2009年11月15日

Elis Regina『Elis』

シンガーとしての成熟ぶりに惚れてしまいます。☆Elis Regina『Elis』
人生のバトゥカーダ
発表年:1974年
ez的ジャンル:MPBの女王
気分は... :Elisの歌力でパワーアップ!

MPBの女王Elis Reginaの4回目の紹介です。

これまで紹介してきたElis Regina作品は以下の3枚。

 『Elis Regina in London』(1969年)
 『Elis, Como e Porque(Como & Porque)』(1969年)
 『Em Pleno Verao』(1970年)

4枚目に紹介するのは『Elis』(1974年)です。

これまで紹介してきた3作品はいずれも70年前後のアルバムですが、それら比較すると1974年リリースの本作はかなり異なる印象を受けるかもしれません。イケイケのElisから成熟のElisへステージアップしている感じですかね。

前述の3作品ほどのキャッチーさは無いかもしれませんが、シンガーとしての"歌力"には一層磨きがかかっています。本作を聴いていると、Elisが単なるブラジルの人気歌手ではなく"国民的歌手"である理由がわかる気がします。

全10曲ですが、Fernando Brant/Milton Nascimento作品が3曲、Aldir Blanc/Joao Bosco作品が3曲、Gilberto Gil作品が2曲、Ary BarrosoLupicinio Rodriguesといった偉大な作曲家の作品が各1曲という構成です。

Milton NascimentoJoao BoscoというElisのお気に入り二人の作品が多くのが目立ちますね。特にJoao Boscoは"アーティスト発掘名人"Elisにより才能を認められ、成功への道を歩み始めていた時期ですね。

夫であるCesar Camargo Mariano(Maria Ritaの父親)によるアレンジもElisの歌を引き立てます。

成熟期に入ったElis Reginaの表現豊かな歌を堪能しましょう。

全曲紹介しときやす。

「Na Batucada Da Vida」
邦題「人生のバトゥカーダ」。「Aquarela do Brasil(ブラジルの水彩画)」の作者としてお馴染みのAry Barroso作品。このサンバ・カンサォンをElisは愁いを帯びつつも力強く歌い上げます。この1曲だけでElisの"歌力"に引き込まれます。
http://www.youtube.com/watch?v=I52y6UmZYW0

「Travessia」
Milton Nascimento作品の1曲目。Miltonの1stアルバム『Milton Nascimento』(再発時のタイトル『Travessia』)収録の名曲です。夫Cesarのエレピをバックに味わい深い歌を聴かせてくれます。Miltonが作った宇宙でElisという星が光り輝きます。Miltonのオリジナルと聴き比べてみるのも楽しいのでは?この曲に関しては、Bjorkのカヴァーも僕のオススメです。
http://www.youtube.com/watch?v=3JDvbCg_4h0

Milton Nascimento「Travessia」
 http://www.youtube.com/watch?v=x7QcCrUqMkg
Bjork「Travessia」
 http://www.youtube.com/watch?v=WL6WU4j6sBM

「Conversando No Bar」
Milton Nascimento作品の2曲目。Elisの歌手としての表現力の素晴らしさを実感できます。中盤でのシフト・チェンジもいいですね。
http://www.youtube.com/watch?v=VKHFXDAY7TI

「Ponta De Areia」
Milton Nascimento作品の3曲目。Miltonのヴァージョンは『Minas』(1975年)で聴くことができます。また、MiltonとWayne Shorterとのコラボ『Native Dancer』(1974年)やEarth, Wind & Fire『All 'N All』(1977年)(オリジナルLPB面の「Brazilian Rhyme」)にも収録されているのでブラジル音楽ファン以外にもお馴染みの曲なのでは?当ブログでは以前にEsperanza Spaldingのカヴァー(アルバム『Esperanza』収録)を紹介しています。

曲自体が大好きなので、これをElisが歌ってくれるだけで嬉しいですね。Elisが歌うこと名曲の魅力が倍増しています。天まで届きそうな素晴らしい歌声にただただ感動です。Elisの音源を紹介できないのは残念ですが、前述のEsperanza SpaldingのカヴァーはElisのヴァージョンを意識したものだと思います。

Milton Nascimento「Ponta de Areia」
 http://www.youtube.com/watch?v=DGpRCGGB37s
Esperanza Spalding「Ponta De Areia」
 http://www.youtube.com/watch?v=e9sN3ySkkz0

「O Mestre Sala Dos Mares」
Joao Bosco作品の1曲目。軽快な序盤から徐々にエモーションが高まるミディアム・サンバに仕上がっています。オリジナルはJoaoの2ndアルバム『Caca A Raposa』(1975年)に収録されています。
http://www.youtube.com/watch?v=n6-i_XQsxCE

Joao Bosco「O Mestre Sala Dos Mares」
 http://www.youtube.com/watch?v=B-jb3Hlaj9s

「Amor Ate O Fim」
Gilberto Gil作品の1曲目。軽快なジャジー・サンバに仕上がっています。Cesar Camargo Marianoによる小粋なアレンジもグッド!

「Dois Pra La, Dois Pra Ca」
Joao Bosco作品の2曲目。哀愁モードのムーディなボレロが表現豊かなElisの歌と良く似合います。オリジナルはJoaoの2ndアルバム『Caca A Raposa』(1975年)に収録されています。
http://www.youtube.com/watch?v=-JV1u0txHz0

Joao Bosco「Dois Pra La, Dois Pra Ca」
 http://www.youtube.com/watch?v=9KroiMaWD4k

「Maria Rosa」
Lupicinio Rodriguesによるサンバ・カンサォン。前曲の流れを受けて本曲もボレロ調です。Elisの歌力が引き立つサウダージ・ムードがいいですね。

「Caca A Raposa」
Joao Bosco作品の3曲目。ドラマチックな雰囲気が実にいいですね。この曲のElisは歌手というよりオーラ出まくりで約を見事に演じきる女優って雰囲気ですね。Joaoの3曲の中では一番好きかも。

Joao Bosco「Caca A Raposa」
 http://www.youtube.com/watch?v=saeHo2T_a_0

「O Compositor Me Disse」
ラストはGilberto Gilの2曲目。本作のために書き下ろされたものです。Gilbertoのデモではリラックスした雰囲気の曲であったらしいのですが、Elisはじっくりと聴かせるバラードに仕上げています。
posted by ez at 00:47| Comment(2) | TrackBack(0) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする