発表年:1972年
ez的ジャンル:Stones流ルーツ・ミュージック探求
気分は... :これぞStonesの最高傑作!
先日、世界的な女性写真家として活躍を続けるAnnie Leibovitzのドキュメンタリー映画『"American Masters" Annie Leibovitz: Life Through a Lens(邦題:アニー・リーボヴィッツ レンズの向こうの人生)』(2007年) を観ました。
Vanity Fair誌(Demi Mooreの妊婦姿ヌードも彼女の撮影)、Vogue誌での活動も有名ですが、音楽ファンにとってはRolling Stone誌時代の仕事(チーフフォトグラファー)が気になりますよね。映画の中でも彼女を一躍有名にしたRolling Stonesの1975年ツアー撮影の様子や、John Lennonの生前最後の撮影(撮影の数時間後に射殺)に関する回想などがあり、実に興味深かったですね。
そのせいでここ数日は気分がThe Rolling Stonesです。
紹介するのは『Exile on Main St.(邦題:メイン・ストリートのならず者)』(1972年)♪
これまで本ブログで紹介してきたStones作品は以下の8枚です(発売年順)。
『December's Children (And Everybody's)』(1965年)
『Aftermath』(1966年)
『Between the Buttons』(1967年)
『Beggars Banquet』(1968年)
『Let It Bleed』(1969年)
『Sticky Fingers』(1971年)
『Black And Blue』(1976年)
『Emotional Rescue』(1980年)
先ほどのAnnie Leibovitzのツアー撮影の流れでいけば、『It's Only Rock 'n' Roll』(1974年)を紹介すべきなのですが、個人的に(Stones作品の中で相対的に)それほど好きなアルバムではないので『Exile on Main St.』をセレクトしました。
『Beggars Banquet』(1968年)、『Let It Bleed』(1969年)、『Sticky Fingers』(1971年)、『Exile on Main St.』(1972年)の頃が、Stonesの絶頂期と考えるファンの方は多いと思います。僕もそんな一人です。
個人的に最も好きなStonesのアルバムは『Beggars Banquet』ですが、最高傑作という点では多くのStonesファン同様に『Exile on Main St.』を挙げたいですね。
決して派手なアルバムではありませんが、Mick Jagger、Keith Richards、Mick Taylor、Charlie Watts、Bill Wymanの5人がブルース、カントリー、ソウル、ゴスペルなどを自分達のスタイルの中に上手く消化し、『Beggars Banquet』から始まったアメリカのルーツ・ミュージック探求が1つの到達点に達したことを示してくれる仕上がりです。そうしたルーツ・ミュージックを取り入れても、最終的にはどう聴いてもStonesサウンドになっているあたりに、バンドの成長と凄みを感じてしまいます。
Stones初のLP2枚組というあたりにもバンドの意気込みが感じられますね。
初めて本作を聴く方は、最初は地味な印象でピンとこないかもしれませんが、何度も聴くうちにワインの熟成のように味わいが増してくるはずです。
今さらですが、やはりStonesって凄いバンドですね。
そんなことを改めて実感できる名盤です。
全曲紹介しときやす。
「Rocks Off」
イントロのKeithのギターだけでもグッとくるオープニング。Stonesらしいカッチョ良さがいきなり全開です。Nicky Hopkinsのピアノ、Bobby Keys、Jim Priceがスワンプ・ムードを盛り上げてくれます。中間にサイケなパートが挟まれているのも面白いすね。名盤のオープニング相応しい高揚感を堪能しましょう。
http://www.youtube.com/watch?v=Sqk1kdjk5o0
「Rip This Joint」
Bill Plummerのアップライト・ベースが加わった高速ロカビリー・チューン。この曲もキマりすぎですな。一気に畳み掛けらるようで約2分半の曲があっという間に終わってしまう感じです。
http://www.youtube.com/watch?v=NehZl_X3hjQ
「Shake Your Hips」
ルイジアナ・ブルースの巨人Slim Harpoのカヴァー。オリジナルを尊重したカヴァーですが、それでもStonesらしさが醸し出されるのが凄いですね。
http://www.youtube.com/watch?v=EVJUJxCQp0I
「Casino Boogie」
アルバムの中では比較的地味な存在かもしれないルーズなブギです。Keithの高音コーラスが目立っています。
http://www.youtube.com/watch?v=GXaqbdwI3Dc
「Tumbling Dice」
邦題「ダイスを転がせ」。アルバムで一番有名な曲であり、Stonesの代表曲ですね。UKシングル・チャート第5位、USシングル・チャート第7位のヒットとなりました。『Sticky Fingers』録音時のアウトテイク「Good Time Women」の改作です。
『Beggars Banquet』から始まった南部アプローチの1つの完成形と呼べる最高の出来栄えなのでは?このルーズなノリと芳醇なコクのあるサウンド&ヴォーカルにただただ聴き惚れるだけですね。Mickのヴォーカルも最高ですが、Venetta Fields、Clydie Kingらのゴスペル風女性コーラス隊にも相当グッときます。Venetta FieldsはSteely Dan、Pink Floyd等のアルバムのバック・コーラスでも見かけますね。Clydie KingはRay Charlesのバック・コーラス隊The Raeletsの元メンバーです。
http://www.youtube.com/watch?v=6U8JlcB_BzA
後にLinda Ronstadtがカヴァーしていましたが、ご愛嬌ということで大目に見てあげましょう(笑)
ここでオリジナルLPのA面終了です。
「Sweet Virginia」
オリジナルLPのB面はアコースティックなカントリー・ブルースの色合いが強いパートです。『Let It Bleed』の「Country Honk」あたりと比較して、この手のスタイルを完全に自分達のものにした感じがしますね。
http://www.youtube.com/watch?v=DYFWus4QRUc
「Torn And Frayed」
ダウン・トゥ・アース気分を満喫できるカントリー・ブルース。密かに好きな1曲。Al Perkinsのペダル・スティールがいい味出しています。
http://www.youtube.com/watch?v=0IWmETZCLHs
「Sweet Black Angel」
社会運動家の黒人女性Angela Davisを歌ったもの。初めて本作を聴いた時から強く印象に残っている曲です。アコギとギロ(ラテンの打楽器)、マリンバという素朴なバックによるカリビアン・フレイヴァーがいいのかも?
http://www.youtube.com/watch?v=ZGPLB-n9WkY
「Loving Cup」
1969年7月のBrian Jones追悼コンサートで「Give Me A Drink」のタイトルで演奏されていた曲の完成形です。Nicky Hopkinsのピアノが印象的なゴスペル・タッチの仕上がり。久々に聴いたらかなりグッときました。
http://www.youtube.com/watch?v=mWdA5IH26Wo
ここでオリジナルLPのB面終了です。
「Happy」
オリジナルLPのC面はKeithがリード・ヴォーカルをとるご機嫌な名曲からスタート。シングルにもなりました。Keithのヨレヨレ・ヴォーカル最高です!成熟したStonesを堪能できるアルバムですが、この曲だけはいつ聴いても初々しさを感じてしまいます。不思議ですね!
http://www.youtube.com/watch?v=I9Yqs6amj_Q
「Turd On The Run」
なかなかノリの良いのアコースティック・ブルース。Mickのハープがキマっています。
http://www.youtube.com/watch?v=nZPb9bZizto
「Ventilator Blues」
Stones流ブルースの成熟度を実感できる1曲。このへヴィネスと粘りのあるリズムが何とも魅力的ですね。この曲ではMick、Keithと共にMick Taylorが作者としてクレジットされています。
http://www.youtube.com/watch?v=0wEvKIrGcNI
「I Just Want To See His Face」
「Ventilator Blues」から切れ間無く突入するヴードゥー調の楽曲。こうした不気味でダークな雰囲気の曲もこの頃のStonesらしいかもしれませんね。
http://www.youtube.com/watch?v=Op7I-vta8Io
「Let It Loose」
Dr. John(Mac Rebennack)もコーラスで参加しているゴスペル調バラード。味わい深いヴォーカル&バックコーラスがなかなかグッときます。
http://www.youtube.com/watch?v=NnSu2Ol1TSM
ここでオリジナルLPのC面終了です。
「All Down The Line」
オリジナルLPのD面は快調に飛ばすロック・チューンです。渋めの曲ばかりでなく、多少はこういう派手めの曲も欲しいですよね(笑)。
http://www.youtube.com/watch?v=c-trGCKataU
「Stop Breaking Down」
伝説のブルース・ギタリストRobert Johnson作のカヴァー。この曲は何と言ってもMick Taylorに注目ですね。Mick TaylorがStonesで最も輝いていた瞬間の1つなのでは?
http://www.youtube.com/watch?v=NnDpW5vpbDY
「Shine A Light」
ゴスペル調のバラード。ここでのピアノ&オルガンはBilly Preston、ドラムはJimmy Miller。相変わらず女性コーラス隊にグッときます。Mick Taylorのソロも目立っています。
http://www.youtube.com/watch?v=UPbozLRU3so
「Soul Survivor」
オリジナルLP2枚組の大作のエンディングを飾るのはミドルテンポのロック・チューン。Stonesらしいダーク&ソウルなグルーヴ感がなかなかグッときます。
http://www.youtube.com/watch?v=SJjvIKon3G0
こうした1曲ずつコメントしてみると、改めて濃密な全18曲であると実感してしまいます。
記事を書く前から2枚組なので各曲にコメントするの大変だなぁと思っていましたが、やはりいつもの倍のパワーが必要でした。書き終えて、エンジン切れ状態です(泣)
本作で1つの到達点に達してしまったStonesは、この後新たな方向性を模索することになります。
書き忘れていましたが、Robert Frankによるジャケ&内袋も素晴らしいですね。
キャロル『キャロル20 ゴールデン・ヒッツ』(1974年)では本ジャケをモチーフにしています。