2009年12月20日

Flora Purim『Butterfly Dreams』

Airto Moreira、George Duke、Stanley Clarke、Joe Henderson参加の幻想的なアルバム☆Flora Purim『Butterfly Dreams』
Butterfly Dreams
発表年:1973年
ez的ジャンル:おしどり夫婦系ブラジル/フュージョン女性シンガー
気分は... :祝バルサ!

先程までクラブW杯の決勝「バルセロナ対エストゥディアンテス」をTV観戦。
日本人として日本からUAEへの開催地変更は残念な思いもありますが、大会の目玉である欧州代表クラブがコンディションの調整不足を言い訳にできなくなった点でUAE開催は正解だと思います。

バルサ・ファンの僕としてはヒヤヒヤもんの勝利でしたが、何とかメッシが決勝ゴールを決めて安堵の気持ちです。それ以上に素晴らしいサッカーを観せてくれたエストゥディアンテスを称えたいと思います。

この流れでいくとアルゼンチン人アーティストを紹介すべきなのですがブラジル人アーティストです(笑)

今回はブラジル/フュージョン・ファンに人気の女性シンガーFlora Purimです。
夫のドラマー/パーカッション奏者Airto Moreiraとのおしどり夫婦ぶりは有名ですね。

Flora Purimは1942年ブラジル、リオデジャネイロ生まれ。

Airto Moreiraと共に1968年に米国へ進出し、Chick Coreaが結成したReturn To Forever(RTF)の第1期メンバーとして、当ブログでも紹介した『Return To Forever』(1972年)、『Light As A Feather』(1972年)に参加しています。

その後もソロ・アルバム、夫Airto Moreiraとの共作アルバムをリリースすると共に、様々なジャンルのアーティストのレコーディングに参加しています。

Airto Moreiraのアルバムは2度紹介していましたが、Flora Purimのソロ作は紹介する機会を逸していました。彼女の参加作品を数多く紹介していたので紹介済みの気分になっていたのかもしれません。

これまで当ブログで紹介したFlora Purim参加アルバムとして、前述のRTFの2作品、夫Airtoの『Identity』(1975年)、『Samba de Flora』(1988年)、さらにはDuke Pearson『How Insensitive』(1969年)、Santana『Borboletta』(1974年)、George Duke『A Brazilian Love Affair』(1979年)があります。

僕が現在保有しているFlora Purimのソロ作は、『Butterfly Dreams』(1973年)、『Nothing Will Be as It Was...Tomorrow』(1977年)、『Everyday Everynight』(1978年)、『Carry On』(1979年)の4枚です。

今回紹介する『Butterfly Dreams』(1973年)は、『Light As A Feather』を最後にRTFを抜けた後にリリースされた、アメリカ進出後の初ソロ・アルバムです(アメリカ進出前にブラジル国内でソロ作をリリースしているようです)。

レコーディングにはFlora Purim(vo)以下、Joe Henderson(ts)、George Duke(key)、David Amaro(g)、Ernie Hood(zither)、Stanley Clarke(b)、Airto Moreira(ds、per)が参加し、Orrin Keepnewsがプロデュースしています。

なかなか豪華メンバーですが、夫Airto以外では、後にThe Clarke/Duke Projectを組むGeorge DukeStanley Clarkeの活躍が目立ちます。特にRTFの同僚Stanley Clarkeは演奏のみならず、楽曲提供、アレンジ面でもいい仕事しています。

ジャケのイメージそのままに、幻想的な雰囲気で全体が貫かれています。
Floraのヴォーカルを中心にブラジル音楽とフュージョンがいい塩梅で融合しているのがいいですね。

よりキャッチーかつコンテンポラリーな印象が強い後年の作品も好きですが、Flora Purimというアーティストの立ち位置を確認できる作品という意味では本作が最適だと思います。

Flora Purimと参加ミュージシャン達が織り成す幻想の音世界を楽しみましょう!

全曲を紹介しときやす。

「Dr. Jive(Part 1)」
Stanley Clarke作。ブラジリアン・テイストのファンク・サウンドをバックに、Floraのスキャットが駆け巡ります。ブラジルらしい土着的なリズムにグッときますね。

「Butterfly Dreams」
タイトル曲はRTFでお馴染みのNeville Potter作詞、Stanley Clarke作曲。タイトルのように幻想的な雰囲気が支配します。中盤はJoe Henderson、終盤はGeorge Duke、Stanley Clarkeのプレイが目立ちます。
http://www.youtube.com/watch?v=vgmXvrr34JY

「Dindi」
本作のハイライト曲その1。Aloysio de Oliveira作詞、Antonio Carlos Jobim作曲。Astrud Gilberto、Claudine Longet等数多くのアーティストがカヴァーしている名曲です。ボッサな味わいのみならず、浮遊感漂うフュージョンらしい仕上がりが本ヴァージョンの特徴ですね。
http://www.youtube.com/watch?v=l74PaRaaYE4

「Summer Night」
1936年のミュージカル映画『Sing Me a Love Song』のために書かれたスタンダード(Al Dubin作詞、Harry Warren作曲)。Miles Davis等もカヴァーしています。幻想的なFloraのスキャットでスタートしますが、中盤以降はジャズ/フュージョンらしい演奏を堪能できます。George Dukeのピアノがいい感じです。

「Love Reborn」
Flora Purim作詞、George Duke作曲。ブラジル音楽好きにはグッとくるボッサ・ジャズ。David Amaroのギターがボッサ・ムードを盛り上げてくれます。George Dukeのヴァージョンは当ブログで紹介した『A Brazilian Love Affair』に収録されています。

「Moon Dreams」
本作のハイライト曲その2。Egberto Gismonti作品(原題『O Sonho』)。Egberto Gismontiが飛躍のチャンスをつかんだ名曲ですね。Flora Purimが参加したWalter Wanderley『Moondreams』(1969年)でもカヴァーされています。 オリジナルのミステリアスな雰囲気を残しつつ、疾走感溢れるパーカッシヴなブラジリアン・フュージョンに仕上がっています。僕がイメージするAirto Moreira & Flora Purimに最も近い演奏であり、一番のお気に入り曲です。

「Dr. Jive(Part 2)」
「Dr. Jive」のPart 2です。Stanley Clarkeのベースが最高にキマっています!David Amaroのギターもグッときますね。エレクトリック・マイルス的な雰囲気もあっていいですね!

「Light As A Feather」
ラストは当ブログでも紹介したReturn To Forever『Light As A Feather』のタイトル曲を再演しています。10分を超えるRTFヴァージョンの約半分の尺というのが聴きやすくていいですね。

『Nothing Will Be as It Was...Tomorrow』(1977年)、『Everyday Everynight』(1978年)、『Carry On』(1979年)も随時紹介したいと思います。

『Nothing Will Be as It Was...Tomorrow』(1977年)
ナッシング・ウィル・ビー・アズ・イット・ワズ...トゥモロウ+2

『Everyday Everynight』(1978年)
エヴリデイ、エヴリナイト

『Carry On』(1979年)
キャリー・オン(紙ジャケット仕様)

Airto Moreira/Flora Purim作品はさらに充実させていきたいですね。
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2009年12月19日

Luis『Do it』

ラブリーなジャーマン女性ヴォーカル☆Luis『Do it』
Do It
発表年:2009年
ez的ジャンル:ジャーマン女性シンガー
気分は... :女性は何で靴好きなのだろう?

今日はドイツから届いたラブリーな新譜Luis『Do it』です。

ここ1〜2週間ほどハマっている新譜がLuis『Do it』Karen Lano『My Name Is Hope Webster』の2枚。

Luisはドイツ人ユニット、Karen Lanoはフランス人女性SSWです。今年の僕の欧州志向を反映していますね。今日はLuisを紹介します。

Luisは女性シンガーAngela LuisとギタリストMo Soul(Moritz Stahl)から成るドイツのユニット。本作『Do it』がデビュー・アルバムとなります。

Angela Luisはドイツはケルン生まれ。幼い頃に聴いたTracy Champmanに影響を受け、音楽の道を志すようになります。ケルン音楽大学で学んだ後、ジャズ・ボッサ・バンドを結成し、ドイツ〜ヨーロッパ〜ブラジルをツアーで回っています。帰国後、Mo Soulを結成します。

ジャンルで説明するのが非常に難しい作品ですが、全体的にはアコースティック・テイストのジャズ/ソウル・アルバムという印象ですね。ジャズ・ボッサ・バンドを組んでいた影響も随所で聴くことができ、ボッサ好きの人も楽しめます。

演奏自体は実にシンプルで、Angelaのキュートなヴォーカルの魅力を引き出すことに重点を置いた創りになっています。リラックスしたムードの中で自分達が創り出す音楽を自ら楽しんでいる様子が伝わってくるのがいいですね!

Linda Lewisのようなアコースティック・ソウル、Jill Scottのようなジャジー・ソウル、ブラジル音楽のナチュラル感、ヨーロッパ・クラブ・ジャズのスタイリッシュ感が上手く融合した作品だと思います。

聴いていると何気ない幸せモードになれる作品です。
特に女性は絶対にハマる1枚だと思いますよ。

Angela Luisは靴のコレクターなのだとか。
ジャケで彼女が履いている靴や右下に写っている靴も彼女のコレクションの一部だそうです。女性って何故こんなにも靴好きなんですかね(笑)

全曲を紹介しときやす。

「I Can't Wait」
Angelaのシンガーとしての魅力が十分に伝わってくるオープニング。爽やかで楽しげなアコースティック・ソウルに仕上がっています。まさにシンプル・イズ・ベストって感じですね。
http://www.youtube.com/watch?v=l4I-k31Pevs

「Do It (Street Vers) 」
タイトル曲はJill Scottを彷彿させるジャジー・ソウルに仕上がっています。バック・ヴォーカルのRachel "Soulsista" Scharnbergとの呼吸もピッタリです。ネオ・ソウル好きもグッとくるはず!

「Birdfriends」
Angelaのキュートなヴォーカルに相当グッとくる1曲。キャッチーさではアルバム随一なのでは?きっとLinda Lewis好きの人ならば気に入るであろう軽快なアコースティック・チューンです。

「Teach Me」
ピアノも加わった大人のジャジー・チューン。ボッサ・テイストの仕上がりにブラジル音楽ファンもグッとくるのでは?Mo Soulのギターもロマンティックです。
http://www.youtube.com/watch?v=69jLi6VH9dk

「Sometimes」
ジワジワと胸に迫ってくるアコースティック・ソウル。ホーン隊も盛り上げてくれます。

「New」
ナイト・ラウンジ・モードのしっとりとしたジャズ・ヴォーカル・チューン。

「Supposed to」
優しく包み込むようなAngelaのヴォーカルにグッときます。アコギ&エレピのバックもグッド!後半からはストリングスも加わります。

「Autumn」
ブルージーなジャジー・チューン。Angelaのキュートなヴォーカルの魅力を堪能しましょう。
http://www.youtube.com/watch?v=pWzXlke6MM4

「Lift It」
浮遊するグルーヴ感が格好良いジャジー・チューン。ネオ・ソウル好きの人は気に入るはず!YouTubeのライブ映像はスタジオ録音よりもテンポアップしています。
http://www.youtube.com/watch?v=oz79M8sCuZI

「Goddess」
落ち込んでいる時に聴くと、女神が舞い降りてきそうな感動的なバラード。

「Good Dad」
オーソドックスなジャズ・マナーの曲ですが、実に小粋にキメてくれます。

「Home」
シリアス・モードな仕上がりです。アルバムでは一番地味な曲かも?

「Do It (Jazzclub Vers) 」
ラストはタイトル曲の別ヴァージョン。クラブジャズ・テイストのスタイリッシュな仕上がりです。
http://www.youtube.com/watch?v=SKbD9T8ek0E

Karen Lano『My Name Is Hope Webster』も近々紹介したいのですが、現在Amazonでは扱いがありません。取扱い次第紹介しますね。
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2009年12月18日

Rickie Lee Jones『Flying Cowboys』

約5年ぶりのリリースとなった4thアルバムはWalter Beckerプロデュース☆Rickie Lee Jones『Flying Cowboys』
Flying Cowboys
発表年:1989年
ez的ジャンル:姉御系女性SSW
気分は... :素晴らしき再スタート!

女性シンガーソングライターRickie Lee Jonesの3回目の登場です。

デビュー作『Rickie Lee Jones』(1979年)、2nd『Pirates』(1981年)に続いて紹介するのは、4thアルバム『Flying Cowboys』(1989年)です。

先月に新作『Balm in Gilead』をリリースし、健在ぶりを示してくれたRickie Lee Jones

『Balm in Gilead』
Balm in Gilead

今日紹介する『Flying Cowboys』(1989年)は、前作『The Magazine』(1984年)から5年ぶりにリリースされた作品です。

パリで知り合ったフランス人ミュージシャンPascal Nabet-Meyerと結婚し、娘Charlotteを出産しRickie姉さんは、家族と過ごす時間を優先するため、音楽シーンから離れてしまいます。そして、長期の育児休暇を終えて制作されや作品が本作『Flying Cowboys』です。

大ヒットした『Rickie Lee Jones』『Pirates』の成功に反して、それが大きなプレッシャーとなり、L.A.を離れ、N.Y.、パリへと逃避行したRickie姉さんでしたが、本作ではそんな時期が嘘のように充実した歌を披露してくれます。

本作でプロデューサーに起用されたのがSteely DanWalter Beckerというのも興味深いですね。

全体としてはRickie姉さんの歌力を際立たせるシンプルな音空間が印象的です。

サウンド自体は、80年代後半、あるいはWalter Beckerらしいクリアなものでドラム・プログラミングも用いていますが、実に落ち着いた絶妙のサウンド・プロダクションでRickie姉さんの歌を支えています。個人的には、当時一世を風靡していたDaniel Lanoisのプロデュース作品で聴かれるような音空間を意識したサウンドを創ろうとしていたのでは?と推察します。

レコーディングには、Walter Becker、Pascal Nabet-Meyer以外にBuzz Feiten(g)、Dean Parks(g)、Neil Stubenhaus(b)、Rob Wasserman(b)、Ed Alton(b)、John Robinson(ds)、Peter Erskine(ds)、Jim Keltner(drum machine effects)、Greg Phillinganes(key)、Michael Omartian(p)、Michael Boddicker(syn)、Randy Brecker(tp)、Paulinho Da Costa(per)等のミュージシャンが参加しています。また、エンジニアにはRoger Nicholsの名もクレジットされています。

1曲を除き、Rickieのオリジナルです(1曲はWalter Beckerとの共作、4曲はPascal Nabet-Meyerとの共作)。

リアルタイムで聴いた時も良い作品だと思いましたが、時間が経つほど味わいが増してきましたね。

昔であれば迷うことなく、『Rickie Lee Jones』あるいは『Pirates』をRickie姉さんのベスト作品に推していた僕ですが、今ならば本作をベストに挙げるかもしれません。

Rickie Lee Jonesの再スタートを飾った隠れ名盤だと思います。

全曲を紹介しときやす。

「The Horses」
オープニングはWalter Beckerとの共作。娘Charlotteに捧げられた曲です。♪when I was young, oh I was a wild, wild one♪という歌詞を聴くとしみじみしてきますね。自由奔放に激しく生きてきたRickie姉さんも、娘の成長を願う優しい母親になったのだと実感できます。そんな歌詞と落ち着いた雰囲気のアレンジがマッチしていますね。

「Just My Baby」
昔ながらのRickie姉さんらしい楽曲ですね。ハーモニカ、ヴァイヴ、パーカッションが心地よく響きます。Rickie Lee Jonesファンであれば、鉄板な仕上がりです。

「Ghetto of My Mind」
リラックス・モードのトロピカルな仕上がりがいいですね。Rickie姉さん自身がスティール・ドラムを叩いています。私生活の充実ぶりが窺えるラブリーな1曲。

「Rodeo Girl」
本作の特徴であるデジタルな仕上がりの1曲。ドラム・プログラミングを使っても控えめなので全く気になりません。逆に幻想的な雰囲気をうまく創りだしていますね。

「Satellites」
シングルにもなったハイライト曲。キャッチーなメロディとキュートなRickie姉さんのヴォーカルに相当グッときます。一度聴いたら、しばらく脳内リピートし続けるナイスな仕上がりです。クリアなバックもグッド!

「Ghost Train」
かなり僕好みの1曲。Rickie姉さんギター&シンセとプログラミングのみのシンプルな仕上がりですが、ブルージーな雰囲気に本作らしいデジタルな隠し味を加えた絶妙のバランス感がいいですね。

「Flying Cowboys」
タイトル曲は本作らしい味わい深さが印象に残ります。カントリー・フレイヴァーの本来であれば土臭い楽曲をSteely Danのようなクリアな音で聴かせてしまうのが興味深いですね。

「Don't Let the Sun Catch You Crying」
本作唯一のカヴァーはGerry & The Pacemakers、1964年のヒット曲です。本作がお好きな人の中にはドラム・プログラミングのポコポコ感が印象的な本曲が一番好き!という方も案外多いのでは?一人でしみじみ聴きたくなる秀逸カヴァーです。
http://www.youtube.com/watch?v=87DGbHdTZPM

「Love Is Gonna Bring Us Back Alive」
レゲエ調のユルい仕上がりがいいですね。自然体でレゲエ・チューンを楽しんでいる感じがいいですね。ドゥーワップ調のコーラスもグッド!

「Away from the Sky」
シンプルなバックで、Rickie姉さんのヴォーカルをじっくり堪能できるのがいいですね。何もかも忘れて没頭して聴き入りたい曲ですね。

「Atlas' Marker」
本作独特の音空間を堪能できるミステリアスな仕上がり。

本作で見事復活したRickie姉さんは、以後コンスタントに作品をリリースし続けます。
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2009年12月17日

Astrud Gilberto/Walter Wanderley Trio『A Certain Smile A Certain Sadness』

ボサノヴァの女王とオルガン・ボッサの共演☆Astrud Gilberto/Walter Wanderley Trio『A Certain Smile A Certain Sadness』
A Certain Smile, A Certain Sadness
発表年:1966年
ez的ジャンル:オルガン・ボッサ+女性ボッサ・ヴォーカル
気分は... :冬に聴きたいボッサ・アルバム

今回は"ボサノヴァの女王"Astrud Gilbertoとオルガン・ボッサのパイオニアWalter Wanderleyの共演作『A Certain Smile A Certain Sadness』(1966年)です。

Astrud Gilbertoの紹介は、Verve時代のベスト盤『Talkin' Verve』以来2回目です。Walter Wanderleyの紹介も『Batucada』(1967年)以来2回目です。

Astrud Gilbertoについては、最初にベスト盤『Talkin' Verve』から入ってしまったので、『The Astrud Gilberto Album』(1965年)、『The Shadow Of Your Smile』(1965年)
『Look To The Rainbow』(1966年)、『A Certain Smile A Certain Sadness』(1966年)、『Beach Samba』(1967年)、『Windy』(1968年)、『September 17, 1969』(1969年)、『I Haven't Got Anything Better To Do』(1970年)といったVerve時代のオリジナル・アルバムをなかなか買いづらくなってしまいました。

しかしながら、やはりオリジナルで聴かないと!との思いが強くなり、ここ1、2年遅まきながらオリジナル・アルバムを揃えている次第です。

そんな中で今回はstrong>Walter Wanderleyの共演作『A Certain Smile A Certain Sadness』(1966年)をセレクト!

ジャケも含めて本作は冬向きのボッサ・アルバムという印象があるんですよね!きっとWalter Wanderleyの奏でるボッサなオルガン・サウンドが冬にフィットするのだと思います。CDのライナーノーツでWalter Wanderleyのオルガンを"スケートリンクの音楽みたい"と説明しているのですが、僕も同じような印象を本作に抱いています。

プロデュースはCreed Taylor。本作のトータルな完成度の高さはCreed Taylorの手腕に拠るところが大だと思います。翌年にはCTIを立ち上げる彼の絶好調ぶりが窺えますね。

レコーディングにはAstrud Gilberto(vo)、Walter Wanderley(org、p)、Jose Marino(b)、Claudio Slon(ds)の4人を中心に、Bobby Rosengarden(per)、Joao Gilberto(g)が参加しています。既にAstrudと離婚し、Miucha(Bebel Gilbertoの母)と再婚していた元夫Joao Gilbertoの参加が興味深いですね。

ナチュラルなAstrudのヴォーカルとWanderley独自のオルガン・ボッサの組み合わせが見事にハマっています。他のアルバムでは聴けないAstrud Gilbertoの魅力を上手く引き出すことに成功していますね。

「So Nice (Summer Samba)」「Goodbye Sadness (Tristeza) 」といったブラジル音楽ファンにはお馴染みの人気曲、「Nega Do Cabelo Duro」「Portuguese Washerwoman」 といったサバービア好き要チェック曲をはじめ、充実の内容に最初から最後までダレることなく楽しむことができます。

コートやダウンを着込んで聴く、オルガン・ボッサはなかなか雰囲気ありますよ!

全曲を紹介しときやす。

「A Certain Smile」
1958年に書かれた作品(作詞Paul Francis Webster、作曲Sammy Fain)。Johnny Mathisも取り上げています。Walter Wanderley Trioによるオルガン・ボッサ・サウンドとAstrudの自然体のヴォーカルがマッチした、クールな雰囲気にグッときます。

「A Certain Sadness」
John Court/Carlos Lyra作品。この曲はAstrudとJoao Gilberto(g)の共演という感じですね。元夫婦がこの曲を哀愁モードたっぷりに演奏するというのが意味深ですな。まぁ、当人同士しかわからない世界ですが...
http://www.youtube.com/watch?v=Ks0Yat2_34o

「Nega Do Cabelo Duro」
Rubens Soares作。当ブログでは以前にElis Reginaのカヴァーを紹介しています。サバービア好きの人は要チェックの曲です。小気味良いリズム感がクセになります。♪ベム・チキ・ティ・ペン・テ〜ア♪

「So Nice (Summer Samba)」
『Talkin' Verve』にも収録されていたMarcos Valleの名曲カヴァー。この名曲を広く認知させたのは、本作と同年にリリースされたWalter Wanderleyのカヴァー(アルバム『Rain Forest』収録)ですが、そのWalter WanderleyをバックにAstrudが少し気だるいヴォーカルを聴かせる本ヴァージョンも秀逸の出来栄えです。個人的にはMarcos Valle本人やWalter Wanderleyのヴァージョンよりもお気に入りです。あとはBebel Gilbertoのヴァージョンも2000年代らしくて大好きです。
http://www.youtube.com/watch?v=zwgnacnku1k

Walter Wanderley「Samba do Verao」
 http://www.youtube.com/watch?v=sbHkgWD3gk4
Bebel Gilberto「So Nice (Summer Samba)」
 http://www.youtube.com/watch?v=VdLuTVp7qy0

「Voce Ja Foi Bahia」
Dorival Caymmi作。個人的にはアルバムで一番のお気に入り曲はコレ。Astrud GilbertoのキュートなヴォーカルとWalter Wanderley Trioの魅惑のオルガン・ボッサが最良のかたちで結びついた仕上がりという気がします。本作を貫くクールな魅力を存分に堪能できます。
http://www.youtube.com/watch?v=QdQdFNvcrIs

「Portuguese Washerwoman」
Roger Lucchesi/Andre Popp作。Astrudのスキャットにグッとくるサバービア・ファンサ要チェック曲。
http://www.youtube.com/watch?v=bIiBYpwwxEo

「Goodbye Sadness (Tristeza) 」
Haroldo Lobo/Niltinho作の名曲カヴァー。当ブログではこれまで、Sergio Mendes & Brasil'66Elis ReginaBirgit Lystagerのヴァージョンを紹介しています。どのカヴァーも秀逸ですね。Joao Gilbertoのギターも聴ける本ヴァージョンも、これらのカヴァーに負けない絶品の仕上がりです。鉄板な1曲。
http://www.youtube.com/watch?v=mp8mvpHiLdg

「Call Me」
UKの女性シンガー/女優Petula Clark、1965年のシングル曲のカヴァー(Tony Hatch作)。Chris Montez、Nancy Wilson、Shirley Bassey、Frank Sinatra、The Supremes & The Four Tops等数多くのアーティストがカヴァーしています。そうした中で哀愁モードが漂う本ヴァージョンは本曲の新たな魅力を引き出すことに成功しています。
http://www.youtube.com/watch?v=kQGAC0Zf1_4

Petula Clark「Call Me」
 http://www.youtube.com/watch?v=ySSiKaC6gHE
Chris Montez「Call Me」
 http://www.youtube.com/watch?v=gXaAFhyOTWk
The Supremes & The Four Tops「Call Me」
 http://www.youtube.com/watch?v=-7xU4rcR0fA

「Here's That Rainy Day」
ミュージカル『Carnival in Flanders』のために書かれたスタンダード(作詞Johnny Burke、作曲Jimmy Van Heusen)。当ブログではこれまでBill EvansThe Oscar Peterson Trio + The Singers Unlimitedのカヴァーを紹介しています。僕の場合、この曲に関してはBill Evansヴァージョンの印象が強いので、エレガント・ボッサに仕上がっている本ヴァージョンは実に新鮮に聴くことができました。

「Tu Mi Delirio」
キューバの偉大な作曲家Cesar Portillo de la Luzの作品。哀愁のボレロがAstrudのヴォーカルとマッチしています。
http://www.youtube.com/watch?v=t0ZCAH68Gns

「It's A Lovely Day Today」
ラストはIrving Berlin作品。♪ラ・ラ・ラ〜ラ・ラ♪ラブリーな仕上がりにグッときます。
http://www.youtube.com/watch?v=v1K54lEPCa4

僕の所有CDには、「The Sadness Of After」Edu Lobo作) 、「Who Needs Forever?」Quincy Jonesが音楽を担当したイギリス映画『The Deadly Affair』のサントラ収録曲)の2曲がボーナス・トラックとして追加収録されています。
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2009年12月16日

Smokey Robinson『A Quiet Storm』

"クワイエット・ストーム"の由来となったタイトル曲を含むソロ第3作☆Smokey Robinson『A Quiet Storm』
A Quiet Storm
発表年:1975年
ez的ジャンル:元祖クワイエット・ストーム
気分は... :ドルフィンズ踏ん張れ!

NFLのレギュラー・シーズンも残り3試合となってきました。
我がマイアミ・ドルフィンズは7勝6敗とプレーオフ進出に望みをつないでいます。

AFC東地区の優勝はペイトリオッツがいるので難しいかもしれませんが、ドルフィンズには熾烈なワイルドカード争いを勝ち抜いて欲しいものです。特にQBヘニー、RBウィリアムスの踏ん張りに期待しています。

今回はソウル・レジェンドSmokey Robinsonの2回目の登場です。

『One Heartbeat』(1987年)に続いて紹介するのは『A Quiet Storm』(1975年)です。

今年リリースされた新作『Time Flies When You're Having Fun』でも健在ぶりを示してくれたSmokey Robinson。特にNorah Jones「Dont Know Why」のカヴァーにはグッときましたね。

『Time Flies When You're Having Fun』
Time Flies When You're Having Fun

Smokey Robinson「Dont Know Why」
 http://www.youtube.com/watch?v=-FSyW45aDGU

さて、今日紹介する『A Quiet Storm』(1975年)は、『Smokey』(1973年)、『Pure Smokey』(1974年)に続くソロ第3作です。70年代のSmokey Robinsonを代表する1枚ですね。

本作のタイトル曲「Quiet Storm」でスタートするMelvin Lindseyのラジオ番組を通じて、"クワイエット・ストーム"と呼ばれるラジオ番組のフォーマットが広がり、それらの番組で流される音楽も"クワイエット・ストーム"と呼ばれるようになったようです。

僕の場合、"クワイエット・ストーム"と聞くと、Anita Bakerに代表される1980年代後半のクワイエット・ストーム・ブームを連想してしまうのですが、そうした流れの原点が本作『A Quiet Storm』にあるというが感慨深いですね。

タイトル曲「Quiet Storm」、全米R&Bチャート第1位となったシングル「Baby That's Backatcha」あたりがアルバムのハイライトです。アルバム全体としても、クワイエット・ストームな曲あり、感動的なバラードあり、ファンキー&グルーヴィー・チューンありとSmokeyのヴォーカルを様々なスタイルで楽しめるアルバムとなっています。

派手さはありませんが、ソウル・レジェンドSmokey Robinsonの魅力を存分に堪能できる1枚だと思います。

全曲紹介しときやす。

「Quiet Storm」
前述のようにクワイエット・ストームの原点となったタイトル曲。アルバムからの3rdシングルにもなりました。大人のアーバン・ナイト気分を盛り上げてくれる至福のメロウ・グルーヴに仕上がっています。包み込むようなファルセット・ヴォイスにグッときます。De La Soul「Breakadawn」のサンプリング・ネタにもなっています。
http://www.youtube.com/watch?v=YBFQPqBbuUA

「The Agony and the Ecstasy」
アルバムからの2ndシングル。クワイエット・ストームなスウィート・ソウルに仕上がっています。Smokeyのヴォーカルの魅力を存分に堪能できる1曲なのでは?
http://www.youtube.com/watch?v=a4i92qZj0QE

「Baby That's Backatcha」
アルバムからの1stシングルとして全米R&Bチャート第1位になりました。アルバムで一番のお気に入り。爽快なフルートとパーカッシヴなリズムが心地よいグルーヴィー・チューン。ジワジワ高揚してくる感じがたまりません!
http://www.youtube.com/watch?v=cdZcklpO2X8

「Wedding Song」
感動的なバラード。思わずセンチメンタルな気分になってしまいます。
http://www.youtube.com/watch?v=Pgs5TiMSjro

「Happy (Love Theme from Lady Sings the Blues) 」
Michael Jacksonへの提供曲をセルフカヴァー(オリジナルはアルバム『Music and Me』収録)。Diana Rossが主演した映画『Lady Sings The Blues(邦題:ビリーホリデイ物語』)で使われた「愛のテーマ(Love Theme)」(Michael Legrand作)にSmokeyが詞をつけたものです。ひたすら美しいバラードに仕上がっています。

Original Soundtrack「Love Theme」(From 『Lady Sings The Blues』)
 http://www.youtube.com/watch?v=NTUVnUAB4jk
Michael Jackson「Happy」
 http://www.youtube.com/watch?v=0W6P12D8Jbc

「Love Letters」
ファンキーな仕上がり。やり過ぎの一歩手前で踏みとどまっているのがいいですね。

「Coincidentally」
ホーン隊とクラヴィネットが盛り上げてくれるファンキー・グルーヴ。ご機嫌なノリにグッときます。

先日ある音楽番組で"Smokey RobinsonがLady GaGaを絶賛"という小ネタを披露していました。SmokeyがLady GaGaを聴くのでしょうか(笑)
posted by ez at 06:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする