録音年:1961年
ez的ジャンル:マルチリード系オリエンタル・ジャズ
気分は... :「Love Theme from "Spartacus"」の決定版!
今回は神秘的なマルチ・リード奏者Yusef Lateefの初登場です。
Yusef Lateef(本名:William Emanuel Huddleston)は、1920年テネシー州生まれ。テナー・サックス、フルート、オーボエ等の楽器を駆使するマルチリード奏者です。学生時代にイスラムに改宗し、Yusef Lateefを名乗るようになりました。
50年代後半よりSavoy、Prestige、Impulse、Atlantic等に数多くのリーダー作を残しています。東洋的なアプローチで独自の音世界を構築し、その崇高な演奏はJohn Coltraneにも影響を与えたそうです。89歳となった現在も健在の模様です。
謎めいたミュージシャンで作品群の全体像がわかりづらく、僕も今日紹介する『Eastern Sounds』(1961年)以外はあまり把握できていません(泣)
正統派ジャズ・ファンよりも、クラブジャズ、ジャジーHip-Hop好きの方から人気の高いミュージシャンかもしれませんね。
おそらく殆どの方が本作のハイライト曲「Love Theme from "Spartacus"」を通じて、Yusef Lateefに興味を持ったのではないかと思います。。
90年代からのリスナーは、ロンドンのクラブシーンでの再評価やその流れでレコーディングされたTerry Callierのカヴァー(アルバム『Time Peace』収録)で、若い世代の方はジャジーHip-Hopの人気ユニットNujabesのサンプリング・ネタとして「Love Theme from "Spartacus"」やYusef Lateefに辿り着くパターンだったのではと思います。
そんな大人気の「Love Theme from "Spartacus"」を収録したアルバムが『Eastern Sounds』(1961年)です。
メンバーはYusef Lateef(ts、oboe、fl)、Barry Harris(p)、Ernie Farrow(b、rabat)、Lex Humphries(ds)という編成です。Ernie Farrowが演奏するrabatとは民族楽器のようですが、僕は勉強不足でよくわかりません。楽器名からするとモロッコぽいですが...
Yusefのイメージとして語られるオリエンタル・ムードや「Love Theme from "Spartacus"」のスピリチュアルなムードがアルバム全体を支配するのは確かですが、ブロウするハードバップ、軽快なリズム、リリカルな演奏もあり、案外聴きやすいアルバムだと思います。
Yusefがテナー・サックス、フルート、オーボエと様々なリードを駆使するので楽しめるし、Barry Harrisの美しいピアノに聴き惚れることもできるのも魅力です。
まずは「Love Theme from "Spartacus"」をじっくり堪能し、その後他の演奏も楽しんでみるのがいいのでは?
全曲紹介しときやす。
「Plum Blossom」
YusefのフルートとErnie Farrowがrabatが絡む、素朴で不思議な音世界に誘われるオープニング。中盤のBarry Harrisのピアノでようやくジャズらしくなります。
「Blues for the Orient」
ブルージーなバップ。Ernie Farrowが本職のベースに持ち替え、Yusefのオーボエがオリエンタル・ムードを醸し出しています。
「Ching Miau」
ようやくYusefのテナー・サックスを聴けます。John Coltraneにも影響を与えたであろう崇高な演奏を堪能できます。息遣いも聴こえてくるのがグッときます。
「Don't Blame Me」
Dorothy Fields/Jimmy McHughが1933年に作ったスタンダード。ムーディーなYusefのテナーを聴けるアルバム中最も聴きやすい大人の夜のバラード。この手のバラードにはBarry Harrisのリリカルなピアノがばっちりハマりますね。
「Love Theme from "Spartacus"」
本作のハイライト。オリジナルはStanley Kubrick監督、Kirk Douglas主演の映画『Spartacus』(1960年)の挿入曲です(Alex North作)。数多くのアーティストがカヴァーしていますが、オリジナル以上にロンドンのクラブシーンで再評価が高まった本カヴァーが本曲の決定版でしょう。Yusefのオリエンタル・テイストの哀愁オーボエとBarry Harrisの美しいピアノが何ともグッとくる叙情的&神秘的なスピリチュアル・ジャズに仕上がっています。
http://www.youtube.com/watch?v=BhqQFs7huwU
前述のようにNujabes「The Final View」のサンプリング・ネタです。また、本ヴァージョンを基準にその他のカヴァーを聴き比べるのも楽しいと思います。当ブログでの紹介済みのRamsey Lewis Trio、Bill Evans、Ahmad Jamalといった大物ジャズ・ピアニストのカヴァー、クラブ系リスナー向けのTerry Callier(リミックスも要チェック)、akiko、INO hidefumi、Quasarのカヴァー等いろいろ楽しめます。
Nujabes「The Final View」
http://www.youtube.com/watch?v=-YtRMTfMqxs
Terry Callier「Love Theme from Spartacus」
http://www.youtube.com/watch?v=gBEGcxpyTMU
Terry Callier「Love Theme from Spartacus (4hero Remix)」
http://www.youtube.com/watch?v=CnXjVSr9j6g
Bill Evans「Love Theme from Spartacus」
http://www.youtube.com/watch?v=NHKCUHESQTc
Bill Evans with Jeremy Steig「Love Theme from Spartacus」
http://www.youtube.com/watch?v=zF54tio1PtQ
Ahmad Jamal「Spartacus Love Theme」
http://www.youtube.com/watch?v=EFv7uVXJgp4
Carlos Santana「Love Theme from Spartacus」
http://www.youtube.com/watch?v=ly6IxpYFbIY
akiko「Love Theme From Spartacus」
http://www.youtube.com/watch?v=s_vAwKnFlQk
INO hidefumi「Spartacus」
http://www.youtube.com/watch?v=eluZojnfioY
Quasar「Love Theme From Spartacus」
http://www.youtube.com/watch?v=QSkgjRZzHts
「Snafu」
Yusefのテナー・ブロウ、軽快なリズム隊が格好良いハードバップ・チューン。クラブジャズ好きの人はグッとくるのでは?
「Purple Flower」
Yusefならではの崇高さに満ちた神秘的なバラード。思いは深いところへ...
「Love Theme from "The Robe"」
「Love Theme from "Spartacus"」に次ぐ注目曲。こちらも"愛のテーマ"です。オリジナルは1953年制作の映画『The Robe(邦題:聖衣)』の挿入曲です(Alfred Newman作)。軽やかなリズムをバックにYusefのフルートが優しげに響き渡ります。本作の聴きどころはYusef以上にBarry Harrisの美しいピアノでしょうね。もっと長尺でピアノ・ソロを聴いていたくなります。Nujabes「Feather」等のネタとしてもお馴染みですね。
Nujabes「Feather」
http://www.youtube.com/watch?v=rrG0qkJgPZk
DJ Blockhead「Triptych Part 1」
http://www.youtube.com/watch?v=PfjHG6AIH2I
「Three Faces of Balal」
ラストは再びErnie Farrowがrabatが登場。神秘的で妖しげなオリエンタル・ナイトといった雰囲気でアルバムは幕を閉じます。
Yusef Lateefに関して、本作以外は手付かず状態なのでゆっくり焦らずコレクションを増やしたいと思います。
『Cry! Tender』(1959年)
『Into Something』(1961年)
『The Three Faces of Yusef Lateef』(1962年)
『Psychicemotus』(1965年)
『1984』(1966年)
『The Diverse Yusef Lateef』(1970年)