スウェーデンの歌姫とBill Evansの共演☆
Monica Zetterlund with Bill Evans『Waltz For Debby』♪

録音年:1964年
ez的ジャンル:スウェーデンの歌姫+ピアノ・トリオ
気分は... :Evansのピアノをバックにキュートな歌姫が歌うと...
今回はスウェーデンの女性ジャズ・ヴォーカリスト
Monica Zetterlundと
Bill Evansの共演作
Monica Zetterlund with Bill Evans『Waltz For Debby』(1964年)です。
Monica Zetterlund(1937-2005年)はスウェーデン、ハーグフォルス出身のジャズ・ヴォーカリスト/女優。
サックス奏者であった父親、ベーシストであった母親のであった両親の影響で幼い頃からジャズに親しみ、ティーンの頃から歌手として活動していました。
1958年に初リーダー作
『Swedish Sensation』をレコーディングしています。『Swedish Sensation』では2曲で
Donald Byrdとも共演しています。この中には翌1959年には渡米も果たし、Steve Allen Showに出演したことで知名度が広がったようです。
その後、今日紹介するBill Evansの共演作
『Waltz For Debby』(1964年)で世界的に注目されるようになりました。その後ジャズ・ヴォーカリストのみならず、その美貌から女優としても活躍したMonicaでしたが、病気のため1999年に惜しまれつつ引退しました。
2005年5月にストックホルムの自宅マンションの火災により死去。享年67歳でした。
それほどジャズ通ではない僕にはピンと来ないのですが、本国スウェーデンや北欧ではかなりの人気を誇ったヴォーカリストだったようですね。
本作のもう一人の主役
Bill Evansに関して、当ブログではこれまで以下の6枚の作品を紹介しています。
『Portrait In Jazz』(1959年)
『Explorations』(1961年)
『Waltz For Debby』(1961年)
『Undercurrent』(1962年)
『Alone』(1968年)
『New Conversations』(1978年)
本作は
Bill Evans(p)、
Larry Bunker(b)、
Chuck Israels(ds)というトリオでヨーロッパを回っている最中にストックホルムで録音されたものです。
やはり本作の存在を知ったのはBill Evansのディスコグラフィーを通じてですね。
しかもアルバム・タイトルなど知らず、ジャケのイメージだけ認識していたので、
『Moon Beams』(1962年)と並び、"ジャケに美人のお姉ちゃんが写っているBill Evansのアルバム"というものでした(笑)。
Bill Evansの歌伴奏に関して、男性ならばTony Bennettとの共演盤
『The Tony Bennett/Bill Evans Album』(1975年)、女性ならば本作が決定盤でしょうね。
前述のジャケそのままに、中身もMonicaのキュートな魅力を引き出すことに成功しています。Bill Evansのリリカルな演奏をバックに、キュートな女性ヴォーカリストが歌ったならば...想像しただけでもワクワクしますよね!
Evans云々を抜きにしても、女性ジャズ・ヴォーカルの充実作として楽しめると思います。英語のみならずスウェーデン語でも歌っていますが、このスウェーデン語のヴォーカルが雰囲気あって良かったりします。
Evansファンは数少ない女性ヴォーカリストとの共演作として楽しめると思います。
全曲紹介しときやす。
「Come Rain or Come Shine」オープニングはミュージカル『St.Louis Woman』(1946年)のために書かれたスタンダード(作詞Johnny Mercer、作曲Harold Arlen)。Monicaは本作以前にも1960年にZoot Simsらと本曲をレコーディングしています。ただし、本ヴァージョンとは異なるかなり軽快な仕上がりです。また、Evansは
『Portrait In Jazz』での演奏がお馴染みですね。ここではじっくりとMonicaのヴォーカルを聴かせる仕上がりです。大人の色気が漂う仕上がりにグッときます。
YouTubeに本作と同じメンバーのBill Evans Trioの演奏(1965年)と前述の1960年のMonicaヴァージョンがアップされていたので、聴き比べるとのも楽しいと思います。僕などは軽快なMonicaヴァージョンにもかなり惹かれてしまうのですが(笑)
Bill Evans Trio「Come Rain Or Come Shine」(1965年)
http://www.youtube.com/watch?v=tzFoZ-I6O-4Monica Zetterlund「Come Rain or Come Shine」(From 『The Lost Tapes @ Bell Sound Studios NYC』)
http://www.youtube.com/watch?v=XR0AyBK2J4g「A Beautiful Rose(Jag Vet en Dejlig Rosa)」スウェーデンのトラディショナル・ソングをEvansがアレンジしたもの。ここではスウェーデン語で歌われます。どこか寂しげな雰囲気と、スウェーデン語の語感の響きがマッチしていますね。
「Once Upon a Summertime」Eddie Barclay/Michel Legrand作によるスタンダード。Evans好きにはたまらない美しくリリカルなバラードに仕上がっています。
YouTubeには1966年にEvansがEddie Gomez(b)、Alex Riel(ds)のトリオで渡欧した時にコペンハーゲンでMonicaと共演した映像がありました。本ヴァージョンに近い演奏になっています。
Monica Zetterlund with Bill Evans Trio「Once Upon a Summertime」(1966年)
http://www.youtube.com/watch?v=pj-Llz9Pc5A「So Long Big Time」作詞Dory Previn、作曲Harold Arlenのスタンダード。Tony Bennettのヴァージョンが有名みたいですね。本ヴァージョンは中盤以降の緩急にグッときます。
「Waltz for Debby (Monicas Vals)」タイトル曲はお馴染みEvansの代表曲(アルバム
『Waltz For Debby』収録)。本作でもやはりハイライトは本曲でしょうね。ここではスウェーデン語の歌詞で歌われます。中盤以降の小粋な雰囲気が好きですね。Monicasのキュートな魅力をEvansらが上手く引き出している感じがいいですね。
YouTubeには「Once Upon a Summertime」同様、1966年の共演時の映像がありました。演奏前のMonicaとEvansのやりとりも観ることができ、なかなか楽しめる映像です。
Monica Zetterlund with Bill Evans Trio「Waltz for Debby (Monicas Vals)」(1966年)
http://www.youtube.com/watch?v=8tp-nbchmHU「Lucky to Be Me」Leonard Bernsteinによる1944年のミュージカル『On the Town』挿入歌。Bill Evansによる歌伴でイメージする演奏に最も近いかも?
http://www.youtube.com/watch?v=m2XUhMfj1wE「Sorrow Wind(Vindarna Sucka Uti Skogarna)」スウェーデンのトラディショナル・ソング。「A Beautiful Rose(Jag Vet en Dejlig Rosa)」同様、どこか寂しげな雰囲気が印象的です。
「It Could Happen to You」1944年の映画『And the Angels Sing(邦題:かくて天使は歌う)』の主題歌(Johnny Burke/Jimmy Van Heusen作品)。タイトル曲と並ぶ本作のハイライト。スウィンギーなEvansらの演奏をバックに、Monicaがジャズ・ヴォーカリストとしての本領を発揮してくれます。
「Some Other Time」Betty Comden/Adolph Green作詞、Leonard Bernstein作曲。バラード系では一番お気に入りの演奏です。Evansの美しいピアノとMonicaの優しいヴォーカルが融合した極上バラードに仕上がっています。
http://www.youtube.com/watch?v=uk1QTAODdaA「In the Night (Om Natten)」スウェーデンの作詞/作曲家 Olle Adolphson)の作品。Evansらしい、わび・さび感のある音空間の間にグッときます。
現在のCDには「Come Rain or Come Shine」(2テイク)、「Lucky to Be Me」、「It Could Happen to You」、(2テイク)という5曲の別テイクと「Santa Claus Is Coming To Town」の6曲がボーナス・トラックとして収録されています。
特に
「Santa Claus Is Coming To Town(サンタが街にやってくる)」はEvanがヴォーカルをとるという珍演奏です。お遊びの演奏をそのまま録音したといった雰囲気ですね。
サバービア好きの方は「Speak Low」収録の
『Make Mine Swedish Style』(1964年)もチェックしてみては?
『Make Mine Swedish Style』(1964年)