発表年:1967年
ez的ジャンル:裏Domingo系MPB
気分は... :低音ヴォーカルがたまりません!
今回はEdu LoboがMaria Bethaniaと共演したアルバム『Edu E Bethania』(1967年)です。
Edu Loboは1943年リオ・デ・ジャネイロ生まれのシンガー/ギタリスト/コンポーザー。コンポーザーであった父Fernando Loboの影響もあり、幼少より様々な音楽に親しみながら成長しました。
1964年にミュージカル『Arena Conta Zumbi』のサントラを手掛けた後、1965年にデビュー・アルバム『A Musica De Edu Lobo Por Edu Lobo』をリリース。その後も数々の名曲を生み出し、ブラジル音楽シーンで確固たる地位を確立しました。
本作のもう一人の主役Maria Bethaniaは1946年バイーア州生まれの女性シンガー。彼女の兄はブラジルMPBを代表するアーティストCaetano Velosoです。1965年にデビュー以来、数々のヒットを放ち、実力派シンガーとして存在感を示しています。
長い間、Edu Loboについてはベスト盤のみで済ませていたのですが、オリジナル・アルバムもしっかり聴かないといけませんね。
本作『Edu E Bethania』は『A Musica De Edu Lobo Por Edu Lobo』に続くEduの2ndアルバムです。
当初EduはGal Costaとの共演を希望していたようですが、Gal はCaetano Velosoとの共演作『Domingo』(1967年)をレコーディングしたばかりであったため、断念した模様です。その代わりに起用されたのがCaetanoの妹であるMaria Bethaniaというのが実に興味深いですね。
そのMaria Bethaniaについて、僕が最初に聴いた彼女のアルバムが『Maria』(1988年)だったのですが、最初ジャケの女性がMariaかと勘違いしていました(笑)。その頃は彼女がCaetanoの妹だということも知りませんでしたし...
Maria Bethania『Maria』(1988年)
こうした経緯から、本作『Edu E Bethania』には名作『Domingo』に対する"裏Domingo"といった見方もあるようです。
Edu Lobo(vo、g)、Maria Bethania(vo)を支えるバックは、Dori Caymmi(g)、Dorio Ferreira(Tamba 4)(b)、Edison Machado(ds)が務めています。アレンジは主にLindolpho Gayaが担当し、それ以外はEdu Lobo、Dori Caymmiが担当しています。
名曲「Upa, Neguinho」をはじめ、いい楽曲が揃っています。
EduとMaria Bethaniaの低音ヴォーカルにグッときますよ。
特にMaria Bethaniaのヴォーカルの虜になる方は多いのでは?
全曲紹介しときやす。
「Upa, Neguinho」
オープニングは人気曲「Upa, Neguinho(ウッパ・ネギーニョ)」(EduとGianfrancesco Guarnieriの共作)。Edu Loboの名前は知らなくても本曲は知っているという人もいるのでは?軽快だけど土着的なリズムにグッときます。
http://www.youtube.com/watch?v=as3yHF0cOPw
以前に紹介したElis Reginaのカヴァーも有名ですね(アルバム『Elis Regina in London』収録)。また、クラブ世代の人達はUnited Future Organization(U.F.O)のカヴァー(アルバム『United Future Organization 』収録)をよく聴いたのでは?実は僕もオリジナル以上の頻度で聴いています(笑)
Elis Regina「Upa Neguinho」
http://www.youtube.com/watch?v=Ki0MIqwjfGg
「Cirandeiro」
Maria Bethaniaの低音ヴォーカルが堪能できる哀愁ソング。この寂しげなムードが秋にピッタリなのでは?
「Sinhere」
クールなボッサ・チューン。本作にボッサな雰囲気を期待する人にとっては一番グッとくる曲なのでは?Mariaのヴォーカルとバックが実にマッチしています。
http://www.youtube.com/watch?v=vkWqNTf_O28
「Lua Nova」
EduとTorquato Netoとの共作。地味ながらも味わい深い仕上がりです。
「Candeias」
個人的には「Upa, Neguinho」に次いで好きな曲。落ち着いた雰囲気の大人のボッサ・チューンに仕上がっています。
http://www.youtube.com/watch?v=chfIc65Z3qI
「Boranda」
前作『A Musica De Edu Lobo Por Edu Lobo』のオープニング曲の再演。ここではMaria Bethaniaのヴォーカルを全面にフィーチャーしています。軽快なテンポのオリジナルと比較すると、エモーショナルな仕上がりです。個人的にはMaria Bethaniaのヴォーカルが素晴らしい本ヴァージョンの方が好きです。
Edu Lobo「Boranda」(オリジナル)
http://www.youtube.com/watch?v=gvi-YKdCHkI
「Pra Dizer Adeus」
EduとTorquato Netoとの共作2曲目。サウダージ・ムードたっぷりの哀愁バラードに仕上がっています。この曲も秋に聴くにはピッタリ!Antonio Carlos Jobimと共演した『Edu & Tom』でも再録しています。
「Veleiro」
EduとTorquato Netoとの共作3曲目。ミステリアスなストリングスに続き、活き活きとしたリズムにのったEduの低音ヴォーカルが聴こえてきます。リズムの緩急にグッときます。
「So Me Fez Bem」
EduとVinicius De Moraesの共作。ここではMaria Bethaniaのヴォーカルを全面にフィーチャーしています。Dori Caymmiのギターをバックに歌うMariaのヴォーカルは抜群の雰囲気がありますね。わずか2分強の演奏ですが、もっと長尺で聴きたいですね。Eduは後に自身のヴォーカルによるヴァージョンを再録しています。
Edu Lobo「So Me Fez Bem」(アルバム『Meia-Noite』ヴァージョン)
http://www.youtube.com/watch?v=nBuYtbr7o7Q
「O Tempo E O Rio」
ラストは哀愁モードで楽曲で、思い切りサウダージに浸りましょう。
"裏Domingo"と呼ばれる本作を紹介したからには、正真正銘のCaetano Veloso & Gal Costa『Domingo』(1967年)も近々紹介しますね。
Caetano Veloso & Gal Costa『Domingo』