録音年:1965年
ez的ジャンル:第二期黄金クインテット帝王Jazz
気分は... :指を咥えて奥さんを見上げると・・・
今年一発目の帝王Miles Davis作品です。
セレクトしたのは第二期黄金クインテットのスタジオ録音作より1965年録音の『E.S.P.』です。
これまで紹介してきたのMiles作品は以下の13枚(録音年順)♪
『Bag's Groove』(1954年)
『'Round About Midnight』(1955、56年)
『Cookin'』(1956年)
『Miles Ahead』(1957年)
『Milestones』(1958年)
『Someday My Prince Will Come』(1961年)
『Miles Smiles』(1966年)
『Filles De Kilimanjaro』(1968年)
『In A Silent Way』(1969年)
『On The Corner』(1972年)
『Get Up With It』(1970、72、73、74年)
『Agharta』(1975年)
『The Man With The Horn』(1981年)
1964年にWayne Shorterがグループに加わり、Miles Davis(tp)、Wayne Shorter(ts)、Herbie Hancock(p)、Ron Carter(b)、Tony Williams(ds)という"第二期黄金クインテット"の最後の1ピースが埋まったわけですが、『E.S.P.』は第二期黄金クインテットのスタジオ録音第一弾アルバムとなります。
この頃のジャズ界はJohn Coltraneをはじめフリー・ジャズ旋風の真っ只中にありましたが、そういった流れとは距離を置き、モード・ジャズを昇華させた知的かつミステリアスなおと空間を創造していったのが第二期黄金クインテットのスタジオ作という印象を受けます。
演奏面でも作曲面でも高い能力を有するメンバーを揃え、オリジナル曲で新たな演奏の可能性を模索していった第二期黄金クインテットの実力の高さを本作『E.S.P.』でも存分に楽しむことができます。
本作以降、第二期黄金クインテットとしては『Miles Smiles』(1966年)、『Sorcerer』(1962年、67年)、『Nefertiti』(1967年)という3枚のスタジオ録音作を残しています。
Miles作品はあまりにも膨大なので、意外と第二期黄金クインテットのスタジオ作4枚は後回しにされやすいですね(笑)。どの作品も最初のインパクトは弱いかもしれませんが、聴き重ねるほどに味わい深く感じられます。
本作は最初の奥方Francesを指を咥えて見上げるMilesの姿が写るジャケも印象的です。賛否両論あるようですが、個人的には結構好きです。本作から程なく二人の結婚生活は破綻したようですが...
第二期黄金クインテットのお披露目アルバムを存分に楽しみましょう。
全曲紹介しときやす。
「E.S.P.」
Wayne Shorter作品。新加入のShorterの作品を冒頭に持ってくるあたりが心憎い構成ですね。"E.S.P."とはExtra-sensory perceptionの略であり、"超感覚的知覚"と訳されます。以前に紹介したShorterのリーダー作『Schizophrenia』も"精神分裂病(Schizophrenia)"でしたし、Shorterらしいタイトルかもしれませんね(笑)。
本作の充実ぶりを象徴するテンションの高い演奏ですね。Shorter & Milesによるテーマに続き、Shorter→Miles→Hancockの順でソロが展開されます。Shorter、Milesの二管によるソロも良いですが、それらを盛り上げるHancock、Ron、Tonyの演奏もスリリングです。
http://www.youtube.com/watch?v=UfjaMkxItLs
当ブログではCassandra Wilsonが本曲に歌詞をつけた「Never Broken」も紹介しました(アルバム『Traveling Miles』収録)。
「Eighty-One」
Ron Carter/Miles Davis作品。V.S.O.P. the Quintetのレパートリーとしてもお馴染みの曲ですね。Miles初の8ビート作品ということらしいです。Ron、Tonyによる変幻自在のリズム隊に合わせて、曲の表情が変化していく感じがいいですね。
http://www.youtube.com/watch?v=DX6rx1poIg8
「Little One」
Herbie Hancock作品。『Maiden Voyage』収録のヴァージョンもお馴染みですね。Hancock、Ron、Tonyの構成は『Maiden Voyage』と同じなので、二管(『Maiden Voyage』はFreddie Hubbard & George Coleman)が代わると演奏全体がどう変化するのか聴き比べるのも楽しいと思います。『Maiden Voyage』ヴァージョンは、まさに大海に取り残された孤独感がよく表現された雄大な演奏が印象的でしたが、本ヴァージョンは落ち着きと成熟を感じさせるクールな演奏が印象的ですね。
http://www.youtube.com/watch?v=vWf2ZgUU8zU
「R.J.」
Ron Carter作品。そのRonのベースに先導され、MilesとShorterが短いながらもそれぞれ素晴らしいソロを聴かせてくれます。それでもやはりRonのベースに耳が奪われてしまう曲ですね。
「Agitation」
Miles Davis作品。1967年の第二期黄金クインテットのラスト・ツアーでも頻繁に演奏されました。Tonyのエネルギッシュなドラム・ソロでスタートし、Milesのミュートによるソロも存分に楽しめます。張り詰めた緊張感の中で変幻自在にメンバーが呼応し合っているのが魅力です。
http://www.youtube.com/watch?v=9jFL1KuvSyo
※1967年のライブ映像
「Iris」
Wayne Shorter作の美しいバラード。さすがShorterはいい曲を書きますね!第二期黄金クインテットの美学が凝縮されたインテリジェンス溢れた演奏がグッときます。美しいが甘くはない!というのが気に入っています。このタイプの曲になるとHancockのピアノが光りますね。
http://www.youtube.com/watch?v=jA0oHDUlRkk
「Mood」
Ron Carter/Miles Davis作品。ミステリアスなムードの中でリリシズム溢れるMilesのミュートが怪しく響き渡ります。音空間の余白の使い方が見事ですね。静けさの中に第二期黄金クインテットの凄みを感じます。
http://www.youtube.com/watch?v=pNAmtBHGzBU
第二期黄金クインテットの他のスタジオ録音作も合わせてチェックしてみて下さい。
『Miles Smiles』(1966年)
『Sorcerer』(1962年、67年)
『Nefertiti』(1967年)