2010年01月15日

The Voices Of East Harlem『Right On Be Free』

イーストハーレムの躍動するキッズ・ヴォーカルに高揚する1枚☆The Voices Of East Harlem『Right On Be Free』
Right on Be Free
発表年:1970年
ez的ジャンル:ファンキー・グルーヴ系キッズ・ゴスペル/ソウル
気分は... :ボートラも必聴!

今回はN.Y.イーストハーレム出身のゴスペルグループThe Voices Of East Harlemのデビュー作『Right On Be Free』(1970年)の紹介です。

The Voices Of East HarlemはN.Y.イーストハーレムの養護施設で育った子供達を中心に結成されたゴスペル・グループ。メンバーは総勢20名程度いたようです。

グループは『Right On Be Free』(1970年)、『Brothers And Sisters』(1972年)、『The Voices Of East Harlem』(1973年、Curtis Mayfield/Leroy Hutsonプロデュース)、『Can You FeeI It?』(1974年、Leroy Hutsonプロデュース)といったアルバムをリリースしています。

僕が彼らの存在を知ったのは、1994年に発売されたフリーソウルのコンピ『Free Soul Action』でした。同作には「Cashing In」「Wanted, Dead or Alive」「Rare So Rare」の3曲が収録されており、アルバムの中でもかなり目立った存在でしたね。特にピチカートファイブ好きの僕にとっては「Cashing In」に相当グッときました(笑)。あとは「Take a Stand」も好きですね。

「Cashing In」(From 『The Voices Of East Harlem』)
 http://www.youtube.com/watch?v=ui86hLc_Jds
「Wanted, Dead or Alive」(From 『The Voices Of East Harlem』)
 http://www.youtube.com/watch?v=cmvpeCyipDY
「Take a Stand」(From 『Can You FeeI It?』)
 http://www.youtube.com/watch?v=4OvVsIUWZ4U

そんな流れでいくと、Curtis MayfieldLeroy Hutsonがプロデュースした『The Voices Of East Harlem』、『Can You FeeI It?』あたりに興味が湧くと思いますが、グループ本来の魅力という点ではデビュー作『Right On Be Free』も素晴らしい出来栄えだと思います。

他の作品と比較するとゴスペル・グループ色がかなり色濃く出ていますが、その分躍動する歌声とそれを盛り上げるファンキー・リズムを存分に堪能でき、高揚感も相当高まります。Chuck Rainey(b)、Richard Tee(org)、Ralph MacDonald(conga)、Cornell Dupree(g)といった名うてのミュージシャン達が参加しており、サウンド面でもバッチリです。

さらに現在リリースされている輸入CDにはオリジナル10曲に加えて、ボーナス・トラック11曲が追加されています。

そのうち7曲は何と!Donny Hathawayがプロデュースした未発表作品です。詳しいことは知りませんが、『Right On Be Free』に次ぐ2ndアルバム用にレコーディングしたもののお蔵入りになった模様です。ライナーノーツによると、『Nation Time』のタイトルになる予定だったみたいですね。

この7曲の出来栄えにもかなりグッときます!
Donny Hathawayらしいソウルフルな仕上がりで、『Right On Be Free』とは別の魅力に触れることができます。レコーディングにはPhil Upchurch(g)、Willie Weeks(b)、Fred White(ds)も参加しています。

その意味でオマケ的なボーナス・トラックとは異なる、2in1CD気分のお得感のあるボートラだと思います。

全曲紹介しときやす。

「Right on Be Free」
ゴスペルの持つ躍動感のあるヴォーカル&コーラスとソウルフルなファンキー・グルーヴが見事に融合したタイトル曲。Voices Of East Harlemの魅力が凝縮されたオープニングです。

「Simple Song of Freedom」
Bobby Darinのカヴァー。彼らにドンピシャの選曲という気がしますね。臨場感がダイレクトに伝わってくる仕上がりでゴスペルの素晴らしさを実感できます。

「Proud Mary」
Creedence Clearwater Revival(CCR)の大ヒット曲のカヴァー。本曲のカヴァーと言えば、Ike & Tina Turnerによるカヴァーが有名ですね。Voices Of East HarlemヴァージョンにもIke & Tina Turnerヴァージョンに負けない躍動感が溢れています。数ある本曲カヴァーの中でも最高峰の出来栄えだと思います。

「Music in the Air」
「Right on Be Free」同様、ファンキー・グルーヴをバックにゴスペル・ヴォーカル&コーラスの臨場感を堪能できる仕上がり。リズム隊がカッチョ良すぎです!

「Oh Yeah」
"ザ・ゴスペル!"といった趣です。自分もクワイアの一員として歌っているような高揚感が湧き上がります。

「For What It's Worth」
Buffalo Springfieldのカヴァー(Stephen Stills作)。なかなかシブい選曲ですが、ファンキーなグルーヴ感のカッチョ良さで言えば、アルバム随一かも?

「Let It Be Me」
The Everly Brothersのヒットをはじめ、数々のアーティストがカヴァーしているポピュラー・ソングですね。曲自体が大好きなので、本ヴァージョンもかなりグッときます。

「No No No」
アルバムの中では比較的ポップな仕上がりで聴きやすいと思います。シングルにもなりました。

「Gotta Be a Change」
ソウルフルな仕上がりに相当グッときます。ファンキーなオルガン・グルーヴと少し大人びたヴォーカルがいいですね。

「Shaker Life」
ラストはRichie Havens「Run Shaker Life」のカヴァー。僕の一番のお気に入りです。この躍動する歌声を聴いていると心も体も熱くなってきます!ボーナス・トラックにあるライブ・ヴァージョンと聴き比べてみるのも楽しいですよ。

前述のように現在のCDにはボーナス・トラック11曲が追加されています。
ハイライトとなるDonny Hathawayプロデュースの7曲は以下のものです。

「Oxford Town」 
 ※Bob Dylanのカヴァー
「Sit Yourself Down」 
 ※Stephen Stillsのカヴァー
「Nation Time」 
 ※The Ebonysヴァージョンで知られるKenneth Gamble/Leon Huff作品
「I Wanna Be Free」
 ※ Richie Furay作品
「Hey Brother」
「Love Is the Answer」
「Kind Woman」
 ※Pocoのカヴァー(Richie Furay作)

それ以外に「Angry」「(We Are) New York Lightning」「Run Shaker Life(Live)」「Soul to Soul(Live)」の4曲が収録されています。
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2010年01月14日

Jeanne Moreau『Jeanne Chante Jeanne』

ヌーベルヴァーグを代表する女優による昼下がりのシャンソン/フレンチ・ボッサ!☆Jeanne Moreau『Jeanne Chante Jeanne』
ジャンヌ・シャント・ジャンヌ
発表年:1965年? or 1970年?
ez的ジャンル:ヌーベルヴァーグ女優系シャンソン/フレンチ・ボッサ
気分は... :女優Jeanne Moreau≠歌手Jeanne Moreau

Jeanne Moreauは1928年フランス、パリ生まれの女優・歌手。
数多くのヌーベルヴァーグ作品に出演するなどフランスを代表する女優の一人ですね。

1948年に女優としてデビューし、1957年にLouis Malle監督の『Ascenseur Pour L'Echafaud(邦題:死刑台のエレベーター)』への出演で脚光を浴び、1960年の『Moderato Cantabile(邦題:雨のしのび逢い)』ではカンヌ映画祭の主演女優賞を受賞しています。

一般的には悪女イメージのする女優さんなのではないでしょうか?
僕はやはり『死刑台のエレベーター』の印象が強いです。

そんな女優Jeanne Moreauのイメージとは程遠い、爽快ラブリー・ヴォイスを聴かせてくれるアルバムが今日紹介する『Jeanne Chante Jeanne』です。

歌手としてのJeanne Moreauは、それまでにも『Jeanne Moreau/Douze Chansons』『Douze Chansons Nouvelles』『Les Chansons De Clarisse』といったアルバムをリリースしており、本作『Jeanne Chante Jeanne』は4枚目のアルバムとなる模様です。

ただし、リリース年が不明です。。CDのクレジットや帯には1965年作品となっていますが、ライナーノーツには1970年リリースとなっています。調べてもよくわからないので、便宜上とりあえず1960年代カテゴリーに入れておきました。

さて、内容ですが全曲Jeanne Moreauが詞を書き、Jacques DatinAntoine Duhamel(映画音楽で有名な作曲家ですね)の二人が作曲を担当しています。また、Musical Directorとしてフレンチ・ジャズのヴァイヴ奏者Guy Boyerの名がクレジットされています。

Clementineのカヴァーでもお馴染みの「Les Voyages」などフレンチ・ボッサ的なイメージが強い作品かもしれませんが、シャンソン、ジャズ、ブラジルが程よくブレンドされた、小粋で愛らしいアルバムに仕上がっています。

多くの人が女優Jeanne Moreauとは異なる歌手Jeanne Moreauに、新鮮な驚きを感じる作品ではないかと思います。

全曲紹介しときやす。

「La Celebrite La Publicite」
緩急を巧みに使い、華やかな映画スターとそれとは無縁の平凡な日常という対立する2つの世界を表現したオープニング。Guy Boyerのヴァイヴが印象的ですね。

「L'enfant Que J'etais」
穏やかなアコースティック・サウンドをバックに♪彼女は優しくてチャーミングだけれど、わがままで自己主張しすぎるし...♪と歌います。

「Les Voyages」
おそらく本曲目当て本作をゲットした人も多いであろう軽やかなフレンチ・ボッサ。Guy BoyerのヴァイヴとGeorge Grenuのフルートが心地よく響きます。

「Quelle Merveille Ton Coeur」
あまり注目されない曲ですが、僕の一番のお気に入りはラブリー・モードのコレ!アコースティック・サウンドによるラブソングです。こんなに愛らしいJeanne Moreauなんて僕のイメージが完全に覆されました。

「Juste Un Fil De Soie」
晴れやかな雰囲気にグッとくるボッサ・チューン。本作にフレンチ・ボッサを期待する人には間違いない仕上がり。

「Notre Ile Ton Ile Mon Ile」
牧歌的な雰囲気も漂うシャンソン。こういう曲がないとフレンチらしくないですよね。

「Les Petits Ruissseaux Font Les Grandes Rivieres」
ミュージカル映画の1シーンのような明るく楽しいスウィンギーなジャズ・チューン。女優Jeanne Moreauのイメージとはかなり異なりますが...

「Errante Du Coeur」
どこか遠くを見つめてながら聴きたくなるアコースティック・チューン。この手のメロディ&サウンドとフランス語の語感は実にマッチしますね。

「Je Suis A Prendre Ou A Laisser」
哀愁モードのジャズ・チューン。ジャズ・ヴォーカル的な聴き方をするとこの曲が一番グッとくるかも?

「Quelle Histoire」
軽快なサンバ・チューン。少しコミカルな雰囲気もあってなかなか楽しめます。

「On Dit Que Je Ne Suis Pas Sage」
ミステリアスな雰囲気が漂います。女優Jeanne Moreauのイメージに最も近い印象を受けます。

「Le Vrai Scandale C'est La Mort」
内容はシリアスなメッセージ・ソングみたいですが、ヴォーカル&メロディ&サウンドは実にチャーミングです。

記事を書いていたら『死刑台のエレベーター』が観たくなってきました。
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2010年01月13日

Ron Sexsmith『Retriever』

魔法のメロディはいつ聴いても素晴らしい!☆Ron Sexsmith『Retriever』
Retriever
発表年:2004年
ez的ジャンル:魔法のメロディ系カナディアンSSW
気分は... :いつ聴いても感動的!

唐突ですが、作品のセレクトに関して今年は2000年代旧譜の紹介に力を入れたいと思っています。

昨年までの2000年代カテゴリーは新譜紹介が中心になってしまい、発売から少し時間が経過した作品や(ブログ開設前の)2000年代前半の作品を紹介しづらい側面がありました。今年から新譜は(まだ未設定ですが)"2010年代"カテゴリーで扱うため、ようやく2000年代カテゴリーでは旧譜を紹介しやすくなりました。

今日紹介するRon Sexsmith『Retriever』(2004年)もそんな1枚です。

カナディアン・シンガー・ソングライターRon Sexsmithの紹介は、『Other Songs』(1997年)、『Whereabouts』(1999年)に続き3回目になります。

以前の記事で彼のことを"90年代のJackson Browne"と形容したことがあります。Jackson Browneは僕にとって音楽ライフの原点と呼べるアーティストですが、そんなアーティストと一緒に語りたくなるほど、Ron Sexsmithの最初の3枚(※注)『Ron Sexsmith』(1995年)、『Other Songs』(1997年)、『Whereabouts』には魅了されました。
※注:インディ時代の『Grand Opera Lane』(1991年)はカウントしていません。

特別なことは何もしなくとも、素晴らしいメロディと実直な歌声があれば、そこに感動的な音楽が生まれることを実感させてくれる数少ないアーティストだと思います。素朴で誠実で自然体なところが大好きですね。

基本的に彼の作品はどれも一過性に終わらないエヴァーグリーンな魅力を持っていますが、2000年代の作品群の中では2004年にリリースされた本作『Retriever』が特に好きですね。

『Retriever』は、『Cobblestone Runway』(2002年)に続く6thアルバムです。その間に未発表曲等を集めた『Rarities』(2003年)をリリースしています。

前作『Cobblestone Runway』(2002年)に続きスウェーデン人プロデューサーMartin Terefeを迎えてのロンドン録音です。Ron Sexsmithの籠もった歌声はロンドンの曇り空が良く似合う??

Martin TerefeはShea Seger等のプロデュースで知られていますね。去年はBONNIE PINKも手掛けていました。現時点でのRonの最新作『Exit Strategy of the Soul』(2008年)でも再びMartinをプロデューサーに迎えており、二人の相性はかなり良いのでしょうね。個人的にはRon Sexsmithという最高の素材そのものの味を活かしつつ、そこにキャッチーな味わいを隠し味程度に加えるMartinのさじ加減が絶妙だと思います。

レコーディングにはイギリス人SSWのEd HarcourtやTravisのドラマーNeil Primroseなども参加しています。

なお、本作は前年に亡くなったJohnny CashJune Carter CashElliot Smithという3アーティストに捧げられています。

改めてRon Sexsmithというアーティストに惚れ直した1枚でした。
ぜひ魔法のメロディの堪能あれ!

全曲紹介しときやす。

「Hard Bargain」
オープニングからRon Sexsmithワールド炸裂です。ファンの方はRonらしさ全開のイントロだけで"大当たり"を感じたのでは?穏やかなメロディと優しい歌声が聴く者の心を温かくしてくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=rZUcxvt2q9s

「Imaginary Friends」
Ron Sexsmith、Martin Terefe両者の個性が上手く融合した仕上がり。Martin自らが弾くギター・サウンドが控えめながらも、Ronの魔法のヴォーカル&メロディをさらに魅力的なものにレベルアップしてくれます。

「Not About to Lose」
アルバムのハイライト曲かもしれませんね。この美しいメロディと素直な歌声があれば何も入りません!と言いつつ、ヴォーカル&メロディを際立たせているアレンジも素晴らしいですね。ロンドン録音らしく所々に英国の香りが漂ってきます。
http://www.youtube.com/watch?v=HkQKkNq6JCE

「Tomorrow in Her Eyes」
Ronのピアノ弾き語りによる美しいバラード。ストリングスも入りますが仰々しくないのがいいですね。

「From Now On」
ロック調の力強いバッキングが印象的です。Ronの歌から勇気をもらいたい時や闘志を掻き立てたい時にはピッタリなのでは?心の中で何かがメラメラと湧き立ってきますよ!

「For the Driver」
シンプルなアコギによる弾き語り。この素朴さこそがRon Sexsmithですね。
http://www.youtube.com/watch?v=1O63LxxspcU

「Wishing Wells」
個人的には「Hard Bargain」、「Not About to Lose」、「How on Earth」と並ぶお気に入り。Martin Terefeの手腕が光るキャッチーなギター・ポップに仕上がっています。
http://www.youtube.com/watch?v=ofUUUOQ98c8

「Whatever It Takes」
完成度の高さではアルバムでもトップクラスかもしれませんね。素晴らしいストリングス・アレンジが印象的です。個人的には洗練されすぎていてRonらしくない気もしますが(笑)
http://www.youtube.com/watch?v=WS0HNg9-jnM

「Dandelion Wine」
Ronらしいヴォーカル&メロディを堪能できます。ストリングスもジワジワと盛り上げてくれます。個人的には本曲のようにゆっくり、じんわり高揚していくパターンが好きですね。

「Happiness」
アルバム中最もリラックスした雰囲気の仕上がり。どうしても憂い、哀愁モードの印象が強い人なので、こういうハッピー・モードの曲はアルバム全体でいいアクセントになると思います。

「How on Earth」
この曲も僕のお気に入りの1つ。前曲「Happiness」から一転する入り方に思わずハッとしてしまいます。名曲の雰囲気漂う魔法のメロディにうっとりしてしまいます。

「I Know It Well」
ラストはRonらしい優しく、穏やかな歌声で締めくくってくれます。

Ron Sexsmithを聴くと、ふと自分の中で忘れていたものを思い出したり、原点回帰できたります。不思議ですね。
posted by ez at 07:31| Comment(4) | TrackBack(0) | 2000年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年01月12日

Stereolab『Transient Random-Noise Bursts With Announcements』

初期の代表作☆Stereolab『Transient Random-Noise Bursts With Announcements』
騒音的美学の終焉
発表年:1993年
ez的ジャンル:UKエクスペリメンタル/ポストロック
気分は... :騒音的美学が終焉すると...

UKポストロックの先駆者、Stereolabの4回目の紹介です。

前回Stereolabの記事をエントリーしたのが2008年11月でしたが、その後2009年4月にグループは活動休止を発表しました。残念ですねぇ!

これまで当ブログで紹介したStereolab作品は以下の3枚です(発売順)。

  『Emperor Tomato Ketchup』(1996年)
  『Dots And Loops』(1997年)
 『Cobra and Phases Group Play Voltage in the Milky Night』(1999年)

4枚目に紹介するのは1993年リリースの2ndアルバム『Transient Random-Noise Bursts With Announcements』です。

毎回Stereolabのエントリーで書いていますが、これまで紹介した3枚にミニ・アルバム『First Of The Microbe Hunters』(2000年)を加えた4枚を聴く頻度が圧倒的に多いのですね。僕と同じようにこれら4作品に聴かれるスタイリッシュな近未来的ラウンジ感覚のサウンドに魅了された方は多いのではないかと思います。

それらの作品と比較すると本作『Transient Random-Noise Bursts With Announcements』の頃のStereolabは、もう少し実験的かつラフなサウンドという印象を受けるかもしれません。『騒音的美学の終焉』という邦題やジャケからしてエクスペリメンタルな雰囲気が漂っていますよね!

ただし、実験的と言ってもあくまで相対的なもので、一般的なエクスペリメンタル/ノイジー・ポップと比較すれば、はるかに聴きやすくなっていますが。

デビュー・アルバム『Peng!』(1992年)の時点のグループはTim Gane、Latitia Sadier、Martin Kean、Joe Dilworthという4人体制でしたが、ミニ・アルバム『Space Age Bachelor Pad Music』(1993年)よりMartin Kean、Joe Dilworthの2人が抜け、新たにMary Hansen、Andy Ramsay、Duncan Brownの3人が加わりました。やはり、Latitia SadierMary Hansenの女性ヴォーカル2人が揃った方がStereolabらしいですね。

そしてメジャーのElektraからリリースされ、ワールド・ワイド展開の第1弾となったアルバムが本作『Transient Random-Noise Bursts with Announcements』です。本作ではStereolab作品のレギュラー・メンバーであるHigh LlamasSean O'Haganがゲスト扱いではなく6人目のメンバーとしてクレジットされています。

僕のように 『Emperor Tomato Ketchup』以降のスタイリッシュなStereolabがお好きな方は、"実験的"というイメージが先行するあまり、初期作品に手を出しづらい面があるかもしれませんが、聴いてみると"案外聴きやすいじゃん!"となるはずですよ。

さぁ、Stereolabの騒音的美学を楽しみましょう!

全曲紹介しときやす。

「Tone Burst」
エクスペリメンタルな雰囲気が漂うオープニング。ポップなメロディとノイジーなサウンドが上手く融合しています。サウンドはノイジーなのにLatitiaとMaryのヴォーカルを聴くと脱力モードになってしまうのがStereolabの魅力ですね。

「Our Trinitone Blast」
この曲はVelvet Undergroundしています(笑)。初期Stereolabが好きな人や彼らにカルト的な雰囲気を求める人にとってはかなりグッとくる仕上がりなのでは?

「Pack Yr Romantic Mind」
個人的に一番のお気に入りの脱力系ポップ・チューン。後に開花する近未来ボッサ感覚の芽をここに聴くことができます。
http://www.youtube.com/watch?v=_UgTOFW7T8w

「I'm Going Out Of My Way」
この曲も大好き!「Pack Yr Romantic Mind」と並び後のポップ路線を予感させるキャッチーな仕上がりです。ラストに Antonio Carlos Jobimの名曲「One Note Samba(Samba De Uma Nota So)」のフレーズが聴こえてくるあたりに思わずニヤリとしてしまいます。

「Golden Ball」
エクスペリメンタルな色合いが強く出ています。

「Pause」
この曲は"第6のメンバー"Sean O'Haganの影響を感じる仕上がりです。High Llamasファンはグッとくるのでは?
http://www.youtube.com/watch?v=9uMifNKYtug

「Jenny Ondioline」
18分超の大作。タイトルはGeorges Jennyによって発明された初期の電子鍵盤楽器Ondioline(通称"Jenny Ondiolin")に由来するものです。前半はキャッチーな仕上がりですが、中盤以降はエクスペリメンタル&ノイジーなサウンドが支配します。
http://www.youtube.com/watch?v=TQ1d28WATkM
※YouTubeの映像は7"のヴァージョン「Jenny Ondioline (Part 1)」です。

「Analogue Rock」
哀愁モードのエクスペリメンタル・ポップ。レコード・プレーヤーのジャケ・デザインも踏まえると、興味深く聴くことができるかもしれませんね。

「Crest」
「Tone Burst」同様ポップなメロディとノイジーなサウンドが上手く融合しています。きっとLatitiaとMaryの脱力ヴォーカルがあるからこそ、ちゃんとまとまるのでしょうね。

「Lock-Groove Lullaby」
近未来的ノスタルジーが漂うエンディング。電子音楽のパイオニアPerrey-Kingsleyの「The Savers」を引用しています。本曲に限らず、StereolabやHigh Llamasのサウンドに近未来的ノスタルジーを感じるのは、Perrey-Kingsleyあたりの影響かもしれませんね。

昨日に続きNFLプレーオフの話題を!

昨日は「ペイトリオッツ対レイブンズ」、「カーディナルス対パッカーズ」の2試合が行われ、レイブンズ、カーディナルスが勝利しました。昨日に記事の僕の予想がズバリ的中しました。

「ペイトリオッツ対レイブンズ」は予想外にレイブンズの圧勝でしたね。レイブンズ勝利を予想したものの、終盤までもつれる接戦になると思っていたのですが、最強を誇ってきたベルチック王朝にも翳りが見え始めてきましたね。

逆に「カーディナルス対パッカーズ」は途中まで観ていてカーディナルス圧勝と思っていたのですが、まさかOTまでもつれ、あんな終幕(ファンブル・リカバーTD)を迎えるとは予想外でした。フットボールにおけるモメンタムの怖さを改めて実感しましたね。

これで来週のディビジョナル・プレーオフはAFCが「コルツ対レイブンズ」、「チャージャース対ジェッツ」、NFCが「セインツ対カーディナルス」、「バイキングス対カウボーイズ」の対決となりました。

一昨日と合わせて勝ち上がった下位シード4チームを眺めると、カーディナルス以外はラン攻撃と守備に強さを持つチームが勝ち上がった印象を受けます。それに対して、来週から登場する上位シード4チームは攻撃力に強みを持つチームが多いので、上位シードの攻撃陣と下位シードの守備陣の対決が一つの見所になりそうですね。

来週も目が離せない試合が続きますね。
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2010年01月11日

Earth, Wind & Fire『Head To The Sky』

黄金期EW&Fにグッと近づいた4thアルバム☆Earth, Wind & Fire『Head To The Sky』
ヘッド・トゥ・ザ・スカイ
発表年:1973年
ez的ジャンル:ポップ&メロウ・ファンク
気分は... :黄金期EW&F前夜!

今回はEarth, Wind & Fire(EW&F)の5回目の登場です。

当ブログでこれまで紹介してきたEW&F作品は以下の4枚(発表順)。

 『Open Our Eyes』(1974年)
 『That's the Way of the World』(1975年)
 『Gratitude』(1975年)
 『Spirit』(1976年)

5枚目に紹介するのは1973年リリースの4thアルバム『Head To The Sky』です。

Columbia移籍第一弾となった前作『The Last Days and Time』(1972年)でPhillip BaileyLarry Dunn等が新たに加入するなど大幅なメンバー・チェンジを行い、Warner Bros.時代のジャズ/ブラス・ロック的なアプローチから、よりソウル的なヴォーカル&インスト・グループへの脱皮を図りました。それでも曲間のインタールード等ではモロにジャズしていましたが...

Columbia第二弾となる本作『Head To The Sky』では、前作からのヴォーカル&インスト路線が更に強化されています。後に快進撃を続ける黄金期EW&Fの助走的なアルバムだと思っています。

メンバーの面では、前作『The Last Days and Time』を最後にギターのRoland Bautista、サックスのRonald Laws(Hubert Laws、Eloise Lawsの弟)が去り、代わりにAl McKayAndrew Woolfolksが加入します。

整理すると、本作のメンバーはMaurice White(vo、ds、kalimba)、Verdine White(vo、b、per)、Phillip Bailey(vo、conga、per)、Larry Dunn(key)、Ralph Johnson(ds、per)、Jessica Cleaves(vo)、Al McKay(g、sitar、per)、Andrew Woolfolks(sax、fl)、Johnny Graham(g、per)となり、ファンがよく知っているEW&Fのラインナップがほぼ揃いました。

サウンド面では、前作まで残っていたジャズ色が殆どなくなり、より親しみやすい楽曲&アレンジへと洗練されてきています。Phillip Baileyのファルセットもかなり目立ってきていますね。さらに黄金期EW&Fの大きな特徴であるブラジル/ラテン・フレイヴァーが導入されたのも本作からです。

全体の印象としては『Open Our Eyes』(1974年)とセットで聴きたくなる作品です。黄金期EW&Fでは聴けない面白さもあると思います。

ジャケについても随分EW&Fらしくなってきましたよね。
このジャケはErykah Badu「Honey」のPVでもお馴染みですね。詳しくは過去記事『Erykah Badu「Honey」のPVに観る名盤ジャケ』をご参照下さい。

ちなみにオリジナルLP発売時の邦題は『ブラック・ロック革命』だったそうです。
ちょっとイメージ違いますよね(笑)
後述しますが、各曲の邦題もかなりスゴイです。

プロデュースはデビュー以来の付き合いとなるJoe Wissertです。

全曲紹介しときやす。

「Evil」
邦題「悪魔の血」。アルバムからの1stシングル(全米R&Bチャート第25位)。本作の中では一番お馴染みの曲かもしれませんね。EW&Fらしいカリンバの音色から始まるラテン・フレイヴァーのライト・グルーヴ。カリンバとラテン・リズムが絡み、さらにコーラスが加われば、そこはEW&Fワールド全開です。
http://www.youtube.com/watch?v=U6Dxl_mxwEM

Deee-Lite「Say Ahhh」、Amerie Feat. Carl Thomas「Can We Go」等でサンプリングされています。
Amerie Feat. Carl Thomas「Can We Go」
 http://www.youtube.com/watch?v=kf1ddmfytH8

「Keep Your Head To The Sky」
邦題「宇宙を見よ!」。アルバムからの2ndシングル(全米R&Bチャート第25位)。エレクトリック・シタールが響くフィリー・ソウル風のサウンドをバックに、Phillip Baileyのソフトなファルセット・ヴォーカルを堪能できるミディアム・スロウです。
http://www.youtube.com/watch?v=Lxn7UT8jCKE

Guru Feat. Amel Larrieux「Guidance」でサンプリングされています。
Guru Feat. Amel Larrieux「Guidance」
 http://www.youtube.com/watch?v=xe8ogACrvuI

「Build Your Nest」
邦題「巣を作れ」。Meters風のファンク・チューン。Al McKayが加入したからこそ、こういう曲ができたのかもしれませんね。

「The World's A Masquerade」
邦題「この世は仮装舞踏会」。Skip Scarborough作品。大袈裟なタイトルですが、味わい深いソウル・バラードに仕上がっています。
http://www.youtube.com/watch?v=4cEC94ZzQjs

「Clover」
個人的には「Evil」と並ぶお気に入り曲。フルートの音色が爽やかなブラジリアン・フレイヴァーのメロウ・グルーヴです。
http://www.youtube.com/watch?v=uesMMBssDbk

「Zanzibar」
ブラジル音楽ファンにはお馴染みEdu Loboのカヴァー。13分を超える大作です。黄金期では味わえないEW&Fを堪能できます。前半はブラジリアン・フュージョン、後半はラテン・ロックな仕上がりです。
「Zanzibar(Part 1)」
http://www.youtube.com/watch?v=FF83DGEdRZY
「Zanzibar(Part 2)」
http://www.youtube.com/watch?v=lDww6QVTwRs

Lobo自身のヴァージョンは『Cantiga de Longe』やSergio Mendesがプロデュースした『Sergio Mendes Presents Lobo』に収録されています。また、Sergio MendesSergio Mendes & Brasil '77時代にカヴァーしています(アルバム『Pais Tropical』収録)。

NFLはポストシーズンにいよいよ突入しましたね。

昨日の2試合は共に一方的な展開になりましたね。

「ベンガルズ対ジェッツ」は、ジェッツが攻守において予想以上の強さを見せてくれました。特に新人QBサンチェスの落ち着きぶりには驚きましたね。ジェッツはダークホース的存在で面白いかも?

「カウボーイズ対イーグルス」は、序盤はシーソーゲームの予感もありましたが、終わってみればカウボーイズ圧勝でしたね。ディフェンス・ラインがイーグルスのオフェンス・ラインを圧倒していましたね。あれではイーグルスQBマグナブが可哀想でしたね。

今日の「ペイトリオッツ対レイブンズ」、「カーディナルス対パッカーズ」は昨日以上に楽しみな2試合ですね。僕の予想はレイブンズ、カーディナルスの勝ち上がりです。どうなることやら?
posted by ez at 00:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする