2009年11月03日

Kenny Dorham『Quiet Kenny』

秋の夜には静かなる男がよく似合う!☆Kenny Dorham『Quiet Kenny』
Quiet Kenny
録音年:1959年
ez的ジャンル:いぶし銀系ハードバップ
気分は... :静かなるケニー

今日はジャズ気分です。
ということで、Kenny Dorham『Quiet Kenny』(1959年)をセレクト。

Kenny Dorham(1924-1972年)はテキサス出身のジャズ・トランペッター。Billy Eckstine、Dizzy Gillespie、Lionel Hampton等のビッグ・バンドやCharles Parkerのグループなどの活躍しました。Art BlakeyのJazz Messengersの初代メンバーとしても活動し、Messengers退団後の1950年代半ばには自身のグループJazz Profetsを結成しています。

1950年代半ばから1960年代半ばにかけてコンスタントにレコーディングを行っていますが、1972年に腎臓病により死去しています。

僕のKenny Dorhamに対するイメージは"いぶし銀"って感じですかね。
当ブログで紹介した『Page One』『In 'N Out』といったJoe Henderson作品での印象が強いので、余計にそんなイメージなのかもしれません。

多分、僕がKenny Dorhamの名前を初めて意識したのは、『Page One』収録の名曲「Blue Bossa」の作者としてかもしれません。Hendersonの初リーダー作のためにDorhamが書き下ろした哀愁ボッサは今でも大好きな曲です。

Dorhamのリーダー作ということになると、やはり『Afro-Cuban』(1955年)と『Quiet Kenny』(1959年)の2枚ですかね。ジャズ・ファンはご存知の通り、前者は"動のケニー"、後者は"静のケニー"を代表する作品ですね。

今回は秋に似合う"静のケニー"『Quiet Kenny』(1959年)をセレクトしました。

メンバーはKenny Dorham(tp)、Tommy Flanagan(p)、Paul Chambers(b)、Art Taylor(ds)というワン・ホーン編成です。

日本ではかなり人気のあったアルバムらしいですね。
その分、ジャズ・ファンによる手厳しい意見もあるみたいですが。

僕のような"永遠のジャズ初心者"にとっては、とても聴きやすいアルバムですね。決して派手さはないですが、逆にそこがいい気がします。Kenny Dorhamというミュージシャンの人柄が音に滲み出ている感じが好きです。

人情味溢れる狭い小料理屋で一杯やるような喜びを感じる作品ですね。

全曲紹介しときやす。

「Lotus Blossom」
邦題「蓮の花」。Dorhamのオリジナルですが、数多くのジャズ・ミュージシャンによって演奏されている名曲ですね。Sonny Rollinsなどは「Asiatic Raes」の曲名で演奏していますね。オリジナルはオリエンタル・テイストのクールに疾走する格好良いハードバップに仕上がっています。多少フラフラしながらもクールに疾走するDorham、 エレガントなピアノに惚れ惚れするFlanagan、ドラム・ソロでバシッとキメてくれるTaylorが印象的えですね。やはりアルバムで一番好きですね。
http://www.youtube.com/watch?v=T2OL7_4Mmt8

「My Ideal」
フランスの人気俳優Maurice Chevalierのハリウッド進出第一弾となった映画『The Playboy of Paris』(1930年)で歌われたスタンダード(Leo Robin/Richard A. Whiting/Newell Chase作)。美しくリリカルなバラードに仕上がっています。抑えた演奏がジャケのDorhamの枯れた雰囲気とマッチしていて好きですね。このシブさがたまりません。
http://www.youtube.com/watch?v=fPNDsRwPFug

「Blue Friday」
Dorhamのオリジナル。酒場で酔いどれてグダグダ・モードの気分で聴きたくなる演奏ですね(笑)。Chambersベースに誘われ、Dorhamが雰囲気のあるプレイを聴かせてくれます。

「Alone Together」
1932年のミユージカル『Flying Colors』の挿入歌であったスタンダード(Arthur Schwartz/Howard Dietz作品)。当ブログではDinah Washington『Dinah Jams』収録)、Stanley Turrentine『Easy Walker』収録)のヴァージョンを紹介済みです。ここでは正攻法にスタンダードを聴かせてくれます。哀愁ムードに浸り方はどうぞ!

「Blue Spring Shuffle」
Dorhamのオリジナル。塩辛と日本酒で一杯やりたくなるようなシブい1曲。Chambersのベースが目立っています。

「I Had the Craziest Dream」
1942年の映画『Springtime in the Rockies(邦題:ロッキーの春風)』で歌われたスタンダード(Mack Gordon作詞、Harry Warren作曲)。「Lotus Blossom」と並んで好きな演奏です。落ち着いた軽やかさって感じが好きですね。Flanaganのソロを聴いているとホッとします。

「Old Folks」
1938年にDedette Lee Hill/Willard Robinsonによって作られたスタンダード。当ブログではMiles Davis『Someday My Prince Will Come』収録)の演奏を紹介済みです。Milesの演奏もそうですが、この曲は男の哀愁感が漂う演奏が似合いますね。その意味ではDorhamにぴったりかも?

「Mack the Knife」
CDのボーナス・トラックとして追加収録されたスタンダード。Bertolt Brecht/Kurt Weillによる『The Threepenny Opera(三文オペラ)』の中の1曲ですね。「Moritat」の曲名でも演奏されています。当ブログではこれまで、Sonny Rollins『Saxophone Colossus』収録)、Jimmy Smith『Crazy! Baby』収録)のヴァージョンを紹介済みです。なかなか小粋な演奏でグッときます。でも"静かなるケニー"というよりも"動き出すケニー"って雰囲気かもしれませんね。

"動のケニー"を聴きたい方は『Afro-Cuban』(1955年)をどうぞ!
『Afro-Cuban』
アフロ・キューバン
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2009年11月02日

Jamie Principle『The Midnite Hour』

シカゴ・ハウスを代表するゲイシンガー唯一のアルバム☆Jamie Principle『The Midnite Hour』
Jamie Principle Midnite Hour.jpg
発表年:1992年
ez的ジャンル:シカゴ・ハウス系ゲイシンガー
気分は... :アルバムで聴くのは邪道かもしれませんが...

今回は久々にハウス作品を取り上げたい気分です。
セレクトしたのはJamie Principle『Midnite Hour』(1992年)

ハウス・アルバムの紹介は、2008年9月に紹介したMoodymann『Silentintroduction』(1997年)以来になります。

本当は90年代前半によく聴いていたStrictly Rhythm、III East、nervous、Madhouse、Azuli等レーベル単位のコンピ・アルバムを取り上げたいのですが、現在入手困難で音源も殆ど見つからないので、Jamie Principle『The Midnite Hour』にしました。

ハウス作品の記事で毎回書いていますが、そもそもハウスを家で聴いたり、アルバム単位で聴くいう行為自体が邪道ですが...まぁ、別の意味でのハウス(自宅)・ミュージックということで(笑)

Jamie Principleはシカゴ・ハウスを代表するプロデューサー/男性(ゲイ)シンガー。

今日紹介する『The Midnite Hour』(1992年)以前にも、Frankie Knucklesプロデュースの「Waiting On My Angel」(1985年)をはじめ、「Your Love」(1986年)、「Baby Wants To Ride」(1987年)、「Bad Boy」(1988年)、「I'm Gonna Make You Scream」(1988年)、「Rebels」(1988年)、「Cold World」(1989年)、「Date With The Rain」(1990年)といったシングルをリリースしています。

「Waiting On My Angel」(1985年)
 http://www.youtube.com/watch?v=cMYswbnLaqg
「Your Love」(1986年)
 http://www.youtube.com/watch?v=kup0BdoLzbg
「Baby Wants To Ride」(1987年)
 http://www.youtube.com/watch?v=sbfcIcaNiN0
「Bad Boy」(1988年)
 http://www.youtube.com/watch?v=eaCllYc6Yyo
「Rebels」(1988年)
 http://www.youtube.com/watch?v=g7FfBdqhUVE
「Cold World」(1989年)
 http://www.youtube.com/watch?v=MIrEvATOrpA

『The Midnite Hour』は、Robert Owens『Visions』(1990年)と並んで、よく聴いていた男性(ゲイ)シンガーのハウス・アルバムです。

当ブログで過去に紹介したCrystal WatersCe Ce PenistonUltra Nateといったハウス・ディーヴァの作品と比較して、危険な香りが漂うのが魅力でしたね。

儚い哀愁ヴォーカルが魅力であったRobert Owensに対して、Jamie Principleは倒錯の世界のダンス・ミュージックって感じが好きでしたね。

本作『The Midnite Hour』では、同じくシカゴ出身の人気プロデューサーSteve "Silk" Hurley がプロデュース、アレンジ、ミックスを担当しています。本作が自宅で聴けるハウス・アルバムに仕上がっているのはHurleyのおかげだと思います。

ちょうど彼が手掛けたCe Ce Peniston「We Got a Love Thang」がヒットした頃であり、Hurleyの仕事の充実ぶりが窺えます。

全曲紹介しときやす。

「Private Joy」
鐘の音と共にスタートする倒錯ワールド。初期Princeあたりにも通じる変態チックな雰囲気がいいですね。

「Hot Body」
今も昔も一番のお気に入り曲。Jamie Principleの魅力とSteve "Silk" Hurleyの仕事ぶりが見事に噛み合った1曲だと思います。ハウスを聴かない人でも気に入るダンス・ミュージックに仕上がっています。YouTubeにはリミックスしか無かったので、そちらを紹介しておきます。ある意味Steve "Silk" Hurleyらしい仕上がりですが。

「Hot Body(Silky Soul 12')」
http://www.youtube.com/watch?v=UzUpQxmCa7Q

「You're All I've Waited 4」
「Hot Body」と並ぶ本作のハイライト。危険な快楽ワールドって雰囲気が好きですね!ハウス好きの人はグッとくるはずです。

「Do It」
哀愁のメロディにグッとくる1曲。このあたりはアルバムを意識した仕上がりかもしれませんね。M. Docのラップもいいアクセントになっています。

「Sexuality」
スッキリとしたサウンドがJamieっぽくないかも?と思ったら、この曲のみSteve "Silk" Hurleyのプロデュースではありません。個人的にはMr. Fingers『Introduction』あたりと一緒に聴きたくなります。

「Taste My Love」
このあたりはR&Bチューンとしても楽しめるミッド・チューンに仕上がっています。

「Please Don't Go Away」
キャッチーさという点では「Hot Body」と並んで聴きやすいハウス・チューン。ハウス好きには少し物足りないかもしれませんが...

「The Midnite Hour」
本作以前からのJamieファンは、小細工なしにグイグイくるこのタイトル曲が一番グッとくるのでは?Chantay Savage、Madeline Stricklandらのソウルフル&ダイナマイトなバック・ヴォーカル陣も盛り上げてくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=GQ9xVr_LKao

「I've Cried All My Tears」
「If It's Love」
ゲイシンガーならではの哀愁モードのスロウ・チューン2曲。特に「If It's Love」はグッときますよ。Robert OwensやJamie Principleって、"Tears"という言葉がやけにフィットしますね。オープニングを受けて、ラストも鐘の音で幕を閉じます。

「If It's Love」
http://www.youtube.com/watch?v=MJr9IoYpbts

Robert Owens『Visions』(1990年)もそのうち紹介したいですね。
posted by ez at 00:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 1990年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年11月01日

Diana Ross『Diana Ross』

Supremes脱退後のソロ第一弾☆Diana Ross『Diana Ross』
Diana Ross
発表年:1970年
ez的ジャンル:ポップ&キュート系ソウル・ディーヴァ
気分は... :華がありますな!

久々にDiana Rossのソロ作品です。

『Diana』(1980年)以来、2回目の紹介となる作品は『Diana Ross』(1970年)です。『Diana Ross』は、The Supremesを脱退したDiana Rossのソロ・デビュー・アルバムとなります。

ジャケ写真において、ラフな服装でかじりかけのリンゴ片手にイタズラっぽい表情でポーズを取るDianaの姿が実に印象的ですよね。このジャケだけで"買い"という気分になります。

プロデュースおよびソングライティングはAshford & Simpson(Nickolas Ashford & Valerie Simpson)が務めています(1曲のみJohnny Bristolがプロデュース)。本作はこのソウル界のおしどり夫婦が書く楽曲の素晴らしさを堪能できる作品でもありますね。

全10曲のうち、半数以上は他アーティストのカヴァーであり、多くはオリジナルとは異なる雰囲気なので聴き比べるのも楽しいかもしれませんね。

Marvin Gaye & Tammi Terrellのカヴァー2曲が興味深いですね。本作レコーディングと前後してTammi Terrellが他界しており、Tammiへの追悼の意も込められているのでしょう。

シンガーとしては"ソウルフル"より"ポップ"という形容詞が似合うDianaですが、彼女の持つ華やかでキュートな魅力が上手くパッケージされた作品だと思います。特にPaul Riserがアレンジを手掛けた曲が絶品ですな!

本作を皮切りに、ソロ・アーティストとしてもDianaはスター街道を歩み続けることになります。

全曲紹介しときやす。

「Reach Out And Touch (Somebody's Hand) 」
記念すべきDianaのソロ・デビュー・シングル。残念ながらチャート・アクションは振るいませんでしたが、ゴスペル・タッチな曲を高らかに歌い上げるDianaのヴォーカルはなかなか感動的だと思います。Paul Riserによるアレンジもグッド!Aretha Franklinもライブで歌っていましたね。
http://www.youtube.com/watch?v=g-7qCG2_aaA

「Now That There's You」
ジワジワと盛り上がってくる感じがグッドなバラード。実に表情豊かなDianaのヴォーカルが印象的です。
http://www.youtube.com/watch?v=MUNbx7TLA1c

「You're All I Need To Get By」
元々はMarvin Gaye & Tammi Terrellが1968年にレコーディングしている楽曲です。Aretha FranklinDionne Warwickもカヴァーしています。キュートなDianaの声質とマッチした仕上がりが好きです。

「These Things Will Keep Me Loving You」
この曲のみJohnny Bristolがプロデュース&ソングライティング(Johnny Bristol/Harvey Fuqua作)を手掛けています。曲中の男性ヴォーカルもJohnny Bristolです。元々はThe Velvelettesの1966年のヒット・シングルです。この手の曲でもSupremesっぽくならないあたりに、ソロ・アーティストDiana Rossを実感できるのでは?

The Velvelettes「These Things Will Keep Me Loving You」
 http://www.youtube.com/watch?v=yakxVC15A0c

「Ain't No Mountain High Enough」
見事全米No.1となった2ndシングル。元々は1967年のMarvin Gaye & Tammi Terrellのヒット・シングルとして知られている曲ですね。Marvin & Tammiヴァージョンとは異なる壮大なアレンジが絶品です(アレンジャーはPaul Riser)。コンサートでもハイライトとなる曲であり、Dianaファンは外せない1曲ですね。Grandmaster Slice & Izzy Chill「Slice, I Get Nice」でサンプリングされています。
http://www.youtube.com/watch?v=8mm_lnHVz4U

Marvin Gaye & Tammi Terrell「Ain't No Mountain High Enough」
 http://www.youtube.com/watch?v=Xz-UvQYAmbg

「Something On My Mind」
元々はSyreeta Wright(Rita Wright名義)のシングル曲。曲自体がいいですね。さすがはAshford & Simpsonだと感心してしまいます。
http://www.youtube.com/watch?v=UBCHdrvsqEY

「I Wouldn't Change The Man He Is」
元々はBlinky(Saundra Williams)が1968年にリリースしたシングル曲です。60年代の匂いが漂うバラードに仕上がっています。

「Keep An Eye」
The Supremes時代の楽曲の再録(オリジナルはアルバム『Love Child』収録)。実に興味深い選曲ですね。こちらのヴァージョンの方が幾分大人びて聴こえるかも?

「Where There Was Darkness」
悪くはありませんが、アレンジがイマイチって気がします。
http://www.youtube.com/watch?v=a77QBEUli1s

「Can't It Wait Until Tomorrow」
この曲はPaul Riserがアレンジを担当。そのおかげでエレガントなサウンドに包まれたDianaのヴォーカルが輝いています。

「Dark Side Of The World」
ラストは60年代にMarvin Gayeがレコーディングしていた楽曲。どちらかと言えば、DianaよりもMarvin向きの楽曲かもしれませんね。MarvinヴァージョンはLittle Brother「Extra Hard」でサンプリングされています。
http://www.youtube.com/watch?v=xL0u6Fym558

Marvin Gaye「Dark Side Of The World」
 http://www.youtube.com/watch?v=eaaZO9sYE7U

僕が保有するCD(2002年再発)は、ボーナス・トラックとして未発表ヴァージョン、未発表曲が8曲追加されています。特に「Time And Love」「Stoney End」という2曲のLaura Nyro作品にグッときます。「Stoney End」はBarbra Streisandのヒットでお馴染みですね。
posted by ez at 00:02| Comment(4) | TrackBack(0) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする