発表年:2009年
ez的ジャンル:偉大な血統系コンテンポラリーMPB
気分は... :まさにオール・イン・ワンな1枚!
ブラジル音楽界の巨人Joao Gilbertoの娘Bebel Gilbertoの4thアルバム『All In One』です。
Verveからの第1弾アルバムである本作がワールドワイド・メジャー・デビュー作品となるらしいです。お馴染みの名前だったので、今頃"ワールドワイド・メジャー・デビュー"と聞いてもピンと来ませんが...
Bebel Gilbertoは1966年N.Y.生まれ。Joaoと歌手Miuchaの間に生まれた娘です。JoaoはAstrud Gilbertoと離婚後にMiuchaと結婚しています。またMiuchaの弟は、これまた偉大な音楽家Chico Buarqueです。
偉大な音楽家の血筋と音楽に囲まれた環境の中で、Bebelも自然と音楽に慣れ親しみ、音楽を学んでいきました。
1986年に1stEP『Bebel Gilberto』をリリース。90年代に入るとN.Y.へ移住し、David Byrne、Arto Lindsay、Caetano Veloso、Thievery Corporation、TOWA TEI(テイ・トウワ)、坂本龍一らとコラボしています。
CD棚からTOWA TEIの『Future Listening!』(1995年)や『Sound Museum』(1998年)を取り出して確認してみると、確かにBebel Gilbertoがフィーチャーされています。当時は全然意識せずに聴いていましたが...
このように様々なミュージシャンとの交流を経て、2000年にデビュー・アルバム『Tanto Tempo』をリリースしています。このデビュー・アルバムはクラブ方面からも注目され、リミックス・アルバム『Tanto Tempo Remixes』も出ています。
その後『Bebel Gilberto』(2004年)、『Momento』(2007年)という2枚のアルバムをリリースを経て、今回の"ワールドワイド・メジャー・デビュー"に至っています。
メジャー・デビューと言っても特別気負うことなく、Bebelらしく伝統的なブラジル音楽と21世紀らしいコンテンポラリーなサウンドを自由に行き来しています。
プロデューサーにはBebel本人以外に、Amy Winehouse『Back to Black』のプロデュースで知られるMark Ronson、Brazilian GirlsのメンバーDidi Gutman、Tone Loc、Beastie Boys、Beck等のプロデュースで知られるJohn King(Dust Brothers)やMario C(Mario Caldato)、Carlinhos Brown、Antonio Carlos Jobimの孫Daniel Jobim等が務めています。
タイトルの通り、オール・イン・ワンなコンテンポラリー・アルバムに仕上がっていると思います。守りすぎず、攻めすぎず、いろいろな視点で楽しめるアルバムになっていると思います。
私生活でも結婚する予定らしく、お相手がエグゼクティブ・プロデューサーにしっかりクレジットされています。そんな幸せモードがジャケ写真からも感じられますね。
Clara Moreno、Maria RitaそしてBebel Gilberto...僕の場合、二世女性シンガーにグッとくる傾向があるようです(笑)
全曲紹介しときやす。
「Cancao de Amor」
穏やかなオープニング。Bebelの優しげなヴォーカルと涼しげな口笛が印象的です。Bebel Gilberto/Masa Shimizu作。Didi Gutmanプロデュース。
http://www.youtube.com/watch?v=M487gKyuP8s
「Sun Is Shining」
Didi Gutman & John KingプロデュースしたBob Marleyのカヴァー。僕の場合、当ブログでも紹介した『Kaya』のヴァージョンに慣れ親しんでいるのですが、その印象で本カヴァーを聴くと結構ビックリします。アコースティック・カヴァーかなぁ...なんて思っていると近未来的なスペイシー・ワールドへ誘われていきます。
http://www.youtube.com/watch?v=8QBI5J6BeS0
「Bim Bom」
本作の聴きどころの1つ。偉大なる父Joao Gilbertoの名曲を、同じく偉大な音楽家Antonio Carlos Jobimの孫Daniel Jobimとデュエットしています。ボサノヴァの巨人たちのDNAを受け継ぐ二人のデュエットというだけでグッときてしまいますね。変な小細工はせずに、シンプルなバックによるオーソドックスな仕上がりもグッド!
「Nossa Senhora」
Carlinhos Brown/Paulo Levita作。Carlinhos Brownプロデュース。Paulo LevitaのギターをバックにBebelが歌う素朴な仕上がりにホッとします。
「The Real Thing」
クラブ系リスナーの方はグッとくる1曲ですね。当ブログでも紹介したSergio MendesやMeta Roos & Nippe Sylwens Bandのヴァージョンで有名なStevie Wonder作品のカヴァー。Mark Ronsonがプロデュースし、その人脈でSharon Jonesのバックバンドであり、Amy Winehouse『Back to Black』のレコーディングにも参加していたThe Dap-Kingsのメンバーがバックを務めています。2009年らしいカヴァーに仕上がっているのがいいですね。
http://www.youtube.com/watch?v=wcIqtp4O2tA
「Ela(On My Way)」
Bebel Gilberto/Carlinhos Brown作。Carlinhos Brownプロデュース。Carlinhos Brownの手腕が光ります。基本はアコースティック・テイストながら、適度にエレクトロ&パーカッシヴな仕上がりが僕好みです。
http://www.youtube.com/watch?v=BpuSYpgSv8c
「Far From The Sea」
Robertinho Brant/Emerson Pena作。プロデュースはBebel本人。ストリングスをバックにしたロマンティックな仕上がりです。
http://www.youtube.com/watch?v=pb-XnavQYe0
「All In One」
タイトル曲はBebel Gilberto/Cezar Mendes作。プロデュースはDidi Gutman/Carlinhos Brown/John King。全編英語で歌われていることもあり、ブラジル音楽を聴かない人をも惹きつける普遍的な魅力を持った仕上がりになっています。個人的にもアルバムで一番好きかも?
http://www.youtube.com/watch?v=KuZE8zF6eRw
「Forever」
Bebel Gilberto作&プロデュース。神秘的な美しさを感じる小品。
http://www.youtube.com/watch?v=cPHX9f1igNc
「Secret(Segredo)」
Bebel Gilberto/Thomas Bartlett作。Bebel Gilberto & Carlinhos Brownプロデュース。「Forever」に続き、この曲も神秘的ですね。秘境を訪れたような気分になる1曲。
http://www.youtube.com/watch?v=3Qp1UdfTmGs
「Chica Chica Boom Chic」
伝説の歌姫Carmen Mirandaの歌で知られる名曲(Mack Gordon/Harry Warren作)のカヴァー。Didi Gutman/Carlinhos Brown/Mario Cがプロデュースしています。古典ならではの親しみやすさと21世紀カヴァーならではのコンテンポラリー感を上手く融合しています。化学反応を起こすのが得意なMario Cの手腕が光る1曲かもしれませんね。
http://www.youtube.com/watch?v=4tG-U0CK0yY
「Port Antonio」
Bebel Gilberto/Didi Gutman作。Didi Gutmanプロデュース。美しく感動的な歌&演奏でアルバムは締め括られます。
http://www.youtube.com/watch?v=keAitxeLiKw
そう言えば、偉大な父Joao Gilbertoの作品を紹介していませんでしたね。順序が逆になってしまいましたが、そのうちJoao作品も記事にしたいと思います。