌姫Isobelのソロ・プロジェクト第2弾☆The Gentle Waves『Swansong For You』
Swansong for You
発表年:2000年
ez的ジャンル:ネオアコ系女性ウィスパー・ヴォーカル
気分は... :グッドタイムの始まり...

今回はThe Gentle Wavesの2ndアルバム『Swansong For You』(2000年)です。

The Gentle Wavesはスコットランドのグラスゴー出身のポップ・バンドBelle & Sebastianのヴォーカル&チェロ奏者であったIsobel Campbell (1976年グラスゴー生まれ)のソロ・プロジェクト。The Gentle Waves名義で『The Green Fields of Foreverland』(1999年)、『Swansong For You』(2000年)という2枚のアルバムをリリースしています。

その後も彼女は(Isobel Campbell名義で)『Amorino』(2000年)、『Milkwhite Sheets』(2000年)という2枚のソロ・アルバムをリリースしています。また、Screaming TreesのヴォーカリストMark Laneganと『Ballad of the Broken Seas』(2006年)、『Sunday at Devil Dirt』(2008年)という2枚の共演アルバムを制作しています。

僕自身は熱烈なBelle & Sebastianファンという訳ではありませんが、当ブログでも紹介した『The Boy With The Arab Strap』(1998年)はよく聴いていた記憶があります。繊細な青春系ネオアコって感じがツボだったのでしょうね。

Belle & Sebastianと言えば、Stuart Murdochの印象が強く、歌姫Isobel Campbellについては単にヴォーカルの女性メンバーくらいにしか思っていなかったので、ソロ・プロジェクトThe Gentle Wavesを聴いて初めてアーティストIsobel Campbellにきちんと向き合った気がします。

特に2ndとなる本作『Swansong For You』(2000年)は、美しくもどこか物悲しいヴォーカル&サウンドにグッとくるアルバムですね。これからの季節にピッタリだと思います。

ネオアコ好きの方は勿論のこと、Isobelのウィスパー・ヴォーカル&ノスタルジー溢れるサウンドにフレンチ・ポップや60年代好きの人にもグッとくると思いますよ!

全曲Isobelのオリジナルです。

全曲紹介しときやす。

「Let the Good Times Begin」
乙女のようなヴォーカルとギター&ストリングスによるエレガントなサウンドがマッチしたThe Gentle Wavesらしいオープニング。まさにグッドタイムの始まりといった感じです。童心にかえることができそう...

「Partner in Crime」
哀愁のフレンチ・ポップといった仕上がりです。Isobelのウィスパー・ヴォーカルにグッときます。

「Falling from Grace」
シングルにもなったポップ・チューン。ベルセバ好き、ネオアコ好きは勿論のこと、ハープシコードの音色に60年代好きもグッとくるエヴァーグリーンな魅力を持った1曲だと思います。
http://www.youtube.com/watch?v=EBvxqPpnBIk

「Loretta Young」
ウィスパー・ヴォーカルの魅力を前面に押し出した1曲。初めて聴くのに懐かしいノスタルジーも魅力です。

「Sisterwoman」
UKインディーズらしいロック・チューン。シンプルながらも60年代風のヒップなテイストに溢れています。今聴くとかなりいいですねぇ!

「Solace for Pain」
お伽の世界のような雰囲気に包まれています。美しさと儚さが表裏一体のような危うさがらしいかも?

「Flood」
美しく懐かしいメロディに癒される1曲。ヴォーカルもサウンドもセピア色って感じですね。

「Pretty Things」
ボッサな仕上がり。Isobelのヴォーカルとボッサ・サウンドの組み合わせが悪いはずありませんよね。カフェ・ミュージックとして最適です。

「There Is No Greater Gold」
美しいハープやトランペットが盛り上げてくれるエレガントなノスタルジー・サウンドにグッときます。

「There Was Magic, Then...」
ラストは哀愁バラード。壮大なストリングスをバックに秋らしい雰囲気に包まれます。

Isobelは2002年にBelle & Sebastianを脱退しています。
posted by ez at 00:52| Comment(2) | TrackBack(0) | 2000年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年09月04日

The Time『What Time Is It?』

ポップで聴き易くなった2ndアルバム☆The Time『What Time Is It?』
What Time Is It?
発表年:1982年
ez的ジャンル:プリンス・ファミリー系ミネアポリス・ファンク
気分は... :今、何時?そうね大体ねぇ〜

今日はプリンス・ファミリーを代表するファンク・グループThe Timeの2ndアルバムThe Time『What Time Is It?』(1982年)です。

The Timeは1981年に結成されたミネアポリスのファンク・バンド。

The Timeの前身グループFlyte Tymeには、Jimmy Jam(key)、Monte Moir(key)、Terry Lewis(b)、Jellybean Johnson(ds)といったメンバーに加えて、後の大物男性R&BシンガーAlexander O'Nealも在籍していました。

しかしながら、Alexを除くメンバーがPrince殿下に引き抜かれ、前述の4人のメンバーにMorris Day(vo)、Jesse Johnson(g)を加えた6人が"The Time"としてデビューすることになります。

『The Time』(1981年)、『What Time Is It?』(1982年)と順調にアルバムをリリースしますが、『What Time Is It?』を最後に、Jam & LewisとしてThe S.O.S. Band等のプロデュース業が忙しくなってきたJimmy JamTerry Lewisが脱退し、Monte Moirも彼ら二人と行動を共にするためグループを抜けます。

脱退した3人の後任として、Mark Cardenas、St. Paul Peterson、Jerry Hubbardを補充し、グループは活動を継続します。そして、Prince殿下が『Purple Rain』で大ブレイクしたのと同時期に3rdアルバム『Ice Cream Castle』をリリース。映画『Purple Rain』でMorris Dayが殿下のライバル役を演じたことも手伝ってThe Timeの知名度も一気に上昇します。

『Ice Cream Castle』リリース後は、メンバーのソロ活動等が目立つようになり、グループは活動休止状態になっています。しかしながら、1990年にオリジナル・メンバー6名にJerome Bentonを加えた7名で活動を再開し、復活アルバム『Pandemonium』をリリースしています。

まるで喜劇王チャップリンのようにおどけたポーズをとるMorris Dayの表情が印象的なアルバムですよね。

僕にとってはリアルタイムで聴いたThe Time作品が本作でした。

『Controversy』(1981年)で殿下と出会い、『1999』(1982年)で殿下と初めて向き合った僕にとっては、同時期に聴いたプリンス・ファミリーThe Time『What Time Is It?』も鮮烈な印象でした。

でも当時はこんなに凄いメンバーが集まっていたなんて知る由もありませんでした。ジャケや後の映画『Purple Rain』の影響をモロに受けていた当時の僕は 「The Time=Morris Dayのワンマン・バンド」 という印象が強かったもので...そんな僕が数年後には熱狂的なJam & Lewisファンになっているんですから笑っちゃいますねぇ!

本作も前作同様Prince殿下(The Starr ★ Companyの変名)がMorris Dayと共にプロデュースしています。

メンバー以外ではプリンス・ファミリーのセクシー・ユニットVanity 6や準メンバーとも呼べるJerome Bentonが参加しています。

キャッチーなミネアポリス・ファンクを楽しみましょう。

全曲紹介しときやす。

「Wild and Loose」
ポップな味わいファンク・チューン。殿下から変態チックな要素を除いて(いい意味で)軽薄にした感じがTimeらしくてグッドなのでは?
http://www.youtube.com/watch?v=5cSB8J7GFqs

「777-9311」
シングルとして全米R&Bチャート第2位となったヒット曲。当時のPrince殿下ファンならばグッドくるアップ・チューン。この妖しげなムードがたまりません。どうってことはないのですがTerry Lewisのベースを聴いているだけで嬉しくなってしまいます。2pac「Whatz Ya Phone #」でサンプリングされています。
http://www.youtube.com/watch?v=ZAIldz08JzA

2pac「Whatz Ya Phone #」
 http://www.youtube.com/watch?v=Pl9lLjR-bYE

「Onedayi'mgonnabesomebody」
『Controversy』の頃の殿下に通じるニューウェイヴ的なノリが印象的です。

「The Walk」
ファン方にとってはこの曲が一番人気なのでは?チープなサウンドが逆に魅力となっている約9分半のファンク・チューン。初期Timeの魅力が凝縮されているのでは?MC Lyte「Everyday」等のサンプリング・ネタにもなっています。
http://www.youtube.com/watch?v=592n1KNWDxg

MC Lyte「Everyday」
 http://www.youtube.com/watch?v=HMS_HmJAhnA

「Gigolos Get Lonely Too」
サンプリング・ネタとしてもお馴染みのメロウなスロウ・チューン。Above the Law「Kalifornia」、K-Dee「Gigalos Get Lonely Too」、Snoop Dogg「D.O.G. 's Get Lonely 2」等で聴くことができます。
http://www.youtube.com/watch?v=w3uJ8UWzfbE

Above the Law「Kalifornia」
 http://www.youtube.com/watch?v=P94AubTGDW4
K-Dee「Gigalos Get Lonely Too」
 http://www.youtube.com/watch?v=JroXmdcxI_A
Snoop Dogg「D.O.G. 's Get Lonely 2」
 http://www.youtube.com/watch?v=N_OgxSskvMk

「I Don't Wanna Leave You」
意外と好きなのがこのファンク・チューン。この時期のエレポップに通じるチープな魅力に溢れています。

そう言えば、我が家のCD棚から『The Time』(1981年)が数年前から行方不明のままです。このまま迷宮入りか...無事見つかったら紹介しますね(笑)
posted by ez at 05:20| Comment(2) | TrackBack(0) | 1980年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年09月03日

Average White Band『Feel No Fret』

アヴェレージ以上の出来栄えのセルフプロデュース作☆Average White Band『Feel No Fret』
Feel No Fret
発表年:1979年
ez的ジャンル:メロウ&ファンキーUK白人ファンク
気分は... :過渡期だからこその面白さ!

UKを代表する白人ファンク・グループAverage White Band(AWB)の久々の登場です。

『Soul Searching』(1976年)、『Cut The Cake』(1975年)に続いて紹介するには、1979年リリースの『Feel No Fret』(1979年)です。

『Cut The Cake』の記事エントリー日が2007年06月19日ですから2年以上紹介し忘れていました(笑)

一方でThe Baker Brothers『Transition Transmission』(2008年)、The Allstars Collective『All About the Music』(2007年)といった作品でのHamish Stuartの活躍ぶりに、AWBの存在の大きさを再認識することができました。

本作『Feel No Fret』(1979年)の最大の特徴は、2ndアルバム『AWB』(1974年)以来タッグを組んできたプロデューサーArif Mardinを起用せずにセルフプロデュースで制作に臨んでいる点です。グループとして何か変化を求めていたのでしょうね。そんな過渡期ならではのAWBを楽しむアルバムだと思います。

本作におけるメンバーは、Hamish Stuart(g、vo、b)、Alan Gorrie(b、vo、g)、Roger Ball(key、syn、as)、Malcolm Duncan(ts)、Steve Ferrone(ds、per)、Onnie McIntyre(g、vo)の6名。それ以外にMichael Brecker(tp)、Randy Brecker(ts)、Lew Delgatto(bs)、Airto Moreira(per)、Luther Vandross(vo)等がゲストとして参加しています。

CDは『Feel No Fret...And More』というかたちで、オリジナルLPの9曲に加えてボーナス・トラック4曲が追加収録されています。これらはベスト盤『Volume VIII』(1980年)に収録されたDavid Fosterプロデュースの新録4曲です。

David Fosterプロデュースの人気作『Shine』(1980年)がお好きな方は、このボートラ目当てに本作を購入したのでは?個人的にはボートラ無しのオリジナル9曲のみで十分楽しめると思いますが...

オリジナルLPとは別の楽しみ方もできる、なかなかお得な1枚です。

全曲紹介しときやす。

「When Will You Be Mine」
シングルにもなったオープニング。いつもながらのファンキーなAWBです。ファンキーながらも爽快モードなのがいいですね。Mark Ronson feat. Daniel Merriweather「She's Got Me」のネタにもなっています。

Mark Ronson feat. Daniel Merriweather「She's Got Me」
 http://www.youtube.com/watch?v=-OD9PAxfmS8

「Please Don't Fall In Love」
僕が好きなメロウ&ファンキーなAWBに出会うことができるアーバン・モードの仕上がりです。

「Walk On By」
Hal David/Burt Bacharachによるお馴染みの名曲。オリジナルDionne Warwick以外にも様々なアーティストがカヴァーしていますね。当ブログでも約2ヶ月前にCal Tjaderのカヴァーを紹介しました。

そんな名曲をここではレゲエ調のファンキー・チューンで聴かせてくれます。数ある本曲のカヴァーの中でも大胆なアレンジが光るユニークなものなのでは?シングルにもなりました。
http://www.youtube.com/watch?v=S3XmVfix2aM

「Feel No Fret」
タイトル曲はファンキーな味わいの中にも洗練された雰囲気が漂います。過渡期のAWBらしい演奏なのでは?この微妙な塩梅が逆に楽しかったりします。

「Stop The Rain」
若いリスナーの方、Hip-Hopファンにとっての目玉はサンプリング・ネタとしてお馴染みの本曲かもしれませんね。Gang Starr「Gotta Get Over」、Pete Rock「Play Dis Only At Night」、Detroit's Most Wanted「Backstabbers」、Leena Conquest「Boundaries」、Willie D「My Alibi」等でサンプリングされています。

サンプリング・ネタ云々を抜きにしても、都会的でクールなファンキー・チューンはなかなかグッドです。

Gang Starr「Gotta Get Over」
 http://www.youtube.com/watch?v=UAu3cuBIGPo
Pete Rock「Play Dis Only At Night」
 http://www.youtube.com/watch?v=739sGJ7w3MI
Detroit's Most Wanted「Backstabbers」
 http://www.youtube.com/watch?v=GazhdFRyYgo
Leena Conquest「Boundaries」
 http://www.youtube.com/watch?v=_bcV4e4fne8
Willie D「My Alibi」
 http://www.youtube.com/watch?v=eyaVP7H7-l8

「Atlantic Avenue」
「Please Don't Fall In Love」、「Ace Of Hearts」と並ぶ僕のお気に入り。よりブラジリアン・フレイヴァーになったEarth Wind & Fire「Fantasy」みたいな印象を受けるのは僕だけしょうか?Airto Moreira等のゲスト・ミュージシャンたちも加わり、盛り上げてくれます。

「Ace Of Hearts」
本曲のみArif Mardinがストリングス・アレンジで参加しています。皮肉にもその巧みなストリングス・アレンジが光る、完成度の高いメロウ・チューンに仕上がっています。この曲を聴くと、Arif Mardinと組んでいた方が良かったのでは?と思ってしまいます...

「Too Late To Cry」
哀愁モードのアーバンなメロウ・チューン。バック・コーラスでLuther Vandrossが参加しています。

「Fire Burning」
ラストはど派手なファンキー・チューン。Brecker兄弟らゲスト参加のホーン隊も盛り上げてくれます。

ここまでがオリジナルの9曲です。

「Kiss Me」
ここからがDavid Fosterプロデュースのボーナス・トラック4曲です。本曲「Kiss Me」は80年代産業ロックと同じ臭いの暑苦しさを感じるので僕的にはNGです。

「Love Won't Get in the Way」
同じDavid Fosterプロデュースでも前曲とは異なるアーバン・メロウな魅力が上手く引き出された仕上がり。この演奏は大好きです。

「Love Gives, Love Takes Away」
AOR路線のABW好きの方は間違いなく気に入る仕上がりだと思います。

「Growing Pains」
AOR路線の壮大なスケールのスロウ。僕には少し仰々しい印象を受けますが...

ということでボーナス・トラック4曲は、僕的には2勝2敗の五分といった印象です。
posted by ez at 00:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年09月02日

Quarteto Em Cy『Quarteto Em Cy』

変幻自在!女性ボサノヴァ・コーラスの最高峰☆Quarteto Em Cy『Quarteto Em Cy』
ペドロ・ペドレイロ
発表年:1966年
ez的ジャンル:女性ボサノヴァ・コーラス
気分は... :変幻自在!

今日は女性コーラス・グループQuarteto Em Cy の3rdアルバム『Quarteto Em Cy』(1966年)です。

Quarteto Em Cyはブラジル出身の女性コーラス・グループ。Cyva(1939年生まれ)、Cybele(1940年生まれ)、Cynara(1945年生まれ)、Cylene(1946年生まれ)というDe Sa Leite四姉妹がオリジナル・メンバーです。

当初は地元のバイーア州で活動していましたが、1960年代前半にリオデジャネイロに進出し、Carlos Lyra、Vinicius de Moraesと親交を持つようになります。Quarteto Em Cyというグループ名を授けたのもこの二人のようです。

1963年に映画『Sol Sobre a Lame』のサントラで初レコーディングを経験し、翌1964年にプロとしての正式デビューを飾っています。

Formaよりデビュー・アルバム『Quarteto Em Cy』Tamba Trioと共演した2ndアルバム『Som Definitivo』をリリースした後にElencoへ移籍します。Elencoへの移籍と同時期に末妹のCyleneが結婚のためにグループを脱退し、Cyregina(Regina Werneck)が新メンバーとして加わっています。

Elencoからは『Quarteto Em Cy』(1966年)、『De Marre De Cy』(1967年)、『Em Cy Maior』(1968年)という3枚のアルバムをリリースしています。また、The Girls From Bahia名義でUSマーケット向けアルバムもリリースするなどグループは最初の黄金期を迎えます。その間、CynaraとCybeleはCynara E Cybeleというデュオを結成し、グループを脱退します。代わりにBimbaSonyaがメンバーに加わりました。

その後70年代に入るとグループは一旦解散状態に陥りますが、1972年にCyva、Cynara、SonyaにDorinha Tapajosを加えたメンバーでグループを再編します。このメンバーによる新生Quarteto Em Cyは70年代に第二の黄金期を迎えますが、1980年にDorinha が白血病のため急逝してしまいます。このためCybeleをメンバーに呼び戻し、CyvaCybeleCynaraSonyaの4人が不動のメンバーとして現在も活動を続けているようです。

長いキャリアを誇るQuarteto Em Cyの歴史を短くまとめるとこんな感じでしょうか。
今回記事を書くにあたって初めて整理したので、誤っている点があるかもしれませんのでご留意願います。

僕の場合、彼女たちの全体像を把握しているとは言い難いのですが、Elencoからの第一作である本作『Quarteto Em Cy』(1966年)からは、変幻自在な女性ボサノヴァ・コーラスという印象を受けます。

ジャケ写真にはCyreginaも含めた再編後のメンバーが写っていますが、全13曲中8曲はCyleneの居たオリジナル・メンバー時の録音のようです。

Oscar Castro-NevesUgo Marottaがアレンジを担当しており、本作の魅力向上に大きく貢献しています。ブラジル音楽ファンはご存知の通り、Oscarは以前に紹介したMario Castro-Nevesの弟です。

Elencoからの三作目『Em Cy Maior』(1968年)あたりと共にQuarteto Em Cyの入門編としては最適な1枚なのでは?

普段ブラジル音楽を聴かない人でも、女性コーラス・グループのアルバムとして十分楽しめると思いますよ。

全曲紹介しときやす。

「Vamos Pranchar」
Paulo Sergio Valle/Marcos Valle作品。エレガントかつダイナミックなストリングスをバックに、ミュージカル映画のようなハツラツとしたコーラスを聴かせてくれます。

「Espere Um Pouco」
Ugo Marotta/Vica作品。これぞボッサ・コーラス!といった美しいハーモニーを聴かせてくれます。

「Canto de Ossanha」
Vinicius de Moraes/Baden Powell作品。当ブログでもお馴染みの曲であり、少し前に紹介したばかりのElis ReginaヴァージョンやTamba 4ヴァージョンを紹介しています。いつ聴いてもスケールの大きな名曲だと思いますが、Quarteto Em Cyヴァージョンも例外ではありません。

「Samba Torto」
Antonio Carlos Jobim作品のカヴァー。エレガントかつチャーミングなアレンジがいいですね。エンディングはキュートな♪ア〜ン♪にグッときます(笑)

「Caminho Do Mar」
Sergio Ricardo作品。哀愁のボッサ・コーラスを聴かせてくれます。

「Segredinho」
Carlos Coquejo/Maria Eugenia作品。Ugo Marottaのアレンジ・センスが光る1曲。僅か1分半の曲ですがもっと長尺で聴きたいですね。

「Amaralina」
Carlos Coquejo/ Francisco de Assis作品。キュートなボッサ・コーラスあり、ピュアなアカペラ・コーラスありとQuarteto Em Cyの魅力を存分に堪能できます。

「Morrer de Amor」
Oscar Castro-Neves/Luverci Fiorini作品。オルガンとギターのみのバックに美しいコーラスを聴かせてくれます。コーラス・グループとしての実力を実感できる仕上がりです。

「Pedro Pedreiro」
Chico Buarque作によるヒット曲。本作のハイライトかもしれませんね。歌の中身はプロテスト・ソングのようですが、曲自体はテンポ良く心地好い仕上がりです。

「Inutil Paisagem」
2曲目のAntonio Carlos Jobim作品カヴァー。当ブログでは以前にTenorio Jr.のヴァージョンを紹介しました。ロマンティックな仕上がりという点ではアルバムで一番かも?

「Ate Londres」
Oscar Castro-Neves作品。若いリスナーが一番グッとくるのは全編スキャットのこのサンバ・グルーヴなのでは?

「Ultimo Canto」
Francis Hime/Rey Guerra作品。ひたすら美しい哀愁のボッサ・コーラスを堪能できます。

「A Banda」
ラストは「Pedro Pedreiro」に続くChico Buarque作品。本アルバムの2ndプレスから追加収録されるようになったらしいです。楽隊の行進風の仕上がりです。

彼女たちのアルバムは未聴のものばかりなので、もっといろんな作品を聴いてみたいですね。
posted by ez at 03:48| Comment(2) | TrackBack(0) | 1960年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする