2009年11月24日

Paul Haig『Coincidence vs. Fate』

Lil' Louis、Mantronikを迎えたハウス色の強い作品☆Paul Haig『Coincidence vs. Fate』
Coincidence vs. Fate
発表年:1993年
ez的ジャンル:ハウス系ダンサブル・シンセポップ
気分は... :いつも通り過ぎていましたが...

今日は"クレプスキュールの伊達男"Paul Haigの1993年リリース作品『Coincidence vs. Fate』です。

Paul Haigは1960年スコットランド、エジンバラ生まれ。

1970代後半からポスト・パンク・バンドJosef KのメンバーとしてMalcolm Rossらと共に活動し、1979年にはデビュー・シングル「Romance/Chance Meeting」をリリース。1980年にはPostcardレーベルと契約し、Orange Juiceと共にPostcardレーベルの主要アーティストとして、数枚のシングルとアルバム『The Only Fun In Town』(1981年)をリリースしています。PostcardレーベルにはGo Betweens、Aztec Cameraも所属していましたね。

グループ解散後はソロ活動を開始し、1982年にクレプスキュール(Crepuscule)よりシングル「Running Away」Sly & The Family Stoneのカヴァー)をリリースします。

その後もクレプスキュールより勢力的に作品をリリースし、ダンサブルなエレポップ・サウンドで一部ファンから高い支持を得ていました。

Paul Haig「Running Away」(1982年)
 http://www.youtube.com/watch?v=1Ew7rtY22TQ
Paul Haig「Justice」(1983年)
 http://www.youtube.com/watch?v=Q_3Eim_JiF8

僕の場合、いつもすぐそばに居たのに、いつも通り過ぎていたのがPaul Haigだったかもしれません。

Orange JuiceAztec Cameraを聴きながら、Josef Kは素通りしてしまい、Antenaを聴きながら、同じクレプスキュールのPaul Haigは名前だけしかインプットされずといった状態でした。ちなみに前述のシングル「Running Away」のバック・ヴォーカルはIsabelle Antenaでした。

さらに「Running Away」に関しては、以前に記事投稿したNorman Cook率いるFreak Powerのカヴァーが僕のお気に入りなのですが、今振り返るとSlyのオリジナル以上にPaul Haigヴァージョンの影響が大きいカヴァーであったように感じます。

さて、今日紹介する『Coincidence vs. Fate』ですが、最初に紹介するPaul Haig作品としては???かもしれません。

本来Paul Haigのアルバムを紹介するのであれば、『Rhythm Of Life』(1983年)、『The Warp Of Pure Fun』(1985年)といったダンサブルなエレポップ・サウンドを楽しめるソロ初期作からセレクトすべきなのでしょうが...

本作はLil' LouisMantronikThe Chimesといったプロデューサーを迎え、ハウス色の濃い作品となっています。Paul Haigらしいポップなダンサブル・サウンドとハウスの融合といった感じでしょうか。

なお、今回示しているジャケは再発仕様のものです。
オリジナル・ジャケは以下のものです。
Paul Haig Coincidence vs Fate.jpg
僕が所有しているのもオリジナル・ジャケの方です。
こちらの方がPaul Haigおよびクレプスキュールらしいですよね。
でも、このジャケからはハウス系の音はイメージできませんが(笑)

80年代のPaul Haig作品に思い入れがある方にはビミョーな作品かもしれませんが、これはこれでなかなか楽しめると思います。

全曲紹介しときやす。 ※オリジナルの11曲構成

「I Believe in You」
The ChimesのJames Locke/Michael Pedenプロデュース。ヴォーカルとしてLyn Geraldes、Mykaell Riley(元Steel Pulse、Reggae Philharmonic Orchestra)という男女ヴォーカリスト2名がフィーチャーされています。エレガントなUKクラブ・ミュージックに仕上がっています。グラウンドビートなんかが好きだった人は気に入ると思います。

話は逸れますが、The Chimesにはパワフルな黒人女性ヴォーカリストPauline Henryも在籍していましたね。機会があれば、Pauline Henryのソロも紹介しますね。

「Flight X」
Mantronikプロデュース。ポップながらも無機質なダンス・チューンに仕上がっています。Paul HaigというよりMantronik作品という感じですね。

「Born Innocence」
この曲ではMantronikがリミックスしています。前曲の「Flight X」とは異なり、この曲はPaul HaigとMantronikのコラボって雰囲気ですね。Paul Haigらしいダンディズム溢れるシンセポップがMantronikのリミックスで90年代らしいダンス・チューンに仕上がっています。スピード感がいいですね。

「My Kind」
Lil' Louisプロデュース。Lil' Louisらしいシカゴ・ハウス調の哀愁チューンです。Lil' Louisプロデュース3曲の中では一番好きですね。意外とPaul Haigの低音ヴォーカルと哀愁ピアノが鳴り響くハウス・サウンドがマッチしています。

「Si Senorita」
この曲もLil' Louisプロデュース。妖しく官能的な雰囲気が漂うハウス・チューンですが、これもLil' Louisらしいですね。Pater Blackによるギターも印象的です。

「Right on Line」
Mantronikプロデュース。Cece Cambellによる女声ヴォーカルをフィーチャー。Mantronikらしいポップかつダンス・チューンです。

「Out of Mind」
「Right on Line」同様、Mantronikプロデュース、Cece Cambell参加曲です。Mantronikプロデュース4曲の中では一番好きですね。Paul Haigらしいダンディズムが最も感じられるダンス・チューンだと思います。

「Surrender」
Paul Haig自身のプロデュース。それまでのダンス・サウンドのオンパレードからは一変し、メロディアスかつエレガントな仕上がりです。オリジナル・ジャケのシネマティックなイメージに最も合致するのでは?

「Stop and Stare」
Lil' Louisプロデュースですが、全くそんな感じがしないメロディアスな仕上がりです。それでも妖しい雰囲気が漂うサウンドはLil' Louisらしいのかも?

「The Originator」
Paul Haigプロデュース。無機質に反復するシンセがダークな雰囲気を作り出します。

「1959」
Paul Haigプロデュース。ラストはノスタルジックな雰囲気が漂うPaul Haigらしいシンセ・ポップに仕上がっています。

再発作品には4曲のボーナス・トラックが追加されています。

初期作品に興味がある方は下記の作品をどうぞ!

『Rhythm Of Life』(1983年)
Rhythm of Life

『The Warp Of Pure Fun』(1985年)
The Warp of Pure Fun
posted by ez at 01:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 1990年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年11月23日

Erik Tagg『Smilin' Memories』

David Foster、Lee Ritenour等が参加した1st☆Erik Tagg『Smilin' Memories』
Smilin' Memories
発表年:1975年
ez的ジャンル:ブルーアイド・ソウル系AOR
気分は... :EricだけどErikです!

今日はAOR的な作品が聴きたい気分です。
ということで、Erik Taggの1stアルバム『Smilin' Memories』(1975年)です。

Erik Tagg(Eric Tagg)は1953年イリノイ州生まれ。兄は80年代に2枚のアルバムを残したBourgeois TaggのメンバーであったLarry Taggです。

6歳から19歳まではテキサス州ダラスで暮らしていましたEricでしたが、1973年に"人生経験"のためヨーロッパへ渡ります。そして、オランダのアムステルダムで地元のBeehiveというグループに参加したことがきっかけで、本格的にミュージシャンとして活動するようになります。Beehive解散後に作ったデモ・テープがオランダEMIに認められ、ソロ・アルバム制作のチャンスを得ます。

そして、 David FosterLee RitenourJeff PorcaroMichael Porcaro等の強力メンバーを迎え、L.A.でレコーディングしたデビュー・アルバムが今日紹介する『Smilin' Memories』(1975年)です。しかしながら、当時リリースされたのはオランダのみでした。

その後、オランダのBasartから2nd『Rendez-Vous』(1977年)をリリースしています。こちらはダラスのミュージシャンと共に制作されたアルバムです。

80年代に入るとEric Taggに大きな転機が訪れます。『Smilin' Memories』で出会った人気ギタリストLee Ritenourのアルバム『RIT』(1981年)への参加です。『RIT』でヴォーカリストとして参加するのみならず、「Mr. Briefcase」(Eric Tagg作詞、作曲)、「Is It You」(Eric Tagg & Bill Champlin作詞、Lee Ritenour作曲)といった楽曲提供でも貢献しています。特に「Is It You」は(多分)Lee Ritenour最大のヒットとなった名曲ですね。

その後もLee Ritenourとのコラボは続き、翌82年には『RIT』の第2弾『RIT 2』、Lee Ritenourプロデュースのソロ第3弾『Dream Walkin'』(日本のみリリース)を発表しています。また、日本人フュージョン・ギタリスト松原正樹『PAINTED WOMAN』(1983年)にもEricが数曲フィーチャーされています。

Lee Ritenour「Mr. Briefcase」
 http://www.youtube.com/watch?v=Zg_F_YzbCyg
Lee Ritenour「Is It You」
 http://www.youtube.com/watch?v=-rTqNPv4eEk
松原正樹「Silly Crush」
 http://www.youtube.com/watch?v=E_2mwu6R7MY

Erik Tagg(Eric Tagg)に興味を持つ方は、Lee Ritenour『RIT』経由のAOR/フュージョン・ファンとサバービア/フリーソウル経由の人に分かれると思うのですが、Lee Ritenourとはあまり縁のない僕は後者のルートで辿り着きました。「Is It You」くらいは聴いたことがありましたが。

なので、『RIT』『RIT 2』『Dream Walkin'』という3点盛りを楽しむ聴き方は未体験です。僕の場合、AOR作品としてもフリーソウル作品としても楽しめる『Smilin' Memories』あたりが一番フィットするのかもしれません。

『Smilin' Memories』を聴いていると、何故かMacky Feary/Kalapanaあたりが一緒に聴きたくなります。僕が本作を気に入っている理由も、そのあたりにあるのかもしれません。

全曲Ericのオリジナルです。
彼のソングライティング能力も見逃せません。

全曲紹介しときやす。

「Tell-Tale Eyes」
サバービア/フリーソウル好きにとってのキラー・チューンはこの曲ですね。いつ聴いても幸せ気分になれる爽快なメロウ・グルーヴです。エレピの音色とEricのマイルドなヴォーカルがよくマッチしています。

「Love to Love You」
潮風の香るメロウ・チューン。イントロを聴いただけでトキメク感じですよね。こんな曲で朝目覚めたいです。

「Tell-Tale Eyes」、「Love to Love You」の2曲を聴くと、前述のようにMacky Feary/Kalapanaがたまらなく聴きたくなります。こんなの僕だけでしょうか?

「Castle of Loneliness」
哀愁モードのバラード。あまり仰々しくないのがいいですね。

「Steamboat」
親しみやすいポップ・チューン。AOR的な側面以外のEric Taggを楽しめます。中盤のシリアスな展開が意外ですね。
http://www.youtube.com/watch?v=qtwJfl0-xyw

「Sandman(Bring Me a Dream)」
ハープシコードの音色が印象的なバラード。

「The Only Thing You Said」
「Tell-Tale Eyes」に次いで人気が高いのはこの曲なのでは?お洒落なシティ・ミュージックって雰囲気ですね。疾走感が実に気持ちいいですね。アルバム・タイトルは本作の冒頭の歌詞からとったものです。

「A Fantasy」
この曲もバラード。本作に限って言えば、バラード系の曲は少し弱いかも?

「After All」
アーバンなメロウ・チューン。アルバムの中でもAOR指数の高い1曲なのでは?

「In December's Cold」
Eric本人の思い入れが最も強い曲なのだとか。裏ジャケにある焼け焦げたノートは本曲の歌詞が書かれたもの。実際に火事に見舞われた時、焼けずに残ったのだそうです。

「Never Had the Feelin'」
ソウルフルなアーバン・メロウ。ブルーアイド・ソウルという点ではこの曲が一番かもしれませんね。Lee Ritenourのソロも盛り上げてくれます。

「Hang On」
ラストは美しく締めくくってくれます。Ericの曲作りの上手さを実感できる1曲なのでは?

本作以外の関連作品を紹介しておきます。

Erik Tagg『Rendez-Vous』(1977年)
ランデヴー

Eric Tagg『Dream Walkin'』(1982年)
ドリームウォーキン

Lee Ritenour『RIT』(1981年)
Rit

Lee Ritenour『RIT 2』(1982年)
Rit, Vol. 2

松原 正樹『PAINTED WOMAN』(1983年)
PAINTED WOMAN

おまけで兄Larry TaggのBourgeois Taggも紹介しておきます。

Bourgeois Tagg『Yoyo』(1987年) ※Todd Rundgrenプロデュース
Yoyo
posted by ez at 07:09| Comment(2) | TrackBack(0) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年11月22日

McCoy Tyner『Tender Moments』

大編成の重厚なアンサンブルが魅力!☆McCoy Tyner『Tender Moments』
テンダー・モーメンツ
録音年:1967年
ez的ジャンル:大編成コンボ系Jazz
気分は... :重厚なアンサンブルが魅力です...

音楽コレクションの仕方は人それぞれだと思いますが、現在の僕は未知のカテゴリーや未知のアーティストの作品を好んで聴く傾向があります。従って、特定ジャンルや特定アーティストの作品を深く掘り下げることはなかなか難しい状況になります。中古の廉価CDを除けば、同じアーティストの作品を複数枚同時購入することは殆どありません。

そのため、コレクションを充実させたいにも関わらず、遅々としてコレクション枚数が増えないアーティストが多数存在します。今日紹介する大物ジャズ・ピアニストMcCoy Tynerもそんな一人です。

John Coltrane作品を通じてTynerのピアノを聴く機会は多いものの、Tynerのリーダー作となると限られるほどしか持っていません。特に70年代の作品が殆ど手付かず状況なので何とかしたいですね。

さて、当ブログ2回目の登場となるMcCoy Tyner作品は『Tender Moments』(1967年)です。

本作『Tender Moments』は、以前に紹介した『The Real McCoy』に続くBlue Note移籍後の第2弾アルバムです。

メンバーはMcCoy Tyner(p)以下、Herbie Lewis(b)、Joe Chambers(ds)、Lee MorganBennie Maupin(ts)、James Spaulding(as、fl)、Julian Priester(tb)、Bob Nothern(frh)、Howard Johnson(tuba)という大編成です。

大編成による重厚なアンサンブルを重視した演奏が魅力のアルバムですね。
あとは後のTynerの特徴となるアフリカ志向の楽曲が聴けるのも興味深いですね。
クラブジャズ・ファンが楽しめる楽曲もあります。

楽曲は全てMcCoy Tynerのオリジナルです。

全曲紹介しときやす。

「Mode to John」
タイトルの通り、本作録音と同じ1967年に亡くなった恩師John Coltraneに捧げられたオープニング曲です。クラブジャズ好きの人にもグッとくるであろう疾走感が魅力です。個人的にも一番のお気に入りです。大編成によるダイナミックなテーマに続き、Tyner→Morgan→Spaulding→Maupinとソロを堪能できます。特にTynerのソロはエキサイティングでいいですね。Maupinのプレイも快調な感じでグッド!
http://www.youtube.com/watch?v=r6-LxABMbKE

「Man from Tanganyika」
タイトルにあるTanganyikaはタンザニアの大陸部を占める地域のことです。タイトルから想像できるように、アフリカ志向が反映された楽曲です。アフリカの大地のような雄大さを持つ重厚なアンサンブルがいいですね。ホーン隊ではSpauldingのフルートとPriesterのトロンボーンによるソロが目立っていますね。Chambersもエキサイティングなドラム・ソロでキメてくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=vHN7txV3f3A

「The High Priest」
Thelonious Monkに捧げた曲とのこと。確かにMonkのようなヘンテコ感?がありますね(笑)。何度も聴くうちにそのヘンテコ感が心地よく聴こえてくるのは不思議ですね。
http://www.youtube.com/watch?v=Ejx2avzwKzM

「Utopia」
「Mode to John」と並ぶ僕のお気に入り。モーダルなカッチョ良さに満ちています。ダイナミックなテーマは実にキャッチーですし、Spaulding→Morgan→Maupin→Tynerと続くソロもそれぞれグッときます。
http://www.youtube.com/watch?v=RcyOnfq-6F4

「All My Yesterdays」
ミステリアスかつ叙情的なTynerのピアノと深い悲しみに包まれたホーン隊の音色が印象的なバラード。
http://www.youtube.com/watch?v=yRErVHZG_rE

「Lee Plus Three」
この曲のみMcCoy Tyner、Herbie Lewis、Joe Chambersのリズム隊とLee Morganというカルテット編成での演奏です。そのせいか他の楽曲とは異なる雰囲気を持った小粋なブルースを聴くことができます。。特にLee Morgan好きの方は彼らしいソロを堪能できるので楽しめると思います。
http://www.youtube.com/watch?v=_CRmReTNhNQ

NFLでは我がドルフィンズが2連勝で何とか5勝5敗の五分にし、プレーオフへ望みをつなげました。エースQBとエースRBが負傷で今季絶望となり、厳しい状況が続くことに変わりはありませんが、何とか粘って欲しいですね。
posted by ez at 01:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 1960年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年11月21日

Joss Stone『Colour Me Free』

待望の新作がようやくリリース。UKソウル・ディーヴァは健在です!☆Joss Stone『Colour Me Free』
Colour Me Free: Parental Advisory
発表年:2009年
ez的ジャンル:UKソウル・ディーヴァ
気分は... :私を自由にして!

今日はJoss Stone待望の最新作『Colour Me Free』です。

UKが誇る白人ソウル・ディーヴァJoss Stoneの紹介は、『The Soul Sessions』(2003年)、『Introducing Joss Stone』(2007年)に続き3回目になります。

所属レーベルEMIとの契約トラブルで発売延期となっていたJoss Stoneの新作『Colour Me Free』ですが、ようやく発売になりましたね。

ビミョーな環境の中で発売された新作ですが、中身の方はJoss Stoneらしいオーガニックなダイナマイト・ソウル炸裂です。

とても16歳の高校生とは思えない『The Soul Sessions』(2003年)でのデビューから6年が経ち、まだ22歳のJossですがすっかりUKソウル・ディーヴァとしての貫禄がついてきましたね。

いつ聴いても、歌やソウルが大好きで、自分のソウル道を突き進んでいる感じがいいですね。まさに自分の心の赴くままに自由にソウルしているのが魅力です。

プロデュースはJoss Stone本人以外に、Conner Reeves、Johnathan ShortenといったJoss作品ではお馴染みのメンツ、前作に続くRaphael Saadiq(今回は1曲のみ)、さらにJamie Hartman、Dan Mackenzie、Phil Ramoneが務めています。全体としてはJoss主導で制作されたのでは?

ゲストとして、NasRaphael SaadiqJeff BeckSheila E.Dave SanbornJamie Hartman(Ben's Brother)が参加しています。

UK盤のジャケは以下のように異なるみたいです。
Joss Stone Colour Me Free(UK).jpg
一見すると地味ですが、僕はUK盤のジャケの方が好きですね。

現在のR&Bシーンで本作が以前のような商業的成功を収めるのかは、契約問題のゴタゴタも重なりビミョーかもしれませんが、従来からのファンを確実に魅了する作品だと思います。

全曲紹介しときやす。

「Free Me」
アルバムからのリードシングル。Meters「Do the Dirt」ネタのベースラインをバックに、Jossのダイナマイト・ヴォーカルが炸裂します。♪Free me EMI♪Free me,free me now♪と歌うJossの叫びがリアルです。この歌詞でよくEMIからO.K.が出ましたね!しかもリードシングルにするなんてJossも相当やりますな(笑)
http://www.youtube.com/watch?v=3tOxk-oM_XI

「Could Have Been You」
愁いを帯びたソウル・チューン。Jossのヴォーカルのバックで寂しげに響くピアノが印象的です。ストリングス・アレンジもグッド...なんて思っていたら何とPaul Riserが手掛けていました。
http://www.youtube.com/watch?v=IVOL2FZ8ID4

「Parallel Lines」
Jeff BeckとSheila E.がゲスト参加。Jeff BeckとJossといえば、以前にもBeckのライブにJossがゲストで招かれ、「People Get Ready」を共演していましたね。ここでは少し渋めのオリジナルで共演しています。聴きどころはBeckのギターですが、主役はJossということで派手にやりすぎないところが大人の心得でしょうか(笑)
http://www.youtube.com/watch?v=vrQpaEOkjqY

Jeff Beck & Joss Stone「People Get Ready」
 http://www.youtube.com/watch?v=P7ECdYboOVA

「Lady」
お色気ムンムンのJossにヴォーカルに悩殺されてしまいます。Jossのバックにはハモンドの音色が似合いますね。「Governmentalist」と並ぶ僕のお気に入りです。
http://www.youtube.com/watch?v=zLQdvUbyNZQ

「4 and 20」
レトロ・モードのソウル・チューン。ベタですが良いものは良いですね。
http://www.youtube.com/watch?v=EyoZllACPJ0

「Big Ole Game」
Raphael Saadiqとの共演(プロデュースも共同)。Raphael Saadiqらしい雰囲気が良く出たヴィンテージ感溢れるソウル・チューンに仕上がっています。
http://www.youtube.com/watch?v=M8RddrdJGHU

「Governmentalist」
僕の一番のお気に入り曲はNasをフィーチャーした本曲。70年代ニューソウル風のサウンドをバックに、Jossが鋭いメッセージで切り込みます。張り詰めた空気感がいいですね。Nasのラップもこの空気感に上手くハマっています。
http://www.youtube.com/watch?v=wWUppbIMPT4

「Incredible」
ファンキーな味わいがグッとくる1曲。パーカッシヴな感じが僕好みです。
http://www.youtube.com/watch?v=121uda7vM8Q

「You Got The Love」
The Source feat. Candi Statonによるダンス・クラシックのカヴァー(オリジナルは1986年リリース)。オリジナルもご機嫌なダンス・チューンでしたが、オリジナルとは異なるオーガニックな味わいのJossヴァージョンも魅力的です。
http://www.youtube.com/watch?v=0zlXbq51CFg

The Source feat. Candi Staton「You Got The Love」
 http://www.youtube.com/watch?v=pFgbtb_qozM

「I Believe It To My Soul」
Ray Charlesのカヴァー。Dave Sanbornをフィーチャーしています。JossによるRay Charlesカヴァーはいかにもハマりそうですが、期待通りのソウル・チューンに仕上がっています。Dave Sanbornも盛り上げてくれます。Phil Ramoneプロデュースというのは意外ですね。
http://www.youtube.com/watch?v=be_w_TWc7RM

「Stalemate」
Jamie Hartmanとのデュエットという形式ですが、実際はJamie HartmanのグループBen's Brotherとの共演です。今年5月にリリースされたBen's Brotherの2ndアルバム『Battling Giants』にも収録されています。彼らのシングルにもなりましたが、シングルはJossの代わりにAnastaciaがフィーチャーされています。感動的な美メロ・ロック・チューンに仕上がっています。Jossの迫力あるヴォーカルが感動を呼び起こします。
http://www.youtube.com/watch?v=kAO36OEh_4U

「Girlfriend On Demand」
ラストは感動的なバラード。James PoyserのピアノとPaul Riserによるオーケストレーションをバックに、心の奥まで届く感動的なヴォーカルを聴かせてくれます。ここでもPaul Riserがいい仕事をしています。
http://www.youtube.com/watch?v=oHxZyRaBqvk

僕の持っているUS盤には隠しボーナス・トラックで「Mr. Wankerman」が収録されています。UK盤や国内盤はボーナス・トラックが異なっています。

「Mr. Wankerman」
http://www.youtube.com/watch?v=jujgOK1GeF8

昨年の年末は大物R&Bアーティストの新作が続々リリースされ大いに盛り上がりましたが、今年はいまいちパッとしない感じですね。
posted by ez at 08:24| Comment(0) | TrackBack(1) | 2000年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年11月20日

Toninho Horta『Diamond Land』

Wayne Shorter、Joyce参加のワールド・デビュー作☆Toninho Horta『Diamond Land』
ダイアモンド・ランド
発表年:1988年
ez的ジャンル:ミナス系ブラジリアン・フュージョン
気分は... :ジワジワとミナスが伝わってきます...

今日はToninho Horta『Diamond Land』(1988年)の紹介です。

ブラジル、ミナス出身のギタリストToninho Horta『Diamond Land』の紹介は『Moonstone』(1989年)に続き2回目となります。

ジャズ/フュージョン・ファン及びブラジル音楽ファンから人気の高いToninho Hortaですが、本作『Diamond Land』は、Toninhoのワールド・デビュー作となります。

ワールド・デビューということで、アメリカ市場を意識したメロウなフュージョン・アルバムという印象が強いかもしれませんが、繰り返し聴くとToninhoの故郷ミナスジェライスを反映したブラジル色がジワジワ伝わってきます。

ジャズ/フュージョン・ファンはWayne Shorterの参加に興味を惹かれるのでは?

僕が感じるToninho Hortaの最大の魅力は、Pat Methenyに通じるピュアなサウンドなのですが、本作でもそれを存分に堪能できます。

また、ブラジル音楽ファンにとっては、Joyceの参加が嬉しいですね。また、Milton Nascimento作品のカヴァーや、Milton Nascimentoが歌ったToninho作品「Beijo Partido」をセルフ・カヴァーするなど要所にミナス色がよく出ているのが楽しいですね。

Wayne Shorter(ss)、Joyce(vo)以外には、Toninhoの妹Lena Horta(fl)、Hugo Fattoruso(key)、Flavio Venturini(key)、Iuri Popoff(b)、Robertinho Silva(ds)、Wanderly Silva(per)、Ronaldo Silva(per)、Marssal(per)、Nivaldo Ornellas(ts)等が参加しています。

メロウなフュージョン作品が好きで、Pat Methenyが好きで、ブラジル音楽が好きな人には1枚で3種類の楽しみ方ができる美味しい作品だと思います。

全曲紹介しときやす。

「Mountain Flight」
僕の一番のお気に入り。美しいメロディ・ラインにグッとくるボッサ・フュージョン。Toninhoの奏でるギターと男女スキャットの絡みを聴いていると、幸せホルモンが大量分泌してきます。エレガントなオーケストレーションが盛り上げてくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=VWBzEx-PyQo

「Ballad for Zawinul」
Wayne Shorter参加曲。ToninhoとWayneはMilton Nascimentoのアルバム『Milton』(1977年)以来の共演となります。Toninhoの妹Lena Hortaの夫であるベース奏者Iuri Popoffの作品です。Joe Zawinulに捧げられたバラードですが、どうせなら「Ballad for Shorter」にすれば良かったのに(笑)。Shorterの素晴らしいソプラノを聴いていると、気分はWeather Reportモードになってしまいます。

「Raul」
Joyce参加のアーバンなブラジリアン・フュージョン。タイトルはブラジル出身の名トロンボーン奏者Raul De Souzaに捧げられた作品です。Joyceの爽快なスキャットとHugo Fattoruso小粋なキーボード・ソロがサイコーです。ブラジル音楽ファン、フュージョン・ファン双方が納得できる仕上がりなのでは?

「Sunflower」
Lo Borges作品のカヴァー。原題は「Um Girassol da Cor de Seu Cabelo 」。Toninhoの美しいギター&スキャットに幻想的なFlavio Venturiniのキーボードが絡みます。Pat Methenyと一緒に聴きたくなる曲です。

Lo Borges「Um Girassol da Cor de Seu Cabelo」
 http://www.youtube.com/watch?v=tW0oVxWYOA8

「Luisa」
タイトルはToninhoの娘の名前です。アーバンな雰囲気のメロウ・フュージョンに仕上がっています。サックスのNivaldo OrnelasがWayne Shorterばりのテナーを聴かせてくれます。

「From the Lonely Afternoons」
Milton Nascimento作品のカヴァー。Wayne ShorterとMiltonの共演作『Native Dancer』収録曲としてお馴染みですね。Marcalが叩き出すブラジリアン・リズムにToninhoのギターとNivaldo Ornelasのテナーが絡む軽快なブラジリアン・フュージョンです。

Wayne Shorter feat. Milton Nascimento「From the Lonely Afternoons」
http://www.youtube.com/watch?v=Ks3QPNDC5rw

「Pilar」
Toninhoのギターと妹Lena Hortaのフルートという兄妹の共演が聴きどころです。瞑想しながら聴きたくなる厳粛な雰囲気を持った仕上がりです。

「Waiting for Angela」
原題「Esperando Anginha」。妻Angelaに捧げられた曲です。軽々しくない、ずっしりとした感触のある美しさがいいですね。Flavio Venturiniのキーボードの幻想的な広がりが、素晴らしいToninhoのプレイをさらに盛り上げてくれます。

「Diamond Land」
原題「Diamantina」。タイトル曲はToninhoと親交のあるギタリストJuarez Moraira作品。いきなりティンパニの連打で始まり面食らいましたが、爽快なメロウ・フュージョンに仕上がっています。最後はミナスらしいマーチング・バンド風に終了します。

「Broken Kiss」
原題「Beijo Partido」。Horta自身のヴァージョンは『Terra Dos Passaros』(1979年)にも収録されています。Milton Nascimento『Minas』(1975年)収録曲としてお馴染みですね。Joyceが参加し、前半はToninhoがポルトガル語で、後半はJoyceが英語で歌っています。Joyceの透明感溢れるヴォーカルにグッときます。

Milton Nascimento「Beijo Partido」
 http://www.youtube.com/watch?v=emc9GhtVg0Y

Pat Methenyと並んでデトックス効果のある音楽だと思います。
posted by ez at 00:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 1980年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする