2010年02月22日

Tita『Tita』

ボサノヴァ・ファンを魅了する1枚☆Tita『Tita』
チタ
発表年:1965年
ez的ジャンル:キュート&エレガント・ボサノヴァ
気分は... :ジャケのイメージに惑わされずに...

今回は評価の高いボサノヴァ作品Tita『Tita』(1965年)です。

Titaはブラジル、ミナス・ジェライス出身の女性シンガー。

詳しいバイオグラフィ、ディスコグラフィは勉強不足でよく知りませんが、アルバムで言えば、1stアルバムとなる今日紹介する『Tita』(1965年)や、夫でベーシストのEdson LoboのグループLe Trio Camaraと共にフランスへ渡りレコーディングしたアルバム『L'Incomparable Tita』(1968年)が有名ですね。

僕の場合、『L'Incomparable Tita』はサバービア関連の書籍でジャケがインプットされていましたが、『Tita』を知ったのは数年前の世界初CD化の時でした。しかしながら、ジャケの見た目の雰囲気が全く異なるので最初は『Tita』『L'Incomparable Tita』が同じアーティストの作品であるとは全然わかりませんでした。

その後2枚のアルバム共にTita作品としてつながったのですが、どうも本作『Tita』には食指が動きませんでした。ジャケを見る限り、ギター一本で悲しげに歌われる根暗なボッサという印象だったので...

昨年ようやく勇気を出して(?)本作をゲットしたのですが、"根暗ボッサ"という僕のイメージは大きな誤りでした。

まず、下手ウマなイメージがあったTitaの伸びやかな声に魅了されます。曲の雰囲気に合わせて、時にキュート、時にエレガント、時にサウダージ、時にエモーショナルと様々な表情の歌声を聴かせてくれる点もグッときますね!

Titaのヴォーカルを引き立てるアレンジの素晴らしさも魅力です。これに関しても、ギター1本のシンプルなサウンドという僕のイメージを裏切ってくれて嬉しい限りです。

アレンジを担当したのはEumir Deodato、Lindolfo Gaya、Paulo Mouraの3名。オーケストレーションも含めた素敵なサウンドを聴かせてくれます。

ジャケとのギャップに嬉しいサプライズがあるアルバムです!

全曲紹介しときやす。

「Deus Brasileiro」
オープニングはPaulo Sergio Valle/Marcos Valle作品。ジャケのイメージとは正反対の、ハジけたTitaのヴォーカルとヴィヴィドなサウンドに思わずニンマリ!

「Inutil Paisagem」
邦題「無意味な風景」。Antonio Carlos Jobimの名曲カヴァー。当ブログでは以前にTenorio Jr.Quarteto Em Cyのヴァージョンを紹介しています。ここではオーケストレーションを配したエレガントなアレンジが印象的です。

「Bem Mais Que a Beleza」
Paulo Sergio Valle/Pingarilho作品。本作で一番のお気に入り曲。昼よりも夜が似合う小粋な大人のジャズ・サンバといったところでしょうか。ムーディーなサックス・ソロもグッド!

「Sono de Pedra」
Betinho/Renato Silveira作品。♪ぐっすり眠りたいの♪と歌われるように夢見モードの仕上がりです。オーケストレーションが盛り上げてくれます。

「Amor de Nada」
Paulo Sergio Valle/Marcos Valle作品の2曲目。「Bem Mais Que a Beleza」、「So Tinha de Ser Com Voce」と並ぶ僕のお気に入り。軽快なテンポでTitaの伸びやかなヴォーカルを堪能できます。

「Ficou Saudade」
Helder Camara/Sergio Malta作品。タイトル通りサウダージ・モードのボッサ・チューン。大人の色気漂うTitaのヴォーカルにグッときます。

「Sozinha de Voce」
Pedro Camargo/Durval Ferreira作品。恋の終わりを歌った作品ですが、素晴らしいアレンジに思わずウットリしてしまいます。

「So Tinha de Ser Com Voce」
Aloysio de Oliveira/Antonio Carlos Jobim作品。溢れんばかりの愛情を歌ったものですが、やや抑えたトーンのヴォーカルが素晴らしいですね。大好きな1曲。

「Pensa」
Paulo Sergio Valle/Marcos Valle作品の3曲目。エレガントなアレンジが印象的です。

「Mais Valia Nao Chorar」
Normando/Ronaldo Boscoli作品。 当ブログでは以前にClara Morenoのヴァージョンを紹介ました。ここでは語り掛けるようなTitaのキュートなヴォーカルにグッときます。作者のBoscoliは裏ジャケで本作への推薦文も書いています。

「Aniversario da Tristeza」
Betinho/Renato Silveira作品の2曲目。邦題「悲しみの誕生日」。哀愁モードの曲を情感たっぷりに聴かせてくれます。

「Questao de Moral」
Paulo Tito/Roberto Faissal作品。揺れる乙女心を表情豊かに聴かせてくれます。ラブ・コメディのバックとかで流れるとピッタリな感じ!

「Tristeza」
本作唯一のTitaオリジナルはインストです。このタイトルからはHaroldo Lobo/Niltinho作の名曲「Tristeza(Goodbye Sadness)」を思い浮かべてしまいますが同名異曲です。

『L'Incomparable Tita』(1968年)も必ずゲットしたい1枚ですね。
Amazonにジャケ画像がないのが残念ですが...

そろそろ寝ようと思ったら、五輪のカーリングの生中継が始まってしまいました...困っちゃうなぁ(笑)
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2010年02月21日

Roger『The Saga Continues...』

どこを切ってもRoger Troutman!楽しさ満載の2ndソロ☆Roger『The Saga Continues...』
The Saga Continues
発表年:1984年
ez的ジャンル:トークボックス系エンタメFunk
気分は... :そこにRogerの幻が...

今回はZappファミリーの総帥であった故Roger Troutmanの2ndソロ・アルバム『The Saga Continues...』(1984)です。

今月ビルボードライブ東京でZapp/Shirley Murdockの来日公演がありました。僕は行っていませんが、多くの人がそこに故Roger Troutmanの幻をイメージしてしまったのでは?

これまで紹介してきたZapp/Roger作品は以下の5枚。

 Zapp『Zapp II』(1982年)
 Zapp『Zapp III』(1983年)
 Zapp『The New Zapp IV U』(1985年)

 Roger『The Many Facets of Roger』(1981年)
 Roger『Unlimited!』(1987年)

今日紹介する『The Saga Continues...』(1984)はRogerの2ndソロであり、『The Many Facets of Roger』『Unlimited!』と比較すると地味な存在ですが、Roger Troutmanというミュージシャンの魅力が十分伝わってくる1枚です。

Zapp/Rogerの代名詞であるトークボックス全開のファンク・チューンを基本に、ソウル、ジャズ、ブルース、Hip-Hop、AOR、レゲエ等幅広い音楽性を聴かせてくれるのが楽しいですね。当時はまだ目新しかったHip-Hopのエッセンスを違和感なく取り入れる一方で、ソウル、ブルース、ジャズといった彼のルーツを再確認できる演奏を収められているのがグッときます!

レコーディングにはZappファミリー、Shirley Murdockといったお馴染みのメンバーをはじめ、The Mighty Clouds of Joy、Maceo Parker等が参加しています。

カヴァー1曲とBilly Beckとの共作1曲以外は全てLarry Troutman/Roger Troutman作です。

全曲紹介しときやす。

「In the Mix」
Zapp/Roger好きにはたまらないトークボックス全開のオープニングは。本作のハイライトに挙げる方も多いのでは?今聴き直すと、1984年時点でスクラッチ・ノイズを交えたファンク・チューンを創っている点にRogerのサウンド・クリエイターとしての貪欲さを感じます。
http://www.youtube.com/watch?v=uTSfbW16jYg
※エディット・ヴァージョンですがアルバム・ヴァージョンは約6分半の長尺です。

「Play Your Guitar, Brother Roger」
タイトルの通り、Rogerのギター・プレイを堪能できるのミッド・グルーヴ。ポップなファンク・サウンドにRogerのジャズ・テイストのギター・ソロが絡みます。こうしたファンクとジャズの融合もZapp/Rogerのお得意パターンですね。

「The Break Song」
この曲はあまりZapp/Rogerっぽくない狡猾さが漂うファンク・チューン。ここではRogerのブルージーなギター・プレイを聴くことができます。ここでもHip-Hopのエッセンスを取り入れ、途中ラップやスクラッチが挿入されています。そのさりげない取り入れ方にRogerのセンスを感じます。

「I Keep Trying」
Billy Beckとの共作によるAOR風メロウ・チューン。密かな人気曲なのでは?Zapp/RogerファンよりもAOR/ポップス・ファン向けの仕上がりです。予備知識なしで聴くとRoger作品とはわからないのでは?

「Midnight Hour」
本作のハイライト。ソウル・ファンにはお馴染みWilson Pickettの大ヒット曲のカヴァー(Wilson Pickett/Steve Cropper作)。ここでは大物ゴスペル・グループThe Mighty Clouds of Joyがコーラス参加しています。ハマりすぎのカヴァーですね。この曲がこれほどZapp/Roger流ファンク・サウンドやトークボックスに馴染むとは思いませんでした。エンタメ精神全開のZapp/Rogerワールドを堪能できます。

「Bucket of Blood」
リラックス・モードのブルース・チューン。Juke Joint(ブルース等の音楽が演奏される酒場)をテーマにした曲みたいですね。Roger以下のメンバーが純粋に演奏を楽しんでいる様子が伝わってきます。

「T C Song」
レゲエ調のリズムにフュージョン風サウンドとスキャットが絡むインスト・チューン。

「Girl, Cut It Out」
Wanda Rashのヴォーカル、Maceo Parkerのサックスをフィーチャーしたファンク・チューン。シングルにもなったキャッチーな仕上がりです。

本作がリリースされた1984年前後のRoger Troutmanはプロデュース業でも大忙しでしたね。

New Horizons『Gonna Have Big Fun』(1984年)
Gonna Have Big Fun

Human Body『Make You Shake It』(1984年)
メイク・ユー・シェイク・イット

Bobby Glover『Bad Bobby Glover』(1984年)
Bad Bobby Glover
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2010年02月20日

Elizabeth Shepherd『Heavy Falls the Night』

もうすぐ来日公演もあります!クラブジャズ好き待望の3rd☆Elizabeth Shepherd『Heavy Falls the Night』
ヘヴィー・フォールズ・ザ・ナイト
発表年:2010年
ez的ジャンル:クラブジャズ系女性ヴォーカリスト/ピアニスト
気分は... :クール&ビター!

今日はオリンピックで盛り上がるカナダ出身のアーティストを紹介したいと思います。

Gilles Petersonも大絶賛の女性ジャズ・ヴォーカリスト/ピアニストElizabeth Shepherdの新作『Heavy Falls the Night』です。

Elizabeth Shepherdは、カナダのトロントを拠点に活動する女性ジャズ・ヴォーカリスト/ピアニスト。

カナダ人の大先輩Joni Mitchellを彷彿させるクロスオーヴァーなSSWとしての才能を持つと同時に、スタンダード・ジャズに斬新な解釈を加え、クラブジャズ/ダンス・ミュージック的なアプローチにも優れたセンスを発揮する新世代ジャズ・アーティストです。

ベースのScott Kemp、ドラムのColin KingsmoreとのElizabeth Shepherd Trio名義でリリースしたデビュー・アルバム『Start To Move』(2007年)では、ヴォーカリストとしての魅力を堪能できるClifford Brownの名曲「George's Dilemma」のカヴァー、Miles Davis「Four」のカッチョ良すぎるハードバップ・カヴァー、Herbie Hancockへ捧げられたブラジリアン・フレイヴァー「Melon」など伝統的ジャズへリスペクトしつつ、最新ジャズの姿を示してくれました。
Elizabeth Shepherd Trio「Four」
 http://www.youtube.com/watch?v=eZYpNi9nTW4

続いてリリースされた2ndアルバム『Parkdale』(2008年)では、UKジャズ・ファンク/クロスオーヴァー界の才能Nostalgia 77(Ben Lamdin)をプロデューサーに迎え、ジャズとダンス・ミュージックが融合した、よりカラフルなElizabethワールドを聴かせてくれました。
「Shining Tear Of The Sun」
 http://www.youtube.com/watch?v=waXNG7MVVys

また、『Start To Move』と『Parkdale』の間には未発表B面曲やリミックスを集めたアルバム『Besides』もリリースしています。こうした作品がリリースされる点も、Elizabeth Shepherdおよび彼女のグループがクラブ・シーンで注目されていることが窺えますね。

そして、最新作となる3rd『Heavy Falls the Night』は、Elizabeth Shepherd自身のセルフ・プロデュースとなっています(John MacLean、DJ Mitsu The Beatsとの共同プロデュースも含む)。

これまでのアルバムではジャズ・ジャイアント達の名曲カヴァーが必ずありましたが、本作『Heavy Falls the Night』では、Loggins & Messinaのカヴァー「Danny's Song」を除き、全てElizabeth Shepherdのオリジナルです。

従来以上にシンガーソングライター的な色彩を強めている作品と言えるのでは?
本人曰く"ポップでスウィンギーなアルバム"ということらしいですが、サウンドも詞も決してスウィートになりすぎないクール&ビターな雰囲気が魅力の作品だと思います。

新作リリースに合わせるかたちで、来日公演が2月23日〜25日の3日間、東京・丸の内COTTON CLUBで行われる予定になっています。Scott Kemp(b)、Colin Kingsmore(ds)とのトリオでの演奏になるようです。僕もたまたまCOTTON CLUBの招待券を持っているので出没するかもしれません。裏切って、他アーティストの公演に使ってしまうかもしれませんが(笑)

お酒片手に聴く音楽としてはピッタリかもしれませんね!

全曲を紹介しときやす。

「What Else」
SSWとジャズ両方の魅力を持ったElizabethの特徴が表れたオープニング。ポップながらも適度にミステリアス、適度にリズミックな感じがいいですね。

「The Taking」
僕の一番のお気に入り。クラブジャズ好きの人は気に入るであろう、レイジー&スリリングな格好良さにグッときます。クールに突き放すようなElizabethのヴォーカルがたまりません。Scott Kempのベースもビンビンでいいですね!

「Heavy Falls the Night」
タイトル曲は一瞬ロマンティックな世界をイメージさせますが、徐々に様相が変わり気付くとダーク&へヴィーな世界へ...独特の雰囲気にハマります。

「Numbers」
ここではキュートなヴォーカルを聴かせてくれます。最初はあまり引っ掛からなかったのですが、聴き直すうちにどんどんお気に入りに!今では「The Taking」に次いで好きな曲です。

「Seven Bucks」
アングラ・ジャジーHip-Hop好きにはお馴染み、世界に誇る日本人トラック・メイカーDJ Mitsu The Beatsとのコラボです。クラブ系リスナーにとってのハイライト曲かもしれませんね!期待通りの格好良いジャジー・グルーヴに仕上がっています。
http://www.youtube.com/watch?v=lbKxawcRSnM

「One More Day」
浮遊感漂うミステリアスなElizabethワールドが展開されます。

「A Song for Dinah Washington?」
タイトルの通り、偉大なジャズ・ヴォーカリストDinah Washingtonに捧げられた1曲。ジャズ・カヴァー曲がない代わりに、本曲で先人ジャズ・ミュージシャンへのリスペクトを示したのかもしれませんね。

「High」
「Seven Bucks」と並びクラブ系リスナーがグッとくる1曲なのでは?Elizabeth、Scott Kemp、Colin Kingsmoreのトリオ演奏で、このダンサブルなサウンドを生み出してしまうところに感心してしまいます。いやぁ、とにかくカッチョ良い!
http://www.youtube.com/watch?v=NAFLGNm8m7M

「It's Coming」
コンテンポラリー・ジャズ・ファンが気に入る1曲かもしれませんね。実に気が利いています。

「On the Insufficiency of Words」
アコギによるフォーキーな味わいによるSSW的な仕上がり。フォーキーな中に漂うミステリアスな雰囲気はJoni Mitchellのイメージと重なってきます。

「Danny's Song」
Loggins & Messinaの名曲(Kenny Loggins)カヴァー。オリジナルのフォーキーなイメージとは異なる、少しレイジーなジャジー・チューンに仕上がっています。

Loggins & Messina「Danny's Song」
 http://www.youtube.com/watch?v=0rcXD-Em4Kk

「Numbers(Trio Version)」
国内盤のボーナス・トラックとして「Numbers」のTrio Versionが収録されています。オリジナルと比較すると、こちらの方が大人のジャズといった趣の仕上がりです。

気になる方は、他の作品もどうぞ!

『Start To Move』(2007年)
スタート・トゥ・ムーヴ

『Parkdale』(2008年)
パークデイル

『Besides』(2007年)
Besides
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2010年02月19日

Richie Havens『Stonehenge』

ニューソウルの雰囲気も漂う黒人フォーキー☆Richie Havens『Stonehenge』
Stonehenge
発表年:1970年
ez的ジャンル:ニューソウル系黒人フォーク・シンガー/ギタリスト
気分は... :懐かしい再会!

昨日、仕事帰りに渋谷レコファンへ立ち寄りました。
店がある4Fでエレベーターが止まり、ドアが開いて降りようとすると、いきなり「おい!」と誰かに呼び止められ...

相手の顔を見ると、横浜の高校時代の友人でした。
彼とは約17〜18年前に仕事の現場で偶然会ったことがあり、それ以来の再会でした。

高校卒業から約26年間で1回しか会っていない相手でも一瞬でわかるものなんですね!

彼とは高校時代に音楽の話で盛り上がった仲であり、久々に会っても最初に話したのは「最近何聴いてる?」(笑)

その後、店前でしばし立ち話を...
短い時間でしたが、昔話や近況を話しながら気分は青春時代でした!

さて、今回はRichie Havensが1970年にリリースした作品『Stonehenge』です。

Richie Havensは1941年N.Y.生まれの黒人フォーク・シンガー/ギタリスト。

ウッドストック世代の方にとっては、1969年ウッドストック・フェスティバルでのギターを掻き鳴らしながらのオープニング・パフォーマンスでお馴染みですね。また、モッズ好きにはJulie Driscoll,Brian Auger & The Trinity「Indian Rope Man」のオリジナルとして知られているかもしれませんね。

Opening Performance at the 1969 Woodstock Festival
http://www.youtube.com/watch?v=Q1pMeyy__r0

Julie Driscoll,Brian Auger & The Trinity「Indian Rope Man」
http://www.youtube.com/watch?v=S97ISWZsRBw

ソウルフルな側面もあり、"フォーク・シンガー"という形容は相応しくないユニークなシンガー/ギタリストという印象です。個人的にはパーカッションをバックに、激しくギターを掻き鳴らすフォーキー・グルーヴ感に惹かれます。

正直、Richie Havensのディスコグラフィについては、きちんと把握できていない部分が多いのですが、今日紹介する『Stonehenge』(1970年)は、印象的なジャケも含めて気に入っている1枚です。

サウンド面では、効果的なストリングスも含めてニューソウル的な雰囲気も漂います。また、FunkadelicEarth, Wind & Fireでお馴染みのゴスペル曲「Open Our Eyes」やBob Dylan「It's All Over Now, Baby Blue」のカヴァーもニューソウル気分にさせてくれます。

きっとフリーソウル好きの人あたりが一番グッとくる作品なのでは?

全曲を紹介しときやす。

「Open Our Eyes」
Leon Lumkins作のゴスペル曲ですが、後にFunkadelicEarth, Wind & Fireもカヴァーした名曲です。コーラス隊も入った感動的な仕上がりはニューソウルの雰囲気もありますね。
http://www.youtube.com/watch?v=S2fWfgwtl98

「Minstrel from Gaul」
イントロの鐘の音が印象的なフォーキー・チューン。力強さと優しさという剛柔のコントラストがお見事です!

「It Could Be the First Day」
シンプルな弾き語りのようで実は小技が効いています。琴の音色にグッときます。

「Ring Around the Moon」
不穏な張り詰めた空気感が印象的です。ニューソウル/ブラックムーヴィー系の音がお好きな方は気に入ると思います。

「It's All Over Now, Baby Blue」
Bob Dylanの名曲カヴァー(アルバム『Bringing It All Back Home』収録)。このあたりは"フォーク・シンガー"らしいセレクトです。ニューポート・フォーク・フェスティバルで大ブーイング後に悲しげに歌うDylanのイメージが強い曲ですが、ここでは美しいストリングスも入った感動的で味わい深い仕上がりになっています。

「There's a Hole in the Future」
本作のハイライト曲。コンガのリズムが心地よいフォーキー・グルーヴ。ストリングスも入り盛り上がります。フリーソウル好きの人は必ずグッとくるはずです!

「I Started a Joke」
Bee Geesの1968年のヒット曲カヴァー。オリジナルの雰囲気を受け継ぎつつも、Richie Havensらしいソウルフルな味わいが加わっています。

「Prayer」
"フォーキー・ゴスペル"とでも呼びたくなるような、タイトル通りの仕上がりです。

「Tiny Little Blues」
フォーキー・ブルースなインスト。個人的にはこうしたブルージーな楽曲をもっとやって欲しいですね。

「Shouldn't All the World Be Dancing」
「There's a Hole in the Future」と並ぶハイライト曲。スピード感がたまわないアコースティック・グルーヴ。インスト・パート重視のスリリングな展開にグッときます。何となくこの頃のSantanaあたりと一緒に聴きたくなります。

まだまだRichie Havens作品は未聴のものが多いですが、まぁ焦らずコレクションに加えていきたいと思います。

『Mixed Bag』(1967年)
Mixed Bag
「High Flyin' Bird」(From 『Mixed Bag』)
http://www.youtube.com/watch?v=E9upoeQJ6Fw

『Alarm Clock』(1971年)
Alarm Clock
Beatles「Here Comes the Sun」の名カヴァー収録

『Connections』(1980年)
Connections
「Going Back To My Roots」(From 『Connections』)
 http://www.youtube.com/watch?v=tMYziXIPodg

今日はバンクーバー五輪フィギュア男子フリーの結果を見届けていたら、記事アップが遅れてしまいました。

高橋大輔は、何とか銅メダルに滑り込んで良かったですね。
posted by ez at 14:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年02月18日

Bebel Gilberto『Tanto Tempo』

Joao Gilbertoの娘Bebelのデビュー・アルバム☆Bebel Gilberto『Tanto Tempo』
タント・テンポ
発表年:2000年
ez的ジャンル:21世紀ボッサ
気分は... :ジミヘンとマイ・シャローナとベベル...

昨日気になる音楽の話題が2つありました。

1つ目は、バンクーバー五輪フィギュア男子SPで小塚選手がJimi Hendrix「Bold As Love」を使用していたことです。最後の決めの音が切られてしまい、かわいそうでしたが...ジミヘンのポーズでも見せてくれれば更に盛り上がったのでは?

2つ目は、世紀の一発屋!「My Sharona」でお馴染みThe KnackのリーダーであったDoug Fieger死去のニュースです。残念なニュースですが、それ以上に夕方のニュースでわざわざ取り上げられていた事に驚きました。

ついで以前にエントリーした『Get The Knack』の記事を読み返してみたら、ちょうど4年前のトリノ五輪期間中の投稿で荒川静香さんのことなど書いていました。昨日はそれ以来4年ぶりに『Get The Knack』を聴き、Doug Fiegerの冥福を祈りました。

さて、今回はブラジル音楽界の巨人Joao GilbertoとMiuchaの娘Bebel Gilbertoのデビュー・アルバム『Tanto Tempo』(2000年)です。

Bebel Gilbertoの紹介は、昨年リリースされた4thアルバム『All In One』(2009年)に続き2回目となります。

『All In One』は、『ezが選ぶ2009年の10枚』で選んだほどのお気に入り作品でした。しかしながら、アーティストBebel Gilbertoを知るという意味では、デビュー・アルバムとなる本作『Tanto Tempo』を一番最初に聴くべきだと思います。

Bebelの魅力は、Joao Gilberto直伝のノスタルジックなブラジル音楽と、ブラジル音楽以外のミュージシャンとのコラボで培った最新の音楽スタイルを上手く融合している点だと思います。

そんな彼女のスタイルが最もよく出ているのが『Tanto Tempo』であり、実際Amon TobinSmoke CityMario C(Mario Caldato)Thievery Corporationといったクラブ系のアーティスト/プロデューサーが参加しています。結果的に本作はクラブ方面からも注目され、2001年にはリミックス・アルバム『Tanto Tempo Remixes』もリリースしています。

その意味ではブラジル音楽ファン以上にクラブ系リスナーがグッとくるアルバムなのでは?

本作で忘れてはいけないのが、殆どの曲でプロデュースを務めたSuba(本名Mitar Subotic)の存在です。ユーゴ出身ながらブラジルに渡り、その地位を確立しつつある才能でしたが、本作のレコーディング直後の1999年11月に彼の自宅スタジオが火事に見舞われ、本作のマスターテープを取り出そうと煙に包まれた自宅へ戻ったSubaはそのまま帰らぬ人となってしまいました。

才能あるプロデューサーSubaが命がけで守ろうとした作品です!
素晴らしい出来栄えに決まっていますよね!

レコーディングには前述のアーティスト以外にCelso FonsecaMarcos SuzanoJoao ParahybaJoao DonatoCarlinhos Brown等が参加しています。

全曲紹介しときやす。

「Samba Da Bencao」
邦題「男と女のサンバ」。Baden Powell、Vinicius De Moraes作の名曲。本曲と言えば、以前に紹介した映画『Un Homme Et Une Femme(邦題:男と女)』のサントラで使われた、フランス語ヴァージョン「Samba Saravah」(ヴォーカルPierre Barouh)が有名ですね。

本ヴァージョンはSubaと共にAmon Tobinが共同プロデュースで参加しており、Ninja Tune所属の彼らしいアブストラクト/チルアウトなセンスが反映されています。
http://www.youtube.com/watch?v=fl2WJdn3qOE

「August Day Song」
UKのクラブ・ユニットSmoke Cityとのコラボ。メンバーのうち、バック・コーラスを務めるNina MirandaはUK在住の女性ブラジル人シンガーです。クラブ・テイストのボッサ・チューンは、まさに21世紀ボッサといった雰囲気ですね。
http://www.youtube.com/watch?v=DV8PoUWQ5tc

「Tanto Tempo」
タイトル曲はBebelとSuba二人だけで創り上げたものです。実にエレガント&ミステリアスなフューチャー・ボッサ。Subaが弾く美しいピアノの響きを聴いていると、命がけで本作のマスター・テープを守った彼へ思いを巡らせてしまいます。
http://www.youtube.com/watch?v=vy8AHo3R-RM

「Sem Contencao」
元々は1999年にリリースされたコンピ・アルバム『Brasil 2Mil』に収録されていた楽曲のニュー・ヴァージョンです(Bebel Gilberto/Gerry Arling/ Richard Cameron作)。ここでは当ブログではお馴染みのCelso Fonsecaが素敵なギターを聴かせてくれます。ナチュラルな雰囲気の本ヴァージョンも素敵ですが、ドラムンベース調のアップテンポがいかにもマッチしそうな雰囲気ですよね!

国内盤にはオリジナルのBrasil 2Milヴァージョンとリミックス・ヴァージョンも収録されています。

「Mais Feliz」
1986年にリリースした1EP『Bebel Gilberto』収録曲を新たにレコーディングし直したものです(De/Bebel Gilberto/Cazuza作)。アルバム中最もロマンティックな仕上がりかもしれません。
http://www.youtube.com/watch?v=cDvfkvJ8IK0

「Alguem」
Marcos Suzano & Joao Parahybaが鳴らすブラジル音楽らしいリズムの洪水と、本作を貫くクールなクラブ・サウンドが見事に融合した1曲。パーカッシヴな演奏大好きな僕のど真ん中です。
http://www.youtube.com/watch?v=nJjwZ8TxuBQ

「So Nice (Summer Samba)」
Marcos Valleの名曲カヴァー。当ブログで紹介したAstrud Gilbertoのヴァージョンもお馴染みですね。ここではシンプルながらもBebelのキュートなヴォーカルにマッチしたスタイリッシュなアレンジにグッときます。プロデュースはBeastie BoysBeck等のプロデュースで知られるMario C(Mario Caldato)。最新作『All In One』にもプロデューサーとして名を連ねていました。
http://www.youtube.com/watch?v=Dpcg5Pg4zHY

Joao Gilbertoの元妻と娘のヴァージョンを聴き比べるというのも、いろいろな意味で興味深いのでは?国内盤にはリミックスも収録されています。

「Lonely」
ワシントンD.C.をベースに活躍するRob Garza & Eric HiltonによるユニットThievery Corporationとのコラボ。Bebelは彼らの1stアルバム『Sounds from the Thievery Hi-Fi』(1997年)、2ndアルバム『The Mirror Conspiracy』(2000年)にゲスト参加しており、彼らとは旧知の仲です。ここでは彼ららしいエレクトリックなラウンジ・サウンドでBebelをプロデュースしています。また、Carlinhos Brownがパーカッションで参加しています。
http://www.youtube.com/watch?v=YmwrqvBDzfA

「Bananeira」
作詞Gilberto Gil、作曲Joao Donato。Donato自身がレコーディングに参加してフェンダーを弾くと同時に、共同プロデュース&アレンジも手掛けています。この曲だけ音の抜け具合がやたら良くて少し異質な感じがします。でもブラジル音楽ファンならばグッとくる出来栄えですよ。
http://www.youtube.com/watch?v=2Q7gvwmUqCs

「Samba E Amor」
Bebelの叔父Chico Buarqueの名曲。オリジナルの雰囲気を受け継いだシンプルなアレンジがいいですね。Celso Fonsecaのギターがサイコーです。

Chico Buarque「Samba E Amor」
 http://www.youtube.com/watch?v=Xg_F_moEfpk

「Close Your Eyes」
ラストはアップ・テンポのサンバ・チューン。日本語で♪いい子だ!いい子だ!♪と聴こえてくるのはビミョーだなぁ(笑)

前述のように、国内盤には「Sem Contencao」のオリジナルのBrasil 2Milヴァージョンとリミックス・ヴァージョンと「So Nice (Summer Samba)」のリミックスの3曲がボーナス・トラックとして追加収録されています。

興味がある方は、本作のリミックス・アルバム『Tanto Tempo Remixes』(2001年)や、Bebelが参加しているThievery Corporationの1st『Sounds from the Thievery Hi-Fi』(1997年)、2nd『The Mirror Conspiracy』(2000年)あたりもチェックしてみては?

『Tanto Tempo Remixes』(2001年)
Tanto Tempo Remixes

Thievery Corporation『Sounds from the Thievery Hi-Fi』(1997年)
Sounds from the Thievery Hi-Fi

Thievery Corporation『The Mirror Conspiracy』(2000年)
The Mirror Conspiracy
posted by ez at 02:26| Comment(4) | TrackBack(0) | 2000年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする