発表年:1970年
ez的ジャンル:社会メッセージ系ニューソウル
気分は... :PCトラブルでぐったり...
PCの調子は悪く、余計なパワーを使い果たして相当疲れています。
さて今日は1970年にリリースされたニューソウル作品Eugene Mcdaniels『Outlaw』です。
Eugene Mcdaniels(Gene McDaniels)は1935年カンザスシティ生まれの黒人シンガー/ソングライター。
1960年代初めに黒人シンガーGene McDanielsとして、「A Hundred Pounds of Clay」、「Tower of Strength」(Burt Bacharach作品)、「Chip Chip」、「Point of No Return」(Gerry Goffin/Carole King作品)等のヒットを放ちました。
1960年後半からはソングライターとしても活躍するようになり、中でもRoberta FlackのアルバムでMcDaniels作品が数多く取り上げられました。Roberta Flackを世に送り出したジャズ・ピアニストLes McCannが以前からMcDaniels作の「Compared To What」をレパートリーにしていたのが影響しているのだと思います。
数あるMcDaniels作品の中でも、Roberta Flackが1974年に大ヒットさせた「Feel Like Makin' Love」は一世一代の名曲ですね。当ブログでもRobertaのオリジナル以外にMarlena Shaw、D'Angeloのカヴァーを紹介しましたが、それ以外にも数多くのアーティストがカヴァーしています。McDanielsの名を知らずとも、「Feel Like Makin' Love」は知っているという方も多いのでは?
90年代に入ると、Hip-Hopやフリーソウル方面からの再評価が高まり、Eugene Mcdaniels名義でAtlanticからリリースした『Outlaw』(1970年)、『Headless Heroes of the Apocalypse』(1971年)、McDaniels自身の「Feel Like Makin' Love」が収録された『Natural Juices』(1975年)といった70年代の作品が注目されるようになりました。
そんな70年代の作品の中から今回は『Outlaw』(1970年)をセレクトしました。
Eugene名義の作品ならば、『Headless Heroes of the Apocalypse』の方が聴きやすいかもしれません。また、「Jagger The Dagger」、「Headless Heros」、「Freedom Death Dance」、「Supermarket Blues」といったサンプリング・ネタがズラリと並びHip-Hopファンはグッとくるかもしれませんね。
そんな『Headless Heroes of the Apocalypse』と比較すると、アーシー、フォーキー、ブルージーなサウンドが目立つ『Outlaw』は地味なアルバムかもしれません。しかしながら、その分鋭いメッセージが際立つ内容になっています。
プロデュースはRoberta Flack作品のプロデュースでお馴染みのJoel Dorn。バックはEric Weissberg(g)、Hugh McCracken(g)、Mother Hen(p)、Ron Carter(b)、Ray Lucas(ds)、Buck Clarke(per)といったミュージシャンが務めています。 Hugh McCracken、Ron Carterの参加が目を引きますね。
当時のアメリカ社会の混沌とした雰囲気がストレートに伝わってくるアルバムです。
「Feel Like Makin' Love」のイメージとは異なるMcdanielsの魅力に出会えるアルバムだと思います。
全曲紹介しときやす。
「Outlaw」
アーシーでスワンピーなサウンドは、ニューソウルと言うよりもこの時期のStonesやLeon Russellを聴いているかのような錯覚に陥ります。誰の指示も受けずに放浪する女性を歌う歌詞はジャケのイメージとリンクします。
「Sagittarius Red」
♪If white is for true love♪If black is for blue love♪I'll take red♪という歌詞が鋭く突き刺さります。ブルージーなサウンドもグッときます。
「Welfare City」
軽快なフォーキー・チューン。♪ラ・ラ・ラ〜♪ラ・ラ・ラ〜♪と平和を高らかに歌うMcDanielsが印象的です。実に辛辣なメッセージ・ソングという気がします。
「Silent Majority」
ゴスペル・ムードの出だしが印象的です。本編はブルージーなさ運度をバックにMcDanielsが鋭いメッセージで切り込みます。
「Love Letter to America」
白人SSWのアルバムかと錯覚しそうなフォーキー・チューン。タイトルの通り、アメリカに向けた辛辣なラブレターを淡々と歌い上げます。
「Unspoken Dreams of Light」
ようやくニューソウルらしいサウンドに出会うことができます。中間部のMcDanielsの吐き出すような歌い方とメッセージ内容は、今聴くとラッパーそのものですね。本曲はサンプリング・ネタにはなっていませんが、彼がHip-Hopアーティストから支持されているのがよくわかる1曲です。
「Cherrystones」
本作のハイライト曲と言えば、Scientifik Feat. Diamond D「I Got Planz」のサンプリング・ネタにもなった本曲でしょうね。タイトなグルーヴを推進力にMcDanielsが辛辣なメッセージを投げかけます。
Scientifik Feat. Diamond D「I Got Planz」
http://www.youtube.com/watch?v=LjQo1tGtmgg
「Reverend Lee」
Roberta Flackの2ndアルバム『Chapter Two』のオープニング曲としてもお馴染みですね。どんよりしたブルージー感が本作らしくていいですね。
「Black Boy」
ラストは静かなアコースティック・チューン。美しさの中に悲しみが満ちています。 Black Boyの未来に待っているものは...当時は黒人大統領が誕生するアメリカなんて想像できなかったのでしょうね。
本作とセットで『Headless Heroes of the Apocalypse』(1971年)もどうぞ!こちらもそのうち紹介したいと思います。
『Headless Heroes of the Apocalypse』