2010年01月20日

Musiq『Juslisen』

まぁ、聴いてくださいな!自信を深めたMusiq Soulchildの大ヒット2nd☆Musiq『Juslisen』
Juslisen
発表年:2002年
ez的ジャンル:天才男性R&Bシンガー
気分は... :まぁ、聴いてくださいな!

今日はMusiq(Musiq Soulchild)の4回目の紹介です。

これまで当ブログで紹介したMusiq(Musiq Soulchild)作品は以下の3枚(発売順)。

 『Soulstar』(2003年)
 『Luvanmusiq』(2007年)
 『Onmyradio』(2008年)

4枚目に紹介するのは2ndアルバム『Juslisen』(2002年)です。

前作では"Musiq Soulchild"の表記でしたが、本作、次作『Soulstar』では単に"Musiq"となっています。『Luvanmusiq』以降は再び"Musiq Soulchild"に戻しています。

デビュー作『Aijuswanaseing』(2000年)で確かな存在感を示したMusiq Soulchildですが、本作『Juslisen』ではさらに自分の方向性に自信を深めた内容になっています。「とりあえず聴いてよ!」というアルバム・タイトル(Just listen!)にも自信が表れていますね。それが功を奏し、アルバムは全米アルバム・チャート、同R&Bチャート共に第1位を獲得しました。

前作時点ではまだ半信半疑で聴いていたところがありましたが、本作を聴いて"このアーティストは本物だ!"と確信するようになりました。前作では、僕の方が彼独特のヴォーカル・スタイルに慣れていない部分があって、多少戸惑っていたのかもしれません。

本作以降のMusiq Soulchildは、僕の中で21世紀最高の男性R&Bシンガーの地位を不動のものにしています。年末の記事でも少し書きましたが、男性R&BシンガーならばMusiq Soulchild、女性R&BシンガーならばAngie Stone、Hip-HopならばCommonというのが僕の2000年代でしたね。

さて、『Juslisen』に話を戻すと、何となく、1st『Aijuswanaseing』(2000年)と共に紹介するタイミングを逸していた作品だったので、ようやく紹介できホッとしています。

前作『Aijuswanaseing』同様に大半の曲でA Touch of Jazz(Jazzy Jeffがフィラデルフィアで設立したプロダクション)関連のプロデューサー達を起用しています。具体的にはIvan "Orthodox" Barias & Carvin "Ransum" Hagginsをメインに、Darren "Limitless" Hensonm & Keith "Keshon" Pelzer、Andre Harris & Vidal Davis(Dre & Vidal)が参加しています。A Touch of Jazz以外ではJames Poyser/Vikter Duplaix(前作も参加)、88-Keys等が起用されています。

Keith Sweatあたりと同じで、好き/嫌いは別れるけど、気に入ったら中毒のようにハマるタイプのシンガーだと思います。

聴き逃している方は、とりあえず聴いてくださいな!

全曲紹介しときやす。

「Scratch Interlude」
デビュー作『Aijuswanaseing』に続き、The RootsのScratchのビートボックスでアルバムは幕を開けます。

「Newness」
Musiqらしさ全開のミディアム・スロウ。ネオ・ソウルらしいメロウなエレピ・サウンドと少し引っ掛かり気味のグルーヴをバックに、Musiqのソウルフルなヴォーカルで女性に話しかけるように歌います。メロウな雰囲気が全体を支配しますが、歌自体は結構強引なナンパ・ソングです(笑)。でも大好き!Ivan "Orthodox" Barias & Carvin "Ransum" Hagginsプロデュース。
http://www.youtube.com/watch?v=zQNIO3UIvSI

「Caught Up」
『Aijuswanaseing』にも参加していた彼の妹分グループAaries(Ayana Hipps & Ayinka Hipps)をフィーチャー。Hamilton Bohannon「Save Their Souls」をサンプリングしたファンキー&ビターなミッド・グルーヴに仕上がっています。前作の収録曲「Seventeen」の続編であり、前回は17歳という年齢がネックで諦めた女性に、数年ぶりに再会したビミョーな男心を歌っています。男は引きずりますからねぇ(笑)。Ivan "Orthodox" Barias & Carvin "Ransum" Hagginsプロデュース。

YouTubeには浮遊感漂う9th WonderによるRemixがありました。
「Caught Up (9th Wonder Remix)」
http://www.youtube.com/watch?v=NLWGP02KwuA

「Stoplayin」
Jill Scott、Bilal等と一緒に聴きたくなるネオソウルらしいジャジー&ソウルな仕上がりです。Ivan "Orthodox" Barias & Carvin "Ransum" Hagginsプロデュース。
http://www.youtube.com/watch?v=kYmvbP0os4U

「Religious」
ゴスペル風にスタートする軽快なファンキー・グルーヴ。The Meters「Thinking」をサンプリングしています。Musiqの粘っこいヴォーカルとThe Metersのグルーヴ感って実にマッチしますよね。Darren "Limitless" Hensonm & Keith "Keshon" Pelzerプロデュース。

「Babygirl」
88-Keysプロデュース。A Touch of Jazz勢以外のプロデュースで少しアクセントをつけています。88-KeysプロデュースでHip-Hop色が強い仕上がりをイメージしてしまいますが、ストリングスも入った柔らかい仕上がりで意外とネオ・ソウルしています。歌の内容は相変わらずナンパ・ソングです(笑)

「Halfcrazy」
アルバムからの1stシングル。全米シングル・チャート第16位、同R&Bチャート第2位のヒットとなった代表曲の1つ。映画『パリのめぐり逢い(Vivre Pour Vivre)』で使われたFrancis Laiの名曲「Vivre Pour Vivre(英題:Live For Life)」をサンプリングしたロマンティック・バラードです。友人だった女性が恋人となる際のハーフクレイジーな男心を歌っています。ハッピー・モードではなく切ないモードなのがグッときますね。Ivan "Orthodox" Barias & Carvin "Ransum" Hagginsプロデュース。
http://www.youtube.com/watch?v=IP4V3TTC3fw

「Time」
ジワジワ迫ってくる哀愁モードのビューティフル・バラード。Ivan "Orthodox" Barias & Carvin "Ransum" Hagginsプロデュース。

「Future」
Hip-Hopテイストの仕上がり。♪ヘイ・ヨー♪ヘイ・ヨー♪の掛け声が印象的です。Junius Bavineプロデュース。

「Intermission: Juslisen」
Sly & the Family Stone「Thank You (Falettinme Be Mice Elf Agin)」を引用したファンク・テイストのインターミッション。88-Keysプロデュース。
http://www.youtube.com/watch?v=PWrDilUJeQk

「Realove」
James Poyserプロデュース。演奏も全て彼です。D'Angeloのような浮遊感漂うグルーヴ感がJames Poyserらしいですね。Soulquarians好きの人はグッとくる仕上がりです。
http://www.youtube.com/watch?v=Ws25FayttsY

「Onenight」
Andre Harris & Vidal Davisプロデュース(Dre & Vidalと書いた方がわかりやすいですね)。当時は"21世紀のStevie Wonder"なんて呼び方もされたMusiqですが、この曲ではMarvin Gaye風のセクシー・モードで迫ります。

「Previouscats」
A. Jermaine Mobley/Hakim Young/Donahue Bakerプロデュース。哀愁モードのミッド・チューン。
http://www.youtube.com/watch?v=8TKtVB_5-kM

「Solong」
Ivan "Orthodox" Barias & Carvin "Ransum" Hagginsプロデュースによる、囁くような哀愁グルーヴ。
http://www.youtube.com/watch?v=e3vTTv8neqU

「Bestfriend」
新人女性シンガーCarol Riddickのお披露目も兼ねたデュエット。ネオ・ソウルらしい引っ掛かったグルーヴ感にグッときます。Ivan "Orthodox" Barias & Carvin "Ransum" Hagginsプロデュース。
http://www.youtube.com/watch?v=ufpAmwdLieI

「Dontchange」
アルバムからの2ndシングル。全米シングル・チャート第17位、同R&Bチャート第3位のヒットとなりました。愛しい人へ永遠の愛を誓うバラード。淡々とした中でジワジワと感動が高まってくるのがMusiqらしいですね。Ivan "Orthodox" Barias & Carvin "Ransum" Hagginsプロデュース。
http://www.youtube.com/watch?v=TzBD8t0sB-4

「Motherfather」
タイトルの通り、両親への感謝を歌った感動的なソウル・チューン。James Poyser/Vikter Duplaixプロデュース。
http://www.youtube.com/watch?v=3IUKqHH717Q&

「Something」
ラストはGeorge Harrison作のThe Beatles名曲カヴァー。前年11月に亡くなったGeorgeへの追悼の意が込められているのだと思います。意外なカヴァーの気もしますが、曲自体はMusiqに合っているのでは?Ivan "Orthodox" Barias & Carvin "Ransum" Hagginsプロデュース。
http://www.youtube.com/watch?v=z8EWB4vglO8

「Ifiwouldaknew (Girlnextdoor Remix) 」
ボーナス・トラックとして前作『Aijuswanaseing』からのシングルカット「Girl Next Door」のリミックスが収録されています。AariesのAyanaをフィーチャーし、DeBargeの名曲「Stay With Me」をサンプリングしています。

国内盤はジャケの色が違います!
Juslisen

未聴の方は他作品もどうぞ!

1st『Aijuswanaseing』(2000年)※そのうち投稿します!
Aijuswanaseing

3rd『Soulstar』(2003年)
Soulstar

4th『Luvanmusiq』(2007年)
Luvanmusiq

5th『Onmyradio』(2008年)
OnMyRadio
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2010年01月19日

Eric Dolphy『Out To Lunch』

生前最後のアメリカ録音は新主流派との共演☆Eric Dolphy『Out To Lunch』
アウト・トゥ・ランチ
録音年:1964年
ez的ジャンル:天才肌フリー・ジャズ
気分は... :『ハチミツとクローバー』とフリー・ジャズ...

まずがNFLの話題から!
現地時間の16日、17日の2日間でディビジョナル・プレイオフ4試合が行われ、AFCはコルツ、ジェッツ、NFCはセインツ、バイキングスが勝ち上がり、スーパーボウル進出をかけて来週のカンファレンス・チャンピオンシップで激突することになりました。

僕の予想では、AFCはコルツ、チャージャース、NFCはバイキングス、カーディナルスだったので、結果は2勝2敗でした。

AFCではジェッツが予想外の活躍を見せていますね。
チャージャース戦はチャージャースの自滅という印象が強かったですが...
リーグNo.1の強力守備陣とRBグリーンが大活躍のラン攻撃が光るポストシーズン2試合ですね。

AFCチャンピオンシップでは、マニング擁するコルツ攻撃陣とジェッツ守備陣の対決に注目が集まると思いますが、個人的にはジェッツのラン攻撃をコルツ守備陣が止めることができるか否かがポイントだと思っています。

NFCではセインツが第1シード通りの強さを見せました。
僕の予想では、セインツはレギュラーシーズン通りの強さを発揮できず、ワーナー擁するカーディナルス攻撃陣が爆発してアップセット!というはずだったのですが...結果は全く逆でしたね。

残った4チームで応援したいのはバイキングスですね。
ファーヴにスーパーボウル出場させてあげたいですね。
スーパーボウルに勝利し、MVPも受賞して男の花道を飾る、という劇的シナリオも感動的なのでは?

今回は天才ジャズ・マンEric Dolphyの2回目の登場です。

Booker Littleと共演した名盤『At The Five Spot Vol.1』(1961年)に続いて紹介するのは、1964年録音の『Out To Lunch』です。

1964年2月にレコーディングが行われた本作はDolphy生前最後のアメリカ録音となったBlue Noteでのリーダー作です。糖尿病を患っていたDolphyは1964年6月滞在先のベルリンで倒れ、そのまま息を引き取ります。享年36歳。

レコーディング・メンバーはEric Dolphy(as、fl、bcl)以下、Freddie Hubbard(tp)、Bobby Hutcherson(vib)、Richard Davis(b)、Tony Williams(ds) の5名。Richard Davisを除けば、Dolphyと新主流派ミュージシャンとの共演といったところでしょうか。

そのせいか前衛的なフリー・ジャズ作品ながらも、スッキリと洗練された部分も感じられます。Bobby Hutchersonのヴァイヴが入っているのが大きいのかも?

本作において主役のDolphyを喰ってしまう勢いなのがTony Williamsの凄まじいドラムです。当時若干19歳であったTonyですが、Dolphyとは別の天才ぶりを発揮しています。
Tonyのドラムを中心に聴くのも本作の聴き方かもしれません。というか聴いていると、どうしてもドラムに耳がいってしまいますが。

前衛的な作品であり、決して気楽に聴ける作品ではありませんが、他のフリー・ジャズ作品と比較すれば、まだ聴きやすい部類の作品なのでは?。

"永遠のジャズ初心者"である僕には、かなりハードルの高い作品であることは事実ですが、たまに精神を集中してこうした音楽を聴くと感性が研かれる気分になります(笑)

全曲紹介しときやす。

「Hat and Beard」
タイトルにある「帽子とあご髭」とはThelonious Monkのことらしいです。でもジャズ通の方々は全然Monkらしくない!という見解が多いようですね。僕などは出だしヘンテコなメロディがMonkっぽく聴こえてしまうのですが(笑)。ここでのDolphyはバス・クラリネットを吹いています。前述のようにTony Williamsの凄まじいドラムが炸裂します。Dolphy、Hubbard、Hutchersonを煽るかのようなドラムで演奏全体を盛り上げます。。
http://www.youtube.com/watch?v=7tnPkQufnZY

「Something Sweet, Something Tender」
ここでもDolphyはバスクラを手にしています。タイトルにあるようにSweet & Tenderなのかは???ですが、アルバムで唯一Tony Williamsが大人しくしている曲です。その分、DolphyやHubbardのプレイに集中できます。後半のRichard Davisの弓弾きとDolphyのバスクラのユニゾンあたりは多少Tenderかもしれませんね(笑)
http://www.youtube.com/watch?v=4C6YAB-bLCU

「Gazzelloni」
タイトルはDolphyのフルートの師匠であるクラシック界のイタリア人フルート奏者Severino Gazzelloniのことです。勿論、ここでのDolphyはフルートを吹いています。個人的にはアルバムの中で最も好きな演奏です。フリーな演奏の中にも新主流派らしい洗練された部分があってグッときます。
http://www.youtube.com/watch?v=1DWeYN14cWk

「Out to Lunch」
タイトル曲と次の「Straight Up and Down」でのDolphyはアルト・サックスを演奏しています。フリー・ジャズという観点ではアルバム中最もエキサイティングな演奏なのでは?フリー度合いが高いながらも喧しい感じはなく、スッキリしているのがいいですね。ここでもTony Williamsのドラムには凄まじいものを感じます。、
http://www.youtube.com/watch?v=_CsB9AxaIMk

「Straight Up and Down」
テーマのヘンテコ感はMonkっぽいですね。タイトルは酔っ払いの歩き方をモチーフにしているのだとか。確かにぐでんぐでんの酔っ払いの雰囲気が漂います。Dolphyのアルトは比較的きちんと歌っています(笑)
http://www.youtube.com/watch?v=4C6YAB-bLCU

さっき、たまたま映画『ハチミツとクローバー』を観ました。
美術大学を舞台にした人気コミックの映画化ですが、登場人物のうち、はぐ、森田ならばフリー・ジャズにグッとくるのでは?なんて思ってしまいました。逆に竹本や真山にはピンとこない気がします(笑)
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2010年01月18日

Ben Sidran『Feel Your Groove』

人気曲「Poor Girl」 、「About Love」収録の初ソロ作☆Ben Sidran『Feel Your Groove』
夢の世界(紙ジャケット仕様)
発表年:1971年
ez的ジャンル:"Dr.Jazz"系ロック/ジャズ/ファンク
気分は... :この多様性は凄いですな!

今回は音楽好きを虜にする多才なミュージシャンBen Sidranの初ソロ『Feel Your Groove』(1971年)です。

Ben Sidranは1943年シカゴ生まれのミュージシャン。主にロック/ジャズの分野で活躍するキーボード奏者/ヴォーカリスト/ソングライター/プロデューサー。

ジャズのレコード・コレクターであった父親の影響で、幼い頃からジャズに親しみ、ピアノを演奏するようになったようです。そして、進学したウィスコンシン大学でSteve MillerBoz Scaggsと出会い、彼らとバンド活動を開始します。その後イギリスへ渡り、セックス大学で哲学を専攻し、博士号を取得しています。

彼がイギリスへ渡った同時期に、Steve MillerがBoz Scaggsらと組んだSteve Miller Bandのデビュー作『Children of the Future』(1968年)のレコーディングがロンドンで行われ、旧友であったSidranにもお声がかかりゲスト参加します。このセッションでプロデューサーGlyn Johnsとの親交が深まり、ロンドンで様々なセッションに参加するようになります。

Boz Scaggs脱退後のSteve Miller Bandではレギュラーメンバーとして活躍し、『Brave New World』(1969年)、『Your Saving Grace』(1969年)、『Number 5』(1970年)等のアルバムに参加しています。また、独立したBozの『Moments』(1971年)にもゲスト参加していましたね。

今日紹介する初ソロ作『Feel Your Groove』(1971年)を制作後は、コンスタントにソロ・アルバムをリリースしています。また、プロデューサーとしても、敬愛するMose Allisonをはじめ、Tony Williams、Jon Hendricks、Van Morrison、Clementine等の作品を手掛けています。

"Dr.Jazz"と呼ばれるようにジャズ/黒人音楽をはじめとする音楽・レコードに精通しており、『Black Talk』『Talking Jazz』といった著作を発表しています。また、テレビキャスターやラジオDJを務めたり、90年代にはジャズ・レーベルGo Jazzを設立したりするなど、ミュージシャンの枠に止まらないマルチな才能も発揮しています。

ロック好き、AOR好き、ジャズ好き、ソウル/ファンク好き、レア・グルーヴ/フリーソウル好きと多くの音楽ファンを虜にするアーティストがBen Sidranですね。聴く者に"俺っていい音楽センスしてるじゃん"という気分にさせてくる人だと思います(笑)

初ソロ・アルバムとなる本作『Feel Your Groove』でも、SSW風ピアノ弾き語り、まっ黒いファンク・グルーヴ、アーシーなトーキング・ブルース、洗練されたメロウ・チューン、サイケ調ロック、ピアノ・トリオを中心としたジャズ・チューン、深夜のブルース・セッションなど多様な演奏を聴かせてくれます。正にクロスオーヴァーな作品だと思います。

レコーディングには、旧友Boz Scaggs(g)とCurley Cooke(g)、David Brown(b)、George Reins(ds)といった彼のバンド・メンバー、Jesse Ed Davis(g)をはじめ、Arnold Rosenthal(b)、Sandy Konikoff(per)といったスワンプ系ミュージシャン、Rolling StonesのCharlie Watts(ds)や Humble PieのPeter Frampton(g)、Greg Ridley(b)といったイギリス人ミュージシャン、大物トランペッターBlue Mitchell(tp)をはじめ、Willie Ruff(b)、John Pisano(g)といったジャズ系ミュージシャン、お馴染みJim Keltner(ds)、直後にSteve Miller Bandに参加するGary Mallaber(ds)といった名うてのドラマー、さらにストリングス・アレンジにはNick DeCaro、バック・コーラスとして女性フォーク・シンガーMimi FarinaとBenの奥方Judy Sidranといった多彩な顔ぶれが揃いました。

プロデュースはBen Sidran本人。Glyn JohnsとBruce Botnickをエンジニアに据え、磐石の体制を組んでいます。

前述のように様々な音楽スタイルが登場しますが、何を演奏しても実に様になっているのがいいですね。また、決して上手くないヴォーカルを逆手にとっているところが心憎いです(笑)

「Poor Girl」「About Love」といった人気曲のみならず、曲ごとに変化するBenの多様な音楽性を楽しむ作品だと思います。

全曲紹介しときやす。

「Song List Leo's My Name」
場末のジャズ・バーのピアノ弾きといった趣でアルバムはスタートします。

「Poor Girl」
フリーソウル人気曲としてもお馴染みのファンキー・グルーヴ。この1曲でKOされてしまう方も多いのでは?Benのハモンド・オルガンを中心に、Jesse Ed Davisのギター、Arnold Rosenthalのうねるベース、Jim Keltner & Gary Mallaberのパワフルなツイン・ドラム、Sandy Konikoffのパーカッションが生み出す、黒いグルーヴ感がたまりませんね。上手くはないぶっきらぼうヴォーカルが逆にサウンドに溶け込んで良かったりします(笑)

「Racine Bovine」
Benが敬愛するMose Allisonを彷彿させる仕上がり。ジャジー&ブルージーな雰囲気が実に小粋です。

「About Love」
本作のハイライトとなる小粋なメロウ・グルーヴ。Willie Ruff、John Pisanoといったジャズ系ミュージシャンをバックに配し、Benのエレピが心地よく響きます。アルバム中で最も洗練されたサウンドですが、それ以上に癒し系の仕上がりがグッときます。奥方Judyのキュートなバック・コーラスにもグッときます!
http://www.youtube.com/watch?v=V5fy6MdHhCk

「Feel Your Groove」
タイトル曲はNick DeCaroアレンジのストリングスが盛り上げる7分超のメロウ・チューン。前半はソフトなヴォーカル・チューンですが、後半はめくるめくインストに終始します。Mimi Farinaのスキャットを配したインスト・パートを引っぱるのがBenらしいのかもしれませんね。本曲は『Free in America』(1976年)でも再演され、BenがプロデュースしたClementineのアルバムでもカヴァーされています。

「That Fine Day」
Steve Miller Bandを彷彿させるサイケな雰囲気が漂うシスコ・ロック風の仕上がり。バックは旧友Boz Scaggsらが務めています。ここでBenはピアノ/オルガンに加えてヴァイヴも演奏しています。

「Alexander's Ragtime Brand」
Blue Mitchell参加曲。「Poor Girl」と並ぶ僕のお気に入り曲。Mitchel以外のメンバーは「Poor Girl」と同じメンバーであり、スワンピーなファンキー・グルーヴとMitchelの組み合わせってどうなの?と思うかもしれませんが、意外にこれがハマっています。

「Try」
この曲もBlue Mitchell参加です。「Alexander's Ragtime Brand」から一転し、こちらはピアノ・トリオ+トランペットというジャズ仕様でのワルツ・チューンです。Benのヴォーカルは、こういったジャズ調の曲が一番ハマりますね。Nick DeCaroがストリングス・アレンジで盛り上げます。

「My Wife」
ジャズ・フレイヴァーのSSWといった感じの仕上がりです。

「Blues in England」
Charlie Watts、Peter Frampton、Greg Ridley参加のロンドン・セッション。タイトル通りのブルージーな演奏ですが、Benのヴォーカルのせいか良くも悪くもさらっと聴くことができます。

「Spread Your Wings」
ラストはSSWらしくエレピの弾き語りです。Chris Driscoeのアルト・サックスが彩を添えます。

他の作品も充実しています!

『I Lead a Life』(1972年) ※人気曲「Chances Are」収録
アイ・リード・ア・ライフ(紙ジャケット仕様)

『Puttin' in Time on Planet Earth』(1973年)
プッティン・イン・タイム・オン・プラネット・アース(紙ジャケット仕様)

『Don't Let Go』(1974年) ※人気曲「Hey Hey Baby」収録
ドント・レット・ゴー(紙ジャケット仕様)
「Hey Hey Baby」
http://www.youtube.com/watch?v=rfZzlPfv8Lg

『Free in America Arista』(1976年) ※AOR人気作
フリー・イン・アメリカ(紙ジャケット仕様)

『The Doctor Is In』(1977年)
ドクター・イズ・イン(紙ジャケット仕様)

『A Little Kiss in the Night』(1978年)
ア・リトル・キッス・イン・ザ・ナイト(紙ジャケット仕様)

『The Cat and the Hat』(1980年)
ザ・キャット・アンド・ザ・ハット(紙ジャケット仕様)
「Girl Talk」
http://www.youtube.com/watch?v=z-LH_TPv9cA

『On The Cool Side』(1987年) ※最近密かに愛聴しています!
Ben Sidran - On The Cool Side

『Cool Paradise』(1990年) ※AORファンはグッとくる!
Cool Paradise

Ben Sidran & Clementine『Spread Your Wings and Fly Now!!』(1988年) ※Clementineとの共演盤
スプレッド・ユア・ウィングス
Ben Sidran & Clementine「Chances Are」
http://www.youtube.com/watch?v=K-etjjUuS3M

何とかNFLディビジョナル・プレーオフの試合開始前に記事投稿できました!観戦に集中するので詳細については明日にでも。
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2010年01月17日

Eurythmics『Savage』

これがEurythmicsサウンドの完成形だと思います!☆Eurythmics『Savage』
Savage
発表年:1987年
ez的ジャンル:UKエレポップ・ユニット
気分は... :良妻から悪女へ!

昨夜、NHK-BS2で『MASTER TAPE 〜荒井由実「ひこうき雲」』という番組を観ました。

ユーミン本人をはじめ、松任谷正隆、細野晴臣、林立夫といったキャラメル・ママのメンバーや当時のプロデューサー、エンジニアが集まり、ユーミンの名盤『ひこうき雲』(1973年)のマスターテープを聴きながら当時を振り返るという番組でしたが、レコーディング秘話に加え、サウンド面での解説もあり、とても面白かったですね。中学・高校の頃はユーミンの大ファンで、洋楽アルバムと同じ位の頻度で聴いていたので...

ノンビブラート唱法で歌えるようにトレーニング通ったこと、ブリティッシュ志向であったユーミンとアメリカ志向であったキャラメル・ママとの間に当初ギャップがあったこと、ラテン、ボサノヴァ、スカ、フレンチ・ポップスの要素が各曲に散りばめられていることなど、実に楽しく観ることができました。あとは、さすがにプロのミュージシャン達の作品の聴き方は違うし、深いなぁと実感しましたね。

この流れでいくと、参加ミュージシャン達のセッションを堪能できる70年代のアメリカン・ロック/SSW作品あたりを取り上げるべきなのでしょうが、今日は全く逆のベクトルの作品Eurythmics『Savage』(1987年)です。

Dave StewartAnnie Lennoxの男女ユニットEurythmicsの紹介は、『Be Yourself Tonight』(1985年)、『Touch』(1983年)に続き3回目になります。

『Be Yourself Tonight』(1985年)、『Revenge』(1986年)と、多数のゲスト・ミュージシャンを迎え、生演奏を重視した作品をリリースしてきた彼らですが、本作『Savage』ではメンバー2人とプログラミングOlle Romoのみでレコーディングを行い、再び打ち込みサウンド主体のアルバムとなっています。

前後の作品と比較して、チャート・アクションが振るわず(UKアルバム・チャート第7位、USアルバム・チャート第41位)、ヒット・シングルにも恵まれなかったため、サウンド面での変化も含めてあまり評価が高くないアルバムかもしれません。

しかしながら、今聴き返してみると、『Be Yourself Tonight』と並ぶ傑作アルバムという気がします。ある意味Eurythmicsサウンドの完成形と呼べるのでは?

『Be Yourself Tonight』、『Revenge』で得たエモーションとダイナミズムを損なわずに、打ち込みサウンドへ還元している点が素晴らしいと思います。Dave Stewartのサウンド・メイクは剛柔両面で磨きがかかり、Annie Lennoxのヴォーカルも表現の幅が一段と広がっています。

本作では全曲PVが制作されていますが、その中でAnnie Lennoxは家庭的な良妻と自由奔放な悪女という対照的な役柄を演じ分けています。まさにAnnie Lennoxのヴォーカル表現の豊かさを象徴しているようです。

当時は気付きませんでしたが、同時期のロック/ダンス作品の打ち込みサウンドと比較すると、そのセンスの良さが実感できると思います。

それだけに今一度、再評価されるべき作品だと思います。

全曲紹介しときやす。

「Beethoven (I Love To Listen To) 」
アルバムからの1stシングル。無機質な打ち込みビートによるダンス・チューン。初期Eurythmicsを思わせる一方で、進化したダンス・サウンドでグループの成熟ぶりも窺えます。Annie Lennox演じる家庭的な妻の人格が崩壊し、自由奔放な悪女へと変貌していくPVも印象的です。
http://www.youtube.com/watch?v=pnhSt6cPf0c

「I've Got A Lover (Back in Japan) 」
オススメその1。やはり日本人には気になるタイトルですね。PVではAnnie Lennoxが富士山の写真を破り捨てるシーンもあります。ヴォーカルの剛柔のコントラストが見事ですね。
http://www.youtube.com/watch?v=YbLS_gzxXnA

「Do You Want To Break Up?」
キャッチーなポップ・チューン。PVでは「Beethoven (I Love To Listen To) 」で演じた良妻と同じ格好でAnnieが登場しますが、表情は明らかに悪女へ変貌しているところが面白いですね。サウンド面でも映像面でも、あえてブリッ娘路線を狙っているのがEurythmicsらしいシニカルさかもしれませんね。
http://www.youtube.com/watch?v=Sq2PVneUl9Q

「You Have Placed A Chill In My Heart」
オススメその2。アルバムからの4thシングル(USでの2ndシングル)。美しいメロディがいいですね。豊かな感情表現が打ち込みサウンドと上手く融合していますね。
http://www.youtube.com/watch?v=MMY7YFmlAow

「Shame」
オススメその3。アルバムからの2ndシングル。クール・サウンドながらも柔らかな印象を受けるのがいいですね。ヨーロピアンな美しさも感じます。美しいと言えば、本PVのAnnie Lennoxは格別に美人だと思います。
http://www.youtube.com/watch?v=0EOufrrEbIQ

「Savage」
タイトル曲はAnnie Lennoxのヴォーカルを堪能できるバラード。大人の哀愁モードにグッときます。
http://www.youtube.com/watch?v=LuLH6aNIWUw

「I Need A Man」
オススメその4。アルバムからの3rdシングル(USでの1stシングル)。ここではAnnieが思い切り悪女モードで挑発しまくります。Daveのギターも荒々しくてグッド!
http://www.youtube.com/watch?v=fjzxIMV7T5M

「Put The Blame On Me」
オススメその5。僕の一番のお気に入り。哀愁漂う疾走感がたまりません。ChicのNile RodgersがEurythmicsをプロデュースしたら、こんなサウンドになったのでは?
http://www.youtube.com/watch?v=M7-ZB54mwQc

「Heaven」
オススメその6。「Put The Blame On Me」に次ぐお気に入り。軽快なリズムと幻想的なシンセの音色はまさにへヴン・モードの心地よさ!
http://www.youtube.com/watch?v=6l7fnoStcQU

「Wide Eyed Girl」
サウンド的には初期Eurythmicsの雰囲気に近いですが、余裕たっぷりのAnnieのヴォーカルが入るとグループの進化を感じます。
できちゃった婚(?)のPVもなかなか楽しめます。
http://www.youtube.com/watch?v=uJwnzwoOVzg

「I Need You」
Daveのアコースティック・ギターの伴奏のみをバックにAnnieが歌います。ガンガンに打ち込みサウンドで攻めまくった後に、こうした曲を持ってくる構成は心憎いですね。
http://www.youtube.com/watch?v=P2wEvRIHu0k

「Brand New Day」
オススメその7。ラストはAnnieの多重録音ヴォーカルによるア・カペラでスタートします。意表を突く展開にかなりグッときます。
http://www.youtube.com/watch?v=Qxu6wJe2ACY

NFLは今日、明日とディビジョナル・プレーオフです。

今日はまず「セインツ対カーディナルス」、「コルツ対レイブンズ」の2試合。

「セインツ対カーディナルス」はハイパー・オフェンスの激突が楽しみですね。ハイスコアの好試合が期待されます。

「コルツ対レイブンズ」は、マニング擁するコルツ攻撃陣とルイスを中心としたレイブンズ守備陣の激突が楽しみですね。レイブンズが勝機を見出すとすれば、ロースコア・ゲームに持ち込まないと苦しいでしょうね。
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2010年01月16日

Ilessi『Brigador - Ilessi Canta Pedro Amorim E Paulo Cesar Pinheiro』

サンバ・ノヴァの新星登場!☆Ilessi『Brigador - Ilessi Canta Pedro Amorim E Paulo Cesar Pinheiro』
ブリガドール〜ペドロ・アモリーンとパウロ・セザル・ピニェイロを歌う
発表年:2009年
ez的ジャンル:サンバ・ノヴァ系女性シンガー
気分は... :ブラジル人のサンバDNAを感じたい!

今回はブラジル音楽好きの間では評判の新譜Ilessi『Brigador - Ilessi Canta Pedro Amorim E Paulo Cesar Pinheiro』です。

昨年末に発売され、ブラジル音楽ファンや関係者の間で高い評価の新世代サンバ・アルバムですね。

本作の主役Ilessiは無名の新人女性歌手であり、本作がデビュー作となります。

ギタリスト&コンポーザーであった故Rafael Rabelloの姉であり女性歌手でもAmelia Rabelloが主宰する歌謡学校へ通っていた模様です。この学校では現代ショーロを代表するギタリスト/作曲家/アレンジャーであるMauricio Carrilho、ソロ・アルバムもリリースしている女性カヴァキーニョ奏者Luciana Rabelloも指導を行っているようです。

そして、Ilessiがこの学校の仲間や先生達と制作したアルバムが本作『Brigador - Ilessi Canta Pedro Amorim E Paulo Cesar Pinheiro』です。タイトルにあるように、楽曲は全て現代最高のサンバ詩人Paulo Cesar Pinheiroとサンバ/ショーロの有名なバンドリン奏者Pedro Amorimによる共作です。

レコーディング自体は2007年に行われた模様であり、作者Pedro AmorimやAmelia Rabello、Mauricio Carrilho、Luciana Rabelloといった先生達もゲスト参加しています。さらにはAmelia Rabelloの旦那様Cristovao Bastosもピアノ、アコーディオンで参加しています。

全体の印象としては、ジャケのIlessiの初々しさがそのまま音にも反映されているサンバ・アルバムという感じです。Ilessiのヴォーカルが素晴らしいのは勿論のこと、ストレートにブラジル音楽の魅力が伝わってくるのがいいですね。

スタイリッシュな"ブラジリアン・フレイヴァー"の作品も大好きな僕ですが、そうした作品とは正反対のナチュラルなブラジル音楽の魅力に触れることができるアルバムだと思います。

ブラジル人の持つサンバDNAを感じましょう!

全曲紹介しときやす。

「Brigador」
オススメその1。初々しい躍動感とサンバの魅力がストレートに伝わってくるオープニング。サックス、クラリネット等も加わったアンサンブルも見事です。この曲を試聴して即購入を決定しました。Maria Rita『Samba Meu』あたりと一緒に聴きたくなります。

「Julgamento」
Pedro Amorim、Mauricio Carrilhoも加わっています。哀愁モードの仕上がりですがIlessiのヴォーカルも含めて演奏自体は実にハツラツとしているのがいいですね。

「Ponta De Punhal」
オススメその2。Amelia Rabello先生との共演。Ilessi & Ameliaの清々しいヴォーカル、Luciana Rabelloも加わった美しい弦の響き、Marcelo Bernardesによるフルートの涼しげな調べが素敵な音世界を届けてくれます。アルバムで一番好きかも!

「Olhos Azuis」
夜モードのエレガントな雰囲気にグッときます。シンプルながらも実に小粋なバックがいいですね。

「Serena」
Cristovao BastosのピアノをバックにIlessiのヴォーカルをじっくり堪能できます。

「A Pena Do Sabia」
オススメその3。Ilessiの歌力に聴き惚れてしまいます。ジワジワと心の中に滲みる感じがたまりません。ギターとCristovao Bastosのアコーディオンによるバッキングもサイコー!

「Barraqueiro De Caruaru」
緩急をつけた展開がいいですね。アルバムの中でいいアクセントとなっています。特に静寂を打ち破り、一気にリズミカルになる瞬間にゾクっとします。

「Sestrosa」
オススメその4。僕が好きなパターンのサンバ・チューン。ど派手に盛り上がるわけではありませんが、小粋で凛とした雰囲気が僕のツボです。

「Linha De Caboclo」
オススメその5。シンプルかつナチュラルな疾走感が魅力です。Ilessiの持つ天性のリズム感覚が素晴らしいですね。

「A Sina Do Negro」
オススメその6。見事なアンサンブルによる感動的なフィナーレです。「Brigador」と並ぶ完成度の高い仕上がりなのでは?

ボッサもいいけど、サンバもサイコーですよ!
posted by ez at 03:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 2000年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする