2010年06月14日

Tania Maria『Via Brasil vol.1』

フランスBarclayに残した3部作の第1弾☆Tania Maria『Via Brasil vol.1』
ヴィア・ブラジル
発表年:1975年
ez的ジャンル:ブラジル系女性ジャズ・ヴォーカル/ピアノ
気分は... :番狂わせの予感・・・

サッカーW杯はガーナが強豪セルビアを破り、アフリカ勢として今大会初勝利を飾りましたね。

ここまで観た限り、強豪国と前評判の高かった国で圧倒的な力を見せている国が皆無なのが印象的ですね。強豪国はピークを決勝トーナメントに持ってくるように調整しているので、グループリーグは試運転状態なのかもしれませんが、番狂わせが多発するような予感がします。

今回はブラジルを代表する女性ジャズ・シンガー/ピアニストTania Mariaの代表作『Via Brasil vol.1』(1975年)です。

Tania Mariaは1948年ブラジル、マラニョン州サン・ルイス生まれ。幼少期からピアノを習い、音楽家の道を目指しますが、17歳で結婚し、出産するなど音楽に専念できる状況では無かったようです。22歳の時に本格的なプロ活動を開始し、その後単身でフランスへ渡ります。そして、アルバム・リリースやライブを通じてヨーロッパで高い評価を受けるようになります。

80年代に入り、アメリカ録音の機会を得た頃からアメリカ、日本での評価も高まり、ブラジルを代表する女性ジャズ・シンガー/ピアニストの地位を確立しました。

僕の場合、Tania Mariaの名は80年代には知っていましたが、作品に興味を持ったのはサバービア経由ですね。

個人的には『Olha Quem Chega』(1971年)、『Via Brasil vol.1』(1975年)、『Via Brasil vol.2』(1975年)、『Come With Me 』(1982年)、『Love Explosion』(1984年)、『Forbidden Colors』(1988年)あたりに惹かれます。実は、一番頻繁に聴いていのるがグラミーにもノミネートされた『Forbidden Colors』だったりします。

ジャズ/フュージョンとブラジル音楽が(意図的ではなく)自然なかたちで融合しているのがTania Mariaの魅力ですね。

今日紹介する『Via Brasil vol.1』(1975年)はクラブジャズ・ファン、サバービア・ファンに人気の1枚です。

『Via Brasil vol.2』(1975年)、『Brazil With My Soul』(1978年)と並ぶ、フランスBarclayに残した3部作の1枚です(パリ録音)。

レコーディング・メンバーはTania Maria(vo、p、el-p、per)、Helio(b)、Boto(ds、per)というトリオ編成です。

3名のみの演奏とは思えないほど、素晴らしいアンサンブルを聴かせてくれます。特にTania Mariaのピアノ・タッチに魅了されます。何となくヴォーカリストのイメージが強いTania Mariaですが、ピアニストとしての実力も確認できます。

楽曲はChico Buarque、Jorge BenJoao DonatoIvan LinsAntonio Carlos Jobim等の有名ブラジル作品のカヴァーが中心です。

「Abre Alas」「Samba De Orly」という2大キラー・チューンを中心に、Tania Mariaらしいヴォーカル&演奏を堪能できる1枚です。

ブラジル音楽というよりも、ジャズ作品として聴いた方が楽しめる1枚だと思います。

全曲紹介しときヤス。

「Samba De Orly」
Vinicius De Moraes/Chico Buarque作。Cafe Apres-midiのコンピに収録されている人気サンバ・ジャズ。「Fio Maravilha」と並ぶ本作のキラー・チューンです。カフェで聴くのにピッタリなスタイリッシュな演奏がサイコーですね!
http://www.youtube.com/watch?v=lAks4twn51Q

「Pot-Pourri De Jorge Ben」
Jorge Benメドレー。とてもトリオ編成のみとは思えない、小粋で小気味良い演奏がいいですね。聴き覚えのあるフレーズも飛び出し楽しげです。

「Ate Quem Sabe」
Lysias Enio/Joao Donato作。Donatoのオリジナルは当ブログで紹介した『Quem e Quem』に収録されています。オリジナルとは一味異なるジャジーな雰囲気が印象的です。

「Abre Alas」
Vitor Martins/Ivan Lins作の名曲カヴァー。Ivan Linsのオリジナルは先日当ブログで紹介した『Modo Livre』に収録されています。感動的な仕上がりのオリジナルに対して、本ヴァージョンは落ち着いた大人のジャズ・チューンに仕上がっています。。

「Fio Maravilha」
Jorge Ben作。クラブジャズ・ファンに大人気の本作のハイライト曲。躍動するTania Mariaのピアノおよびヴォーカル&スキャットが格好良すぎます!Jorge Benのオリジナルはアルバム『Ben』(1972年)に収録されています。
http://www.youtube.com/watch?v=l959Iv5BGkk

「A Cruz」
Carlos Da Fe/Tania Maria作。雄大なスケール感のあるヴォーカル&演奏です。エレピの音色が気持ち良いですね。

「Aguas De Marco」
Antonio Carlos Jobimの名曲「三月の水」のカヴァー。当ブログでは先日Stacey Kentのフランス語カヴァーを紹介しましね。本ヴァージョンはエレピ主体の渋めの演奏です。

「Bedeu」
「Samba De Orly」、「Fio Maravilha」という2大キラー・チューンを除けば、一番のお気に入りです。軽快ながらもエレガントなジャズ・サンバ・チューンです。Raimondo Fagner作。

「Nao Tem Perdao」
Ronaldo Monteiro/Ivan Lins作。Ivan Linsのオリジナルは「Abre Alas」同様『Modo Livre』に収録されています。哀愁モードのオリジナルに対して、本ヴァージョンはエレガントに迫ります。

「Pot-Pourri Via Brasil」
ラストはブラジル・メドレーといった趣です。Rusen Soares/David Nasser/Ary Barroso/Dorival Caymmi/Lamartine Babo作。

興味のある方は他の作品もチェックしてみて下さい。

『Olha Quem Chega』(1971年)
Olha Quem Chega

『Via Brasil vol.2』(1975年)
Via Brasil, Vol. 2

『Brazil With My Soul』(1978年)
Brazil with My Soul

『Come With Me 』(1982年)、
Come with Me
posted by ez at 01:21| Comment(8) | TrackBack(0) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年06月13日

Leela James『My Soul』

現代のソウル・ディーヴァの3rdは名門Staxからのリリース☆Leela James『My Soul』
My Soul
発表年:2010年
ez的ジャンル:ソウル・ディーヴァ系ディープ・ソウル
気分は... :細部は覚えていませんが・・・

W杯第2日の3試合はそれぞれ興味深い3試合でしたが、昨晩はプライヴェートでハッピーなことがあり、調子に乗って酒を飲みすぎてしまい、試合の細部をあまり覚えていません(泣)

まぁ、韓国強し!、アルゼンチン勝ったけれど・・・、イングランド弱点露出!という印象でしょうか。特に韓国は素晴らしかったですね。史上最強というのも頷ける完璧な試合運びでした。羨ましい限りですね。

今回は現代R&Bシーンでも屈指のソウル・ディーヴァLeela Jamesの新作『My Soul』です。

Leela Jamesの紹介は『A Change Is Gonna Come』(2005年)、『Let's Do It Again』(2009年)に続き3回目となります。

メジャーのWarnerからリリースしたデビュー作『A Change Is Gonna Come』で素晴らしいディープ・ソウルを聴かせ大きな注目を浴びたLeelaでしたが、2nd『Let's Do It Again』は老舗インディ・レーベルShanachieからのリリースとなり、一部からは絶賛されたものの地味な扱いであったのは実に残念でした。

今回の3rd『My Soul』は名門Staxからのリリースとなります。前作『Let's Do It Again』はカヴァー集でしたが、本作は全てオリジナル曲で勝負!相変わらずのディープ・ソウルを堪能できます。

前作は全てセルフ・プロデュースでしたが、本作はGerrard Baker、Kadis & Sean、Steve "Supe" White、Ray Murray & Malik Albert、Carl "Chucky" Thompson、Butter、Carvin "Ransum" Haggins & Ivan "Orthodox" Bariasといった多彩なプロデューサーが起用されています。Carl "Chucky" Thompsonはデビュー作でもプロデュースしていましたね。

それ以外にデビュー作で多くの楽曲をプロデュースした"Comissioner" Gordon Williamsや2ndでバック・ヴォーカルを担当していたAndrea Martinが楽曲提供し(Andrea Martinはバック・ヴォーカルでも参加)、さらに新作『The Love & War MasterPeace 』をリリースしたばかりの男性R&BシンガーRaheem DeVaughnがゲスト参加しています。

全体的にはLeelaのソウル魂を前面に押し出したディープなソウル・アルバムに仕上がっています。敢えて、レトロなトラックに仕上げている楽曲が多いのも良いですね。

まぁLeelaの場合、バックのサウンド云々に関係なく圧倒的な存在感がありますが(笑)

タイトル通り、LeelaのMy Soulを堪能できる1枚です。

全曲紹介しときやす。

「I Ain't New To This」
オープニングからディープに迫ります。この存在感!このエモーション!これぞLeela James!これぞMy Soul!って感じですね。Gerrard Bakerプロデュース。Millie Jackson「Solitary Love Affair」ネタ。
http://www.youtube.com/watch?v=ZzXRSO6PMvk

「So Cold」
Kadis & Seanプロデュース。少し抑えた感情表現とクールなサウンドがマッチしています。

「The Fact Is」
Steve "Supe" Whiteプロデュース。何気ない雰囲気なのですが、自然なソウル・ハートを感じます。The Moments「Lovely Way She Loves」ネタ。
http://www.youtube.com/watch?v=4QPaNEIfoGc

「I Want It All」
シンプルなバックとLeela Jamesのリード&バック・ヴォーカルが一体化して極上のソウル・ワールドを堪能できます。Ray Murray & Malik Albertプロデュース。
http://www.youtube.com/watch?v=I0VOkOncJ8U

「Party All Night」
Carl "Chucky" Thompsonプロデュースのミッド・チューン。Leela Jamesというシンガーをよく知っている"Chucky" Thompsonならではの余裕の仕上がり。

「Mr. Incredible - Ms. Unforgetable」
Raheem DeVaughnとのデュエット曲。ヴィンテージ感の漂うソウル・バラードに仕上がっています。仲の良い二人のデュエットだけあって呼吸もピッタリといった感じですね。Carl "Chucky" Thompsonプロデュース。
http://www.youtube.com/watch?v=G20Yz3qtam8

「Tell Me You Love Me」
アルバムからの1stシングル。"Comissioner" Gordon WilliamsとAndrea MartinとLeelaがソングライティングを手掛けています。The Manhattans「Then You Can Tell Me Goodbye」ネタのハートフルなトラックをバックに、Leelaが心に奥にじんわり響く素晴らしいヴォーカルを聴かせてくれます。Andrea Martinのバック・ヴォーカルもグッド!Gerrard Bakerプロデュース。
http://www.youtube.com/watch?v=mnYZDapj1tQ

「Let It Roll」
Carl "Chucky" Thompsonプロデュースのミッド・チューン。確信犯的なレトロ・トラックがヤバいですね。

「Supa Luva」
Butterプロデュース。ソウルではなくR&Bっぽい仕上がりです。アルバムのアクセントとしてはいいかもしれませんが、個人的にはアルバムで唯一イマイチな印象の仕上がりです。
http://www.youtube.com/watch?v=V7H3zP_SSq0

「If It's Wrong」
Musiq Soulchild等の作品でお馴染みCarvin "Ransum" Haggins & Ivan "Orthodox" Bariasプロデュース。シリアス・モードで迫ります。

「It's Over」
Carvin "Ransum" Haggins & Ivan "Orthodox" Bariasプロデュース。ラストはディープに締め括ってくれます。Hodges, James & Smith「Can't Be Alone」ネタ。

過去記事もご参照下さい。

『A Change Is Gonna Come』(2005年)
A Change Is Gonna Come

『Let's Do It Again』(2009年)
Let's Do It Again
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2010年06月12日

Sylvie Vartan『La Maritza』

代表曲「Irresistiblement(あなたのとりこ)」収録☆Sylvie Vartan『La Maritza』
パリの妖精(紙ジャケット仕様)
発表年:1968年
ez的ジャンル:元祖アイドル系フレンチ・ポップ
気分は... :W杯開幕!

いよいよW杯が開幕しましたね。

オープニング・ゲーム「南アフリカ対メキシコ」は、開幕ならではの前半の重苦しさ、地元南アの先制ゴール後の歓喜、そしてメキシコの同点ゴール後のため息とW杯独特の空気が満喫できる試合でしたね。

もうすぐ始まる「フランス対ウルグアイ」戦も楽しみです。

そんな流れで今日はフレンチ・ポップをセレクト!

"元祖アイドル"とも呼べるブルガリア出身のフレンチ・ポップス歌手Sylvie Vartanが1968年にリリースした作品『La Maritza(邦題:パリの妖精)』です。代表曲「Irresistiblement(邦題:あなたのとりこ)」が収録されたアルバムです。

Sylvie Vartanは1944年ブルガリアのソフィア近郊イスクレッツ生まれ。ソフィアのフランス大使館で働いていたブルガリア人の父の影響で幼少期からフランス文化に親しんでおり、8歳の時に家族と共にパリに移住してきました。

彼女の7歳年上の実兄であり、音楽プロデューサー/ジャズ・トランペット奏者であったEddie Vartanが担当するレコーディングで女性シンガーが急遽降板したため、思わぬかたちでSylvieにレコード・デビューの機会が訪れます。こうして1961年にFrankie Jordanとデュエットによるデビュー・シングル「La Panne D'essence」をリリースします。

そして、1964年に彼女自身が出演した映画『アイドルを探せ(原題:Cherchez L'idole)』の主題歌「La Plus Belle Pour Aller Danser(邦題:アイドルを探せ)」が世界的な大ヒットとなり、一躍アイドルとして人気を集めるようになりました。同時にイエイエ・ブームの中でファッション面でも大きな影響力を持ちました、

「La Plus Belle Pour Aller Danser」
http://www.youtube.com/watch?v=8Tj6kYfAmt8

その後60年代〜70年代にかけて数多くのヒット曲を放ち、現在も現役アーティストとして勢力的に活動しているようです。

彼女の人気ぶりは知らない世代の僕ですが、それでも「Sylvie Vartan=レナウンのワンサカ娘」というイメージは子供の頃にありました。勿論、僕が観ていたレナウンCMは後年のヴァージョンですが、でもそのオリジナルはSylvie Vartan本人が出演し、歌っていたことは知らぬ間に認識していました。

「レナウンCM/ワンサカ娘(Sylvie Vartanヴァージョン)」
http://www.youtube.com/watch?v=ru85M861aD0

今日紹介する『La Maritza(邦題:パリの妖精)』(1968年)は彼女のキャリアの中でも大きなターニング・ポイントとなった1枚のようです。1968年4月に交通事故を起こし(同乗のビジネス・パートナーは死亡)、再起不能説も流れる中でリリースされたのが本作です。

単に復帰作というのみならず、アイドルから大人のシンガーへと成長した彼女の成熟ぶりを堪能できる作品です。楽曲もオリジナル重視の構成になっており、よりアーティストとしてのアイデンティティを打ち出した作品に仕上がっている気がします。

何と言っても代表曲「Irresistiblement(邦題:あなたのとりこ)」収録が魅力ですね。まぁ、難しいことは考えずに、この代表曲を中心に楽しむという聴き方でいいのでは?

僕の場合、彼女の作品中ジャケが最もキュート!というのが最もお気に入りの理由なのですが(笑)

全曲紹介しときやす。

「La Maritza」
邦題「想い出のマリッツァ」。Jean Renard/Pierre Delanoe作。祖国ブルガリアへの想いを綴った彼女の代表曲の1つだそうです。哀愁モードの郷愁ソングは僕の中のSylvie Vartanのイメージとはかけ離れているので、あまりピンと来ませんが・・・
http://www.youtube.com/watch?v=f6eBKO684RA

「Un P'tit Peu Beaucoup」
邦題「もうちょっとだけ」。小粋なフレンチ・ポップといった仕上がりです。Carlosとの息の合った掛け合いが楽しげです。C. Caulier/J. Walter/A. Entremont作。

「J'ai Cache Le Soleil」
邦題「太陽をかくした」。美しいメロディと少し物悲しいSylvieの歌声が実にグッとくるポップ・チューン。アレンジも含めてエヴァーグリーンな魅力があってサイコーです!Ralph Bernet/Jacques Revaux作。

「Jolie Poupee」
邦題「きれいな人形」。交通事故後の復帰TV番組のタイトルも本タイトルでした。エレガントなアレンジの王道ポップといった雰囲気が好きです。Jean Renard/Georges Aber作。
http://www.youtube.com/watch?v=_IhSxkX1cmU

「Irresistiblement」
邦題「あなたのとりこ」。本作のハイライト。リアルタイムで知らない人も映画(『ウォーターボーイズ』)、ドラマ(『可愛いだけじゃダメかしら』)、CM(サントリー、キリンビール、全日空)、TV番組挿入歌(『めざましテレビ』)等で聴いているはずだと思います。今聴いてもフレッシュな印象を受ける、聴く者をとりこにするエヴァーグリーンな名曲ですね。Jean Renard/Georges Aber作。
http://www.youtube.com/watch?v=kjobTsB_Sq0

「On A Toutes Besoin D'un Homme」
邦題「男は必要なもの」。ミュージカル風のアレンジが印象的です。TVショーで歌うとピッタリな感じですね。Roger Dumas/Jean Jacques Debout作。
http://www.youtube.com/watch?v=ekxoamxowAk

「Face Au Soleil」
邦題「太陽に向かって」。60年代ポップらしいキャッチーな仕上がりがいいですね。Tommy Brown/Mick Jones/Frank Gerald作。作者一人Mick Jonesは後にForeignerを結成する、あのMick Jonesです。

「Deux Bateaux」
邦題「二隻の船」。感動的な盛り上がりが印象的です。A. Donat/Jacques Demarny/G. Favereau作。

「Il Sait Revenir」
邦題「彼は帰ってくる」。Ann Kopelman/Eddie Vartan作。兄Eddieらしいジャジーな味わいが印象的です。

「Le Silence」
邦題「沈黙」。哀愁モードのシャンソン。Ann Kopelman/A.Franck作。

「Une Feuille D'or」
邦題「金の葉」。昔の歌謡曲っぽい哀愁感がグッときます(笑)。Yves Dessca/Philippe Monnet作。

オリジナル・アルバムは以上の11曲ですが、CDにはボーナス・トラック3曲が追加収録されています。この3曲がなかなかグッときます。

「Ballade Pour Un Sourire」
ボートラその1。邦題「愛のフーガ」。1969年のシングル曲。なかなかドラマチックな哀愁ポップに仕上がっています。Jean Jacques Debout/Roger Dumas作。
http://www.youtube.com/watch?v=7iSUhHuK4BY

「Les Hommes (Qui N'ont Plus Rien A Perdre) 」
ボートラその2。邦題「悲しみの兵士」。1969年のヒット・シングルであり、彼女の代表曲の1つ。タイトルの通り反戦歌であり、この時代らしい曲なのでは? Jean Renard/Frank Gerald作。
http://www.youtube.com/watch?v=jwGiH5UVtNc

「Abracadabra」
ボートラその3。邦題「アブラカダブラ」。タイトルの通り、妖しげなオリエンタル・ムードが漂うミステリアスなポップ・チューン。結構彼女のキャラとマッチしていると思います。Dossena-Lucarelli-Righini作。
http://www.youtube.com/watch?v=0tUfXSMSEDA

さて、前評判の低いフランス代表の実力は如何に!
posted by ez at 03:06| Comment(2) | TrackBack(0) | 1960年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年06月11日

Average White Band『Shine』

David Fosterプロデュースの人気作☆Average White Band『Shine』
シャイン(K2HD/紙ジャケット仕様)
発表年:1980年
ez的ジャンル:UK白人ファンク/AOR
気分は... :W杯開幕前ですが・・・

いよいよW杯開幕ですね。
でもイマイチ気分が盛り上がってきません。
開幕日の2試合を観れば、自然とW杯モードになると思いますが・・・

今日はAOR気分・・・そこでAverage White Band『Shine』(1980年)とDiane Tell『Chimeres』(1982年)の2枚のどちらにするか迷いましたが、Average White Band『Shine』にしました。

UKを代表する白人ファンク・グループAverage White Band(AWB)の紹介は以下の3作品に続き4回目となります。

 『Cut The Cake』(1975年)
 『Soul Searching』(1976年)
 『Feel No Fret』(1979年)

本作『Shine』はプロデューサーにDavid Fosterを迎えたAOR度の高い作品として人気の1枚ですね。

発売は逆になりましたが、時系列としてじゃベスト盤『Volume VIII』(1980年)に収録された新録4曲(CD『Feel No Fret...And More』にボーナス・トラックとして追加収録された4曲)を先にDavid Fosterが手掛け、その流れで『Shine』のプロデュースを依頼した模様です。

『Shine』はAtlanticからAristaへの移籍第一弾アルバムであり、グループとしても売れっ子プロデューサーを迎えて弾みをつけたかったのかもしれませんね。

本作におけるメンバーは、Hamish Stuart(g、vo、b)、Alan Gorrie(b、vo、g)、Roger Ball(key、as)、Malcolm Duncan(ts)、Steve Ferrone(ds、per)、Onnie McIntyre(g、vo)の6名。

Jerry Hey(tp)、Larry Williams(sax)、 Kim Hutchcroft(sax)といったSeawindホーンズやBrenda Russell(vo)、Ernie Watts(sax)、Paulinho Da Costa(per)、Lenny Castro(per)等がゲストとして参加しています。

通常のDavid Foster作品と比較すると、Seawindホーンズ等のホーン隊を除けばFoster人脈のスタジオ・ミュージシャンを投入が少ないですよね。メンバーがそれを嫌がったのか、予算がなかったのかは知りませんが・・・

僕の場合、過度にDavid Foster色が出すぎている作品は正直苦手なのですが、本作はそういったことは無く程良いAOR作品に仕上がっていると思います。

「Let's Go Round Again」「For You, for Love」「What'cha Gonna Do for Me」「Shine」といったシングル曲・人気曲を中心に内容充実の1枚です。

全曲紹介しときやす。

「Our Time Has Come」
Alan Gorrie/Hamish Stuart作。楽曲の良さとヴォーカル・パートの素晴らしさを感じる1曲。アレンジにはDavid Foster色が顕著に出ていますね。軽快なホーン隊が盛り上げてくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=ms91lFk9JF4

「For You, for Love」
Roger Ball/Bill Champlin作。2ndシングルにもなったAORバラード。美しいメロディとファルセット・コーラスが心地好いです。
http://www.youtube.com/watch?v=U1AF7d9bVkg

「Let's Go Round Again」
Alan Gorrie作。1stシングルにもなったハッピー・モードのディスコ調ダンス・チューン。フリーソウル・ファンにもお馴染みですね。David Foster起用の効果がよく出ている1曲だと思います。
http://www.youtube.com/watch?v=LKrwbs5xqqc

「What'cha Gonna Do for Me」
Ned Doheny/Hamish Stuart作。全米R&BチャートNo.1となったChaka Khanのカヴァーでもお馴染みですね。個人的にはダンス・クラシックとなったChaka Khanヴァージョンの方が好みですが、AORテイストのAWBヴァージョンも素晴らしいと思います。作者の一人Ned Dohenyのアコースティック・ヴァージョンも含めて聴き比べるのも楽しいのでは?
http://www.youtube.com/watch?v=FHf-fQUF9yk

Chaka Khan「What'cha Gonna Do for Me」
 http://www.youtube.com/watch?v=Y84DX2SEFfs&feature=fvw
Ned Doheny「What'cha Gonna Do for Me」
 http://www.youtube.com/watch?v=RD3BaIiFd48

「Into the Night」
Roger Ball/Alan Gorrie/Hamish Stuart作。従来からのファンも満足するであろうAWBらしい心地好いファンク・チューン。Seawindホーンズも加わった素晴らしいホーン・アンサンブルを楽しめます。
http://www.youtube.com/watch?v=Z1YBTDt9VVQ

「Catch Me (Before I Have to Testify)」
Roger Ball/David Foster/Steve Ferrone/Alan Gorrie/Hamish Stuart作。アップものではこのキャッチーなディスコ・チューンが一番好きですね。
http://www.youtube.com/watch?v=6qKDxtIc51I

「Help Is on the Way」
David Foster/Alan Gorrie/Hamish Stuart作。華麗なストリングスが盛り上げてくれるダンス・チューン。AWBとDavid Fosterの良さが上手く融合しているのがいいですね。

「If Love Only Lasts for One Night」
Alan Gorrie作の美しいバラード。どっぷりAOR気分に浸れる1曲です。
http://www.youtube.com/watch?v=juciNG1oqBM

「Shine」
Ned Doheny/Alan Gorrie/Hamish Stuart作。ラストのタイトル曲も人気曲ですね。フリーソウル好きの人あたりが一番フィットするのでは?
http://www.youtube.com/watch?v=c5y4TRtpEtI

僕の所有CDには未収録ですが、最近のCDにはBoz Scaggs「Miss Sun」David Paich作)のカヴァーが収録されています。

この後のAWBは前述のベスト盤『Volume VIII』(1980年)を経て、Dan Hartmanプロデュースの『Cupid's In Fashion』(1982年)をリリースしますが商業的には不発に終わり、同作を最後にHamish StuartSteve Ferroneの二人がグループを脱退してしまいます。

AWB作品の過去記事もご参照下さい。

『Cut The Cake』(1975年)
Cut the Cake

『Soul Searching』(1976年)
Soul Searching

『Feel No Fret』(1979年)
Feel No Fret
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2010年06月09日

Modaji『Modaji』

西ロンドン黎明期の充実作☆Modaji『Modaji』
Modaji
発表年:2000年
ez的ジャンル:西ロンドン系クロスオーヴァー/フューチャー・ジャズ
気分は... :未来への疾走・・・

今回は西ロンドンのフューチャー・ジャズ・シーンで活躍するModajiのデビュー・アルバム『Modaji』(2000年)です。

ModajiことDominic Jacobsonはバッキンガムシャー出身。兄の影響を受けて、少年時代にソウル、ジャズ・ファンク/フュージョンを聴いていたようです。ちなみにアーティスト名はDave Grusinの楽曲「Modaji」に由来するものです。

当ブログで既に紹介した西ロンドン・シーン黎明期に活躍したNeon Phusionのメンバーと交流を持つようになったことがきっかけで、西ロンドン系アーティストが多数所属していたレーベルLaws Of Motionと関わりを持ち、1997年に同レーベルより12"シングル「Starburst Over Orion」をリリースします。

その後何枚かのシングルをリリースした後、満を持して制作されたのがデビュー・アルバム『Modaji』(2000年)です。同作品はNeon Phusion『The Future Ain't the Same as It Used 2 B』(1999年)に続く、Laws Of Motionレーベルのアルバム・リリース第2弾でした。

『Modaji』以外にModaji名義では『Pre-Sets』 (日本のみ2000年リリース、UKでは2002年リリース)、『Excursions』 (2003年)、『Speaker Quake』 (2007年)といったアルバムをリリースしています。またHarvey Lindoのプロジェクト名義で『Kid Gloves: A Modaji Long Player』 (2005年)といったアルバムをリリースしています。

先日、たまたま家でCDを整理していたら、数年ぶり(?)に本作を見かけたので、"どんな作品だったっけ?"と思いながら久々に聴いてたら、かなり良かったのでエントリーすることにしました。

Neon Phusion『The Future Ain't the Same as It Used 2 B』や本作『Modaji』はリアルタイムで購入していましたが、当時はこれらのアーティストが"西ロンドン系"や"ブロークン・ビーツ系"に属しているなんて認識は全くありませんでした。従って、Neon PhusionとModajiの接点も全く知りませんでした。ライナーノーツを今読み返すと、そのあたりのことがきちんと書かれていますが、当時は殆ど読んでいなかったので(泣)なので、『Modaji』もハウス・アルバムに近いイメージを持っていたかも?

僕が久々に聴いて気に入った理由は、フロア仕様楽曲ばかりではなく、アーバン・ナイトなソウル・チューンやリラックスできるダウンテンポの楽曲なども含まれるアルバム全体の心地好さですかね。その意味ではトータルなクオリティを感じる内容に仕上がっています。

Neon Phusion2000BlackDKD、さらにはソロ活動も知られる西ロンドンを代表するプロデューサー/キーボード奏者Kaidi TathamReel Peopleのマルチ奏者Mike Pattoも参加しています。

意外にソウルを感じる1枚かもしれません。

全曲紹介しときやす。

「One And The Same」
オススメその1。いきなり"モダージ!アリガト!"という日本語が飛び出すオープニング。Marcus Beggのヴォーカルをフィーチャーした西ロンドンらしいクロスオーヴァー・チューンに仕上がっています。
http://www.youtube.com/watch?v=geP4eJ5_uH4

「Fuel For The Fire」
オススメその2。Jagの男声ヴォーカルをフィーチャー。クールな疾走感がたまらないクロスオーヴァーです。Danny Huckridgeのベースもグッときますね。

「Shook Up」
オススメその3。Cindy Brown、Iomi Brownのヴォーカルをフィーチャー。オーガニックな味わいにグッとくるダウンテンポのソウル・チューンに仕上がっています。

「Into Something」
オススメその4。Melissa Browneのヴォーカルをフィーチャー。トライバルなテイストのハウス・チューンですが、実に心地好く聴くことができます。

「No Disguise」
オススメその5。Jagのヴォーカルをフィーチャーしたジャジーな絶品ソウル・チューン。クールな質感の中にヒューマンな温もりを感じられるのがサイコー!
http://www.youtube.com/watch?v=gH_6VAQr9LU

「See The Changes」
オススメその6。Melissa Browneの女声ヴォーカルをフィーチャー。クールなメロディアスなアップ・チューン。アーバン・ナイトな疾走感にグッときます。

「Outside From The Inside」
オススメその7。Kaidi TathamとDominicのコラボ色が強いコズミック&ソウルフルなジャズ・ファンク・チューン。
http://www.youtube.com/watch?v=H5fBsE1E5Q0

「Sanctuary」
オススメその8。Mike Pattoが楽曲提供&キーボード&ベースで参加しています。アコースティックな味わいも加えたスタイリッシュなフューチャー・ジャズに仕上がっています。

「Rush」
オススメその9。Melissa Browneの女声ヴォーカルをフィーチャーしたソウルフルなミッド・グルーヴ。UKらしいアーバン・サウンドにグッときます。
http://www.youtube.com/watch?v=fK9fLC-h7hg

「Shocka's Joint」
ひたすら心地好い音世界が続くフューチャー・ジャズ。Sid Gauldの幻想的なトランペットが印象的です。
http://www.youtube.com/watch?v=gLW1IuIgMQU

「Shooklude」
ラストはKaidi Tathamのミステリアスなキーボードが響き渡ります。

殆どがオススメ曲になっていましたね(笑)
それだけ充実作ということで!

国内盤には「No Disguise(Instrumental)」「One And The Same(Ensign Mix)」「One And The Same(Remixed By Jazztronik Meets Everton Nelson)」の3曲がボーナス・トラックとして追加収録されています。

気になる方は他の関連作品もぜひチェックを!

『Pre-Sets』(2000年)
Pre-Sets

『Excursions』(2003年)
Speaker Quake

『Speaker Quake』(2007年)
Excursions

Harvey Lindo『Kid Gloves: A Modaji Long Player』(2005年)
Kid Gloves: A Modaji Long Player
posted by ez at 02:38| Comment(2) | TrackBack(0) | 2000年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする