発表年:1982年
ez的ジャンル:ゴスペル系アーバン・ソウル
気分は... :祝!世界初CD化
今夏遂に世界初CD化となったThe McCrarys『All Night Music』(1982年)です。
発売時期や内容からして夏に紹介したかったのですが、Amazonにジャケ画像がなく紹介するのが遅れてしまいました。
The McCrarysはオハイオ出身のMcCrarys兄弟によるゴスペル/ソウル・グループ。
敬虔なクリスチャン一家の10人兄弟のうち、Sam、Alfred、Charity、Howard、Lindaでグループを結成し、活発に地元で活動します。その後L.A.へ進出し、ゴスペルの大手レーベルLightからアルバム『Sunshine Day』(1972年)等2枚のアルバムをリリースしています。
こうした中で兄弟達はゴスペル界の巨匠Andrae Crouchと出会い、彼のセッションに数多く参加するようになります。特にHowardはCrouchのバンドのレギュラー・シンガーに抜擢されます。また、各メンバーはソウル、ゴスペル、ロックの各方面から多くの声が掛かる売れっ子セッション・シンガーとして活躍するようになります。
そして、Andrae Crouchと行動を共にしたHowardを除く、Sam、Alfred、Charity、Lindaの4人によるThe McCrarysとして、Portraitから『Loving Is Living』(1978年)、『On The Other Side』(1979年)という2枚のアルバムをリリースしています。『Loving Is Living』からシングルカットされ、全米R&Bチャート第9位となった「You」はグループ最大のヒット曲です。この曲ではStevie Wonderがハーモニカで参加しています。
The McCrarys「You」
http://www.youtube.com/watch?v=s1p7eS0pINY
その後Capitolから『Just for You』(1980年)、『All Night Music』(1982年)という2枚のアルバムをリリースしています。『Just for You』ではHowardがグループに復帰しますが、『All Night Music』では再び4人体制に戻っています(Howardは曲作りで関与しています)。
僕の場合、『Capitol Classics The Best Of Volumes 1&2』(1989年)というコンピCDがMcCrarysを知るきっかけとなりました。B.B.Q Band、Dayton、Sheree Brown、O'Bryan、Gene Dunlap等のヒット曲が1枚で楽しめるコンピということで購入したのですが、その中に人気曲「Love On A Summer Night」が収録されていました。
その「Love On A Summer Night」が収録されているアルバムが今日紹介する『All Night Music』(1982年)です。今回の世界初CD化に歓喜している方も多いのでは?僕もそんな一人です。
プロデュースはCrusaders(Jazz Crusaders)のオリジナル・メンバーであるWayne Hendersonが務めています。レコーディング・メンバーの中にはMichael Sembelloの名前もありました。
当ブログで紹介したAngela Bofill『Something About You』でLinda/Alfredが作った「On and On」が取り上げられるなどソングライティングにも優れたMcCrarysのメンバーですが、全10曲中メンバーが手掛けたのは4曲のみで、残りはWayne Hendersonラインでの楽曲提供のようです。
本作の魅力は、「Love On A Summer Night」、「For You」といったアーバン・メロウな楽曲に拠るところが大きいと思います。一方でこうしたアーバン・メロウな魅力は、McCrarysというよりもWayne Hendersonの手腕によって引き出されたものという気がします。
むしろメンバーが楽曲提供した「It's Still You」、「Night Room」、「Only With You」、「Miles Above」の4曲に、ゴスペルをベースにソウルフルなヴォーカルを聴かせるグループ本来の魅力が凝縮されている気がします。
「Love On A Summer Night」がキラー・チューンであることは間違いありませんが、前述の4曲にも注目すると、さらに楽しみが倍増すると思います。
全曲紹介しときやす。
「It's Still You」
前述のグループ最大のヒット曲「You」を彷彿させるオープニング。二匹目のドジョウを狙ったのでしょうか(笑)
「Night Room」
Lindaのヴォーカルを前面に押し出したファンキーなミッド・グルーヴ。素晴らしいホーンアレンジも光りますね。
http://www.youtube.com/watch?v=cjpZQrjNIfg
「Lookin' Through The Eyes Of Love」
力強いLindaのヴォーカルが印象的なラブ・バラード。 曲自体はイマイチですが、ここまで聴かせてしまうのはLindaの歌唱力に拠るところが大きいのでしょうね。
「Love On A Summer Night」
本作のハイライトとなるアーバン・ダンサー。解説担当のK氏が"George Benson「Give Me The Night」を思わせる"と書いていますが、個人的には「Love X Love」と一緒に聴きたくなりますね。トロンボーン・ソロはWayne Hendersonです。
http://www.youtube.com/watch?v=F4JQu39OaFQ
「Feel Your Fire」
パンチのあるLindaのヴォーカルを楽しむにはいい曲かも?
「All Night Music」
タイトル曲は、オールナイト・モードのダンス・チューン。B級感漂うノリでガンガン突き進んでいきます。
「For You」
「Love On A Summer Night」と並ぶハイライト。胸キュンのメロウ・グルーヴにグッとくる方は多いはず!「Love On A Summer Night」が「Love X Love」と一緒に聴きたい曲ならば、本曲はSister Sledge「Thinking of You」と一緒に聴きたい曲ですね。http://www.youtube.com/watch?v=K2fRp6_LMxc
「Only With You」
ゴスペルしている本曲こそグループ本来の姿なのだと思います。迫力ある魂のヴォーカルが胸の中まで届いてきます。
http://www.youtube.com/watch?v=31b6R2v2-yA
「Torn In Two」
ほのぼのリラックス・ムードのポップ・チューン。
「Miles Above」
ラストもゴスペル仕込みの素晴らしいヴォーカルを堪能できます。こういう曲を聴くと、全編コンテンポラリー・ゴスペルなアルバムも聴いてみたいですね。
Samの娘であるAnn McCraryもゴスペル・シンガーとして活躍しています。