2010年06月08日

Common Sense『Resurrection』

シカゴ・ラッパーの存在感を示した2nd☆Common Sense『Resurrection』
レザレクション(紙ジャケット仕様)
発表年:1994年
ez的ジャンル:シカゴ系ジャジー&ソウルフルHip-Hop
気分は... :これがCommonの存在感!

シカゴ出身の人気ラッパーCommonの6回目の登場です。

これまで当ブログで紹介してきたCommon作品は以下の5枚(発売順)。

 『One Day It'll All Make Sense』(1997年)
 『Like Water For Chocolate』(2000年)
 『Be』(2005年)
 『Finding Forever』(2007年)
 『Universal Mind Control』(2008年)

6枚目の紹介となるのは1994年リリースの2ndアルバム『Resurrection』です。本作はCommon Sense名義でのリリースです。

ファンの中では最高傑作に挙げる人もいる名盤ですね。
まぁ、Common作品は名盤だらけなので、人によって意見が分かれるでしょうね。

僕の場合、『One Day It'll All Make Sense』(1997年)、『Like Water For Chocolate』(2000年)、『Be』(2005年)あたりが一番好みです。勿論、『Resurrection』も間違いなく名盤だと思いますが・・・

本作『Resurrection』ですが、Hip-Hopシーンで馴染みの薄かったシカゴの存在感を示した作品としても重要かもしれませんね。

プロデュースはNo I.D.が殆どのトラックを手掛けています(2曲のみYnotプロデュース)。No I.D.が創り出すジャジー&ソウルフルなトラック群は、今聴いても素晴らしいの一言です。あとはMista Sinisterが随所でスクラッチを聴かせてくれます。

そんなトラックに負けないCommonのフロウも抜群です。彼のフロウにはリリックの内容がわからなくても、心に刺さる説得力がありますよね。

「Resurrection」「I Used To Love H.E.R.」 という2大クラシックをはじめ聴きどころ満載です。

Blue Noteを意識したようなダブルトーンの写真を使ったジャケもアルバムの雰囲気と合致してグッド!

シーンに一石を投じたジャジー&ソウルフルHip-Hopをご堪能下さい!

全曲紹介しときやす。

「Resurrection」
オススメその1。「I Used To Love H.E.R.」と並ぶ本作のハイライト。シングルにもなりました。当ブログでも紹介したAhmad Jamal「Dolphin Dance」ネタのピアノ・ループを使ったジャジー・トラックとCommonのフロウが見事に一体化したHip-Hopクラシック。Mista Sinisterの擦りも冴えています。
http://www.youtube.com/watch?v=x5btqEdt6gU

「I Used To Love H.E.R.」
オススメその2。本作のハイライトであり、問答無用のクラシック!George Benson「The Changing World」ネタのトラックにのって、Commonが商業主義に走った西海岸のHip-Hopシーンを皮肉ったリリックで嘆きます。そのせいでIce Cubeとひと悶着起きますが・・・。CommonのHip-Hop愛を示した本曲で彼に強く惹かれた人も多いのでは?
http://www.youtube.com/watch?v=C99iG4HoO1c

「Watermelon」
King Curtis「Sweet Inspiration」ネタのベースラインとThe New Apocalypse「Get Out of My Life, Woman」を使ったトラックがいい感じです。
http://www.youtube.com/watch?v=TLwirINj9Z4

「Book Of Life」
オススメその3。クールなトラックと共にCommonのリリックが鋭く突き刺さります。途中でThe Wailers「Get Up, Stand Up」のフレーズが飛び出すのがグッときますね。Roy Ayers「Everybody Loves the Sunshine」、Ultramagnetic MC's「Bust The Facts」ネタ。
http://www.youtube.com/watch?v=UbGwb10QBno

「In My Own World (Check The Method)」
オススメその4。ここではNo I.D.のラップも聴けます。ジャジー&ソウルフルな仕上がりにグッときます。Clyde McPhatter「Mixed Up Cup」、The Modern Jazz Quartet「But Not For Me」、Gary Burton「Las Vegas Tango」、A Tribe Called Quest「Keep It Rollin'」ネタ。
http://www.youtube.com/watch?v=_0aP1wjOt7E

「Another Wasted Nite With...」
約1分のインタールード的トラック。

「Nuthin' To Do」
Bernard Purdieのブレイクでお馴染みGary Burton「Leroy the Magician」とLiving Jazz「Walk On By」を使ったトラックと Commonのソウルフルなフロウがよくマッチしています。
http://www.youtube.com/watch?v=tIB4vcbKZVI

ここまでがEast Side of Stony、次曲以降がWest Side of Stonyとなります。

「Communism」
オススメその5。ジャジーHip-Hopファンは必聴の1曲ですね。1994年時点でこんなトラックを創っていたとは驚きです!Freddie Hubbard「The Surest Things Can Change」ネタ。
http://www.youtube.com/watch?v=BR-xo9Td7eM

「WMOE」
ボクシングの偉大な世界王者であったMohammed Aliの声をフィーチャーしたインタールード。Cannonball Adderley「Capricorn」ネタ。

「Thisisme」
オススメその6。この曲も人気の高いですね。トラック、フロウ共に格好良さではアルバムNo.1だと思います。リリシズム漂う感じがグッときますな。Paul McCartney「Momma Miss America」 、Alton Mcclain & Destiny「The Power Of Love」、Boogie Down Productions「Build and Destroy」ネタ。
http://www.youtube.com/watch?v=H6EB3z5cUHE

「Orange Pineapple Juice」
哀愁漂うジャジー・チューン。Erick Sermon Feat. Keith Murray「Hostile」ネタ。
http://www.youtube.com/watch?v=ZXCxXaLoRiQ

「Chapter 13 (Rich Man Vs. Poor Man)」
Ynotがプロデュース&ラップで参加。Archie Whitewater「Cross Country」ネタ。
http://www.youtube.com/watch?v=ywVRX2jE8wg

「Maintaining」
小粋なピアノ・ループのトラックがいい感じです。A Tribe Called Quest「Scenario (Remix)」ネタ。
http://www.youtube.com/watch?v=LQHA6sQyB4s

「Sum Shit I Wrote」
Ynotプロデュース。ダークなトラックとMista Sinisterのスクラッチが印象的です。

「Pop's Rap」
ラストはCommon作品でお馴染み父Lonnie Lynnがフィーチャーされています。Lenny Underwoodの小粋なピアノにのってCommonパパが語りかけます。

年内リリースが予定されている新作も楽しみですね。

他作品の過去記事もご参照下さい。

『One Day It'll All Make Sense』(1997年)
ワン・デイ・イトゥル・オール・メイク・センス

『Like Water For Chocolate』(2000年)
Like Water For Chocolate

『Be』(2005年)
Be

『Finding Forever』(2007年)
Finding Forever

『Universal Mind Control』(2008年)
Universal Mind Control
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2010年06月07日

Odyssey『Odyssey』

ダンス・クラシック「Native New Yorker」 収録☆Odyssey『Odyssey』
Odyssey / Native New Yorker
発表年:1977年
ez的ジャンル:摩天楼系ディスコ/ソウル/ポップ
気分は... :摩天楼系のOdysseyです!

ニューヨークを拠点に活動していたソウル/ディスコ・グループOdysseyのデビュー・アルバム『Odyssey』(1977年)です。今年嬉しい初CD化が実現しました。

当ブログでは、以前に「Battened Ships」「Our Lives Are Shaped by What We Love」といったフリーソウル・クラシックでお馴染みの白人黒人混成の7人組グループのOdysseyも紹介しましたが、同名なのでややこしいですね。

今日紹介するOdysseyはニューヨークで結成されたソウル/ディスコ・グループ。メンバーは米国領バージン諸島出身のLillian LopezLouise LopezのLopez姉妹とフィリピン出身の男性シンガーTony Reynoldsの3人。

元々はLillian、Louise、Carmenの3姉妹がLopez Sistersとして活動していましたが、Carmenが結婚してグループを脱退し、新たにTony Reynoldsが加入したのを機にグループ名をOdysseyと改名しました。

1977年に今日紹介するデビュー・アルバム『Odyssey』をリリース。シングルカットした「Native New Yorker」 は全米チャート第21位、同R&Bチャート第6位、全英チャート第5位のヒットとなりました。

その後『Hollywood Party Tonight』(1978年)、『Hang Together』(1980年)、『I Got The Melody』(1981年)、『Happy Together』(1982年)といったアルバムをリリースし、「If You're Lookin' For a Way Out」「Don't Tell Me, Tell Her」「Use It Up and Wear It Out」「Hang Together」「Going Back to My Roots」「Inside Out」等のヒットを生んでいます。チャート・アクション的にはUKでの人気が高かったようですね。

本作『Odyssey』のみでTony Reynoldsが脱退し、代わってBill McEachernが加入し、1982年まで活動を続けていたようです。その後はLillian Lopez,Al JacksonSteven Collazo(Lillian Lopezの息子)の3名体制となり、アルバム『Joy』(1985年)をリリースしますが、そのまま活動休止となりました。しかしながら、2011年にSteven Collazoを中心に活動再開し、復活アルバム『Legacy』(2011年)をリリースしています。

本作『Odyssey』ですが、プロデュース&アレンジはSandy LinzerCharlie Calelloが務めています。ソングライティングもSandy Linzer/Denny Randellの強力コンビが全8曲中6曲を手掛けています(残り2曲はRalph Kotkow作)。

レコーディングには、Cornell Dupree(g)、Hugh McCracken(g)、Jeff Mironov(g)、John Tropea(g)、Gordon Edwards(b)、Will Lee(b)、Charles Collins(ds)、Terry Silverlight(ds)、 Charlie Calello(key)、Pat Rebillot(key)、Richard Tee(key)、Dave Carey(vib、marimba)、Michael Brecker(reeds)、Randy Brecker(tp)、Arnold McCuller(vo)、David Lasley(vo)等の敏腕ミュージシャンが参加しています。

やはりハイライトはフリーソウル・ファンにもお馴染みのダンス・クラシック「Native New Yorker」ですね。多分、本作を購入する殆どの人がこの1曲目当てと言っても過言ではないのでは?勿論、僕もそうです。

「Native New Yorker」の存在感が突出しているせいでディスコ・アルバムのイメージが強いですが、アルバム全体としてはポップな印象も強いですね。

その意味ではハイライトとなる「Native New Yorker」と、それ以外の曲を切り離して聴いた方が楽しめるのでは?

全曲紹介しときやす。

「Native New Yorker」
前述の通り、本作のハイライトとなるアーバン・ディスコ。ニューヨークの摩天楼の華やかな雰囲気をそのままディスコ・サウンドにした感じがたまりません。このあたりのSandy Linzer、Charlie Calelloの手腕はさすがですね。
http://www.youtube.com/watch?v=W9M6gXIqlfI

オリジナルとセットでFrankie Valli、Esther Phillips、Black Boxのカヴァーもチェックするとさらに楽しめると思います。
Frankie Valli「Native New Yorker」
 http://www.youtube.com/watch?v=WM6YZIJi1Yo&feature=fvw
Esther Phillips「Native New Yorker」
 http://www.youtube.com/watch?v=q_9f9LieNF4
Black Box「Native New Yorker」
 http://www.youtube.com/watch?v=I-fplUX7uD4

「Ever Lovin' Sam」
味わい深いミディアム・スロウ。哀愁モードですが前向きな雰囲気がいいですね。
http://www.youtube.com/watch?v=T5hLuF4pxvs

「Weekend Lover」
「Native New Yorker」に続くシングル曲。「Native New Yorker」のような華やかさはありませんが、ほのぼの和む感じがいいですね。
http://www.youtube.com/watch?v=bgqo5_V3Fqw

「You Keep Me Dancin'」
しっとりと歌われるバラード。聴き返すうちに感動が増してきます。

「The Woman Behind The Man」
鳥の囀りと始まるメロウ・チューンと思いきや、中盤以降はエスニックな雰囲気に様変わりします。

「Easy Come, Easy Go/Hold De Mota Down」
小粋なサウンドが魅力のアーバン・グルーヴ。敏腕ミュージシャン達ならではのバッキングにグッときます。
http://www.youtube.com/watch?v=sPNMeuBUEZ8

「Golden Hands」
親しみやすいメロディ&サウンドが魅力の1曲。ポップス好きの人がグッとくる仕上がりです。

「Thank You God For One More Day」
最後は神への感謝で締め括ります!ポジティブな雰囲気がいい感じのポップ・チューンに仕上がっています。

CDにはボーナス・トラックとして、「Native New Yorker (12" Disco Remix) 」「Weekend Lover (7" Remix) 」という2曲のリミックスが収録されています。
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2010年06月06日

Stefania Rava『The Sweetest Sound』

期待のイタリア人女性ジャズ・シンガー☆Stefania Rava『The Sweetest Sound』
The Sweetest Sound
発表年:2010年
ez的ジャンル:イタリアン女性ジャズ・ヴォーカル
気分は... :選曲センスが抜群!

今回は期待のイタリア人女性ジャズ・シンガーStefania Ravaの新作『The Sweetest Sound』です。

Stefania Ravaはイタリア、パルマ出身。アメリカで修業を積み、イタリアへ帰国後は大御所ピアニストRenato Sellaniの作品への参加や有力ジャズ・フェスティバルへの参加などで注目されるようになります。

そして、イタリア・ジャズ界の仕掛人の一人Paolo Scotti(Deja Vu Records主宰)がプロデューサーとして手腕を振るう注目レーベルNorma Bluとの契約に成功します。そして、昨年デビュー・アルバム『Send In The Crowns』がリリースし、確かな実力を持つヴォーカルとクール&モーダルなサウンドでクラブジャズ・ファンを歓喜させてくれました。

本作『The Sweetest Sound』は『Send In The Crowns』に続く2ndアルバムとなります。勿論プロデュースはPaolo Scottiです。

Andrea Pozza(p)、Aldo Zunino(b)、Shane Forbes(ds)というAndrea Pozza Trioがバックを務め、さらにゲストとしてイタリアの新進アルトサックス奏者Mattia Cigaliniが参加しています。Andrea Pozzaはidea6にも参加していましたね。

中身の方ですが、まずは選曲センスが抜群ですね。

Madeline BellMilton NascimentoJoe SampleCrusaders、Dexter Wansel、Joanne Grauer & Lorraine Feather、Sly & the Family、Judy Roberts、Stevie Wonder、といった名前を眺めるだけでワクワクするアーティストの人気曲を取り上げています。

オリジナルの雰囲気も引き継いでいる曲もあれば、ガラっと雰囲気を変えた新たな魅力で聴かせてくれる楽曲もあり、オリジナルと聴き比べるのも楽しい1枚です。

イタリアらしい小粋に洗練されたヴォーカル&演奏もたまりません。特にStefania Ravaのヴォーカルの存在感が素晴らしく、有名曲やバックの演奏に埋もれていないのがいいですね。

強力にプッシュしたいクラブジャズ作品です。

全曲紹介しときやす。

「That's What Friends Are For」
本作のキラー・チューンはこのオープニングでしょう!当ブログでも紹介したMadeline Bellによるフリーソウル・クラシックのカヴァーです(オリジナルはアルバム『This Is One Girl』収録)。イタリアらしい小粋なジャズ感覚に溢れたブラジリアン・グルーヴに仕上がっています。

Madeline Bell「That's What Friends Are For」
 http://www.youtube.com/watch?v=zlItxxAVKDA

「Burning Up The Carnival」
Joe Sampleによる人気ブラジリアン・フュージョンのカヴァー(オリジナルは『Voices in the Rain』収録)。ブラジリアン・テイストながらもフュージョンっぽくならず、スウィンギーにジャズしているのが印象的です。

Joe Sample「Burnin' Up The Carnival」
 http://www.youtube.com/watch?v=M1oMI0NoDZk

「Empty Faces」
Milton Nascimentoの名曲カヴァー(原題 「Vera Cruz」)。Miltonのオリジナルは『Courage』(1968年)に収録されています。当ブログではElis ReginaSergio Mendes & Brasil '66のカヴァーも紹介済みです。神秘的なMiltonワールドをStefaniaが見事に歌い切っています。小粋に疾走するバックの演奏もグッド!Mattia Cigaliniのサックス・ソロも盛り上げてくれます。

「Snowflake」
Joe Sample作品カヴァーの2曲目(オリジナルはCrusaders『Images』収録)。個人的にはオリジナル以上に好きですね。一気に突っ走るスピード感がたまりません。ここでのStefaniaはバックの演奏と一体化した素晴らしいスキャットを披露してくれます。

Crusaders「Snowflake」
 http://www.youtube.com/watch?v=ZD4wyo2FQ0w

「The Sweetest Pain」
Terri WellsのヴォーカルをフィーチャーしたDexter Wanselの人気フィリー・メロウのカヴァー(オリジナルは『Time is Slipping Away』収録)。オリジナルは"スウィート"よりも"メロウ"という表現が似合いましたが、落ち着いた雰囲気の本カヴァーは"スウィート"という表現がピッタリです。オリジナルとは異なる魅力を持った絶品カヴァーだと思います。

Dexter Wansel「The Sweetest Pain」
 http://www.youtube.com/watch?v=PctLKcvYLGk

「Can't Sleep」
人気ジャズ・サンバ「See You Later」も入っているJoanne Grauer『Introducing Lorraine Feather』(1977年)収録曲のカヴァー。ヒップな仕上がりにかなりグッときます。演奏自体はアルバムで一番好きかもしれません。

「Family Affair」
Sly & the Familyの名曲カヴァー。ジャズ・カヴァーの「Family Affair」もなかなか乙なもんですよ!Pozzaのピアノが冴えています。

「Never Was Love」
Judy Robertsヴァージョンでお馴染みの人気曲をカヴァー(Russ Long作)。Judy Robertsヴァージョンは『Judy Roberts Band』に収録されています。Judy Robertsヴァージョンがお好きな人ならば気に入るはず!むしろ、聴きやすさという点では本ヴァージョンの方が馴染みやすいのでは?

「The Sweetest Sound」
タイトル曲はビター・スウィートな雰囲気がグッドな大人のワルツ・チューンです。Mattia Cigaliniのフルートも印象的です。Ben Bernie /Kenneth Casey /Maceo Pinkard作。

「Ordinary Pain」
ラストは名盤『Songs In The Key Of Life』収録のStevie Wonder作品をカヴァー。楽曲の新たな魅力を示してくれるエレガントな仕上がりにグッときます。

1st『Send In The Crowns』(2009年)もぜひチェックを!

『Send In The Crowns』(2009年)
Send In The Crowns
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2010年06月05日

Diane Denoir/Eduardo Mateo『Ineditas』

ウルグアイ産ボッサの名盤☆Diane Denoir/Eduardo Mateo『Ineditas』
イネディタス
録音年:1966、67、68年
ez的ジャンル:ウルグアイ産ボッサ
気分は... :アンニュイ&クール!

今回はウルグアイ産ボッサの名盤Diane Denoir/Eduardo Mateo『Ineditas』です。

Eduardo Mateo(1940-1990年)はウルグアイを代表する偉大なギタリスト、作曲家でした。本国ウルグアイのみならず、ブラジル、アルゼンチンでも高い評価を受けていたようです。

そのEduardo Mateoが同じくウルグアイ人の女性シンガーDiane Denoirと1966〜68年にレコーディングした作品集が『Ineditas』です。

1998年にリリースされると、その方面で評判となり、瞬く間にウルグアイ産ボッサの名盤と称されるようになった作品です。

ウルグアイと聞いて、通商交渉(ウルグアイ・ラウンド)やサッカー(エンツォ・フランチェスコリ好きでした!)くらいしか思い浮かばない僕にとって、ウルグアイの音楽シーン、ミュージシャンというのは全く未知の世界であり、その意味でも興味深く聴くことができた作品でした。

本作ではDiane Denoirのヴォーカルを前面に押し出し、Eduardo Mateoはサポート役に徹しています。その意味では他のEduardo Mateo作品とは異なる雰囲気の作品なのかもしれません。

レコーディングにはEduardo Mateo、Diane Denoir以外に、Mateoも参加していたサイケ・グループEl Kintoのメンバーや同じくウルグアイのグループLos Malditosのメンバー等が参加しています。

アルバムは大きく、Diane Denoir/Eduardo Mateoのオリジナル、Antonio Carlos Jobim、Baden Powell、Marcos Valleの名曲カヴァー、フランス語ヴォーカルによるフレンチ・ポップのカヴァーの3つに分かれています。その意味で"ウルグアイ産ボッサ"という括り以上の拡がりを持った内容になっています。

とにかくDiane嬢のアンニュイ&クールなヴォーカルが魅力です。
この独特の空気感がクセになる1枚です。

全曲紹介しときやす。

「Je Suis Sans Toi (Estoy Sin Ti)」
オススメその1。オープニングはフランス語で歌われますが、Eduardo Mateo/Diane Denoirのオリジナルです。Diane嬢の気だるいフレンチ・ヴォーカルとサイケな雰囲気が漂う独特のボッサ・サウンドがクセになります。このあたりはサイケ・サウンドにもアプローチしていたEduardo Mateoらしい仕上がりなのでは?

「Rendez-Vous D'automne (Cita De Otono)」
オススメその2。Francoise Hardyも歌っていたフレンチ・ポップのカヴァー(Jean-Max Riviere/Gerard Bourgeois)。Diane嬢のヴォーカルとMateoのギターのみのシンプルな演奏ですが、寂しげな雰囲気がグッとくる素晴らしい仕上がりです。

「La Derniere Valse (El Ultimo Vals)」
Engelbert Humperdinckの大ヒット曲「The Last Waltz」(Barry Mason/Les Reed)のフレンチ・カヴァー。その意味では最初にフレンチ・ヴァージョンを歌ったMireille Mathieuヴァージョンのカヴァーと言うべきかもしれませんが。パリの街角が思い浮かぶ小粋な仕上がりです。

「Le Lendermain (El Manana)」
Antoine & Les Problemesのカヴァー(Gerard Filipelli/Gerard Rinaldi作)。哀愁モードの仕上がりです。Mateoのギターがいいですね。

「Un Amour, Un Sourire, Une Fleur (Meditacion)」
オススメその3。Antonio Carlos Jobim作品の1曲目(Antonio Carlos Jobim/Newton Mendonca作)。フランス語&英語で歌われます。Diane嬢の気だるいヴォーカルがモロにハマる曲ですね。

「Corcovado」
Antonio Carlos Jobim作品の2曲目。これまで当ブログではJoanie SommersCannonball AdderleyWanda Sa(Wanda De Sah)Mario Castro-Neves & Samba S.A.のヴァージョンを紹介済みです。。本ヴァージョンはDiane嬢のクールなヴォーカルが醸し出すヒンヤリ感がたまりません。

「Agua De Beber (Agua De Beber)」
オススメその4。Antonio Carlos Jobim作品の3曲目(Antonio Carlos Jobim/Vinicius de Moraes作)。邦題「おいしい水」。当ブログではこれまでSergio Mendes & Brasil'66Wanda Sa(Wanda De Sah)のヴァージョンを紹介済みです。本ヴァージョンはクールな疾走感が魅力です。格好良さという点では、数ある本曲のカヴァーの中でも上位に入る出来栄えなのでは!

「Berimbau」
Baden Powell/Vinicius de Moraes作の名曲をカヴァー。当ブログでは以前にLennie Dale & Sambalanco Trioのヴァージョンを紹介しています。Mateoのギターを堪能できます。

「Vivo Sonhando (Vivo Sonando)」
Antonio Carlos Jobim作品の4曲目。当ブログでは以前にWanda Sa(Wanda De Sah)のヴァージョンを紹介済みです。本ヴァージョンはライブ・レコーディングになっています。

「Fever (Fiebre)」
数多くのアーティストがカヴァーしているR&Bの名曲をカヴァー(Eddie Cooley/John Davenport作)。本ヴァージョンも前曲同様ライブ・レコーディングになっています。

「Garota De Ipanema (La Chica De Ioanema)」
Antonio Carlos Jobim作品の5曲目(Antonio Carlos Jobim/Vinicius de Moraes作)。名曲「イパネマの娘」のカヴァー。当ブログではTamba TrioAgustin Pereyra Lucenaのカヴァーも紹介済みです。本ヴァージョンはさり気ないサラっとした仕上がりが印象的です。

「So Nice (Sombra De Verano)」
Marcos Valle/Paulo Sergio Valle作の名曲カヴァー。当ブログではAstrud Gilberto/Walter Wanderley TrioBebel Gilbertoのヴァージョンを紹介済みです。どうしてもAstrud Gilbertoのキュートなヴォーカルのイメージが強い曲ですが、Diane嬢のクール・ヴォイスもなかなかグッドですよ!

「Las Flores Nuevas」
オススメその5。Eduardo Mateo作。ワルツ調の仕上がりが実に心地よいです。

「Y Hoy Te Vi」
Eduardo Mateo作。楽曲が素晴らしいですね。それだけにもっと良い録音状態で聴きたい気もします。

「Esa Tristeza」
オススメその6。Eduardo Mateo作。軽快なバックとDiane嬢の気だるいヴォーカルのギャップが逆にいい感じです。

「Mejor Me Voy」
Eduardo Mateo作。Diane嬢の寂しげなヴォーカルにグッときます。

他のEduardo Mateo作品もチェックしてみたいですね。

Eduardo Mateo『Mateo Solo Bien Se Lame』(1972年)
Mateo Solo Bein Se Lame

※上記のオリジナル・ジャケはコチラ(色使いは異なりますが)
マテオ・ソロ

Eduardo Mateo/Jorge Trasante『Mateo Y Transante』(1976年)
Mateo Y Transante

El Kinto『Circa 1968』(1968年)
エル・キント
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2010年06月04日

『ジャケット・アートの世界〜Abdul Mati Klarwein編』

今日は記事作成の時間が殆どないので、久々に"ジャケット・アートの世界"です。

Jackie McLean『Demon's Dance』の記事で紹介したドイツ出身の画家Abdul Mati Klarwein(1932-2002年)の作品を集めてみました。

Abdul Mati Klarweinはドイツのハンブルグ生まれ。1934年にパレスチナへ移民しています。世界各地への旅を続ける放浪の人生を送っていたようで、彼の作品にはその影響が色濃く反映されています。

一度観たら忘れない、ドキッとするジャケが多いですよね。
個人的には、神の啓示を描いたような神秘的な作風に惹かれます。

特にMiles Davis『Blue Mode』あたりはジャケとサウンドのイメージが見事に合致していますね。

CDサイズではなくLPサイズで鑑賞したい作品です。

Jackie McLean『Demon's Dance』(1968年)
デモンズ・ダンス

Reuben Wilson『Blue Mode』(1969年)
Blue Mode

Miles Davis『Bitches Brew』(1969年)
ビッチェズ・ブリュー

Miles Davis『Live-Evil』(1970年)
ライヴ・イヴル

Santana『Abraxas』(1970年)
天の守護神

Buddy Miles『Live』(1971年)
Live

The Last Poets『This Is Madness』(1971年)
This Is Madness

Earth, Wind & Fire『Last Days and Time』(1972年)
Last Days and Time

Osibisa『Heads』(1972年)
Heads

Gregg Allman『Laid Back』(1973年)
Laid Back

ここに挙げた10枚はジャケのみならず内容も充実しているものばかりです。僕が保有するのは2/3程度ですが、残りの作品もぜひゲットしたいですね。
posted by ez at 13:01| Comment(2) | TrackBack(2) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする