2010年01月25日

Prince『Dirty Mind』

性愛路線を推進した3rdアルバム☆Prince『Dirty Mind』
Dirty Mind
発表年:1980年
ez的ジャンル:性愛路線ファンク
気分は... :殿下も願うバイキングスの勝利!

今日はもうすぐNFLのカンファレンス・チャンピオンシップ2試合が行われます。
まずはAFCは「コルツ対ジェッツ」、次いでNFCは「セインツ対バイキングス」です。

個人的には特にNFCの「セインツ対バイキングス」に注目しています。
ファーブの姿をスーパーボウルで観たい僕としては、バイキングスの勝利を願うばかりです。

そんなバイキングスの勝利を願う一人が、地元ミネアポリス出身のスーパースターPrince殿下です。
最近バイキングスのトリビュートソングをレコーディングしたというニュースが昨日のNFL JAPAN.comに載っていました。先週のディビジョナル・プレイオフでもスタンドから応援する殿下の姿がたびたびTVカメラで抜かれていましたね。

そんな流れでPrince殿下の5回目の登場です。
これまで紹介した殿下の作品は以下の4枚。

 『Prince』(1979年)
 『Controversy』(1981年)
 『1999』(1982年)
 『Sign O' The Times』(1987年)

5枚目に紹介するのは、1980年リリースの3rdアルバム『Dirty Mind』です。

次作『Controversy』(1981年)と並ぶ性愛路線アルバムですね。

ブリーフ姿で前を見つめる姿はモロに変態モードです。
タイトルも含めて、殿下の全作品の中で最も危険な予感がするアルバムなのでは?

でも久々に聴いてみると、"アレ、こんなに聴きやすかったっけ?"というのが正直な感想です。歌詞の内容はヤバいものが多いですが、サウンド面ではそれほど過激ではありません。

アルバムは全8曲30分程度と収録時間は短く、その後の殿下の作品からすれば音も相当チープなものですが、何処か捨て難い魅力のあるアルバムですね。エレポップ/ニューウェイヴの影響を感じる楽曲も多く、そうした殿下は本作や『Controversy』でしか聴けないからかもしれません。

順番として、まずは2nd『Prince』(1979年)、4th『Controversy』(1981年)を聴いた後に、その2枚のギャップを埋めるアルバムとして本作『Dirty Mind』を聴くと、興味深く聴くことができると思います。

きっとR&Bファン以上にダンサブルなエレポップ/ニューウェイヴ好きの人が楽しめるのでは?

全曲紹介しときやす。

「Dirty Mind」
タイトル曲はDr. Finkとの共作によるファンク・チューン。Dr. Finkはシンセでも参加しています。性愛路線を高らかに宣言するかのようなダーティー・マインドな曲です(笑)

「When You Were Mine」
Cyndi Lauperのカヴァーでもお馴染みの曲。それ以外にも多くのカヴァーがある隠れ名曲。殿下のオリジナルはエレポップ/ニューウェイヴ風の仕上がりです。Carsあたりと一緒に聴きたくなります。

「Do It All Night」
UKでシングルカットされた曲。チープなシンセによるエレポップ風の雰囲気は確かにUK向けかも?変態チックなのにファンシーなのがいいですね。こういうの大好き!

「Gotta Broken Heart Again」
アルバム中最もソウル・テイストの仕上がり。とは言っても圧倒的に軽い感じですが、それが殿下らしくていいのでは?

「Uptown」
シングルとして全米R&Bチャート第5位となったダンス・チューン。変態ファルセットが炸裂するところがいいですね。次作『Controversy』へとつながる1曲ですね。
http://www.youtube.com/watch?v=HYF4fsj7fVc

「Head」
お下劣な歌詞の内容に赤面してしまいますが、曲はサイコーに格好良いダンス・グルーヴ。アルバムの中では最もミネアポリス・ファンクを感じる仕上がりなのでは?セクシーなLisa Colemanの女声コーラスもグッド!殿下へのトリビュート・アルバム『Party O' The Times: A Tribute To Prince』の中でIce-Tがカヴァーしていました。

「Sister」
エロすぎるお姉さまとの禁断の世界を歌った性愛ロックン・ロール。1分半であっという間に終了します。

「Partyup」
The TimeのMorris Dayとの共作曲。ダンサブルな疾走感は「Head」と並びアルバムでも1、2位を争うカッチョ良さです。

今日はカンファレンス・チャンピオンシップに備えて、軽めに記事を切り上げたいと思いま〜す!
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2010年01月24日

Pat D & Lady Paradox『Soulscapes and Jazz Breaks』

さらに進化を遂げたビューティフルな英国産ジャジーHip-Hop☆Pat D & Lady Paradox『Soulscapes and Jazz Breaks』
ソウルスケープス・アンド・ジャズ・ブレイクス
発表年:2010年
ez的ジャンル:英国産ジャジーHip-Hop
気分は... :"2010年代"カテゴリー第一弾!

遂に新カテゴリー"2010年代"を追加しましたぁ!

栄えある新カテゴリー最初の作品としてセレクトしたのはPat D & Lady Paradox『Soulscapes and Jazz Breaks』です。

MySpaceを通じて意気投合したトラックメイカーPat Dと女性MC Lady Pardoxの2人によって結成された英国産ジャジーHip-Hopユニットの紹介は、デビュー・アルバム『Kind Of Peace』(2007年)に続き2回目となります。

『Kind Of Peace』に続き、発表したソロ『Take A Little Time』(2008年)も大好評だったPat D!そのため、Lady Paradoxとのコンビが継続されるのか懸念していましたが、無事2ndアルバム『Soulscapes and Jazz Breaks』がリリースされて一安心です。

ちなみに『Kind Of Peace』2007年のマイベスト10『Take A Little Time』2008年のマイベスト10に選んだほど僕のお気に入りです。どちらもピアノ・ループを巧みに使った美しいトラックをはじめとするジャジー・チューンの数々が印象的でした。

Pat D & Lady Paradox『Kind Of Peace』(2007年)
カインド・オブ・ピース

Pat D『Take A Little Time』(2008年)
テイク・ア・リトル・タイム

本作『Soulscapes and Jazz Breaks』も2010年新譜の第一弾にして、早くも2010年のマイベスト10入りの有力候補と断言できる充実ぶりです。

今回もお得意のピアノ・ループやジャズ・ギターのループを使ったビューティフル&メロウなジャジー・トラックは健在です。また、Pat D自身の鍵盤をはじめ、ギター、トランペット、サックス、フルート、ヴィオラといった生演奏が各曲に必ず入っており、トラック作りの進化が窺えます。数曲で聴かれるPat Dのターンテーブルも注目です。歯切れの良いLady Paradoxのラップも冴え渡っています。

Melodiq、Efeks、Eva LazarusといったPat D作品ではお馴染みのゲストをはじめ、今回も多彩なMC&ヴォーカリストが参加しています。

ジャジーHip-Hop好きは必聴の1枚だと思います!

全曲紹介しときやす。

「Intro」
まずは小粋なピアノとターンテーブルで軽くウォーミング・アップ!

「Leave It Behind」
彼ららしいセピア・モードのジャジーなピアノHip-Hop。小粋なピアノ・ループと少しレイジーなLady Pardoxのラップがファンにはたまりません。フルートとギターの生音をほんのり加えているあたりも心憎いですね。

「Dear Negativity」
同じピアノHip-Hopでもこちらはもう少し軽快です。

「Dreamin' Of Days」
Jackson 5「Never Can Say Goodbye」のジャズ・ギター・カヴァーのループで話題の1曲。Izzy GのラップとShaheenの女性ヴォーカルをフィーチャーしています。「Never Can Say Goodbye」のジャズ・ギター・カヴァーと言えば、以前に紹介したGrant Greenヴァーション(アルバム『Visions』収録)を思い浮かべてしまうのですが、本曲で使われているのは別カヴァーだと思います。メロウ&エレガントな仕上がりにグッときます。
http://www.youtube.com/watch?v=6Y2W98AHONs

「I Wanna Feel Days」
エレピのメロウ・サウンドとトランペットの絡みがグッド!そんなメロウ・トラックを牽引するLady Pardoxのフロウも実に滑らかです!
http://www.youtube.com/watch?v=hUsNySKx_pg
※YouTubeの曲タイトル間違えています。

「New Dawn」
Benjamin Zephaniah & Seloneのラップをフィーチャー。ブラジリアン・フレイヴァーのパーカッションが聴かれるトラックが印象的です。

「Once In A Lifetime」
UKのHip-HopユニットProseのMCであるEfeksとブリストル出身の女性シンガーEva Lazarusをフィーチャー。ジャズ・ギターのループによる哀愁メロウ・トラックに仕上がっています。Will Chalkのミュート・トランペットがいいアクセントになってグッド!

「Juicy Grub」
僕の一番のお気に入り。Yousifのラップをフィーチャー。トラックの完成度の高さにウットリするメロウ・チューン!
http://www.youtube.com/watch?v=cydWyx3CGfM

「What's It Worth」
Pat D作品ではお馴染み、ペンシルバニア出身のMCであるMelodiqをフィーチャー。アングラ・ジャジーHip-Hop好きには鉄板の仕上がり!彼らのHip-Hopに対する深い愛情が歌い込まれています。Pat Dのターンテーブルにも注目!
http://www.youtube.com/watch?v=gwA5urEL5dY

「8p Coke & Hope」
「Juicy Grub」と並ぶお気に入り曲。ここでもMelodiqをフィーチャー。エレピの心地よい響きがたまらないメロウ・チューン。
http://www.youtube.com/watch?v=oYiJbEUclZE

「Relief In Rhyme」
Melodiq & Praverbをフィーチャー。Melodiq三連発です!ここでもPat Dのターンテーブルが冴えています。
http://www.youtube.com/watch?v=8REZbpOiynQ

「House In The Horizon」
ラストは絶品ピアノHip-Hopで締め括ってくれます。やはりこの雰囲気こそがPat Dという気がします。

「What's It Worth (Prisma Remix) 」
日本盤のボーナス・トラックとして「What's It Worth」のPrismaによるリミックスが収録されています。オリジナル・ヴァージョンと異なる味わいの感動的なトラックが素晴らしいです!

Prismaは昨年デビュー・アルバム『Prisma』をリリースした期待の日本人トラックメイカーです。『Prisma』にはAloe Blacc、Pismo、El Da sensei、Fat Jon、Raashan Ahmad、Amanda Diva等ジャジーHip-Hop好きにはグッとくるメンバーが多数参加しているので、未聴の方はこちらも要チェックです。

Prisma『Prisma』
Prisma
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2010年01月23日

Monica Zetterlund with Bill Evans『Waltz For Debby』

スウェーデンの歌姫とBill Evansの共演☆Monica Zetterlund with Bill Evans『Waltz For Debby』
ワルツ・フォー・デビー+6
録音年:1964年
ez的ジャンル:スウェーデンの歌姫+ピアノ・トリオ
気分は... :Evansのピアノをバックにキュートな歌姫が歌うと...

今回はスウェーデンの女性ジャズ・ヴォーカリストMonica ZetterlundBill Evansの共演作Monica Zetterlund with Bill Evans『Waltz For Debby』(1964年)です。

Monica Zetterlund(1937-2005年)はスウェーデン、ハーグフォルス出身のジャズ・ヴォーカリスト/女優。

サックス奏者であった父親、ベーシストであった母親のであった両親の影響で幼い頃からジャズに親しみ、ティーンの頃から歌手として活動していました。

1958年に初リーダー作『Swedish Sensation』をレコーディングしています。『Swedish Sensation』では2曲でDonald Byrdとも共演しています。この中には翌1959年には渡米も果たし、Steve Allen Showに出演したことで知名度が広がったようです。

その後、今日紹介するBill Evansの共演作『Waltz For Debby』(1964年)で世界的に注目されるようになりました。その後ジャズ・ヴォーカリストのみならず、その美貌から女優としても活躍したMonicaでしたが、病気のため1999年に惜しまれつつ引退しました。

2005年5月にストックホルムの自宅マンションの火災により死去。享年67歳でした。

それほどジャズ通ではない僕にはピンと来ないのですが、本国スウェーデンや北欧ではかなりの人気を誇ったヴォーカリストだったようですね。

本作のもう一人の主役Bill Evansに関して、当ブログではこれまで以下の6枚の作品を紹介しています。

 『Portrait In Jazz』(1959年)
 『Explorations』(1961年)
 『Waltz For Debby』(1961年)
 『Undercurrent』(1962年)
 『Alone』(1968年)
 『New Conversations』(1978年)

本作はBill Evans(p)、Larry Bunker(b)、Chuck Israels(ds)というトリオでヨーロッパを回っている最中にストックホルムで録音されたものです。

やはり本作の存在を知ったのはBill Evansのディスコグラフィーを通じてですね。
しかもアルバム・タイトルなど知らず、ジャケのイメージだけ認識していたので、『Moon Beams』(1962年)と並び、"ジャケに美人のお姉ちゃんが写っているBill Evansのアルバム"というものでした(笑)。

Bill Evansの歌伴奏に関して、男性ならばTony Bennettとの共演盤『The Tony Bennett/Bill Evans Album』(1975年)、女性ならば本作が決定盤でしょうね。

前述のジャケそのままに、中身もMonicaのキュートな魅力を引き出すことに成功しています。Bill Evansのリリカルな演奏をバックに、キュートな女性ヴォーカリストが歌ったならば...想像しただけでもワクワクしますよね!

Evans云々を抜きにしても、女性ジャズ・ヴォーカルの充実作として楽しめると思います。英語のみならずスウェーデン語でも歌っていますが、このスウェーデン語のヴォーカルが雰囲気あって良かったりします。

Evansファンは数少ない女性ヴォーカリストとの共演作として楽しめると思います。

全曲紹介しときやす。

「Come Rain or Come Shine」
オープニングはミュージカル『St.Louis Woman』(1946年)のために書かれたスタンダード(作詞Johnny Mercer、作曲Harold Arlen)。Monicaは本作以前にも1960年にZoot Simsらと本曲をレコーディングしています。ただし、本ヴァージョンとは異なるかなり軽快な仕上がりです。また、Evansは『Portrait In Jazz』での演奏がお馴染みですね。ここではじっくりとMonicaのヴォーカルを聴かせる仕上がりです。大人の色気が漂う仕上がりにグッときます。

YouTubeに本作と同じメンバーのBill Evans Trioの演奏(1965年)と前述の1960年のMonicaヴァージョンがアップされていたので、聴き比べるとのも楽しいと思います。僕などは軽快なMonicaヴァージョンにもかなり惹かれてしまうのですが(笑)

Bill Evans Trio「Come Rain Or Come Shine」(1965年)
 http://www.youtube.com/watch?v=tzFoZ-I6O-4
Monica Zetterlund「Come Rain or Come Shine」
(From 『The Lost Tapes @ Bell Sound Studios NYC』)
 http://www.youtube.com/watch?v=XR0AyBK2J4g

「A Beautiful Rose(Jag Vet en Dejlig Rosa)」
スウェーデンのトラディショナル・ソングをEvansがアレンジしたもの。ここではスウェーデン語で歌われます。どこか寂しげな雰囲気と、スウェーデン語の語感の響きがマッチしていますね。

「Once Upon a Summertime」
Eddie Barclay/Michel Legrand作によるスタンダード。Evans好きにはたまらない美しくリリカルなバラードに仕上がっています。

YouTubeには1966年にEvansがEddie Gomez(b)、Alex Riel(ds)のトリオで渡欧した時にコペンハーゲンでMonicaと共演した映像がありました。本ヴァージョンに近い演奏になっています。
Monica Zetterlund with Bill Evans Trio「Once Upon a Summertime」(1966年)
 http://www.youtube.com/watch?v=pj-Llz9Pc5A

「So Long Big Time」
作詞Dory Previn、作曲Harold Arlenのスタンダード。Tony Bennettのヴァージョンが有名みたいですね。本ヴァージョンは中盤以降の緩急にグッときます。

「Waltz for Debby (Monicas Vals)」
タイトル曲はお馴染みEvansの代表曲(アルバム『Waltz For Debby』収録)。本作でもやはりハイライトは本曲でしょうね。ここではスウェーデン語の歌詞で歌われます。中盤以降の小粋な雰囲気が好きですね。Monicasのキュートな魅力をEvansらが上手く引き出している感じがいいですね。

YouTubeには「Once Upon a Summertime」同様、1966年の共演時の映像がありました。演奏前のMonicaとEvansのやりとりも観ることができ、なかなか楽しめる映像です。
Monica Zetterlund with Bill Evans Trio「Waltz for Debby (Monicas Vals)」(1966年)
 http://www.youtube.com/watch?v=8tp-nbchmHU

「Lucky to Be Me」
Leonard Bernsteinによる1944年のミュージカル『On the Town』挿入歌。Bill Evansによる歌伴でイメージする演奏に最も近いかも?
http://www.youtube.com/watch?v=m2XUhMfj1wE

「Sorrow Wind(Vindarna Sucka Uti Skogarna)」
スウェーデンのトラディショナル・ソング。「A Beautiful Rose(Jag Vet en Dejlig Rosa)」同様、どこか寂しげな雰囲気が印象的です。

「It Could Happen to You」
1944年の映画『And the Angels Sing(邦題:かくて天使は歌う)』の主題歌(Johnny Burke/Jimmy Van Heusen作品)。タイトル曲と並ぶ本作のハイライト。スウィンギーなEvansらの演奏をバックに、Monicaがジャズ・ヴォーカリストとしての本領を発揮してくれます。

「Some Other Time」
Betty Comden/Adolph Green作詞、Leonard Bernstein作曲。バラード系では一番お気に入りの演奏です。Evansの美しいピアノとMonicaの優しいヴォーカルが融合した極上バラードに仕上がっています。
http://www.youtube.com/watch?v=uk1QTAODdaA

「In the Night (Om Natten)」
スウェーデンの作詞/作曲家 Olle Adolphson)の作品。Evansらしい、わび・さび感のある音空間の間にグッときます。

現在のCDには「Come Rain or Come Shine」(2テイク)、「Lucky to Be Me」、「It Could Happen to You」、(2テイク)という5曲の別テイクと「Santa Claus Is Coming To Town」の6曲がボーナス・トラックとして収録されています。

特に「Santa Claus Is Coming To Town(サンタが街にやってくる)」はEvanがヴォーカルをとるという珍演奏です。お遊びの演奏をそのまま録音したといった雰囲気ですね。

サバービア好きの方は「Speak Low」収録の 『Make Mine Swedish Style』(1964年)もチェックしてみては?

『Make Mine Swedish Style』(1964年)
メイク・マイン・スウェディッシュ・スタイル
posted by ez at 11:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 1960年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年01月22日

The Chemical Brothers『Exit Planet Dust』

UK音楽シーンに風穴をあけた衝撃のブレイクビーツ☆The Chemical Brothers『Exit Planet Dust』
さらばダスト惑星
発表年:1995年
ez的ジャンル:UKブレイクビーツ/デジタル・ロック
気分は... :ロックとダンス・ミュージックの化学反応!

The Chemical Brothersのデビュー・アルバム『Exit Planet Dust(邦題:さらばダスト惑星)』(1995年)です。

Tom RowlandsEd Simmonsから成るブレイクビーツ/デジタル・ロックの雄The Chemical Brothersの紹介は、The Chemical Brothersの紹介は、2nd『Dig Your Own Hole』(1997年)に続き2回目となります。

当初はDust Brothersを名乗っていたTom Rowlands & Ed Simmonsですが、多くの方がご存知のとおり、同じグループ名を名乗っていたL.A.を拠点としたDust Brothersからクレームが入り、グループ名をThe Chemical Brothersへ変更しました。E.Z. Mike (Michael Simpson) 、King Gizmo (John King)の2人から成るL.A.のDust Brothersは、当ブログでも紹介したBeastie Boys『Paul's Boutique』Beck『Odelay』等のプロデュースでお馴染みですね。

そして、The Chemical Brothersとして生まれ変わった彼らがシーンに衝撃を与えた1stアルバムが本作『Exit Planet Dust』(1995年)です。

格好良さでは前回紹介した2nd『Dig Your Own Hole』(1997年)、聴き易さでは3rd『Surrender』(1999年)が魅力ですが、インパクトという点では本作『Exit Planet Dust』でしょうね。

よく言われるようにロックとダンス・ミュージックの垣根を無くしたブレイクビーツ作品として、UKシーンに風穴をあけたアルバムですね。

80年代終わりより、Stone RosesHappy Mondays、Jesus Jones、Primal Screamなどロックとダンス・ミュージックの融合を試みるアプローチが数多く見られましたが、あくまでロック・バンドによるダンス・カルチャーの吸収といった側面が強かった気がします。

その意味でダンス・ミュージック側からロックの持つ"攻撃的"なエッセンスを上手く取り入れた本作『Exit Planet Dust』は、実に画期的なアルバムだったと思います。

後に彼らの音は"デジタル・ロック"と呼ばれるようになりますが、リアルタイムで聴いていた時には、本作に新しさや衝撃を感じたものの、"ロック"的な音楽を聴いているという感覚はあまりありませんでしたね。逆に言えば、そうしたことを気にせず聴かせてしまうあたりに本作の凄さがあるのかもしれません。

アルバムにはUKの女性SSWBeth OrtonThe CharlatansのヴォーカルTim Burgessがゲスト参加しています。Charlatansのエントリーでも書きましたが、両者はかなり交流があったようですね。

Dust Brothers時代の楽曲も含まれる本作には、次作『Dig Your Own Hole』以降ビッグネームとなったChemical Brothersには無い魅力も詰まっています。

ロックとダンス・ミュージックの化学反応を楽しみましょう。

全曲紹介しときやす。

「Leave Home」
ハイライトその1。Chemical Brothersとしての1stシングルかつ代表曲です。UKシングル・チャート第17位のヒットとなりました。当時大きなインパクトのある曲でしたよね。

Kraftwerk「Ohm Sweet Ohm」のサンプリングでスイッチ・オン!となり、Blake Baxter「Brothers Gonna Work It Out」の声ネタのループと共に不適なロッキン・ビーツが鼓動します。アッパーになりすぎないBPMがサイコーですね。ゲスト参加のSeggsによるダーティー・ベースもグッド!Pucho & His Latin Soul Brothers「Got Myself a Good Man」ネタのブレイクにもグッときます。。
http://www.youtube.com/watch?v=q7j-Ndccqaw

「In Dust We Trust」
アッパーなダンス・チューン。基本的にはダンス・ミュージックですが、ロックの要素をうまく散りばめているのがニクイですね!Beastie Boys「The Maestro」、Fun Fun「Happy Station」ネタ。
http://www.youtube.com/watch?v=CXSDOkycc2I

「Song to the Siren」
ハイライトその2。Dust Brothers時代にシングルとしてリリースされた楽曲です。Dead Can Dance「Song of Sophia」のアラビックな声ネタとMantronix「King of the Beats」のサイレン音ネタが絡み合いながらスタートし、そこにMeat Beat Manifesto「God OD」ネタのビートが加わります。それほどキャッチーではないのが、初期の彼ららしくて逆にグッとくるのでは?
http://www.youtube.com/watch?v=BExxyAwjPB0

「Three Little Birdies Down Beats」
今聴くと、典型的なロッキン・テイストのダンス・ミュージックですが、それだけ彼らのサウンドが広まった証でしょう!
http://www.youtube.com/watch?v=vgxOHyz0yKU

「Fuck Up Beats」
約1分半の短い曲。ロック的な要素は全くない仕上がりです。
http://www.youtube.com/watch?v=bo-1YAfsqrw

「Chemical Beats」
ハイライトその3。前述のDust Brothers時代のシングル「Song to the Siren」に収録されていた楽曲です。「Song to the Siren」同様、初期Chemical Brothersならではの魅力に満ちていますね!男性の掛け声は(多分)Commodores「Assembly Line」ネタ、ビートはJimmy McGriff「The Worm」ネタ。
http://www.youtube.com/watch?v=gknXdDLJDMc

「Chico's Groove」
ダークな雰囲気が漂うミッド・グルーヴ。Tom Scott & The L.A. Express「Sneakin' In The Back」ネタ。
http://www.youtube.com/watch?v=VROJt3N8mNY

「One Too Many Mornings」
アンビエント&ダビーな雰囲気が漂います。Swallow「Peekaboo(Dub)」をサンプリングした哀愁モードの女性ヴォーカルがいいですね。Dexter Wansel「Theme From the Planets」ネタ。
http://www.youtube.com/watch?v=_8sNI194y08

「Life Is Sweet」
ハイライトその4。前述のようにThe CharlatansのヴォーカルTim Burgessをフィーチャーした2ndシングル。UKシングル・チャート第25位のヒットとなりました。UKロック・ファン、特にマンチェスター・サウンドが好きだった人にはグッとくるのでは?
http://www.youtube.com/watch?v=X7VDy-yT6RE

「Playground for a Wedgeless Firm」
ヴォーカル曲に挟まれたインタールードな小曲。Baby Huey「Hard Times」ネタ。
http://www.youtube.com/watch?v=G-qA6wUwb0E

「Alive Alone」
ハイライトその5。ラストはBeth Ortonのヴォーカルをフィーチャー。アルバム中最もメロディアスな仕上がりです。その意味ではBeth Ortonの楽曲を彼らがリミックスした感覚に近いかも?
http://www.youtube.com/watch?v=1bwXsjpUWqQ

久しぶりにアルバムを通しで聴きましたが、サンプリング・ソースも整理しながらじっくり耳を傾けると新たな発見もあり、なかなか楽しめました。
posted by ez at 02:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 1990年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年01月21日

Bossa Rio『Alegria!』

セルメンの弟分グループは本家以上にセルメンらしい!☆Bossa Rio『Alegria!』
アレグリア!(紙ジャケット仕様)
発表年:1970年
ez的ジャンル:セルメン系ボッサ・ジャズ/ポップ
気分は... :セルメン好きにはたまりません!

今回はSergio Mendesファンはグッとくる1枚、Bossa Rio『Alegria!』(1970年)です。

Bossa RioSergio Mendes自らが世に送り出したSergio Mendes & Brasil '66の弟分グループ。Sergio Mendesは60年代前半にもBossa Rioというインスト・グループを率いていたのでややこしいのですが。

メンバーはGracinha Leporace(vo)、Pery Ribeiro(vo)、Manfredo Fest(key)、Osmar Milito(p)、Octavio Bailly Jr.(b)、Ronie Mesquita(ds)の6名。

Gracinha Leporaceは、Grupo Manifestoのメンバーとして活動した後、Sergio MendesにスカウトされてBossa Rioへ参加し、そのままSergio Mendesと結婚しました。Bossa Rio解散後も公私にわたるパートナーとしてMendesをサポートしています。Brasil '66、Brasil '77等の作品でも彼女の声を聴くことができます。

Pery Ribeiroはブラジルで名曲「Garota de Ipanema(イパネマの娘)」をレコーディングした最初のシンガーなのだそうです。また、Octavio Bailly Jr.(b)、Ronie MesquitaはBossa Tresのメンバーだったこともあるリズム・セクションです。

グループは『Bossa Rio』(1970年)、『Alegria!』(1970年)という2枚のスタジオ作をリリースしています。また、1970年にSergio Mendes & Brasil '66と共に来日し、大阪万博のステージにBrasil '66の前座として出演したそうです。

ジャケに写るメンバーの風貌はBrasil '66ほど垢抜けていない印象も受けますが、中身は思い切りBrasil '66しています。勿論プロデュースはSergio Mendesです。セルメン・ファンであれば、かなり鉄板な仕上がりだと思います。楽曲は全てカヴァーですが、オリジナルと異なる雰囲気の楽曲も多く、そのギャップもなかなか楽しめます。

本来A&Mから送り出したアーティストなのですが、本作『Alegria!』はBlue Thumb(共同設立者の1人はTommy LiPuma)からリリースされています。その流れでセルメンのみならず、A&M、ロジャニコあたりとの接点も意識しながら聴くと、さらに楽しめるのでは?

全曲紹介しときやす。

「Spinning Wheel」
Blood, Sweat & Tearsの名曲カヴァー。オリジナルをイメージして聴くとあまりギャップに驚きますよ(笑)。ブラス・ロックの名曲が彼らの手にかかれば、ポップなボッサ・チューンに変貌してしまいます。よくもここまで変わるものですね! お見事!
http://www.youtube.com/watch?v=r7OPgH1eYN8

「Zazueira」
Jorge Benの名曲カヴァー。当ブログではこれまでElis ReginaMeta Roos & Nippe Sylwens Bandのカヴァーを紹介してきましたが、それらと比較するとよりソフトな仕上がりかもしれません。曲自体が大好きなので嬉しいカヴァーです。

「Girl Talk」
26歳の若さでこの世を去った女優Jean Harlow(1911-1937年)の伝記映画『Harlow』(1965年)の挿入歌カヴァー(Bobby Troup/Neal Hefti作)。Sergio Mendesも『The Great Arrival』(1966年)でカヴァーしているので、その影響かもしれませんね。A&MつながりではChris Montezもカヴァーしています。ここではセルメン風の軽快な仕上がりで聴かせてくれます。

「The Night Has A Thousand Eyes」
1963年のBobby Veeのヒットで知られるBenjamin Weisman/Dorothy Wayne/Marilynn Garrett作品のカヴァー。"若者の夜"といった趣の軽快なオリジナルと比較すると、若者の夜"といった趣のゆったりエレガントな仕上がりです。
http://www.youtube.com/watch?v=QbAI0cZi7L0

「What A Pity (Que Pena)」
Jorge Benのカヴァー2曲目。ソフトな仕上がりですが、他の楽曲以上にブラジル色を強くしています。僕の一番のお気に入りです。

Jorge Ben「Que Pena」
 http://www.youtube.com/watch?v=9i46osqhlcY

「With Your Love Now」
原題「Mustang Cor de Sangue」。Marcos Valleのカヴァーです(Paulo Sergio Valle/Marcos Valle作)。Marcosのオリジナルほどハジけてはいませんが、キュートな仕上がりにグッときます。

Marcos Valle「Mustang Cor de Sangue」
 http://www.youtube.com/watch?v=BfgAnWFBeCI

「Open Your Arms」
原題「Andanca」(Danilo Caymmi/Edmundo Souto/Paulinho Tapajos作)。Pery RibeiroとGracinha Leporaceの男女ヴォーカルの絡みが実に素敵ですね。ロマンティック・ムードという点ではアルバム随一かもしれません。

「Eleanor Rigby」
Beatlesの名曲カヴァー1曲目。Pery RibeiroとGracinha Leporaceのヴォーカルがミステリアスな雰囲気を醸し出しています。以前に紹介したWes Montgomeryヴァージョンと並ぶお気に入りEleanor Rigbyカヴァーです。

「Don't Go Breaking My Heart」
Roger Nichols & The Small Circle Of Friendsのカヴァーでお馴染みのHal David/Burt Bacharach作品。Dionne Warwick、Herb Alpert & The Tijuana Brass、Aretha Franklinも取り上げています。本曲を知っている人であれば、かなり素直なカヴァーに仕上がっています。元々がボッサな雰囲気の楽曲なので当たり前すぎる気もしますが、それでもグッときてしまいます(笑)

「Blackbird」
Beatlesの名曲カヴァー2曲目。年末に紹介したDoces Cariocas「Blackbird e Asa Branca」(「Blackbird」のフレーズを挿入)もそうですが、案外このBeatlesソングはボッサな雰囲気が似合う楽曲なのかもしれませんね。

1st『Bossa Rio』(1970年)もセットでどうぞ!

『Bossa Rio』(1970年)
Bossa Rio (Saiupa (Por Causa de Voce Menina)

「Do You Know The Way To San Jose」(From 『Bossa Rio』)
 http://www.youtube.com/watch?v=Wo3xrpQqJmA&
「Old Devil Moon」(From 『Bossa Rio』)
 http://www.youtube.com/watch?v=eE7cgPv1hkw
「Cancao Do Sal」(From 『Bossa Rio』)
 http://www.youtube.com/watch?v=C00Yr3nGbyM

先ほど、Tom Cruise主演の映画『Vanilla Sky』(2001年)を観ました。
観終わっても、判然としないモヤモヤ感が好きだったりします。
単にキュートなPenelope Cruzがミーハーで好きだけかもしれませんが(笑)

同じTom Cruise出演作で言えば、一般にはかなり評判悪い『Magnolia』(1999年)なんかも好きだったりします。変り者なのでしょうね(笑)
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