発表年:2000年
ez的ジャンル:21世紀ボッサ
気分は... :ジミヘンとマイ・シャローナとベベル...
昨日気になる音楽の話題が2つありました。
1つ目は、バンクーバー五輪フィギュア男子SPで小塚選手がJimi Hendrix「Bold As Love」を使用していたことです。最後の決めの音が切られてしまい、かわいそうでしたが...ジミヘンのポーズでも見せてくれれば更に盛り上がったのでは?
2つ目は、世紀の一発屋!「My Sharona」でお馴染みThe KnackのリーダーであったDoug Fieger死去のニュースです。残念なニュースですが、それ以上に夕方のニュースでわざわざ取り上げられていた事に驚きました。
ついで以前にエントリーした『Get The Knack』の記事を読み返してみたら、ちょうど4年前のトリノ五輪期間中の投稿で荒川静香さんのことなど書いていました。昨日はそれ以来4年ぶりに『Get The Knack』を聴き、Doug Fiegerの冥福を祈りました。
さて、今回はブラジル音楽界の巨人Joao GilbertoとMiuchaの娘Bebel Gilbertoのデビュー・アルバム『Tanto Tempo』(2000年)です。
Bebel Gilbertoの紹介は、昨年リリースされた4thアルバム『All In One』(2009年)に続き2回目となります。
『All In One』は、『ezが選ぶ2009年の10枚』で選んだほどのお気に入り作品でした。しかしながら、アーティストBebel Gilbertoを知るという意味では、デビュー・アルバムとなる本作『Tanto Tempo』を一番最初に聴くべきだと思います。
Bebelの魅力は、Joao Gilberto直伝のノスタルジックなブラジル音楽と、ブラジル音楽以外のミュージシャンとのコラボで培った最新の音楽スタイルを上手く融合している点だと思います。
そんな彼女のスタイルが最もよく出ているのが『Tanto Tempo』であり、実際Amon Tobin、Smoke City、Mario C(Mario Caldato)、Thievery Corporationといったクラブ系のアーティスト/プロデューサーが参加しています。結果的に本作はクラブ方面からも注目され、2001年にはリミックス・アルバム『Tanto Tempo Remixes』もリリースしています。
その意味ではブラジル音楽ファン以上にクラブ系リスナーがグッとくるアルバムなのでは?
本作で忘れてはいけないのが、殆どの曲でプロデュースを務めたSuba(本名Mitar Subotic)の存在です。ユーゴ出身ながらブラジルに渡り、その地位を確立しつつある才能でしたが、本作のレコーディング直後の1999年11月に彼の自宅スタジオが火事に見舞われ、本作のマスターテープを取り出そうと煙に包まれた自宅へ戻ったSubaはそのまま帰らぬ人となってしまいました。
才能あるプロデューサーSubaが命がけで守ろうとした作品です!
素晴らしい出来栄えに決まっていますよね!
レコーディングには前述のアーティスト以外にCelso Fonseca、Marcos Suzano、Joao Parahyba、Joao Donato、Carlinhos Brown等が参加しています。
全曲紹介しときやす。
「Samba Da Bencao」
邦題「男と女のサンバ」。Baden Powell、Vinicius De Moraes作の名曲。本曲と言えば、以前に紹介した映画『Un Homme Et Une Femme(邦題:男と女)』のサントラで使われた、フランス語ヴァージョン「Samba Saravah」(ヴォーカルPierre Barouh)が有名ですね。
本ヴァージョンはSubaと共にAmon Tobinが共同プロデュースで参加しており、Ninja Tune所属の彼らしいアブストラクト/チルアウトなセンスが反映されています。
http://www.youtube.com/watch?v=fl2WJdn3qOE
「August Day Song」
UKのクラブ・ユニットSmoke Cityとのコラボ。メンバーのうち、バック・コーラスを務めるNina MirandaはUK在住の女性ブラジル人シンガーです。クラブ・テイストのボッサ・チューンは、まさに21世紀ボッサといった雰囲気ですね。
http://www.youtube.com/watch?v=DV8PoUWQ5tc
「Tanto Tempo」
タイトル曲はBebelとSuba二人だけで創り上げたものです。実にエレガント&ミステリアスなフューチャー・ボッサ。Subaが弾く美しいピアノの響きを聴いていると、命がけで本作のマスター・テープを守った彼へ思いを巡らせてしまいます。
http://www.youtube.com/watch?v=vy8AHo3R-RM
「Sem Contencao」
元々は1999年にリリースされたコンピ・アルバム『Brasil 2Mil』に収録されていた楽曲のニュー・ヴァージョンです(Bebel Gilberto/Gerry Arling/ Richard Cameron作)。ここでは当ブログではお馴染みのCelso Fonsecaが素敵なギターを聴かせてくれます。ナチュラルな雰囲気の本ヴァージョンも素敵ですが、ドラムンベース調のアップテンポがいかにもマッチしそうな雰囲気ですよね!
国内盤にはオリジナルのBrasil 2Milヴァージョンとリミックス・ヴァージョンも収録されています。
「Mais Feliz」
1986年にリリースした1EP『Bebel Gilberto』収録曲を新たにレコーディングし直したものです(De/Bebel Gilberto/Cazuza作)。アルバム中最もロマンティックな仕上がりかもしれません。
http://www.youtube.com/watch?v=cDvfkvJ8IK0
「Alguem」
Marcos Suzano & Joao Parahybaが鳴らすブラジル音楽らしいリズムの洪水と、本作を貫くクールなクラブ・サウンドが見事に融合した1曲。パーカッシヴな演奏大好きな僕のど真ん中です。
http://www.youtube.com/watch?v=nJjwZ8TxuBQ
「So Nice (Summer Samba)」
Marcos Valleの名曲カヴァー。当ブログで紹介したAstrud Gilbertoのヴァージョンもお馴染みですね。ここではシンプルながらもBebelのキュートなヴォーカルにマッチしたスタイリッシュなアレンジにグッときます。プロデュースはBeastie Boys、Beck等のプロデュースで知られるMario C(Mario Caldato)。最新作『All In One』にもプロデューサーとして名を連ねていました。
http://www.youtube.com/watch?v=Dpcg5Pg4zHY
Joao Gilbertoの元妻と娘のヴァージョンを聴き比べるというのも、いろいろな意味で興味深いのでは?国内盤にはリミックスも収録されています。
「Lonely」
ワシントンD.C.をベースに活躍するRob Garza & Eric HiltonによるユニットThievery Corporationとのコラボ。Bebelは彼らの1stアルバム『Sounds from the Thievery Hi-Fi』(1997年)、2ndアルバム『The Mirror Conspiracy』(2000年)にゲスト参加しており、彼らとは旧知の仲です。ここでは彼ららしいエレクトリックなラウンジ・サウンドでBebelをプロデュースしています。また、Carlinhos Brownがパーカッションで参加しています。
http://www.youtube.com/watch?v=YmwrqvBDzfA
「Bananeira」
作詞Gilberto Gil、作曲Joao Donato。Donato自身がレコーディングに参加してフェンダーを弾くと同時に、共同プロデュース&アレンジも手掛けています。この曲だけ音の抜け具合がやたら良くて少し異質な感じがします。でもブラジル音楽ファンならばグッとくる出来栄えですよ。
http://www.youtube.com/watch?v=2Q7gvwmUqCs
「Samba E Amor」
Bebelの叔父Chico Buarqueの名曲。オリジナルの雰囲気を受け継いだシンプルなアレンジがいいですね。Celso Fonsecaのギターがサイコーです。
Chico Buarque「Samba E Amor」
http://www.youtube.com/watch?v=Xg_F_moEfpk
「Close Your Eyes」
ラストはアップ・テンポのサンバ・チューン。日本語で♪いい子だ!いい子だ!♪と聴こえてくるのはビミョーだなぁ(笑)
前述のように、国内盤には「Sem Contencao」のオリジナルのBrasil 2Milヴァージョンとリミックス・ヴァージョンと「So Nice (Summer Samba)」のリミックスの3曲がボーナス・トラックとして追加収録されています。
興味がある方は、本作のリミックス・アルバム『Tanto Tempo Remixes』(2001年)や、Bebelが参加しているThievery Corporationの1st『Sounds from the Thievery Hi-Fi』(1997年)、2nd『The Mirror Conspiracy』(2000年)あたりもチェックしてみては?
『Tanto Tempo Remixes』(2001年)
Thievery Corporation『Sounds from the Thievery Hi-Fi』(1997年)
Thievery Corporation『The Mirror Conspiracy』(2000年)