発表年:1995年
ez的ジャンル:UKブレイクビーツ/デジタル・ロック
気分は... :ロックとダンス・ミュージックの化学反応!
The Chemical Brothersのデビュー・アルバム『Exit Planet Dust(邦題:さらばダスト惑星)』(1995年)です。
Tom RowlandsとEd Simmonsから成るブレイクビーツ/デジタル・ロックの雄The Chemical Brothersの紹介は、The Chemical Brothersの紹介は、2nd『Dig Your Own Hole』(1997年)に続き2回目となります。
当初はDust Brothersを名乗っていたTom Rowlands & Ed Simmonsですが、多くの方がご存知のとおり、同じグループ名を名乗っていたL.A.を拠点としたDust Brothersからクレームが入り、グループ名をThe Chemical Brothersへ変更しました。E.Z. Mike (Michael Simpson) 、King Gizmo (John King)の2人から成るL.A.のDust Brothersは、当ブログでも紹介したBeastie Boys『Paul's Boutique』、Beck『Odelay』等のプロデュースでお馴染みですね。
そして、The Chemical Brothersとして生まれ変わった彼らがシーンに衝撃を与えた1stアルバムが本作『Exit Planet Dust』(1995年)です。
格好良さでは前回紹介した2nd『Dig Your Own Hole』(1997年)、聴き易さでは3rd『Surrender』(1999年)が魅力ですが、インパクトという点では本作『Exit Planet Dust』でしょうね。
よく言われるようにロックとダンス・ミュージックの垣根を無くしたブレイクビーツ作品として、UKシーンに風穴をあけたアルバムですね。
80年代終わりより、Stone Roses、Happy Mondays、Jesus Jones、Primal Screamなどロックとダンス・ミュージックの融合を試みるアプローチが数多く見られましたが、あくまでロック・バンドによるダンス・カルチャーの吸収といった側面が強かった気がします。
その意味でダンス・ミュージック側からロックの持つ"攻撃的"なエッセンスを上手く取り入れた本作『Exit Planet Dust』は、実に画期的なアルバムだったと思います。
後に彼らの音は"デジタル・ロック"と呼ばれるようになりますが、リアルタイムで聴いていた時には、本作に新しさや衝撃を感じたものの、"ロック"的な音楽を聴いているという感覚はあまりありませんでしたね。逆に言えば、そうしたことを気にせず聴かせてしまうあたりに本作の凄さがあるのかもしれません。
アルバムにはUKの女性SSWBeth OrtonやThe CharlatansのヴォーカルTim Burgessがゲスト参加しています。Charlatansのエントリーでも書きましたが、両者はかなり交流があったようですね。
Dust Brothers時代の楽曲も含まれる本作には、次作『Dig Your Own Hole』以降ビッグネームとなったChemical Brothersには無い魅力も詰まっています。
ロックとダンス・ミュージックの化学反応を楽しみましょう。
全曲紹介しときやす。
「Leave Home」
ハイライトその1。Chemical Brothersとしての1stシングルかつ代表曲です。UKシングル・チャート第17位のヒットとなりました。当時大きなインパクトのある曲でしたよね。
Kraftwerk「Ohm Sweet Ohm」のサンプリングでスイッチ・オン!となり、Blake Baxter「Brothers Gonna Work It Out」の声ネタのループと共に不適なロッキン・ビーツが鼓動します。アッパーになりすぎないBPMがサイコーですね。ゲスト参加のSeggsによるダーティー・ベースもグッド!Pucho & His Latin Soul Brothers「Got Myself a Good Man」ネタのブレイクにもグッときます。。
http://www.youtube.com/watch?v=q7j-Ndccqaw
「In Dust We Trust」
アッパーなダンス・チューン。基本的にはダンス・ミュージックですが、ロックの要素をうまく散りばめているのがニクイですね!Beastie Boys「The Maestro」、Fun Fun「Happy Station」ネタ。
http://www.youtube.com/watch?v=CXSDOkycc2I
「Song to the Siren」
ハイライトその2。Dust Brothers時代にシングルとしてリリースされた楽曲です。Dead Can Dance「Song of Sophia」のアラビックな声ネタとMantronix「King of the Beats」のサイレン音ネタが絡み合いながらスタートし、そこにMeat Beat Manifesto「God OD」ネタのビートが加わります。それほどキャッチーではないのが、初期の彼ららしくて逆にグッとくるのでは?
http://www.youtube.com/watch?v=BExxyAwjPB0
「Three Little Birdies Down Beats」
今聴くと、典型的なロッキン・テイストのダンス・ミュージックですが、それだけ彼らのサウンドが広まった証でしょう!
http://www.youtube.com/watch?v=vgxOHyz0yKU
「Fuck Up Beats」
約1分半の短い曲。ロック的な要素は全くない仕上がりです。
http://www.youtube.com/watch?v=bo-1YAfsqrw
「Chemical Beats」
ハイライトその3。前述のDust Brothers時代のシングル「Song to the Siren」に収録されていた楽曲です。「Song to the Siren」同様、初期Chemical Brothersならではの魅力に満ちていますね!男性の掛け声は(多分)Commodores「Assembly Line」ネタ、ビートはJimmy McGriff「The Worm」ネタ。
http://www.youtube.com/watch?v=gknXdDLJDMc
「Chico's Groove」
ダークな雰囲気が漂うミッド・グルーヴ。Tom Scott & The L.A. Express「Sneakin' In The Back」ネタ。
http://www.youtube.com/watch?v=VROJt3N8mNY
「One Too Many Mornings」
アンビエント&ダビーな雰囲気が漂います。Swallow「Peekaboo(Dub)」をサンプリングした哀愁モードの女性ヴォーカルがいいですね。Dexter Wansel「Theme From the Planets」ネタ。
http://www.youtube.com/watch?v=_8sNI194y08
「Life Is Sweet」
ハイライトその4。前述のようにThe CharlatansのヴォーカルTim Burgessをフィーチャーした2ndシングル。UKシングル・チャート第25位のヒットとなりました。UKロック・ファン、特にマンチェスター・サウンドが好きだった人にはグッとくるのでは?
http://www.youtube.com/watch?v=X7VDy-yT6RE
「Playground for a Wedgeless Firm」
ヴォーカル曲に挟まれたインタールードな小曲。Baby Huey「Hard Times」ネタ。
http://www.youtube.com/watch?v=G-qA6wUwb0E
「Alive Alone」
ハイライトその5。ラストはBeth Ortonのヴォーカルをフィーチャー。アルバム中最もメロディアスな仕上がりです。その意味ではBeth Ortonの楽曲を彼らがリミックスした感覚に近いかも?
http://www.youtube.com/watch?v=1bwXsjpUWqQ
久しぶりにアルバムを通しで聴きましたが、サンプリング・ソースも整理しながらじっくり耳を傾けると新たな発見もあり、なかなか楽しめました。