2010年02月26日

Matthew Sweet『In Reverse』

Matthewが創り出す二つの異なる世界の共存☆Matthew Sweet『In Reverse』
In Reverse
発表年:1999年
ez的ジャンル:モラトリアム系パワーポップ
気分は... :俺ってモラトリアム?

今日はメロディアスなパワーポップ作品をコンスタントに届けてくれるモラトリアム系ミュージシャンMatthew Sweetの3回目の登場です。

『Girlfriend』(1991年)、『100% Fun』(1995年)に続いて紹介するのは『In Reverse』(1999年)です。

前作『Blue Sky On Mars』(1997年)ではパワーダウンした印象がありファンを心配させたMatthewでしたが、レコード会社も移籍して見事な復調ぶりを示してくれたアルバムが本作『In Reverse』です。

印象的なジャケの絵は、アメリカの女流画家Margaret Keanが1963年に描いた「Yesterday's Dollhouse」です。

Matthewが彼女の熱烈なファンで、同作がインターネット上で売りに出されていることを知り、自ら購入したのだとか。Matthew Sweetという人の凝り性ぶりをよく表していますね!

小さくて見づらいかもしれませんが、「Yesterday's Dollhouse」では前方に若い女性、その後方にドールハウスが描かれています。Matthewはこれを新しいもの(女性)と古いもの(ドールハウス)の混在として捉えているようです。

そして、"In Reverse"というアルバム・タイトルも含めて、二つの異なる世界の共存というのがアルバムのテーマに置かれています。

このテーマはサウンドにも反映されていて、来るべき21世紀を見据えた最新パワーポップと60年代を中心としたノスタルジック・サウンドの共存を狙ったアプローチが随所で聴かれます。Brian WilsonやPhil Spectorあたりを意識したサウンドが目立ちます。

プロデューサーは『100% Fun』『Blue Sky on Mars』と続いたBrendan O'Brienと別れ、Matthew Sweet自身とペダル・スティールの名手Greg Leisz、旧知の仲であるFred Maher、名エンジニアJim Scottが起用されています。『Girlfriend』等をMatthewと共同プロデュースしていたFred Maher(元Scritti Politti)の復帰が嬉しいですね。

レコーディングには、Carol Kaye(b)、Jim Keltner(ds)といった大ベテランやVelvet CrushのRick Menck(ds) & Paul Chastain(g)等も参加しています。

ロック離れが激しいと言いつつ、Matthewの甘酸っぱいギター・ポップが大好きな僕って、やっぱりモラトリアムなのでしょうか?

全曲紹介しときやす。

「Millennium Blues」
オススメその1。タイトルが1999年作品らしいオープニング。サイケとPhil Spectorが合体した感じで逆回転のホーン隊とリヴァーヴ・サウンドが印象的なReverse & Reverbチューン。
http://www.youtube.com/watch?v=Rb3EfEdIyfU

「If Time Permits」
オススメその2。爽快感と幻想感が交錯する不思議な感覚の仕上がり。リヴァーヴ・ギターやモラトリアム系多重コーラスにグッとくるのでは?

「Beware My Love」
Matthew節全開といった感じのメランコリックなメロディラインにグッときます。このタイプがないとMatthew Sweet作品を聴いた気分にならない(笑)

「Faith in You」
Ric Menckのドラムによるビートが効いたパワーポップ。適度なハード感がグッド!

「Hide」
オススメその3。ホロ苦い青春の日々が思い出されるようなメロディに心打たれます。聴いていると、訳もなく涙腺がユルユルになるのはなぜでしょう?ここではJim Keltnerがドラムを叩いています。

「Future Shock」
フューチャーというよりノスタルジックな青春ギター・ポップ。僕の場合、このタイトルだとHerbie Hancockの同名異曲の方をイメージしてしまいますが...

「Split Personality」
60年代UKロック風のビート・ポップ。ライナーノーツによればKinks風を狙ったのだとか?Kinksってこんなにメロウじゃないと思うけど...

「I Should Never Have Let You Know」
60年代と70年代と90年代が入り混じっていますが、ポップであることには変わりありません(笑)

「Trade Places」
落ち着いた仕上がりです。わりと60年代風の音が多いアルバムなので、この70年代風の音に思わずホッとしてしまいます。

「What Matters」
オススメその4。ワンパターンと言われようが、このメロディ&ヴォーカルは抗しがたい魔力があると思います。逆回転ギターも効果的なのでは?
http://www.youtube.com/watch?v=y8geI-84xnE
※映像自体は全く関係のない赤ん坊ものみたいです。

「Write Your Own Song」
ポップな味わいのロックン・ロール。このクドさが好きな人にはたまわらい(笑)

「Worse to Live」
美しくも悲しいバラード。スケール感の大きな演奏と荘厳なコーラスが印象的です。

「Untitled」
アルバムの中では地味な曲ですが、逆にそのさり気ない感じが好きです。

「Thunderstorm」
ラストは9分を超える大作です。「Thunderstorm」「Even From My Eyes」「Yse」「Day In The Sun」という4曲を1つにまとめた組曲風の仕上がりです。個人的にはこうした大作風の作りって好きじゃないんですけど...

国内盤には、「Thunderstorm」 を構成する4曲のデモ・ヴァージョンがバラ状態で収録されています。
posted by ez at 02:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 1990年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする