2009年12月18日

Rickie Lee Jones『Flying Cowboys』

約5年ぶりのリリースとなった4thアルバムはWalter Beckerプロデュース☆Rickie Lee Jones『Flying Cowboys』
Flying Cowboys
発表年:1989年
ez的ジャンル:姉御系女性SSW
気分は... :素晴らしき再スタート!

女性シンガーソングライターRickie Lee Jonesの3回目の登場です。

デビュー作『Rickie Lee Jones』(1979年)、2nd『Pirates』(1981年)に続いて紹介するのは、4thアルバム『Flying Cowboys』(1989年)です。

先月に新作『Balm in Gilead』をリリースし、健在ぶりを示してくれたRickie Lee Jones

『Balm in Gilead』
Balm in Gilead

今日紹介する『Flying Cowboys』(1989年)は、前作『The Magazine』(1984年)から5年ぶりにリリースされた作品です。

パリで知り合ったフランス人ミュージシャンPascal Nabet-Meyerと結婚し、娘Charlotteを出産しRickie姉さんは、家族と過ごす時間を優先するため、音楽シーンから離れてしまいます。そして、長期の育児休暇を終えて制作されや作品が本作『Flying Cowboys』です。

大ヒットした『Rickie Lee Jones』『Pirates』の成功に反して、それが大きなプレッシャーとなり、L.A.を離れ、N.Y.、パリへと逃避行したRickie姉さんでしたが、本作ではそんな時期が嘘のように充実した歌を披露してくれます。

本作でプロデューサーに起用されたのがSteely DanWalter Beckerというのも興味深いですね。

全体としてはRickie姉さんの歌力を際立たせるシンプルな音空間が印象的です。

サウンド自体は、80年代後半、あるいはWalter Beckerらしいクリアなものでドラム・プログラミングも用いていますが、実に落ち着いた絶妙のサウンド・プロダクションでRickie姉さんの歌を支えています。個人的には、当時一世を風靡していたDaniel Lanoisのプロデュース作品で聴かれるような音空間を意識したサウンドを創ろうとしていたのでは?と推察します。

レコーディングには、Walter Becker、Pascal Nabet-Meyer以外にBuzz Feiten(g)、Dean Parks(g)、Neil Stubenhaus(b)、Rob Wasserman(b)、Ed Alton(b)、John Robinson(ds)、Peter Erskine(ds)、Jim Keltner(drum machine effects)、Greg Phillinganes(key)、Michael Omartian(p)、Michael Boddicker(syn)、Randy Brecker(tp)、Paulinho Da Costa(per)等のミュージシャンが参加しています。また、エンジニアにはRoger Nicholsの名もクレジットされています。

1曲を除き、Rickieのオリジナルです(1曲はWalter Beckerとの共作、4曲はPascal Nabet-Meyerとの共作)。

リアルタイムで聴いた時も良い作品だと思いましたが、時間が経つほど味わいが増してきましたね。

昔であれば迷うことなく、『Rickie Lee Jones』あるいは『Pirates』をRickie姉さんのベスト作品に推していた僕ですが、今ならば本作をベストに挙げるかもしれません。

Rickie Lee Jonesの再スタートを飾った隠れ名盤だと思います。

全曲を紹介しときやす。

「The Horses」
オープニングはWalter Beckerとの共作。娘Charlotteに捧げられた曲です。♪when I was young, oh I was a wild, wild one♪という歌詞を聴くとしみじみしてきますね。自由奔放に激しく生きてきたRickie姉さんも、娘の成長を願う優しい母親になったのだと実感できます。そんな歌詞と落ち着いた雰囲気のアレンジがマッチしていますね。

「Just My Baby」
昔ながらのRickie姉さんらしい楽曲ですね。ハーモニカ、ヴァイヴ、パーカッションが心地よく響きます。Rickie Lee Jonesファンであれば、鉄板な仕上がりです。

「Ghetto of My Mind」
リラックス・モードのトロピカルな仕上がりがいいですね。Rickie姉さん自身がスティール・ドラムを叩いています。私生活の充実ぶりが窺えるラブリーな1曲。

「Rodeo Girl」
本作の特徴であるデジタルな仕上がりの1曲。ドラム・プログラミングを使っても控えめなので全く気になりません。逆に幻想的な雰囲気をうまく創りだしていますね。

「Satellites」
シングルにもなったハイライト曲。キャッチーなメロディとキュートなRickie姉さんのヴォーカルに相当グッときます。一度聴いたら、しばらく脳内リピートし続けるナイスな仕上がりです。クリアなバックもグッド!

「Ghost Train」
かなり僕好みの1曲。Rickie姉さんギター&シンセとプログラミングのみのシンプルな仕上がりですが、ブルージーな雰囲気に本作らしいデジタルな隠し味を加えた絶妙のバランス感がいいですね。

「Flying Cowboys」
タイトル曲は本作らしい味わい深さが印象に残ります。カントリー・フレイヴァーの本来であれば土臭い楽曲をSteely Danのようなクリアな音で聴かせてしまうのが興味深いですね。

「Don't Let the Sun Catch You Crying」
本作唯一のカヴァーはGerry & The Pacemakers、1964年のヒット曲です。本作がお好きな人の中にはドラム・プログラミングのポコポコ感が印象的な本曲が一番好き!という方も案外多いのでは?一人でしみじみ聴きたくなる秀逸カヴァーです。
http://www.youtube.com/watch?v=87DGbHdTZPM

「Love Is Gonna Bring Us Back Alive」
レゲエ調のユルい仕上がりがいいですね。自然体でレゲエ・チューンを楽しんでいる感じがいいですね。ドゥーワップ調のコーラスもグッド!

「Away from the Sky」
シンプルなバックで、Rickie姉さんのヴォーカルをじっくり堪能できるのがいいですね。何もかも忘れて没頭して聴き入りたい曲ですね。

「Atlas' Marker」
本作独特の音空間を堪能できるミステリアスな仕上がり。

本作で見事復活したRickie姉さんは、以後コンスタントに作品をリリースし続けます。
posted by ez at 05:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 1980年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする