録音年:1963、1964年
ez的ジャンル:ラテン/エキゾチック系ファンキー・ジャズ
気分は... :お父さんシブすぎます!
ファンキー・ジャズの伝道師として名高いジャズ・ピアニストHorace Silverの3回目の登場です。
『The Cape Verdean Blues』(1965年)、『The Jody Grind』(1966年)に続いて紹介するのは、Silverのキャリアを代表するヒット作品『Song For My Father』(1964年)です。
僕の場合、Silverの代表作と知っていながら、何故か本作『Song For My Father』へは触手が動きませんでした。その最大の理由はジャケ...『The Cape Verdean Blues』、『The Jody Grind』あたりと比較すると垢抜けない感じがして...
『The Cape Verdean Blues』(1965年)
『The Jody Grind』(1966年)
しかし、『The Cape Verdean Blues』のラテン/エキゾチック・テイストの出発点となっている作品こそが本作『Song For My Father』です。
そんなSilverのアプローチに大きな影響を与えたのが、本作のジャケに写るSilverの父John Tavares Silverです。Silverと見間違えるほどよく似ていますよね。まぁ、親子だから当然ですが...。
恥ずかしい話をすると、ジャズのガイド本に掲載された小さな写真でしか本作のジャケを観たことが無かった頃は、てっきりSilver本人が座っているものだとばかり思っていました。"なぜ、このジャケのSilverはこんなに老けているのだろう?"...長い間僕の疑問でした(笑)
父Johnは『The Cape Verdean Blues』のタイトルにもある大西洋の北に位置する島である、元ポルトガル領Cape Verdeanの出身です。
本作の録音と前後してSilverはブラジルへ渡っており、現時で聴いたボサノヴァなどのブラジル音楽に刺激を受け、それが本作にも反映されています。特にSilverの代表曲にもなったタイトル曲は、自分にも流れるラテンの血を確認するとともに、父Johnの人生へ思いを馳せたのかもしれませんね。
レコーディング・メンバーは、オリジナル全6曲中4曲がHorace Silver(p)、Carmell Jones(tp)、Joe Henderson(ts)、Teddy Smith(b)、Roger Humphries(ds)という編成です。
そして、残りのオリジナル2曲「Que Pasa?」、「Lonely Woman」とボーナス・トラック4曲がstrong>Horace Silver(p)、Blue Mitchell(tp)、Junior Cook(ts)、Gene Taylor(b)、Roy Brooks(ds)という編成です。
Blue Mitchell、Junior Cookらとのカルテットを解散する前後の作品であり、新旧カルテットの演奏が混在しているのも、ある意味楽しいかもしれません。
オリジナル全6曲のうち、 「The Kicker」以外はSilverのオリジナルです。
Horace Silverの60年代作品の代表作と呼ばれるのも頷ける充実作です。
全曲紹介しときやす。
「Song for My Father」
タイトル曲は前述のように父John Tavares Silverに捧げられたものです。ラテン・フレイヴァーの中にエキゾチックな叙情感が漂う名曲です。まさにジャケ写真のように人生の年輪を感じさせるシブさがあります。Silverのピアノがファンキーなのにエレガントなのがいいですね。Joe Hendersonのソロもバッチリ決まっています。
http://www.youtube.com/watch?v=hlGvuKSq7Wk
ロック・ファンにはSteely Danのヒット曲「Rikki Don't Lose That Number(リキの電話番号)」のベースになった曲としてもお馴染みですね。いかにもDonald Fagenが好きそうな曲という気がします。
Steely Dan「Rikki Don't Lose That Number」
http://www.youtube.com/watch?v=NMjiJUVMH6U
「The Natives Are Restless Tonight」
個人的にはアルバムで一番のお気に入り。スピード感が魅力です!疾走しながらどんどんテンション上がっていく感じがたまりません。特にCarmell JonesとHendersonの二管をはじめ、各プレイヤーのソロを存分に堪能できます。
http://www.youtube.com/watch?v=Abpm6brSE74
「Calcutta Cutie」
インドのカルカッタをタイトルに入れたオリエンタル・ムードの1曲。「Song for My Father」と似たような印象を一瞬受けますが、コチラの方がよりミステリアスですかね。この曲はBlue Mitchell、Junior Cookら馴染みのカルテットでの演奏であり、Hendersonらとの違いを味わうのも楽しいのでは?
http://www.youtube.com/watch?v=DiyO_NfPzDI
「Que Pasa?」
「Song for My Father」と同タイプのラテン/エキゾチック・ムード漂う演奏です。Roger Humphriesによる小粋なリズムにグッときます。
http://www.youtube.com/watch?v=_87wul09cuA
「The Kicker」
Joe Henderson作品。出だしのCarmell JonesとHendersonによるホーン・アンサンブルのカッチョ良さがたまりません。
http://www.youtube.com/watch?v=qPfccMtDAJM
Henderson自身のヴァージョンは『The Kicker』(1967年)に収録されています。また、Henderson自身が参加しているBobby Hutchersonヴァージョン(アルバム『The Kicker』収録)やGrant Greenヴァージョン(アルバム『Solid』収録)あたりも含めて聴き比べるのも楽しいかもしれませんね。
「Lonely Woman」
ラストはBlue Mitchellらとのカルテットによる美しいバラードです。Silverのピアノを存分に味わうことができます。
http://www.youtube.com/watch?v=OkbwGv3QKQc
オリジナルは以上6曲ですが、CDにはボーナス・トラックとして、「Sanctimonious Sam」、「Que Pasa?(Trio Version)」 、「Sighin' and Cryin'」、「Silver Threads Among My Soul」の4曲が追加収録されています。Musa Kaleem作の「Sanctimonious Sam」以外はSilverのオリジナルです。