発表年:1973年
ez的ジャンル:ブラック・ムーヴィー系ニューソウル
気分は... :映画の中身は知りませんが...
今日はWillie Hutchが制作したブラック・ムーヴィーのサントラ『The Mack』(1973年)です。
先週もMarvin Gaye『Trouble Man』を紹介したばかりで、ブラック・ムーヴィーのサントラが続きますが...
Willie Hutch(1944-2005年)は、L.A.出身のR&Bシンガー/ソングライター/アレンジャー/プロデューサー。
テキサス州ダラスで育ちますが、1960年代後半にL.A.に戻り、The 5th Dimensionのデビュー・アルバム『Up, Up and Away』(1967年)への曲提供/プロデュースを手掛けています。1969年にはRCAと契約し、『Soul Portrait』(1969年)、『Seasons for Love』(1970年)という2枚のアルバムをリリースしました。
70年代に入ると、Jackson 5の全米No.1ヒット「I'll Be There」をHal Davisらと共作したことを機にMotownでライター、アレンジャー、プロデューサーとして活躍するようになり、Michael Jackson「Got to Be There」等の名曲を世に送り出しています。
また、自身のアルバム制作にも勢力的に取り組み、『The Mack(Soundtrack)』(1973年)、『Fully Exposed』(1973年)、『Foxy Brown(Soundtrack)』(1974年)、『Mark of the Beast』(1974年)、『Ode to My Lady 』(1975年)、『Color Her Sunshine』(1976年)、『Concert in Blues』(1976年)、『Havin' a House Party 』(1977年)といった作品をMotownからリリースしています。
2005年にテキサス州ダラスで死去(享年60歳)
名前はよく聞くし、彼が手掛けたヒット曲にも馴染みがあるけれど、本人のオリジナル・アルバムをきちんと聴く機会には恵まれていない、というのが僕にとってのWillie Hutchですね。それでもマルチなサウンド・クリエイターというイメージは持っています。
そんな僕が唯一ちゃんと聴いているのが、1973年に制作された映画『The Mack』のサントラである本作です。
先日紹介したMarvin Gaye『Trouble Man』と異なり、殆どの曲が歌入りなので、ソウル好きの方もご安心を(笑)
レコーディングには、David T. Walker(g)、Weldon Dean Parks(g)、Louie Shaldon(g)、Wilton Felder(b)、Edward Green(ds)、Gene Estes(per)、Bobye Hall(conga)、Ernest Watts(horns)、Carolyne Willis(back vo)、Julia A. Tillman(back vo)、Lorna Maxime Willard(back vo)等が参加しています。
サウンドのカッチョ良さで言えば、Isaac Hayes『Shaft』(1971年)やCurtis Mayfield『Superfly』(1972年)、Marvin Gaye『Trouble Man』(1972年)といったブラック・ムーヴィー・サントラの有名作品を凌ぐ出来栄え!というのが個人的な感想です。特にCurtis Mayfield『Superfly』がお好きな方はグッとくる作品だと思いますよ。
ブラック・ムーヴィー・サントラ、ニュー・ソウル・アルバムとしても絶品ですが、本作にはサンプリング・ネタの宝庫という側面もあります。「Brother's Gonna Work It Out」、「I Choose You」といった定番ネタをはじめ、多くの曲がHip-Hop/R&Bアーティストにサンプリングされています。また、「Slick」はレア・グルーヴ・クラシックとしてお馴染みです。
ということで、様々な楽しみ方ができるお得なアルバムです。
全曲紹介しときやす。
「Vampin'」
ワウ・ワウ・ギター、パカパカ鳴り響くコンガ、豪快に唸るホーン隊とブラック・ムーヴィーらしい疾走感に溢れたオープニング。2曲目以降への期待が膨らみます。
http://www.youtube.com/watch?v=tf1U8ExdeUQ
「Theme of the Mack」
ハイライトその1。黄昏モードのトランペットに続き、静寂を切り裂くようにご機嫌なテーマが突っ走ります。『Superfly』に通じるカッチョ良さですね。Three 6 Mafia「Testin My Gangsta」等でサンプリングされています。本曲に限らずThree 6 MafiaはWillie Hutchネタを頻繁に使っており、Willie Hutch使いの名手と言えるかもしれませんね。
Three 6 Mafia「Testin My Gangsta」
http://www.youtube.com/watch?v=oErrWE2ZdZk
「I Choose You」
ハイライトその2。サンプリング・ネタとして超有名曲ですが、それに関わらず正統派ソウル・バラードとしても絶品です。ストリングス&ホーン隊が盛り上げてくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=N9F1KqyHwec
Hip-Hopファンにとっては「Brother's Gonna Work It Out」と並ぶ定番ネタですね。Deitrick Haddon、Three 6 Mafia「Poppin' My Collar」、Project Pat「Choose U」、UGK feat. Outkast「Int'l Players Anthem (I Choose You)」、Jaheim「The Chosen One」、50 Cent「Pimpin Part 2」、Jake One「R.I.P.」等でサンプリングされています。また、1975年にChicago Gangstersがカヴァーしています。
Deitrick Haddon「Count Your Blessings」
http://www.youtube.com/watch?v=VwKlR5vNs6E
Three 6 Mafia「Poppin' My Collar」
http://www.youtube.com/watch?v=0wfYrf3ZlPY
Project Pat「Choose U」
http://www.youtube.com/watch?v=zShFldhiU_o
UGK feat. Outkast「Int'l Players Anthem (I Choose You)」
http://www.youtube.com/watch?v=vLAFoFdM1ws
50 Cent「Pimpin Part 2」
http://www.youtube.com/watch?v=siumnbJcFUU
Jake One「R.I.P.」
http://www.youtube.com/watch?v=I9y98VZYJW0
Chicago Gangsters「I Choose You」
「Mack's Stroll/The Getaway (Chase Scene) 」
前半の哀愁ギター・ソロに続き、後半はタイトルの通り、疾走するファンキー・チューンに仕上がっています。
http://www.youtube.com/watch?v=1Y7aWqEaXOE
Usher「Superstar」、Jay-Z「My 1st Song (9th Wonder Remix)」等で前半の哀愁モードの部分がネタになっています。
Usher「Superstar」
http://www.youtube.com/watch?v=UEneQNte-bA
Jay-Z「My 1st Song (9th Wonder Remix)」
http://www.youtube.com/watch?v=2MubLYkkWso
「Slick」
ハイライトその3。シングルにもなったパーカッションとワウワウ・ギターがたまらないグルーヴィー・ソウル。ハウスDJのTheo ParrishによるRe-Editも人気ですね。
http://www.youtube.com/watch?v=dlUPlVzEJ8I
「Mack Man (Got to Get Over)」
ハイライトその4。グイグイと腰にくるミディアム・テンポのファンク・チューン。リズム隊がサイコー!
http://www.youtube.com/watch?v=qx1nhACwXB0
後述の「Brother's Gonna Work It Out」と共にLL Cool J 「Farmers Blvd. (Our Anthem)」のサンプリング・ネタになっています。
LL Cool J 「Farmers Blvd. (Our Anthem)」
http://www.youtube.com/watch?v=kYwl3wmZogk
「Mother's Theme (Mama)」
哀愁のソウル・バラード。母親への愛に満ちています(笑)
http://www.youtube.com/watch?v=XwekgTwc48Y
当ブログで紹介したAmerie「Paint Me Over」やCam'ron「D Rugs」でサンプリングされています。
Amerie「Paint Me Over」
http://www.youtube.com/watch?v=Q54t4QW2MkU
Cam'ron「D Rugs」
http://www.youtube.com/watch?v=bFP0BeShxx8
「Now That It's All Over」
美しいアルバムの中で最も美しく穏やかなバラード。フルートとハープの音色が印象的です。
「Brother's Gonna Work It Out」
ハイライトその5。本作最大の目玉はシングルにもなったこの曲ですね。ギター&フルートによる哀愁モードの前半に続き、レア・グルーヴ・クラシックと大人気のエレガント&グルーヴィーな後半へ突入します。
http://www.youtube.com/watch?v=GVT_7Q-6aL8
レア・グルーヴとしても大人気ですが、サンプリング・ネタとしても定番です。Dr. Dre「Rat-Tat-Tat-Tat」、2pac「My Definition Of A Thug Nigga」、Public Enemy「Whole Lotta Love Goin On In The Middle Of Hell」、Canibus「Niggonometry」、Kausion「Land Of The Skanless」、Lloyd「Feels So Right」、Project Pat「What Money Do」、LL Cool J 「Farmers Blvd. (Our Anthem)」等でサンプリングされています。
Dr. Dre「Rat-Tat-Tat-Tat」
http://www.youtube.com/watch?v=yNHPuU2CrdM
2pac「My Definition Of A Thug Nigga」
http://www.youtube.com/watch?v=j5M-uE4w-vU
Public Enemy「Whole Lotta Love Goin On In The Middle Of Hell」
http://www.youtube.com/watch?v=ew6-_sNkhiM
Canibus「Niggonometry」
http://www.youtube.com/watch?v=eEiUH61GiVM
Kausion「Land Of The Skanless」
http://www.youtube.com/watch?v=83_X3U2pTXM
Lloyd「Feels So Right」
http://www.youtube.com/watch?v=EpBITiC1CWw
Project Pat「What Money Do」
http://www.youtube.com/watch?v=MZJuCm81USw
Willie Hutchによるブラック・ムーヴィーのサントラと言えば、Pam Grier主演の映画『Foxy Brown』(1974年)も忘れてはいけませんね。
『Foxy Brown』
「Theme Of Foxy Brown」
http://www.youtube.com/watch?v=yMe7wBi13ho
サントラ以外のオリジナルもぼちぼちゲットしていきたいですね。