2010年06月24日

Kenny Burrell & John Coltrane『Kenny Burrell & John Coltrane』

双頭クインテットによる豪華セッション☆Kenny Burrell & John Coltrane『Kenny Burrell & John Coltrane』
ケニー・バレル&ジョン・コルトレーン
録音年:1957年
ez的ジャンル:双頭クインテット系ハードバップ
気分は... :奇跡のロスタイム決勝弾!

サッカーW杯のグループCの最終戦は劇的でしたね。
多くの人がイングランドの勝利に一安心したところに、米国が奇跡のロスタイム決勝弾で16強入りを決めました。たまたま米国の劇的ゴールを生中継で目撃でき、「日本対カメルーン」戦以来の興奮の雄叫びをあげてしまいました(笑)

間もなく始まるグループDも大混戦ですね。
果たしてドイツは大丈夫なのでしょうか?

今回はKenny Burrell(g)とJohn Coltrane(ts)の共演作品『Kenny Burrell & John Coltrane』(1957年)です。

今日は1年以上John Coltrane作品を紹介していないので、最初『Soultrane』(1957年)あたりを紹介しようと思いましたが、同じ聴きやすいColtrane作品ならばギター入りのコチラの方が今の気分にマッチしていたので本作をセレクト!

ジャズの求道者John Coltrane作品の紹介は7回目の登場です。
これまで紹介してきたColtrane作品は以下の6枚です。

 『Blue Train』(1957年)
 『My Favorite Things』(1960年)
 『Ballads』(1962年)
 『Impressions』(1961年、62年、63年)
 『Kulu Se Mama』(1965年)
 『Live At The Village Vanguard Again!』(1966年)

そして、もう一人の主役Kenny Burrellの紹介は初めてとなります。

サイドメンとしての参加作品もBev Kelly『Love Locked Out』(1959年)くらいしか紹介していないと思います。自分ではあまり意識していませんでしたが、Kenny Burrell絡みの作品をあまり所有していないのかもしれません。

Kenny Burrellは1931年ミシガン州デトロイト出身のジャズ・ギター奏者。Dizzy GillespieやOscar Petersonとの共演で腕を磨き、1956年には初リーダー作『Introducing Kenny Burrell』をレコーディングしています。その後も代表作『Midnight Blue』(1967年)をはじめとするリーダー作をレコーディングすると同時に、サイドメンとしても数多くのレコーディングに参加し、そのブルージーなギター・プレイを披露しています。

さて、本作『Kenny Burrell & John Coltrane』ですが、上昇気流に乗っていた二人の顔合わせといった感じだったのですかね?

僕の中ではKenny Burrellというスペシャル・ゲストを招いたColtrane作品というイメージが強いのですが、実際にはその逆でKenny Burrellメインという色合いの方が強いのかもしれませんね。

レコーディング・メンバーはKenny Burrell(g)、John Coltrane(ts)、Tommy Flanagan(p)、Paul Chambers(b)、Jimmy Cobb(ds)というクインテット編成です。この中では双頭リーダーのつなぎ役として、Tommy Flanaganの存在が大きいと思います。

Coltrane作品として聴いた場合、単独リーダー作以上にリラックスした雰囲気があると同時に、BurrellやFlanaganのスムーズな演奏が全体をより聴きやすいものにしていると思います。その意味では、『Soultrane』あたりと並びColtrane入門作品に適しているのでは?

全曲紹介しときやす。

「Freight Trane」
Tommy Flanagan作品。紛らわしいタイトルですが「Freight Train」ではなく「Freight Trane」です(笑)。スピード感溢れるテンポの良さが魅力です。BurrellとColtraneのユニゾンに続き、Coltraneのテナーが快調にColtrane節を聴かせてくれます。それに続くBurrellのギター、Flanaganのピアノが実に小気味良くていいですね。Chambersのベース・ソロも入り、本セッションのメンバーお披露目的な楽しさもあります。
http://www.youtube.com/watch?v=no4U_-NDV7Y

「I Never Knew」
Gus Kahn/Ted Fio Rito作のスタンダードをカヴァー。全体的にリラックスした雰囲気がいいですね!Burrellの軽やかにメロディを奏でるギターを堪能できます。Coltraneのテナーもクネクネしていますが聴きやすいです(笑)。主役の二人に混じり、Flanaganが実に気の利いたピアノを聴かせてくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=oufgQARY3JQ

「Lyresto」
Kenny Burrell作品。本作の中では比較的目立たない存在ですが、実にハードバップらしい演奏が魅力です。ChambersとCobbのリズム隊の推進力がいい感じです。
http://www.youtube.com/watch?v=QY3U756o7jM

「Why Was I Born?」
舞台「Sweet Adeline」のために書かれたOscar Hammerstein II/Jerome Kern作のスタンダードをカヴァー。BurrellとColtraneの共演ということで言えば、2人のみのデュオかつアルバム唯一のバラードとなる本演奏がアルバムのハイライトでしょうね。本曲狙いでアルバム購入された方も多いのでは?ただただ美しくムーディーなバラード演奏を堪能しましょう!
http://www.youtube.com/watch?v=ofRaeRBcK1Q

「Big Paul」
ラストはTommy Flanagan作のブルース作品。Chambersのイントロに続き、作者Tommy Flanaganの小粋なピアノ・ソロを存分に楽しめます。ここでのColtraneのソロは正直少し退屈な気もします。それとは対照的にBurrellのギターは本演奏のブルージーな流れと実にマッチしていますね。
http://www.youtube.com/watch?v=gU9Gr-3h6k4 ※Part1
http://www.youtube.com/watch?v=r6nfcxvju_k ※Part2

Kenny BurrellJohn ColtraneTommy Flanaganの共演で言えば、『The Cats』(1957年)もありますね。僕は未聴ですが。

『The Cats』(1957年)
ザ・キャッツ
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2010年06月23日

Kindred The Family Soul『In This Life Together』

ネオ・フィリーの夫婦ソウル・デュオの第2弾☆Kindred The Family Soul『In This Life Together』
In This Life Together
発表年:2005年
ez的ジャンル:ネオ・フィリー系夫婦ソウル・デュオ
気分は... :南米絶好調♪

W杯はいよいよグループリーグ最終戦に突入!

第2戦終了時点での各グループの順位表を見て驚いたことは、ウルグアイ、アルゼンチン、パラグアイ、ブラジル、チリという南米から出場の5ヶ国が全てグループ首位に立っている点です。欧州強豪国のもたつきぶりとは対照的ですね。

やはり南半球の大会を制するのは南半球の出場国なのでしょうか。

今回はFatin DantzlerAja Graydonの夫婦ソウル・デュオKindred The Family Soulの2ndアルバム『In This Life Together』です。

Kindred The Family Soulの紹介は、デビュー・アルバム『Surrender To Love』(2003年)に続き2回目となります。

デビュー・アルバム『Surrender To Love』は、個人的には数あるネオ・フィリー系作品の中でもかなり上位にランクされる超お気に入り作品でした。とにかく70年代ニューソウルへのリスペクトに満ちたネオ・フィリーといった仕上がりが今でも大好きです。透明感と円熟味が同居しているあたりも魅力です。

『Surrender To Love』の出来があまりに素晴らしかったため、それとの比較で2ndとなる本作『In This Life Together』に対するイメージは長い間あまり良いものではありませんでした。彼らの魅力であったナチュラルなソウル感覚が薄れて、よりコンテンポラリーなR&B路線に向かった内容に物足りなさを感じたのかもしれません。

しかしながら、久しぶりに聴き直してみると、本作『In This Life Together』『Surrender To Love』には及ばないものの、夫婦ならではの息の合ったソウル・ヴォーカルを堪能できる良く出来たネオ・フィリー作品だと思えるようになりました。

ゲストとしてIndia Arie、Jill Scott等が参加しています。また、Hip-Hopファンにはお馴染みEasy Mo Beeのプロデュース曲もあります。

全曲紹介しときやす。

「It's Kindred (Kindredlude)」
レーベルメイトJill ScottがKindred The Family Soulを紹介するという豪華な幕開けです。

「Thru Love」
哀愁モードのミディアム・スロウ。FatinとAjaが円熟のヴォーカルを聴かせてくれます。

「Turn It Up」
Archie Eversoulのラップをフィーチャー。FatinがシャウトしてDJを煽ります!ネオ・フィリーらしい引きずるようなグルーヴが印象的です。

「Do You Remember」
オススメその1。夫婦デュオの魅力が満載のエレガント・ソウル・チューン。透明感のある仕上がりが僕好み!
http://www.youtube.com/watch?v=ZY7B0j8o8NI

「Where Would I Be (The Question)」
オススメその2。アルバムからの先行シングル。George Benson「Ode To a Kudu」をサンプリングしたギター・ループが心地好いメロウ・ソウル。これぞKindred The Family Soul!と呼べる至極ヴォーカル&サウンドを堪能できます。
http://www.youtube.com/watch?v=du7njrkF-Ik

「Woman First」
Ajaのヴォーカルの魅力を前面に打ち出したミディアム・スロウ。憂いを帯びた円熟ヴォーカルの魅力に耳を傾けましょう!
http://www.youtube.com/watch?v=j7tWr6h2Cks

「Let It All Go」
前作『Surrender To Love』には無かったコンテンポラリーなR&Bトラックが印象的です。
http://www.youtube.com/watch?v=mpf433kNv5c

「Sneak A Freak」
トライバルなリズムとチープな電子音の組み合わせが印象的なファンク・チューン。彼らのイメージとよくマッチしていると思います。
http://www.youtube.com/watch?v=_orjU9PlXU0

「Message to Marvin」
タイトルの通り、Marvin Gayeへのオマージュ。彼らがやるとハマりすぎですね。女性ラッパーThe Last Donnaをフィーチャーしています。

「Ossie Davis Quote (Interlude)」
インタールード。

「As of Yet」
オススメその3。名曲の雰囲気が漂うソウル・チューン。スマートなヴォーカル&サウンドにグッときます。
http://www.youtube.com/watch?v=CRRn_wDM_NQ

「Aja's Mom (Interlude)」
タイトルからしてAjaのお母さんの登場でしょうか?

「Struggle No More」
オススメその4。India Arieをフィーチャー。ヒューマンな温もりを感じるハートフルなソウル・チューンに仕上がっています。

「Who's Gonna Comfort You(Definition)」
Easy Mo Beeプロデュースによる哀愁モードの電子ファンク。

「My Time」
オススメその5。感動で胸が熱くなるソウル・チューン。聴いていると心の奥から何かがこみ上げてきます。

「In This Life Together」
オススメその6。タイトル曲は美しさと優しさに満ちた包容力のあるソウル・チューン。聴いているだけで心が鎮まります。

「Husband My Daddy (Interlude)」
(彼らの?)子供の会話を使ったインタールード。

「Bed Time Story」
ラストは家族愛に溢れた感動バラード。グループ名に恥じないファミリー・ソウルを感じます。

他のKindred The Family Soul作品もセットでチャックを!

『Surrender To Love』(2003年)
Surrender to Love

『Arrival』(2008年)
Arrival
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2010年06月22日

Tony Allen『Black Voices Revisited』

オリジナル・セッションを加えた新装『Black Voices』☆Tony Allen『Black Voices Revisited』
BLACK VOICES : REVISITED (10TH ANNIVERSARY REISSUE)
発表年:2010年
ez的ジャンル:レジェンド・アフロビート
気分は... :アフリカ勢苦戦・・・

サッカーW杯はいよいよグループリーグ最終戦に突入しつつあります。

初のアフリカ開催でアフリカ勢の活躍が期待された今大会ですが、現状ではアフリカから出場した6ヶ国のうち、決勝トーナメントへの可能性があるのはガーナくらいで、開催国の南アフリカをはじめ他の5ヶ国は厳しい状況にあります。個人的にはコートジボワールやナイジェリアにも期待していたのですが・・・まず無理でしょうね。

今回はFela Kutiと並ぶアフロビートのパイオニアであり、ナイジェリア人ミュージシャンであるTony Allenのアルバム『Black Voices Revisited』です。

3日前に紹介したRoy Ayers『Lots Of Love』Fela Kuti絡みの作品でした。

やはりW杯を観ていると、アフロビートが聴きたくなるのでしょうか(笑)

Tony Allenは1940年ナイジェリア、ラゴス生まれ。アフロビートの創始者Fela KutiのバンドAfrica 70のドラマー兼音楽監督として、Fela Kuti自身に"Tony Allen無しにアフロビートは存在しない"と言わしめるほど、長年に渡ってFela Kutiサウンドの中核を担ってきました。

80年代に入ると自身の活動も活発化させ、 1997年のFela Kuti死去以降もアフロビートを進化させ続けています。

近年もDamon Albarn(Blur/Gorillaz)、Paul Simonon(元The Clash)、Simon Tong(元The Verve)と結成したThe Good, The Bad and The Queenの『The Good, The Bad and The Queen』(2007年)、ソロ・アルバム『Secret Agent』(2009年)、以前に当ブログでも紹介したフィンランド人サウンド・クリエイターJimi Tenorとのコラボ『Inspiration Information 4』(2009年)など勢力的に作品をリリースしています。

今日紹介する『Black Voices Revisited』は、1999年リリースの『Black Voices』の再リリースですが、単なる復刻ではありません。1999年リリース盤はフランス系アイルランド人DJ/プロデューサーDoctor Lによるプロダクションが加わっていますが、今回はDoctor Lのプロダクションが加わる前のオリジナル・セッションをBlack Voices Revisitedとして追加収録した新装盤です。

要は"Black Voices Original"と"Black Voices Revisited"を1枚で楽しめる、1枚で2度美味しい内容になっています。さらに国内盤にはリミックス1曲が追加収録されています。

『Black Voices』 ※1999年盤
Black Voices

目玉は"Black Voices Revisited"と題されたオリジナル・セッション5曲ですね。これを先に聴いてしまうと、"Black Voices Original"の5曲はリミックス・アルバムのようにしか聴こえてきません。

その意味では"Black Voices Original"はプロデューサーDoctor Lの作品という気がします。彼のプロダクション、リミックスが悪いとは思いませんが、やはり"Black Voices Revisited"こそが本来のTony Allenのサウンドであり、彼のアフロビートという気がします。ただし、Tony AllenがアフロビートとDJサウンドの融合を試みていたことは事実ですが・・・

オリジナル・セッションにはTony Allen(ds、per)、Cesar Anot(b)、Seb Martel(g)、Fixi(key)等が参加しています。さらにFunkadelic/Parliament等のP-Funk作品にも参加しているGary "Mudbone" Cooper、Michael "Clip" Payneの二人がヴォーカルでフィーチャーされています。

遂にその全貌が明らかになったBlack Voicesを存分に堪能しましょう。

全曲紹介しときやす。

まずは"Black Voices Revisited"の5曲が収録されています。

「Black Voices」
Michael "Clip" Payneのヴォーカルをフィーチャーしたタイトル曲。アフロビートとP-Funkが融合した、真っ黒で覚醒的なグルーヴを存分に堪能できます。中毒的な魅力を持ったオリジナル・セッションです。この1曲を聴けば新装リリースが大変な偉業であることがわかるはず!
http://www.youtube.com/watch?v=4jrEI41mOFE

「Asiko」
亡きFela Kutiの意志を受け継いだかのような、呪術的アフロビートが音空間を駆け抜けます。サイコー!

「Get Together」
Gary "Mudbone" Cooperのヴォーカルをフィーチャー。オリジナル・セッションのダイナミズムを感じることができます。ホーン・セクションもかなり格好良いです。

「The Same Blood」
アフロビートの血を感じるセッションです。Fela Kutiほどのインパクトはありませんが、その代わり格好良くてキャッチーなダンス・ミュージックとして聴くことができるのが本作の魅力です。本曲などはその典型ですね。

「Ariya」
この曲は『No Discrimination』(1980年)に収録されていた楽曲の再演。1980年ヴァージョンと比較すると、こちらの方がクールな仕上がりかもしれませんね。

続いて"Black Voices Original"の5曲が収録されています。

「Asiko」
「Get Together」
「Black Voices(We Are What We Play Mix)」
http://www.youtube.com/watch?v=fARSfZm-Nco
「The Same Blood
「Ariya(Psyche Juju Mix)」
各曲のコメントは省きますが、良くも悪くもDoctor Lのサウンド・センスが色濃く出た仕上がりです。Tony Allenという素晴らしい素材をDoctor Lという凄腕シェフが調理した作品という印象を受けてしまいますね。クラブ・ミュージック好きの人はコチラの方がフィットするかもしれませんが。

1999年盤には上記5曲に加えて、「Asiko (In A Silent Mix) 」「Black Voices」の2曲が収録されていましたが、今回はカットされています。

さらに今回の国内盤には「Black Voices(Kurc Remix)」がボーナス・トラックとして追加収録されています。

この素晴らしい新装リリース盤を聴いてしまうと、他のTony Allen作品も聴きたくなりますね。

『Jealousy』(1975年)/『Progress』(1977年) ※2 in 1
Jealousy / Progress

『No Accomodation for Lagos』(1979年)/『No Discrimination』(1980年) ※2 in 1
No Accommodation for Lagos / No Discrimination

『N.E.P.A. (Never Expect Power Always) 』(1985年)
N.E.P.a.

『HomeCooking』(2002年)
Home Cooking

『Live』(2004年)
Live

『Lagos No Shaking』(2006年)
Lagos No Shaking

『Secret Agent』(2009年)
シークレット・エイジェント

The Good, The Bad and The Queen『The Good, The Bad and The Queen』(2007年)
ザ・グッド,ザ・バッド・アンド・ザ・クイーン

Jimi Tenor & Tony Allen『Inspiration Information 4』(2009年)
Inspiration Information 4
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2010年06月21日

Taj Mahal『Mo' Roots』

レゲエ色の強い汎カリブ・アプローチ第1弾アルバム☆Taj Mahal『Mo' Roots』
Mo Roots
発表年:1974年
ez的ジャンル:レゲエ/カリブ系ブルース
気分は... :何となく良い流れなのでは?

サッカーW杯グループEはデンマークがカメルーンを2対1で逆転し、決勝トーナメント進出の残り1席を日本とデンマークの直接対決で決することになりました。他の試合結果に左右されず、日本は引き分け以上でOKというわかりやすい構図がいいですね。こうなるとオランダ戦を1点差負けは意味のある敗戦だったかもしれませんね。

日本が決勝トーナメントに進出した場合、対戦するF組も波乱の展開ですね。
F組はイタリアが余裕の1位通過だと思っていたのですが、現状ではパラグアイが1位、イタリアが2位の公算が大きいと思います。そうなると、E組2位は決勝トーナメント初戦でパラグアイとの対戦となります。これは日本にとって良い流れのように思うのですが・・・。逆に決勝トーナメント初戦で「オランダ対イタリア」という好カードが実現するかもしれませんね。

さて、今回は多様なルーツ・ミュージックを探求する黒人ミュージシャンTaj Mahalの2回目の登場です。

『The Natch'l Blues』(1968年)に続いて紹介するのは、1974年リリースの『Mo' Roots』です。

ブルース・リヴァイバリストとして作品をリリースしてきたTaj Mahalが、ジャマイカ/カリブ音楽へアプローチした最初の作品が本作『Mo' Roots』です。彼の父親がカリブ海からの移民で彼自身もジャマイカン・コミュニティの中で育ったことから、自身のルーツ探求としてジャマイカ/カリブ音楽へと向かったのでしょうね。

この路線の作品として、『Music Keeps Me Together』(1975年)、『Music Fuh Ya'』(1977年)、『Evolution』(1978年)等ありますが、それらと比較して『Mo' Roots』は語られることが少ないですよね。他作品と比べてレゲエ色が強いからでしょうか?

アルバムを特徴づけるのは、「Johnny Too Bad」「Slave Driver」「Desperate Lover」という3曲のロック・ステディ/レゲエのカヴァーです。特にThe Wailersのカヴァー「Slave Driver」は、作者のBob Marley自身とBarrett兄弟のAston "Familyman" Barrettがリミックスを担当している本家Wailersのお墨付きカヴァーです。

レコーディングにはHoshal Wright(g)、Billy Rich(b)、Kwasi "Rocki" Dzidzornu(conga、tb、per)、Kester "Smitty" Smith(ds、per、timbales)、Rudy Costa(ss、fl)、Merle Saunders(org)、Aston "familyman" Barrett(p)、Carole Frederick(back vo)、Tommy Henderson(back vo)、Claudia Lennear(back vo)、Merry Clayton(back vo)といったミュージシャンが参加しています。Aston "Familyman" Barrettがベースではなくピアノで参加しているのが面白いですね。

3曲のロック・ステディ/レゲエのカヴァー以外は全てTaj Mahalのオリジナルです。

地味な扱いの作品ですが、僕の大プッシュ曲「Why Did You Have To Desert Me?」 をはじめ、聴き所の多いアルバムだと思います。

全曲紹介しときやす。

「Johnny Too Bad」
ジャマイカのロック・ステディ/レゲエ・グループThe Slickersの名曲カヴァー。オリジナルはレゲエ・ファンにはお馴染みの映画『The Harder They Come』のサントラにも収録されていました。本ヴァージョンはTajらしいブルース・フィーリングにカリビアン・テイストも加わったレゲエ・カヴァーに仕上がっています。
http://www.youtube.com/watch?v=oEdcoaCukH4

The Slickers「Johnny Too Bad」
 http://www.youtube.com/watch?v=lRm7j2UL3YY

「Blackjack Davey」
ブルージーなレゲエ・チューン。コンガのパーカッシヴなリズムが軽やかな仕上がりとなってグッド!
http://www.youtube.com/watch?v=8QOAl2GNbas

「Big Mama」
Tajらしいアーシーなソウル・チューン。ソウルフルな女声コーラス隊が雰囲気を盛り上げてくれます。本作らしくありませんが大好きです!Aston "Familyman" Barrettが殆どレゲエ色の無い本曲のリミックスを務めているのが面白いですね。
http://www.youtube.com/watch?v=rnBKWdYjWYk

「Cajun Waltz」
タイトルからすると、アコーディオンやフィドルの音色が聴こえてきそうな予感がしますが、そんなことはありません(笑)Tajらしいソウルフルで味わい深いブルース・チューンに仕上がっています。本曲もAston "Familyman" Barrettがリミックスを担当しています。
http://www.youtube.com/watch?v=V3j7eSdJXdw

「Slave Driver」
前述のThe Wailersのカヴァー。何と言っても、Bob MarleyとAston "Familyman" Barrettという本家Wailersによるリミックスに注目です。I-Threesを思わせるソウルフルな女声コーラス隊も加わり、まるで(Bunny Wailer、Peter Tosh脱退後の)後期Bob Marley & The Wailersのような雰囲気ですね。その意味では(オリジナルWailersによる)名盤『Catch a Fire』収録のWailersヴァージョンと聴き比べるのも楽しいと思います。

The Wailers「Slave driver」
 http://www.youtube.com/watch?v=JlTFBHHF3IQ

「Why Did You Have To Desert Me?」
個人的には本作のハイライト。僕が本作を好きな最大の理由は本曲が収録されているからです。フリーソウル好きの人ならば歓喜するファンキー&メロウ・グルーヴ。スペイン語パートもあり、実に格好良い仕上がりです。
http://www.youtube.com/watch?v=Ipp8gdQElVE

「Desperate Lover」
Bob Andy作のロック・ステディ名曲をカヴァー。Bob Andyは1960年代を代表するジャマイカのロック・ステディ・グループParagonsのオリジナル・メンバーの一人です。本ヴァージョンは「Slave Driver」同様にBob Marley & The Wailersの雰囲気が漂うレゲエ・チューンに仕上がっています。

Bob Andy「Desperate Lover」
 http://www.youtube.com/watch?v=xrATMwqib1o

「Clara (St. Kitts Woman) 」
ラストは激シブのヴォーカルで締め括ってくれます。カリビアン・テイストとまでは言えませんが、本作の中で一番カリブを感じる曲かもしれません。
http://www.youtube.com/watch?v=A4wcBzRE44Y

次作『Music Keeps Me Together』以降ますます汎カリブ的なアプローチを強めていきます。

『Music Keeps Me Together』(1975年)
Music Keeps Me Together

『Music Fuh Ya'』(1977年)
ミュージック・ファー・ヤ

『Evolution』(1978年)
Evolution
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2010年06月20日

Luisa Maita『Lero-Lero』

MPBの新星!期待の女性SSWワールド・デビュー☆Luisa Maita『Lero-Lero』
レロ=レロ
発表年:2010年
ez的ジャンル:MPBの新星系女性シンガー・ソングライター
気分は... :調子どうよ!

W杯「日本対オランダ」は、0対1でオランダに敗れました。
やはり1点差以上の実力差はありましたね。その意味では日本はかなり善戦したのでは?同じ敗北でも1点差負けに止めたことは、得失点差の面でも大きいと思います。

失点の場面はGK川島には不運でしたね。
ミスではありませんが、本人には悔しさが残るかもしれませんね。次のデンマーク戦に引きずらなければいいですが・・・

交代出場の中村俊は全くフィットしていませんでしたね。今大会では俊輔に見切りをつけた方が良いと思います。

試合終了後のTV中継の落胆ぶりにも思わず笑ってしまいました。
オランダ戦は、負けて当たり前、引き分けで大健闘、勝ったら奇跡!でしょ!
カメルーン戦の勝利で、マスコミは完全に勘違いモードに突入してしまいましたね(笑)

次のデンマーク戦こそが本当の勝負ですね。
闘莉王あたりが累積警告で出場停止になることを危惧していたのですが、何とか現行ベスト・メンバーで臨めそうなので良かったです。

今回はMPBの新星として活躍が期待される女性シンガー・ソングライターLuisa Maitaのソロ・デビュー・アルバム『Lero-Lero』です。

Luisa Maita『Lero-Lero』は1982年サンパウロ生まれ。彼女の父親Amado Maitaも著名なミュージシャンであり、彼のアルバム『Amado Maita』(1972年)はコレクター・アイテムとしてかなりのレア盤らしいです。

10代後半で歌手への道を志し、音楽の手ほどきを受けたDr. MorrisことMorris PicciottoらとUrbandaというグループを結成し、2003年にはアルバムもリリースしているようです。

その後のLuisaはUrbandaを脱退し、ソロ活動を開始します。そして、サンパウロの中堅女性シンガーVirginia Rosaのアルバム『Samba a Dois』(2006年)で「Madrugada」「Amado Samba」の2曲を楽曲提供して話題となります。CartolaMarcos Valle、Baden Powell、Celso Fonseca等のカヴァーが並ぶ中で、無名の女性シンガー・ソングライターの作品は目立ったのかもしれませんね。

また、サン・パウロ出身の女性MPBシンガーMariana Aydarへ提供した「Beleza」Rodrigo Camposとの共作、アルバム『Peixes Passaros Pessoas』収録)は、Rolling Stone誌ブラジル版のSong of The Yearにも選ばれました。Mariana Aydarは名アレンジャー/マルチ奏者Mario Mangaの娘です。

Mariana Aydar「Beleza」
http://www.youtube.com/watch?v=XI0UxY7Zh1w

さらに2016年にリオデジャネイロで開催されることが決定したオリンピックのプロモーション・ヴィデオにヴォーカルで参加し、さらにLuisaへの注目度が高まります。

「Rio 2016」 ※プロモPV
http://www.youtube.com/watch?v=Z00jjc-WtZI

2009年にはスペインのガイタ奏者(スペイン・ガリシア地方のバグパイプ)Carlos Nunezのアルバム『Alborada Do Brasil』にLenineらと共にゲスト参加しています。

さて、本作『Lero-Lero』は彼女にとって初のフル・アルバムであると同時にワールド・デビュー作となります。ブラジル国内では2009年に8曲入りEP『Luisa Maita』をリリースしています(4曲は本作と同じ楽曲)。

内容の方ですが、ロマンチックなボサノヴァや心地好いブラジリアン・グルーヴのようなサウンドはありません。その意味では日本人受けするステレオタイプ的なブラジル音楽とは明らかに異なる内容です。

サンパウロのゲットーが舞台にした歌詞が多く、サウンド面でも全体的にどこか翳りのあるウェットな仕上がりです。サウンドやリズム・センスには新世代MPBならではの感覚を堪能でき、その意味では現地のリアルなブラジル音楽を堪能できるアルバムだと思いす。

レコーディングはLuisaとRodrigo Campos、Paulo Lepetitを中心に、数年かけてコツコツと行われたようです。プロデュースもこの3名がクレジットされています。楽曲は全11曲中8曲がLuisa自身によるものであり、曲によってDr. MorrisやRodrigo Camposと共作しています。それ以外の3曲はRodrigo Campos等の作品です。

1回聴いただけではピンと来ないかもしれませんが、聴き重ねるほど味わいが増してくる1枚です。

リアルなブラジル音楽を堪能しましょう!

全曲紹介しときやす。

「Lero-Lero」
タイトル曲はサンパウロのゲットーのスラング("調子どうよ!"を意味するらしいです)を題したもの。サンパウロの現実を妖しいヴォーカルで歌い上げます。
http://www.youtube.com/watch?v=w8QwSDHw3y4

「Alento」
僕は本曲を試聴してアルバム購入を決めました。このクールな疾走感は新世代MPBならではの感性なのでは?ザラついた感じがいいですね。
http://www.youtube.com/watch?v=TVxfFi94KFc

「Ai Vem Ele」
サンパウロの街角のリアルな恋物語といったところでしょうか。ウェットな雰囲気が本作らしくて良いですね。
http://www.youtube.com/watch?v=nvXN3QtM8h8

「Desencabulada」
「浮気女」という邦題のイメージも重なり、妖しくセクシーなLuisaにグッとくるサンバ・チューン。
http://www.youtube.com/watch?v=2wYyckZhstk

「Fulaninha」
ジャマイカのダンスホールの要素も取り入れたリズム&サウンドが格好良いですね。新世代MPBならではの感性を感じる仕上がり。
http://www.youtube.com/watch?v=ksOswZLwUJE

「Mire a Veja」
美しさと切なさが交錯する独特の音世界へと誘ってくれます。一聴すると何の変哲もない曲に聴こえますが、よく聴くとなかなか面白いサウンドに仕上がっています。聴き重ねるほど味わいが増してきます。

「Maria e Moleque」
Joao Boscoやブラジル映画『Cidade de Deus(英題:City Of God)』(2002年)にインスパイアされた作品であり、ゲットーのドラッグの売人を歌ったものです。『Cidade de Deus』はリオデジャネイロのスラム街を描いた作品です。ちなみに同作のFernando Meirelles監督は前述したオリンピックのプロモPVの監督です。サンバ調の哀愁チューンに仕上がっています。

「Anunciou」
「Alento」と並ぶ僕のお気に入り。クールなサウンドと土着的なリズムが融合したサウンド感覚が今のブラジル音楽を感じさせます。
http://www.youtube.com/watch?v=0WUryODPdfk

「Um Vento Bom」
Luisaのソングライターとしての才能を感じる1曲。美しくもウェットなメロディ&ヴォーカルに魅了されます。
http://www.youtube.com/watch?v=I5E9doyHXWs

「Alivio」
この曲にも新感覚を感じます。一筋縄ではいかないサウンド・センスにグッときますね。

「Amor e Paz」
ラストはJoao Gilbertoへのオマージュ。ギターのみのシンプルなアレンジで静寂に包まれた音空間の中でで愛と平和を切々と歌います。なかなか感動的なエンディングです。

興味がある方は関連作品もチェックしてみては?

Mariana Aydar『Peixes Passaros Pessoas』(2009年)
Peixes Passaros Pessoas

Carlos Nunez『Alborada Do Brasil』(2009年)
アルボラーダ・ド・ブラジル
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