発表年:2010年
ez的ジャンル:クラブジャズ系女性ヴォーカリスト/ピアニスト
気分は... :クール&ビター!
今日はオリンピックで盛り上がるカナダ出身のアーティストを紹介したいと思います。
Gilles Petersonも大絶賛の女性ジャズ・ヴォーカリスト/ピアニストElizabeth Shepherdの新作『Heavy Falls the Night』です。
Elizabeth Shepherdは、カナダのトロントを拠点に活動する女性ジャズ・ヴォーカリスト/ピアニスト。
カナダ人の大先輩Joni Mitchellを彷彿させるクロスオーヴァーなSSWとしての才能を持つと同時に、スタンダード・ジャズに斬新な解釈を加え、クラブジャズ/ダンス・ミュージック的なアプローチにも優れたセンスを発揮する新世代ジャズ・アーティストです。
ベースのScott Kemp、ドラムのColin KingsmoreとのElizabeth Shepherd Trio名義でリリースしたデビュー・アルバム『Start To Move』(2007年)では、ヴォーカリストとしての魅力を堪能できるClifford Brownの名曲「George's Dilemma」のカヴァー、Miles Davis「Four」のカッチョ良すぎるハードバップ・カヴァー、Herbie Hancockへ捧げられたブラジリアン・フレイヴァー「Melon」など伝統的ジャズへリスペクトしつつ、最新ジャズの姿を示してくれました。
Elizabeth Shepherd Trio「Four」
http://www.youtube.com/watch?v=eZYpNi9nTW4
続いてリリースされた2ndアルバム『Parkdale』(2008年)では、UKジャズ・ファンク/クロスオーヴァー界の才能Nostalgia 77(Ben Lamdin)をプロデューサーに迎え、ジャズとダンス・ミュージックが融合した、よりカラフルなElizabethワールドを聴かせてくれました。
「Shining Tear Of The Sun」
http://www.youtube.com/watch?v=waXNG7MVVys
また、『Start To Move』と『Parkdale』の間には未発表B面曲やリミックスを集めたアルバム『Besides』もリリースしています。こうした作品がリリースされる点も、Elizabeth Shepherdおよび彼女のグループがクラブ・シーンで注目されていることが窺えますね。
そして、最新作となる3rd『Heavy Falls the Night』は、Elizabeth Shepherd自身のセルフ・プロデュースとなっています(John MacLean、DJ Mitsu The Beatsとの共同プロデュースも含む)。
これまでのアルバムではジャズ・ジャイアント達の名曲カヴァーが必ずありましたが、本作『Heavy Falls the Night』では、Loggins & Messinaのカヴァー「Danny's Song」を除き、全てElizabeth Shepherdのオリジナルです。
従来以上にシンガーソングライター的な色彩を強めている作品と言えるのでは?
本人曰く"ポップでスウィンギーなアルバム"ということらしいですが、サウンドも詞も決してスウィートになりすぎないクール&ビターな雰囲気が魅力の作品だと思います。
新作リリースに合わせるかたちで、来日公演が2月23日〜25日の3日間、東京・丸の内COTTON CLUBで行われる予定になっています。Scott Kemp(b)、Colin Kingsmore(ds)とのトリオでの演奏になるようです。僕もたまたまCOTTON CLUBの招待券を持っているので出没するかもしれません。裏切って、他アーティストの公演に使ってしまうかもしれませんが(笑)
お酒片手に聴く音楽としてはピッタリかもしれませんね!
全曲を紹介しときやす。
「What Else」
SSWとジャズ両方の魅力を持ったElizabethの特徴が表れたオープニング。ポップながらも適度にミステリアス、適度にリズミックな感じがいいですね。
「The Taking」
僕の一番のお気に入り。クラブジャズ好きの人は気に入るであろう、レイジー&スリリングな格好良さにグッときます。クールに突き放すようなElizabethのヴォーカルがたまりません。Scott Kempのベースもビンビンでいいですね!
「Heavy Falls the Night」
タイトル曲は一瞬ロマンティックな世界をイメージさせますが、徐々に様相が変わり気付くとダーク&へヴィーな世界へ...独特の雰囲気にハマります。
「Numbers」
ここではキュートなヴォーカルを聴かせてくれます。最初はあまり引っ掛からなかったのですが、聴き直すうちにどんどんお気に入りに!今では「The Taking」に次いで好きな曲です。
「Seven Bucks」
アングラ・ジャジーHip-Hop好きにはお馴染み、世界に誇る日本人トラック・メイカーDJ Mitsu The Beatsとのコラボです。クラブ系リスナーにとってのハイライト曲かもしれませんね!期待通りの格好良いジャジー・グルーヴに仕上がっています。
http://www.youtube.com/watch?v=lbKxawcRSnM
「One More Day」
浮遊感漂うミステリアスなElizabethワールドが展開されます。
「A Song for Dinah Washington?」
タイトルの通り、偉大なジャズ・ヴォーカリストDinah Washingtonに捧げられた1曲。ジャズ・カヴァー曲がない代わりに、本曲で先人ジャズ・ミュージシャンへのリスペクトを示したのかもしれませんね。
「High」
「Seven Bucks」と並びクラブ系リスナーがグッとくる1曲なのでは?Elizabeth、Scott Kemp、Colin Kingsmoreのトリオ演奏で、このダンサブルなサウンドを生み出してしまうところに感心してしまいます。いやぁ、とにかくカッチョ良い!
http://www.youtube.com/watch?v=NAFLGNm8m7M
「It's Coming」
コンテンポラリー・ジャズ・ファンが気に入る1曲かもしれませんね。実に気が利いています。
「On the Insufficiency of Words」
アコギによるフォーキーな味わいによるSSW的な仕上がり。フォーキーな中に漂うミステリアスな雰囲気はJoni Mitchellのイメージと重なってきます。
「Danny's Song」
Loggins & Messinaの名曲(Kenny Loggins)カヴァー。オリジナルのフォーキーなイメージとは異なる、少しレイジーなジャジー・チューンに仕上がっています。
Loggins & Messina「Danny's Song」
http://www.youtube.com/watch?v=0rcXD-Em4Kk
「Numbers(Trio Version)」
国内盤のボーナス・トラックとして「Numbers」のTrio Versionが収録されています。オリジナルと比較すると、こちらの方が大人のジャズといった趣の仕上がりです。
気になる方は、他の作品もどうぞ!
『Start To Move』(2007年)
『Parkdale』(2008年)
『Besides』(2007年)