録音年:1969年
ez的ジャンル:欧州女性ジャズ・ヴォーカル
気分は... :これぞバラード・アルバム!
今日は女性ジャズ・シンガーAnn Burtonの人気作『Ballads & Burton』(1969年)です。
ジャズ・ファンからサバービア好きまで幅広いファンを虜にする女性ジャズ・ヴォーカル作品ですね。
Ann Burtonは1933年オランダ。アムステルダム生まれ。50年代半ばからプロのシンガーとしての活動を開始しますが、その道は険しく経済的にも苦境に立たされたようです。
1967年、34歳にして初アルバム『Blue Burton』(1967年)のレコーディング機会に恵まれます。『Blue Burton』はオランダで評判となり、よくやく大きな一歩を踏み出すことに成功しました。続く2ndとなる本作『Ballads & Burton』(1969年)は日本でも評判となり、女性ジャズ・シンガーとしての地位を確立していきます。
その後はコンスタントにアルバムをリリースし、日本にも数回来日しましたが、1989年にガンのため故郷アムステルダムで56年の生涯に幕を閉じました。
僕が持っているのは『Blue Burton』、『Ballads & Burton』の2枚のみですが、とりあえずこの2枚がAnn Burtonの定番だと思います。2枚とも甲乙つけ難い素晴らしいバラード・アルバムです。
今回は特に人気が高い『Ballads & Burton』の方を取り上げました。
とにかく歌の上手さや歌詞内容を超越した感情表現の素晴らしさに感動することしきりです。Burtonのどこまでも深い感情表現は、苦境を乗り越えてきた人だからこそ表現できるものという気がしますね。
『Blue Burton』に続き、Louis Van Dyke(p)、Jacques Schols(b)、John Engels(ds)、Rudy Brink(ts)がバックを務めます。彼らの素晴らしいバッキングが『Blue Burton』や本作の魅力をさらに高めていると思います。特にLouis Van Dykeのピアノにはうっとりしてしまいますね。Rudy Brinkのサックスもグッときます。
スタンダードからOtis Redding、Cher等のカヴァーまで、全てがAnn Burtonらしく甘すぎないビタースウィートな仕上がりでグッときます。色で言えば、セピアカラーがよく似合うと思います。
"こんなバラード・アルバムが聴きたかったんだよね"
聴き終ると、そんな思いにさせてくれるアルバムです。
ジャズ初心者の方でもスンナリ入ることができる聴き易いアルバムだと思います。
全曲紹介しときやす。
「A Lovely Way to Spend an Evening」
邦題「宵のひととき」。Frank Sinatraのヒットで知られるHarold Adamson/Jimmy McHugh作品のカヴァー。このオープニングの最初の一声を聴いた瞬間に"これは絶対に名盤!"と確信しました。歌詞内容がわからなくても、その素晴らしい感情表現に感動するはずです。僕の場合、聴いていると自然に目が潤んできてしまいます。Louis Van Dykeを中心としたリリカルな演奏も言うこと無し!完璧なオープニングです。
http://www.youtube.com/watch?v=ImToJBZ6uRE
「Try a Little Tenderness」
Otis Reddingのヒットで知られる名曲のカヴァー(James Campbell/Reginald Connelly/Harry M. Woods作)。しっとりと落ち着いた雰囲気のバラードで聴かせてくれます。このセンチメンタリズムは欧州ジャズならではのセンスという気がします。
http://www.youtube.com/watch?v=pfnUWMgxI6c
「Bang Bang」
Cherの大ヒット・シングルのカヴァー(Sonny Bono作)。正直、Cherのオリジナルはあまり好きになれませんが、切々としたバラードの本カヴァーはいいですね。芝居を観ているような気分になる仕上がりです。
http://www.youtube.com/watch?v=8O5dx8yd8U4
Cher「Bang Bang」
http://www.youtube.com/watch?v=QQ-G8VMs6pA&feature=related
「Someone to Watch over Me」
Ira Gershwin作詞、George Gershwin作曲のスタンダード。オリジナルはミュージカル『Oh, Kay!』(1926年)のために書かれたものです。Ella Fitzgerald、Frank Sinatra、Perry Como等多くのアーティストがカヴァーしています。当ブログではChet Bakerのカヴァーを紹介済みです。曲自体が大好きですが、Burtonヴァージョンは彼女らしい奥深さを堪能できます。Rudy Brinkのサックス・ソロも実に素敵です。
「The Shadow of Your Smile」
アカデミー賞歌曲賞も受賞した映画「いそしぎ」の主題歌(Paul Francis Webster/Johnny Mandel作品)。お馴染みの名曲ですね。当ブログでも既にJohn Patton、Lou Donaldson、Johnny Lytle、The Oscar Peterson Trio + The Singers Unlimitedのカヴァーを紹介済みです。Burtonヴァージョンは決して甘すぎないビタースウィートな仕上がりが印象的です。
「It Never Entered My Mind」
1940年のミュージカル『Higher and Higher』のために書かれた Lorenz Hart/Richard Rodgers作によるスタンダード。以前にThe Oscar Peterson Trio + The Singers Unlimitedのカヴァーを紹介済みです。Burtonの表情豊かな歌声とLouis Van Dykeのリリカルなピアノに聴き惚れてしまいます。
「That Old Devil Called Love」
Burtonが敬愛するBillie Holidayの録音で知られる楽曲(Allan Roberts/Doris Fisher作)。80年代のAlison Moyet(元Yazoo)のカヴァー・ヒットでご存知の方もいるかもしれませんね。ここではミドル・テンポでの小粋なカヴァーに仕上げています。
「Here's That Rainy Day」
ミュージカル『Carnival in Flanders』のために書かれたスタンダード(作詞Johnny Burke、作曲Jimmy Van Heusen)。当ブログではこれまでBill Evans、The Oscar Peterson Trio + The Singers Unlimited、Astrud Gilberto/Walter Wanderley Trioのカヴァーを紹介済みですが、Burtonヴァージョンは、それらとはまた異なる仕上がりです。淡々とした語り口がいい感じです。
『Blue Burton』(1967年)もセットでどうぞ!
『Blue Burton』(1967年)