2010年03月25日

Original Soundtrack『Sesso Matto』

Armando Trovaioliによるお色気ムンムン人気サントラ☆Original Soundtrack『Sesso Matto』
セッソ・マット
発表年:1973年
ez的ジャンル:Armando Trovaioliサントラ
気分は... :Laura Antonelliに悩殺されそう!

今日はArmando Trovaioliの人気サントラ『Sesso Matto』(1973年)です。

Armando Trovajoliのサントラ作品の紹介は『7 Uomini D'Oro(Seven Golden Men)』に続き2回目になります。

以前に『お色気ジャケに弱いんです!〜お気に入りサントラ10選』でも紹介したお色気ムンムンのサントラです。

『Sesso Matto』は、Dino Risi監督、Giancarlo GianniniLaura Antonelli主演で1973年に公開されたイタリア映画です。

タイトルの"Sesso Matto"は日本語"色情狂"となるようです(英訳すれば"Sex Crazy")。

映画の方は、9つの"色情狂"ストーリーを描いたオムニバス形式のお色気コメディです。Giancarlo GianniniLaura Antonelliという主演の2人が9組の男女を演じ分けています。

9つのストーリーはこんな感じです。

第1話「奥様8時です」
 実業家の妖艶な奥様と彼女に仕える謹厳な召使のセッソ・マット!
第2話「決して遅過ぎることはない」
 美しい妻を無視して老婦人を口説く青年実業家のセッソ・マット!
第3話「2つの心、ほったて小屋」
 家はほったて小屋なのに14人の子供を抱える貧乏夫婦のセッソ・マット!
第4話「ハネムーン」
 新婚旅行でヴェネチアへ行ったカップルが乗り物に乗ると欲情してセッソ・マット!
第5話「子うさぎちゃん、戻って!」
 内気なサラリーマンが娼婦に家出した妻の服を着せてセッソ・マット!
第6話「外国におけるイタリア人労働者」
 デンマークの大病院で働くシチリア男が修道女ルックの看護師に個室へ案内されてセッソ・マット!
第7話「仇討ち」
 夫を殺された未亡人が、その復讐を果たすためにマフィアのボスと再婚してセッソ・マット!
第8話「おかしなおかしな恋」
 蒸発した兄を探す弟は大柄な金髪の娼婦とベッドイン寸前に...でも実は彼女が兄でセッソ・マット!
第9話「招待」
 雇い主の家に招待された若者が美しい妻に誘惑されてセッソ・マット!

何と言っても主演のセクシー女優Laura Antonelliに悩殺されてしまいますよね。
名前だけ聞いてもわからない人でも、お色気イタリア映画の最高峰『青い体験(原題:Malizia)』(1973年)で家政婦を演じたセクシー女優と説明すればピンと来る方も多いのでは?

僕自身は映画を観たことはありませんが、内容はおそらくB級お色気コメディでしょう。
それでも男性ファンはLaura Antonelliのセクシー・キャラを様々な役柄で楽しめるというだけで大満足なのでは?

そして、映画以上に評価が高いのがイタリア映画音楽の巨匠Armando Trovaioliが手掛けたサントラです。

ガラージ・クラシックとしても人気があり、90年代に入り再び大人気となったタイトル曲をはじめ、爽快ヴォーカル入りのポップ・チューン、メロウ・ボッサ、ムーグ・シンセ・チューン、アフロ・ブラジリアン、ソウルフルなオルガン・チューン、シチリア風インスト、軽快なコミカル・チューン等々バラエティに富んだ内容です。

最初はピックアップ曲のみのコメントにしようと思ったら、
すんなりと全曲コメントができてしまいました。
それだけ内容充実ということだと思います。

「Sesso Matto」
タイトル曲は女性の笑い声とエロすぎる喘ぎ声だけで妄想がふくらむ悩殺チューン。Laura Antonelliのために作られたのかと思うほど、彼女のお色気ムンムン・イメージとピッタリ符合しますね。イタリア語なので抵抗ありませんが、英語ならば♪Sex Crazy〜♪Sex Crazy♪とセクシー・ヴォーカルで繰り返すのですから赤面してしまいますね(笑)12"シングルもリリースされ、ガラージ・クラシックとしても人気でした。
http://www.youtube.com/watch?v=4TvalYQolts

サバービアの橋本氏が本曲を称して"イタリア版「Soul Makossa」"という形容をしていますが、確かによく似ていますね。「Soul Makossa」が1972年の録音だし、タイミング的にも影響を受けているのかもしれませんね。
Manu Dibango「Soul Makossa」(1972年)
http://www.youtube.com/watch?v=aWK_Josc0Og

「Two Happy People」
お色気ムンムンのタイトル曲から一変し、爽快ヴォーカルが印象的なハッピー・モードのポップ・チューン。

「Signora Sono Le Otto」(邦題「奥さま8時です」
朝ののんびりムードの映画音楽らしい仕上がり。

「Due Cuori E Una Baracca」(邦題「2つの心、ほったて小屋」
子沢山の貧乏夫婦の哀愁が漂います。でも悲壮感のみならず愛に溢れている感じがいいですね。

「Palm Tree」
バカンス中のラブラブ・モードといった雰囲気のインスト。

「L'Ospite」(邦題「招待」
タイトル曲と並ぶ人気曲なのでは。エレピが心地好く響くメロウ・ボッサ・チューンです。

「Viaggio Di Nozze」(邦題「ハネムーン」
コミカル・タッチの軽快さが魅力です。

「Un Amore Difficile」(邦題「おかしなおかしな恋」
第8話は兄弟がベッドイン寸前となる気色悪いストーリーですが(笑)、サウンドはフレンチ・タッチのロマンチックなインストに仕上がっています。

「Delitto Sessuale」(邦題「性的な罪」
シチリア風のいかにもイタリアらしいインスト・チューン。

「D'Amore Si Muore」(邦題「死ぬほどの愛」
ソウル・テイストも入ったオルガン・チューン。

「I Apologise Mr. Rossini」(邦題「許してミスター・ロッシーニ (悪女) 」
コミカルな中にモンドな雰囲気が漂います。珍味のような捨て難い魅力があります(笑)
http://www.youtube.com/watch?v=FJFiUb_-biM

「Kinky Peanuts」(邦題「気まぐれピーナッツ」
アフロ・ブラジリアンなリズムとムーグ・シンセの組み合わせにグッときます。

「Torna Piccola Mia」(邦題「子うさぎちゃん、戻って!」
女房に逃げられた男の悲哀が滲み出ています。

「Non E' Mai Troppo Tardi」(邦題「決して遅過ぎることはない」
ひどい近眼のため、美しい妻を無視して老婦人に恋してしまう奇妙な恋の物語にピッタリな不思議モードのインスト。

「Searching For Something」(邦題「愛を探して」
「Two Happy People」と同タイプのヴォーカル入り爽快ポップ・チューン。

「Sesso Matto」
ラストはタイトル曲のリプライズです。

次回のArmando Trovaioliサントラは『La Matriarca』(1968年)あたりを紹介したいですね。

『La Matriarca』
女性上位時代
「La Matriarca」
 http://www.youtube.com/watch?v=LOyUUO5HS_U

Trovaioli作品ではありませんが、Jane Fonda主演のカルト・ムービー『Barbarella』(1968年)のサントラを最近欲しています。

『Barbarella』
Barbarella
「Barbarella」
 http://www.youtube.com/watch?v=ecQaPNDUEZk
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2010年03月24日

The Flaming Lips『Yoshimi Battles The Pink Robots』

邪悪なロボットと対決する空手の黒帯を持つ女の子Yoshimi☆The Flaming Lips『Yoshimi Battles The Pink Robots』
ヨシミ・バトルズ・ザ・ピンク・ロボッツ
発表年:2002年
ez的ジャンル:近未来系オルタナ/フォークトロニカ
気分は... :『火の鳥』が読みたくなる...

今回はThe Flaming Lips『Yoshimi Battles The Pink Robots』(2002年)です。

The Flaming Lipsの紹介は『The Soft Bulletin』(1999年)に続き2回目になります。

僕の場合、1983年結成という長いキャリアを誇るThe Flaming Lipsというロック・バンドに関して、『The Soft Bulletin』と本作『Yoshimi Battles The Pink Robots』以外の作品は殆ど把握できていません。それでもこの2枚は非常に気に入っており、ロック離れが進行する僕でも定期的に聴きたくなります。

今日紹介する『Yoshimi Battles The Pink Robots』(2002年)はグループの10thアルバムです。

まずは"Yoshimi"という日本人の名前を冠したタイトルが気になりますよね。
この"Yoshimi"とはバンドと交流のある日本人ミュージシャンYoshimi P-Weこと横田佳美氏の名前から取ったものです。彼女はボアダムスやOOIOOの活動で知られていますね。

本作では"Yoshimi"はジャケに写る邪悪なロボットと対決する空手の黒帯を持つ女の子という設定になっています。

また本作のジャケには日本語で「ザ・フレーミング・リップスは、あなたが人生と、このレコードをエンジョイしてくれることを願っています。」と書かれています。さらにインナーにも「君の知っている人は皆、いつか死ぬ。」「君は一番美しい顔をしている。」といったフレーズが日本語で書かれています。特にインナーの言葉は引っ掛かりますよね。

そんな日本語のフレーズやジャケに象徴されるように、僕が本作に惹かれるのは作品全体に貫かれた近未来感と死生観です。

ロボット等が登場する近未来の設定や、そこで描かれる生と死というテーマは、僕に大きな影響を与えた漫画である手塚治虫『火の鳥』の世界が重なってきます。

人は誰しも自分の人生が永遠でありたいと願う。しかしそれは叶わぬ夢であり、限りある人生を運命に従い生き、人生で最も大切なものを守り抜こうとする...『火の鳥』が示してくれたメッセージは、今でも心の中に深く刻まれています。そんな『火の鳥』に通じる世界観を本作からも感じ取ることができます。

サウンド的にはフォーキー・サウンドと近未来的なエレクトロニカ・サウンドが融合した"フォークトロニカ"サウンドが本作の特徴ですね。電子的な中にもヒューマンな温もりを感じます。

『火の鳥』(特に未来編、宇宙編、復活編、望郷編、生命編あたり)を読みながら、聴くと余計にグッとくる作品だと思います。

全曲紹介しときやす。

「Fight Test」
本作を貫く近未来的ムードを印象づけるオープニング。そんな雰囲気の中でも彼ららしい胸に響くメロディを堪能できます。極限まで闘わなかったシンガーの後悔というテーマは、自分たちの立ち位置を再確認しているかのようですね。
http://www.youtube.com/watch?v=7EbrMAZbFpo

「One More Robot/Sympathy 3000-21」
ダンサブルなエレクトロニカ・サウンドは、何の予備知識もなく聴くとFlaming Lipsとはわからないかもしれませんね。
http://www.youtube.com/watch?v=NHK9C5cy74c

「Yoshimi Battles the Pink Robots Pt.1」
前述のように、タイトル曲では邪悪なロボットから街を守るために闘う空手の黒帯を持つ女の子ヨシミが登場します。死ぬまで闘うようプログラミングされているロボットがヨシミに恋をしてしまい、彼女に危害を加えるよりも自殺をする事を決意し...ヨシミは闘いに勝利したものの、自分が何故勝てたのかに疑問を抱き....といった内容です。『火の鳥』で言えば、ロビタを思い出してしまう内容です。このストーリーのアニメを観たいですよね。

美しくも悲しい、懐かしくも新しいサウンドも歌詞とジャスト・フィットしています。Yoshimi P-Weの声も聴くことができます。
http://www.youtube.com/watch?v=AzlMeTxVdH8

「Yoshimi Battles the Pink Robots Pt.2」
Pt.2はポストロック/エクスペリメンタル的なインスト。詳細はわかりませんが、ここでのハードなドラムはYoshimi P-Weなのでしょうか?
http://www.youtube.com/watch?v=ViB5nnPRuYo

「In The Morning of the Magicians」
「Yoshimi Battles the Pink Robots Pt.1」に通じるフォークトロニカな仕上がり。とても美しいのに、とても切ない思いが胸の中を支配します。このビミョーな感情に揺さぶられるのが本作の魅力かもしれませんね。
http://www.youtube.com/watch?v=0jTuKHKIT4w

「Ego Tripping at the Gates of Hell」
この曲も切なさで胸が締め付けられます。Wayne Coyneの悲しげな歌声と美しいメロディを聴いていると、涙腺がゆるんできてしまいます。
http://www.youtube.com/watch?v=6tkHIMqN-YM

「Are You A Hypnotist??」
現実と夢の世界を行き来しているかのようなトリップ感が魅力です。
http://www.youtube.com/watch?v=BYKdIukYKc8

「It's Summertime(ThrobbingOrange Pallbearers)」
この曲も日本人女性について歌ったもの。友人の日本人女性が病気で亡くなったことを彼女の姉妹からの電子メールで知り、姉妹を励ますために書かれた曲。この訃報は今回のアルバム制作の契機になった模様です。牧歌的なフォークトロニカ・サウンドと切ない歌詞にグッときます。
http://www.youtube.com/watch?v=kGptuuFNIts

「Do You Realize??」
アルバムからの先行シングル。インナーに日本語で「君の知っている人は皆、いつか死ぬ。」と書かれていますが、まさにその事を歌った曲。Flaming Lipsらしいメロディと人生へのメッセージに胸が熱くなります。聴き終えた時の感動は『火の鳥』を読み終えた時のそれを同じですね。
http://www.youtube.com/watch?v=uzR7u4rwFSY

「All We Have Is Now」
「Do You Realize??」に続いて聴くと感動が増幅します。僕の頭の中では火の鳥が飛び立って行く姿がイメージされます。限りある人生だからこそ今を精一杯生きないとね!
http://www.youtube.com/watch?v=Aacl6KCaCmE

「Approaching Pavonis Mons By Balloon (Utopia Planitia) 」
この曲は2003年のグラミーでBest Rock Instrumental Performanceを受賞した楽曲です。ユートピア・ムードですが何処か力強いものを感じます。
http://www.youtube.com/watch?v=6bW1aMDeuqY

国内盤のボーナス・トラックには「Yoshimi Battles the Pink Robots Pt.1」の日本語(関西弁)ヴァージョンが収録されています。僕が所有するのは輸入盤ですが、国内盤をゲットしておけば良かった!と後悔しています。

未聴の方は名盤の誉れ高い9thアルバム『The Soft Bulletin』(1999年)もチェックしてみてください。

『The Soft Bulletin』
Soft Bulletin
「Race For The Prize」
 http://www.youtube.com/watch?v=4mMC5CWTT0s
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2010年03月23日

Experience Unlimited『Experience Unlimited』

Go-Goスタイルになる以前のE.U.☆Experience Unlimited『Experience Unlimited』
エクスペリエンス・アンリミテッド
発表年:1976年
ez的ジャンル:Go-Go前夜系レア・グルーヴ/ファンク
気分は... :意外とラテンな味わいにグッときます!

今回はChuck Brown & The Soul Searchers、Trouble Funkと並ぶGo-GoバンドE.U.の前身グループであるExperience Unlimitedのアルバム『Experience Unlimited』(1976年)です。
※E.U.の1stアルバムという捉え方もありますが、ここで便宜上分けておきます。
『Free Yourself』のタイトルで紹介されることもあるようです。

Go-GoはワシントンD.C.で生まれたブラック・ミュージックであり、70年代後半にChuck Brown & The Soul SearchersTrouble Funkによって演奏スタイルが確立された模様です。Trouble Funkが1982年にリリースした「Pump Me Up」で広く知られるようになり、80年代後半から90年代初めにかけて大いに盛り上がりました。

Go-Go自体は基本的にはワシントンD.C.のローカルなダンス・ミュージックであり、商業的に大成功を収めたアーティストはいませんでした。しかし、同時期に世界中を席巻したニュージャック・スウィング(NJS)やグラウンド・ビートにも影響を与え、またHip-Hopとの関連性も深かったことから80年代〜90年代初めの黒人音楽を振り返るうえでは欠かせないものになっています。

E.U.は、Spike Lee監督の映画『School Daze』(1988年)の主題歌となった「Da Butt」がR&BチャートNo.1になるなど3曲のR&BチャートTop10ヒットを持っているグループであり、Chuck Brown & The Soul Searchers、Trouble Funkと並ぶGo-Goを代表するグループです。

僕の場合、Chuck Brown & The Soul SearchersTrouble FunkE.U.のLP/CDも持っていますが、Go-Goで直接盛り上がったというよりも、ニュージャック・スウィングやグラウンド・ビートを通じてGo-Goの影響力の大きさを実感したという感じでした。

その中でE.U.『Livin' Large』(1989年)や『Cold Kickin' It』(1990年)といったアルバムは頻繁に聴いていた記憶があります。もっとも『Cold Kickin' It』あたりはGo-Goファンからは一刀両断されてしまう作品でしょうが。

E.U.「Taste Of Your Love」(1989年)
 http://www.youtube.com/watch?v=KTK7M3xPeOo
※全然Go-Goしていませんが、今も昔も大好きな1曲です。

さて、今日紹介する『Experience Unlimited』(1976年)は、まだE.U.がGo-Goスタイルになる以前のアルバムであり、レア・グルーヴ/フリーソウル・ファンからの再評価も高い作品です。

本作におけるExperience Unlimitedのメンバーは以下の9名。

 Anthony "Block" Raston(ds)
 Gregory "Suger Bear" Elliott(b)
 Donald R. Fields(g、vo)
 Philip Harris(tp、flh、per)
 Michael "Prof. Funk" Hughes(key)
 Greylin T. Hunter(tb、vo、per)
 Andre "Pops" Lucas(conga、per、vo)
 Clarence "Oscar" Smith(sax、vo)
 David Williams(timbals、per、vo)

E.U.時代にはリード・ヴォーカルとしても活躍するGregory "Suger Bear" Elliottの名前はありますが、Ivan GoffWilliam "Juju" Houseといった後の主要メンバーの名前はここにはありません。

サウンド的にもGo-Goスタイル以前のファンク・サウンドであり、その意味でE.U.の1stアルバムというよりも、E.U.の前身バンドの作品といった聴き方がしっくりくる気がします。

本作はアフロ・ジャズ・ファンク・グループOneness Of JujuのメンバーJames Branch(Plunky Branch)らが運営していたレーベルBlack Fireからリリースされたものです。

そんな流れでアフロ〜スピリチュアル・ジャズの影響やラテン・ロックの影響が聴かれるのも興味深いです。特にラテンな味わいが個人的には魅力です。

詳しい経緯はわかりませんが、本作はJimi Hendrixへ捧げられているアルバムらしいです。

全曲紹介しときやす。

「It’s All Imagination」
オープニングはメンバーのClarence Smithの作品。Black Fireらしいアフロ・ファンク・チューンに仕上がっています。切れ味のある演奏がいいですね。

「Functus」
メンバーのMichael Hughesの作品。彼の弾くクラヴィネットが印象的なインストです。リズム・セクションはばっちり決まっているし、パーカッション類の鳴り具合がいいのもグッド!Jimi Hendrixへ捧ぐ1枚らしくハードなギター・ソロも堪能できます。
http://www.youtube.com/watch?v=04OQXcEdkqg

「Peace Gone Away」
フリーソウルのコンピ『Free Soul Eyes』収録ということで人気の高い1曲。メンバーのDonald R. Fieldsによる作品です。Santanaをメロウ&ソウルフルにしたようなラテン・フレイヴァーが魅力ですね!ラテン・パーカッションが鳴り響く中にメロウなカッティング・ギターが聴こえてくるイントロが格好良すぎます。女性シンガーMelva "Lady" Adamsもゲスト参加し、ソウルフルな歌声で盛り上げてくれます。

「Free Yourself」
タイトル曲はGregory Elliott/Anthony Eatson/Michael Hugues作品。ホーン・セクションを前面に押し出したジャズ・ファンク・チューンです。Gregory Elliottがソングライティングを担当しているせいか、無理やりGo-Gotとの接点を見出そうとしてしまいます(笑)。そんな思いとは裏腹に後半のジャジーなフリューゲル・ホーンのソロにグッときてしまいます!
http://www.youtube.com/watch?v=qArbXuIQKIs

「Hey You」
本曲は1973年に記念すべきExperience Unlimitedのデビュー・シングルとしてリリースされた楽曲です。ファンク・チューンとしての格好良さでいえばアルバム随一の仕上がりだと思います。ハイテンション・グルーヴの虜になること間違いナシ!個人的にはアルバムのハイライトだと思います。

「People」
アルバムで唯一のメロウ&スウィートな仕上がり。アコースティックなサウンドも含めて結構グッときます。

「Funky Consciousness」
ラストはタイトルの通りのファンク・チューン。本作らしくアフロ・ファンクとラテンとジミ・ヘンが混ぜ合わさったような展開です。

本作と直接関係する訳ではありませんが、Black FireつながりでOneness Of Juju作品をチェックするのも楽しいのでは?

Oneness Of Juju『African Rhythms』
African Rhythms

Oneness Of Juju『Space Jungle Luv』
Space Jungle Luv
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2010年03月22日

John Lewis & Sacha Distel『Afternoon In Paris』

"パリの昼下がり"に似合う小粋なジャズ☆John Lewis & Sacha Distel『Afternoon In Paris』
AFTERNOON IN PARIS
録音年:1956年
ez的ジャンル:フレンチ・ジャズ+MJQ
気分は... :久々に50年代を!

今年に入って50年代カテゴリーから1枚もセレクトしていなかったので、今回は50年代ジャズ作品の中から1枚!

セレクトしたのはModern Jazz QuartetのリーダーJohn Lewisとフランス人ミュージシャンSacha Distelの共演アルバム『Afternoon In Paris』です。

以前からパリに対する強い思いを抱いていたJohn Lewisがフランスの人気ジャズ・ミュージシャン達とパリと録音した作品が本作『Afternoon In Paris』です。

もう一人の主役Sacha Distel(1933–2004年)については詳しく知らないのですが、ギタリストのみならずシンガーしても人気を博し、俳優としても活動していたミュージシャンのようです。

レコーディング・メンバーはJohn Lewis(p)、Sacha Distel(g)、Barney Wilen(ts)、Pierre Michelot(b)、Percy Heath(b)、Connie Kay(ds)、Kenny Clarke(ds)。オリジナルLPのA面3曲のリズム隊がPierre MichelotとConnie Kay、B面3曲がPercy HeathとKenny Clarkeとなっています。

Milt Jacksonを除く新旧Modern Jazz Quartetメンバーとフランス人若手ミュージシャンの共演といったところです。

この中で本来の主役であるJohn LewisSacha Distel以上に目立っているのが、テナー・サックスのBarney Wilenです。

Barney Wilenは本作の翌年にMiles Davisが音楽を担当した映画『Ascenseur Pour L'Echafaud(邦題:死刑台のエレベーター)』のレコーディングに参加し一躍脚光を浴びることになりますが、本作でもBarneyの若々しい演奏に魅了されます。

全体としてはJohn Lewisの持つクラシカルなエッセンスとフランス人ミュージシャンのセンスの良さが上手く融合し、まさに"パリの昼下がり"といった雰囲気の小粋なジャズ作品に仕上がっています。

Sacha Distelも主役にはなりきれていませんが、彼の気の利いた演奏が全体の調和を上手くもたらしており、その意味で本作に欠かせない存在になっていると思います。

エッフェル塔をバックにトレンチコート姿で佇むLewisとSachaの二人にトリコロール・カラーを重ねたジャケも大好きです。

全曲紹介しときやす。

「I Cover The Waterfront」
Edward Heyman作詞、Johnny Green作曲のスタンダード(1933年作)。John Lewisらしいクラシカルなムードのピアノでスタートし、Sachaのロマンティックなギターを経て、Barneyの小粋なテナーに魅了されます。主役は完璧にBarneyですね。最後はLewisがエレガントに締め括ってくれます。

「Dear Old Stockholm」
Stan Getzの演奏で有名なスウェーデン民謡(原曲は「Ack Varmeland Du Skona」、「Warmland」の題名で表記されることもあります)。当ブログでは以前にMiles Davis『'Round About Midnight』のヴァージョンを紹介しています。ここではLewisのピアノ、Barneyのテナーサックス、Sachaのギター、Michelotのベースが無伴奏で交錯する気品あるテーマとBarneyやDistelがスウィングするソロ・パートのコントラストが印象的です。フレンチ・ジャズらしい洗練を感じる演奏です。

「Afternoon In Paris」
本作のために用意したJohn Lewisのオリジナル。まさにパリの昼下がりといったムードテーマに続き、Barney→Sacha→Lewis→Michelotの順にソロが展開します。それまでのエレガントムードもお構いなしのBarneyのテナーと、再びエレガントムードに引き戻すSachaの円やかのギターの対比が面白いですね。

「All The Things You Are」
Oscar Hammerstein II作詞、Jerome Kern作曲。1939年のミュージカル『Very Warm for May』のために書かれた楽曲です。本作のハイライトとしてBarneyのプレイが冴え渡る本曲を挙げる方も多いのでは?美しいLewisのピアノに続き、ハードボイルドな格好良さに溢れたBarneyのソロを堪能できます。ここからリズム隊がPercy Heath & Kenny Clarkeとなりますが、彼らのスウィンギーな推進力も聴き逃せません。

「Bag's Groove」
Milt Jackson作品。当ブログでは以前にMiles Davis『Bag's Groove』のヴァージョンを紹介したことがあります。ここでは唯一参加していないMJQメンバーを気遣ったのでしょうか(笑)。ここではLewisの小粋なピアノにグッときます。Percy Heath & Kenny Clarkeのリズム隊もかなりいい感じです。結果的にはMJQメンバーが目立つ演奏になっていますね。

「Willow Weep For Me」
「柳よ泣いておくれ」の邦題で有名なスタンダード(Ann Ronnell作品)。女性作曲家Anne RonellがGeorge Gershwinに捧げた曲です。当ブログではDexter GordonWynton Kelly『Kelly Blue』Red GarlandClifford BrownWes Montgomeryのヴァージョンを紹介済みです。

本ヴァージョンはいかにもJohn Lewisらしいクラシカルな演奏を堪能できます。本作のムードに相応しいかは別として、John Lewis絡みのアルバムならばこの手の演奏は1曲は聴きたいですよね。

僕の所有CDはオリジナル6曲のみですが、最近のCDにはボーナス・トラックとして「Little Girl Blue」と「D&E」の2曲が追加収録されているようです。
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2010年03月21日

Mental Abstrato『Pure Essence』

これが噂のブラジル産ジャジーHip-Hop☆Mental Abstrato『Pure Essence』
Pure Essence
発表年:2010年
ez的ジャンル:ブラジル産ジャジーHip-Hop
気分は... :センス良すぎ!な1枚

今回は超オススメ!ブラジル産ジャジーHip-Hopの新作Mental Abstrato『Pure Essence』です。

Mental Abstratoは、MCのOmig One、トラックメイカーCalmao Tranquisの二人から成るブラジルのHip-Hopユニット。

Omig Oneはブラジルの人気Hip-HopユニットPrimeira Audicaoのフロントマンであり、Calmao TranquisはR.O.G 、Sub Agents、Downstairsといったグループのトラックメイカーとして活動してきました。

Primeira AudicaoはファンであったCalmaoが知人を通じてOmig Oneと出会い、意気投合した二人が開始したプロジェクトがMental Abstratoです。

2006年のプロジェクト開始から長い歳月をかけて数多くの楽曲を制作し、その中からベストの楽曲をセレクトしたアルバムが本作『Pure Essence』です。

"ブラジルのJazz Liberatorz"と称されるように、ジャズ・テイスト満載のアルバムに仕上がっています。ここまで来るとジャジーHip-hopアルバムよりもJazzアルバムと呼んだ方が相応しいかもしれません。

本作にはOhmega WattsArt Officialなどブラジル以外の国で活躍するラッパー/シンガーもゲスト参加しています。Ohmega WattsArt Officialの参加と聞いて興味をお持ちのアングラHip-Hopファンも多いのでは?

一方、アルバムの半分はインスト・チューンで占められており、ジャズ系のミュージシャンも参加している楽曲もあります。実はこれらインスト・チューンの中にグッとくるものが多く、感覚的にはジャジーHip-HopアルバムとJazzアルバムを半々に聴いている気分になります。

Calmaoの生み出す極上ジャズ・トラックに聴き惚れる1枚です。

全曲紹介しときやす。

「Intro」
Gelleiaをフィーチャーした夜ジャズなイントロ。

「Ja Era Uma Vez」
Ronaldo Camiloのギターをフィーチャーしたインスト・チューン。Calmaoのセンスの良さを堪能できる大人のジャジー・メロウ・チューンです。

「Me Desculpe Mas Nao Resisti」
ArtOfficiaのLogicsとNewsenseをフィーチャー。ArtOfficia好きの人もジャジーHip-Hop好きの人も大満足な仕上がりの鉄板な1曲です。JazzyではなくJazzなHip-Hopチューン!
http://www.youtube.com/watch?v=8FBjaLqENFw

「Universo Encantado」
ジャジー&メロウなヴァイヴスに満ちたインスト・チューン。好きが聴いてもグッとくるのでは?

「The End」
女性ヴォーカリストMo Dyeのをフィーチャー。スタイリッシュなトラックとソウルフルなヴォーカルがマッチした小粋なジャジー・チューンです。

「A Origem E Essa」
エレガント&ビューティフルなインスト・チューン。美しい映像と一緒に鑑賞したい1曲です。お馴染みのスタンダード「Stardust」がOutroのかたちで挿入されているのもグッド!

「Quando Ouviu o Meu Samba」
当ブログでもお馴染みOhmega Wattsをフィーチャー。小粋なジャズ・サンバ・トラックに絡むスムース・フロウがサイコーです。Sergio Mendes & Brasil'66等でお馴染みの名曲「Tim Dom Dom」ネタも使っており、ブラジル産ジャジーHip-Hopらしい1曲に仕上がっています。
http://www.youtube.com/watch?v=hKlaAFU7IYo

「Assim Eu Sigo」
ヴァイヴの音色にグッとくる大人のジャジー・ナイトといった雰囲気です。

「Mundo Cruel」
Marcelo MonteiroのサックスとRonaldo Camiloのギターをフィーチャー。前半はMonteiroのサックス、後半はCamiloのギターを堪能できます。ここまでくる完璧にジャズ作品ですね。

「Preterito Perfeito」
Mimismoothの女性ヴォーカルをフィーチャー。アンニュイなMimismoothのヴォーカルに合わせたシブめのトラックにグッときます。

「Jazzeira」
小粋なピアノHip-Hopチューン。インストですがPseudo Slangあたりがお好きな人はグッとくるはずですよ。
http://www.youtube.com/watch?v=0ZZykHw8bnM

「A Primeira Audicao e a que Fica」
Awonのラップをフィーチャー。当ブログでも紹介したChoice37『Diligence』がお好きな人は絶対に気に入るスウィンギーなジャジーHip-Hopです。

「Bons Fluidos」
インタールード的な1分強の小曲ですがエレピのメロウ・サウンドがかなりいいです。

「Villa Bentrane」
Piso Inferiorのギターをフィーチャーしたインスト・チューン。ただただウットリするのみの秀逸ジャズ・チューンです。

これを機会にゲスト参加のOhmega WattsArtOfficialの作品もチェックしてみては?

Ohmega Watts『Watts Happening』(2007年)
Watts Happening
Ohmega Watts「Model Citizen 」
 http://www.youtube.com/watch?v=ffMvaFCbaJ4
Ohmega Watts feat. Tita Lima「Adaptacao」
 http://www.youtube.com/watch?v=6ce3Vs_shhk

ArtOfficial『Fist Fights and Foot Races』(2008年)
フィスト・ファイツ・アンド・フット・レーシズ
ArtOfficial「Big City Bright Lights」
 http://www.youtube.com/watch?v=HKfCZri9z6Q
ArtOfficial「Bottle Of Hope」
 http://www.youtube.com/watch?
ArtOfficial「Word Bending」
 http://www.youtube.com/watch?v=LDdjYdK6b9I
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