2010年01月18日

Ben Sidran『Feel Your Groove』

人気曲「Poor Girl」 、「About Love」収録の初ソロ作☆Ben Sidran『Feel Your Groove』
夢の世界(紙ジャケット仕様)
発表年:1971年
ez的ジャンル:"Dr.Jazz"系ロック/ジャズ/ファンク
気分は... :この多様性は凄いですな!

今回は音楽好きを虜にする多才なミュージシャンBen Sidranの初ソロ『Feel Your Groove』(1971年)です。

Ben Sidranは1943年シカゴ生まれのミュージシャン。主にロック/ジャズの分野で活躍するキーボード奏者/ヴォーカリスト/ソングライター/プロデューサー。

ジャズのレコード・コレクターであった父親の影響で、幼い頃からジャズに親しみ、ピアノを演奏するようになったようです。そして、進学したウィスコンシン大学でSteve MillerBoz Scaggsと出会い、彼らとバンド活動を開始します。その後イギリスへ渡り、セックス大学で哲学を専攻し、博士号を取得しています。

彼がイギリスへ渡った同時期に、Steve MillerがBoz Scaggsらと組んだSteve Miller Bandのデビュー作『Children of the Future』(1968年)のレコーディングがロンドンで行われ、旧友であったSidranにもお声がかかりゲスト参加します。このセッションでプロデューサーGlyn Johnsとの親交が深まり、ロンドンで様々なセッションに参加するようになります。

Boz Scaggs脱退後のSteve Miller Bandではレギュラーメンバーとして活躍し、『Brave New World』(1969年)、『Your Saving Grace』(1969年)、『Number 5』(1970年)等のアルバムに参加しています。また、独立したBozの『Moments』(1971年)にもゲスト参加していましたね。

今日紹介する初ソロ作『Feel Your Groove』(1971年)を制作後は、コンスタントにソロ・アルバムをリリースしています。また、プロデューサーとしても、敬愛するMose Allisonをはじめ、Tony Williams、Jon Hendricks、Van Morrison、Clementine等の作品を手掛けています。

"Dr.Jazz"と呼ばれるようにジャズ/黒人音楽をはじめとする音楽・レコードに精通しており、『Black Talk』『Talking Jazz』といった著作を発表しています。また、テレビキャスターやラジオDJを務めたり、90年代にはジャズ・レーベルGo Jazzを設立したりするなど、ミュージシャンの枠に止まらないマルチな才能も発揮しています。

ロック好き、AOR好き、ジャズ好き、ソウル/ファンク好き、レア・グルーヴ/フリーソウル好きと多くの音楽ファンを虜にするアーティストがBen Sidranですね。聴く者に"俺っていい音楽センスしてるじゃん"という気分にさせてくる人だと思います(笑)

初ソロ・アルバムとなる本作『Feel Your Groove』でも、SSW風ピアノ弾き語り、まっ黒いファンク・グルーヴ、アーシーなトーキング・ブルース、洗練されたメロウ・チューン、サイケ調ロック、ピアノ・トリオを中心としたジャズ・チューン、深夜のブルース・セッションなど多様な演奏を聴かせてくれます。正にクロスオーヴァーな作品だと思います。

レコーディングには、旧友Boz Scaggs(g)とCurley Cooke(g)、David Brown(b)、George Reins(ds)といった彼のバンド・メンバー、Jesse Ed Davis(g)をはじめ、Arnold Rosenthal(b)、Sandy Konikoff(per)といったスワンプ系ミュージシャン、Rolling StonesのCharlie Watts(ds)や Humble PieのPeter Frampton(g)、Greg Ridley(b)といったイギリス人ミュージシャン、大物トランペッターBlue Mitchell(tp)をはじめ、Willie Ruff(b)、John Pisano(g)といったジャズ系ミュージシャン、お馴染みJim Keltner(ds)、直後にSteve Miller Bandに参加するGary Mallaber(ds)といった名うてのドラマー、さらにストリングス・アレンジにはNick DeCaro、バック・コーラスとして女性フォーク・シンガーMimi FarinaとBenの奥方Judy Sidranといった多彩な顔ぶれが揃いました。

プロデュースはBen Sidran本人。Glyn JohnsとBruce Botnickをエンジニアに据え、磐石の体制を組んでいます。

前述のように様々な音楽スタイルが登場しますが、何を演奏しても実に様になっているのがいいですね。また、決して上手くないヴォーカルを逆手にとっているところが心憎いです(笑)

「Poor Girl」「About Love」といった人気曲のみならず、曲ごとに変化するBenの多様な音楽性を楽しむ作品だと思います。

全曲紹介しときやす。

「Song List Leo's My Name」
場末のジャズ・バーのピアノ弾きといった趣でアルバムはスタートします。

「Poor Girl」
フリーソウル人気曲としてもお馴染みのファンキー・グルーヴ。この1曲でKOされてしまう方も多いのでは?Benのハモンド・オルガンを中心に、Jesse Ed Davisのギター、Arnold Rosenthalのうねるベース、Jim Keltner & Gary Mallaberのパワフルなツイン・ドラム、Sandy Konikoffのパーカッションが生み出す、黒いグルーヴ感がたまりませんね。上手くはないぶっきらぼうヴォーカルが逆にサウンドに溶け込んで良かったりします(笑)

「Racine Bovine」
Benが敬愛するMose Allisonを彷彿させる仕上がり。ジャジー&ブルージーな雰囲気が実に小粋です。

「About Love」
本作のハイライトとなる小粋なメロウ・グルーヴ。Willie Ruff、John Pisanoといったジャズ系ミュージシャンをバックに配し、Benのエレピが心地よく響きます。アルバム中で最も洗練されたサウンドですが、それ以上に癒し系の仕上がりがグッときます。奥方Judyのキュートなバック・コーラスにもグッときます!
http://www.youtube.com/watch?v=V5fy6MdHhCk

「Feel Your Groove」
タイトル曲はNick DeCaroアレンジのストリングスが盛り上げる7分超のメロウ・チューン。前半はソフトなヴォーカル・チューンですが、後半はめくるめくインストに終始します。Mimi Farinaのスキャットを配したインスト・パートを引っぱるのがBenらしいのかもしれませんね。本曲は『Free in America』(1976年)でも再演され、BenがプロデュースしたClementineのアルバムでもカヴァーされています。

「That Fine Day」
Steve Miller Bandを彷彿させるサイケな雰囲気が漂うシスコ・ロック風の仕上がり。バックは旧友Boz Scaggsらが務めています。ここでBenはピアノ/オルガンに加えてヴァイヴも演奏しています。

「Alexander's Ragtime Brand」
Blue Mitchell参加曲。「Poor Girl」と並ぶ僕のお気に入り曲。Mitchel以外のメンバーは「Poor Girl」と同じメンバーであり、スワンピーなファンキー・グルーヴとMitchelの組み合わせってどうなの?と思うかもしれませんが、意外にこれがハマっています。

「Try」
この曲もBlue Mitchell参加です。「Alexander's Ragtime Brand」から一転し、こちらはピアノ・トリオ+トランペットというジャズ仕様でのワルツ・チューンです。Benのヴォーカルは、こういったジャズ調の曲が一番ハマりますね。Nick DeCaroがストリングス・アレンジで盛り上げます。

「My Wife」
ジャズ・フレイヴァーのSSWといった感じの仕上がりです。

「Blues in England」
Charlie Watts、Peter Frampton、Greg Ridley参加のロンドン・セッション。タイトル通りのブルージーな演奏ですが、Benのヴォーカルのせいか良くも悪くもさらっと聴くことができます。

「Spread Your Wings」
ラストはSSWらしくエレピの弾き語りです。Chris Driscoeのアルト・サックスが彩を添えます。

他の作品も充実しています!

『I Lead a Life』(1972年) ※人気曲「Chances Are」収録
アイ・リード・ア・ライフ(紙ジャケット仕様)

『Puttin' in Time on Planet Earth』(1973年)
プッティン・イン・タイム・オン・プラネット・アース(紙ジャケット仕様)

『Don't Let Go』(1974年) ※人気曲「Hey Hey Baby」収録
ドント・レット・ゴー(紙ジャケット仕様)
「Hey Hey Baby」
http://www.youtube.com/watch?v=rfZzlPfv8Lg

『Free in America Arista』(1976年) ※AOR人気作
フリー・イン・アメリカ(紙ジャケット仕様)

『The Doctor Is In』(1977年)
ドクター・イズ・イン(紙ジャケット仕様)

『A Little Kiss in the Night』(1978年)
ア・リトル・キッス・イン・ザ・ナイト(紙ジャケット仕様)

『The Cat and the Hat』(1980年)
ザ・キャット・アンド・ザ・ハット(紙ジャケット仕様)
「Girl Talk」
http://www.youtube.com/watch?v=z-LH_TPv9cA

『On The Cool Side』(1987年) ※最近密かに愛聴しています!
Ben Sidran - On The Cool Side

『Cool Paradise』(1990年) ※AORファンはグッとくる!
Cool Paradise

Ben Sidran & Clementine『Spread Your Wings and Fly Now!!』(1988年) ※Clementineとの共演盤
スプレッド・ユア・ウィングス
Ben Sidran & Clementine「Chances Are」
http://www.youtube.com/watch?v=K-etjjUuS3M

何とかNFLディビジョナル・プレーオフの試合開始前に記事投稿できました!観戦に集中するので詳細については明日にでも。
posted by ez at 02:51| Comment(2) | TrackBack(0) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする