2009年12月13日

Bev Kelly『Love Locked Out』

ジャケも中身も実にスタイリッシュ!☆Bev Kelly『Love Locked Out』
ラヴ・ロックト・アウト
録音年:1959年
ez的ジャンル:女性ジャズ・ヴォーカル
気分は... :ジャケ買い大正解でした!

今回は女性ジャズ・シンガーBev Kellyのアルバム『Love Locked Out』(1959年)です。

Bev Kelly(Beverly Kelly)は、1934年オハイオ州生まれの女性ジャズ・シンガー。

1954年にピアニストPat Moranのグループに参加し、『The Pat Moran Quartet』(1956年)等のレコーディングに参加しています。1957年にはPat Moranのトリオをバックに初リーダー作『Beverly Kelly Sings』をレコーディングしています。ちなみに『Beverly Kelly Sings』でベースを弾いていたのは、後にBill Evans Trioで活躍するScott LaFaroです。

その後Pat Moranから独立し、Riversideでレコーディングの機会を得ます。これを機にBeverly KellyではなくBev Kellyと表記するようになりました。同時代に活躍していた女性ジャズ・シンガーBeverly Kenney(1932-1960年)と名前が似ていたため、混同されないようにこのような表記になったようです。

Riversideから『Love Locked Out』(1959年)、『In Person』(1960年)という2枚のアルバムをリリースしたものの、これを最後にシーンから突如消えてしまいました。前述のBeverly Kenneyも1960年に死去しており、二人のBeverlyが同時期にジャズ・シーンから居なくなったというのは奇妙な運命ですね。

後年、1959年にレコーディングされた『You Go To My Head』というアルバムもリリースされています。

正直、本作を購入するまでBev Kelly(Beverly Kelly)というシンガーについて全く知りませんでした。本作を購入したのも印象的なジャケに魅了されゲットしたものでした。

上記のジャケ写真では帯があるのでわかりづらいですが、50年代のアルバムでこれほどスタイリッシュなジャケってなかなか無いですよね。

帯のないジャケのイメージはこんな感じです。
Love Locked Out

レコーディングにはBev Kelly(vo)以下、Jimmy Jones(p)、Kenny Burrell(g)、Milt Hinton(b)、Roy Haynes(ds)、Jerome Richardson(fl、ts)、Osie Johnson(ds)、Harry Edison(tp)、Johnny Cresci(ds)というメンバーが参加しています。有名どころではKenny Burrellの参加が目立ちますね。

ジャケに負けず中身もスタイリッシュです。何よりBev Kellyがジャズ・ヴォーカリストとして魅力的なのがいいですね。曲ごとに様々な表情のBevのヴォーカルに出会うことができます。

メジャーなジャズ・ヴォーカリストではありませんが、ジャズ初心者の方でも十分楽しめるジャズ・ヴォーカル・アルバムです。

全曲を紹介しときやす。

「My Ship」
Ira Gershwin作詞、Kurt Weill作曲のスタンダード。元々はミュージカル『Lady In The Dark』の挿入歌です。当ブログでは以前にMiles Davisのカヴァーを紹介しています(アルバム『Miles Ahead』収録)。

このムーディーなバラードを聴いて、"ジャケ買い大正解!"と確信した次第です。レイジー&キュートなBevのヴォーカルとそれを優しく包み込むバックが実に調和しています。

「Lost April」
Nat King Coleなどが取り上げたEddie DeLange/Hubert Spencer/Emil Newman作品。実に表情豊かなヴォーカルを聴かせてくれます。セクシー・ムードがムンムンなのもいいですね。Harry Edisonのトランペットが盛り上げてくれます。

「Lonelyville」
Hal Hackaday/Walter Marks作品。哀愁モードの曲ですが、ジャズ・ヴォーカルらしくカラっとした感じがいいですね。

「I'm Gonna Laugh You Right out of My Life」
Nat King Coleなどが取り上げたJoseph Allan McCarthy/Cy Coleman作品。Milt HintonのベースがBevのヴォーカルを先導する感じがいいですね。淡々とした中にもジャズ・ヴォーカルらしい味わいを堪能できます。

「Weak for the Man」
Jeanie Burns作品。思わせぶりなBevのヴォーカルのメロメロです。こんな雰囲気で女性に甘えられたら、何でも言う事きいてあげちゃいそうです(笑)

「Love, Look Away」
Richard Rodgers/Oscar Hammerstein IIの名コンビによるミュージカル『Flower Drum Song』(1958年)挿入歌のカヴァー。ここではロマンティック&プリティな雰囲気が相当グッときます。特に女性が気に入るカヴァーという気がします。

「Thursday's Child」
Elisse Boyd/Murray Grand作品。タイトルはマザーグースからとったものらしいです。落ち着いた中にもドリーミーな雰囲気が漂います。

「Love Locked Out」
タイトル曲はMax Kester Dodgson/Ray Noble作品。Bevのキュートな魅力を堪能できるバラードです。

「Away from Me」
David Ward作品。哀愁モードの絶品バラード。純粋にジャズ・ヴォーカリストとしてのBevを堪能するのであればこの曲が一番かも?リリカルなJimmy JonesのピアノやKenny Burrellのギターによるサポートもバッチリです。

「Fool That I Am」
1946年に作られたFloyd Hunt作品。Etta Jamesのカヴァーで有名ですね。若いリスナーの方はAdeleのライブ・カヴァーを聴いた方もいるのでは?表情豊かなヴォーカルを楽しめるのが僕好みです。

Adele「Fool That I Am」
http://www.youtube.com/watch?v=xgrL5P-DaiM

「Gloomy Sunday」
「暗い日曜日」という邦題で知られる1933年にハンガリーで発表された楽曲です。ハンガリーや世界中で本作を聴いて数百人が自殺したと言われ、自殺ソングとして有名な曲です。Bevのヴァージョンは哀愁感は漂いますが、自殺ソングという雰囲気ではありませんね。

「Gloomy Sunday」は自殺ソングと呼ばれているにも関わらず、1936年の発表されたフランスのシャンソン歌手Damiaのカヴァーで世界中に広まったのをはじめ、数多くのアーティストがカヴァーしています。当ブログで紹介したアーティストだけで見ても、Sarah VaughanElvis CostelloSerge GainsbourgBjorkPortisheadがカヴァーしています。

Billie Holiday「Gloomy Sunday」
 http://www.youtube.com/watch?v=48cTUnUtzx4
Portishead「Gloomy Sunday」
 http://www.youtube.com/watch?v=iyKXEdnN8b4
Sarah McLachlan「Gloomy Sunday」
 http://www.youtube.com/watch?v=sjWMtQcNJXI

YouTubeに本作の音源は全くアップされていないのですが、唯一あった他作品の音源でBevの歌声をご確認下さい。

Beverly Kelly「Lover Come Back To Me」(From 『Beverly Kelly Sings』)
 http://www.youtube.com/watch?v=AdY-LEE7Kt4
posted by ez at 00:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 1950年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする