2010年06月26日

Toots Thielemans & Elis Regina『Aquarela Do Brasil』

女王ElisとハーモニカおじさんThielemansの共演作☆Toots Thielemans & Elis Regina『Aquarela Do Brasil』
ブラジルの水彩画
発表年:1969年
ez的ジャンル:MPBの女王
気分は... :16強を眺めると・・・

サッカーW杯はベスト16が出揃いましたね。

昨日、日本の16強入りに大興奮したのは勿論ですが、優勝候補に挙げていたスペインが何とか勝ち上がったことに安堵しています。特にグループ1位通過で良かったですね。2位通過だとトーナメント1回戦でブラジルと対戦する羽目になっていたので・・・

改めて16ヶ国の顔ぶれを眺めると、やはり日本の16強入りが一番のサプライズかもしれませんね。

決勝トーナメントで興味深いのは、韓国、ウルグアイ、ガーナ、米国が入っているブロック。この4ヶ国の中からベスト4が必ず出ることになり、波乱が続く今大会の象徴となるのでは?

MPBの女王Elis Reginaの5回目の紹介です。

これまで紹介してきたElis Regina作品は以下の4枚。

 『Elis, Como e Porque(Como & Porque)』(1969年)
 『Elis Regina in London』(1969年)
 『Em Pleno Verao』(1970年)
 『Elis』(1974年)

今回紹介するのはジャズ・ハーモニカ奏者Toots Thielemans & Elis Reginaとの共演作『Aquarela Do Brasil』(1969年)です。

Toots Thielemansは1922年ベルギー、ブリュッセル生まれ。1950年代より活躍するジャズ・ハーモニカの第一人者です。ジャズ/フュージョンに限らず、ポップス、ロック、R&B、ブラジルなど幅広いフィールドのセッションにも参加しており、多くの音楽ファンにその名を知られている"ハーモニカおじさん"です。

1969年のElisと言えば、当ブログでも紹介した『Elis Regina in London』『Elis, Como e Porque(Como & Porque)』といった現在でも人気の高い作品をリリースしていた時期であり、本作『Aquarela Do Brasil』にもそんなElisの勢いと充実ぶりを感じます。

収録された12曲のうち、Elisのヴォーカル入りは8曲。残りの4曲はThielemansのハーモニカ・口笛等をフィーチャーしたインストであり、Elisのヴォーカル入り8曲もThielemanが参加しているのは4曲です。その意味で実質的な共演は4曲のみであり、それらを中心にElisのヴォーカル曲とThielemansのインスト曲を収めた変則的な共演アルバムになっています。

また、Elisのヴォーカル入り8曲のうち7曲は、『Elis Regina in London』又は『Elis, Como e Porque(Como & Porque)』と選曲が重なっています。

このように書くと中途半端なアルバムのように誤解されそうですが、なかなか侮れない魅力的な1枚に仕上がっています。特に選曲が重なった7曲は、アレンジでかなり異なる雰囲気の演奏も多くかなり楽しめます。

バックはRoberto Menescal(g)、Antonio Adolfo(p)、Jurandir Meirelles(b)、Wilson Das Neves(ds)、Hermes Contesini(per)というElisのヨーロッパ・ツアーのメンバーが務めています。

存在感のあるElisのヴォーカルと優しく包み込むThielemansのハーモニカ・口笛を1枚で楽しめる作品です。

ジャケは冬モードですが、中身は今の時期にマッチしていると思います。

全曲紹介しときやす。

「Wave」
ElisとThielemansとの共演1曲目。オープニングはAntonio Carlos Jobimの名曲カヴァー。『Elis Regina in London』でも歌われていました。リズミックな躍動感が印象的であった『Elis Regina in London』ヴァージョンと比較すると、メリハリのある落ち着いた仕上がりです。笑い声混じりのElisのヴォーカルからはセッションを楽しんでいる様子が伝わってきます。
http://www.youtube.com/watch?v=V1M7nzKTstM

「Aquarela Do Brasil/Nega Do Cabelo Duro」
タイトル曲「Aquarela Do Brasil(邦題:ブラジルの水彩画)」(Ary Barroso作)と「Nega Do Cabelo Duro」(Rubens Soares/David Nasser作)のメドレー。『Elis, Como e Porque(Como & Porque)』でもこのメドレーが歌われていました。オーケストレーションをバックにウエットなヴォーカルが印象的であった『Elis, Como e Porque(Como & Porque)』ヴァージョンと比較すると、バック・バンドと息の合ったElisのヴォーカルを楽しむことができます。

「Visao」
Thielemansのインスト1曲目。Tiberio Gaspar/Antonio Adolfo作。郷愁感を誘うハーモニカの音色が実に味わい深いですね。

「Corrida De Jangada」
Capinan/Edu Lobo作。『Elis Regina in London』でも歌われていました。『Elis Regina in London』ヴァージョンに近い仕上がりですが、オーケストレーションが入っていない分、元気一杯のElisのヴォーカルをすっきり聴くことができます。

「Wilsamba」
Thielemansのインスト2曲目。Roberto Menescal作。Thielemansがハーモニカのみならず素晴らしい口笛を披露してくれます。

「Voce」
ElisとThielemansとの共演2曲目。『Elis Regina in London』でも歌われていたお馴染みの1曲(Roberto Menescal/Ronaldo Boscoli作)。華やかであった『Elis Regina in London』ヴァージョンと比較すると、シンプルな演奏が印象的な大人の仕上がりです。Roberto Menescalのギターと共にElisのヴォーカルを包み込むThielemansの口笛が実に印象的です。
http://www.youtube.com/watch?v=7EpnVN4ni-A

「O Barquinho」
ElisとThielemansとの共演3曲目。『Elis, Como e Porque(Como & Porque)』及び『Elis Regina in London』でも歌われたRoberto Menescal/Ronaldo Boscoli作の名曲です(邦題「小舟」)。躍動感が印象的であったそれら2枚のヴァージョンとは対照的に、ここではしっとりとした「小舟」を聴かせてくれます。

「O Sonho」
『Elis, Como e Porque(Como & Porque)』でも歌われたEgberto Gismonti作品。『Elis, Como e Porque(Como & Porque)』ヴァージョン同様のスピード感のある仕上がりですが、メリハリのつけ方が異なるあたりが興味深いですね。

「Five For Elis」
Thielemansのインスト3曲目(Thielemansのオリジナル)。映画のサントラにでもありそうな格好良い仕上がりです。

「Canto De Ossanha」
Baden Powell/Vinicius De Moraes作。『Elis, Como e Porque(Como & Porque)』でも歌われていました。それ以外にも当ブログではTamba 4Quarteto Em CyLill Lindforsのカヴァーを紹介済みです。

この曲の持つミステリアスな雰囲気と中盤の曲の表情が一変する瞬間が大好きです。本ヴァージョンでは『Elis, Como e Porque(Como & Porque)』同様にクールながらもスケールの大きなヴォーカルを聴かせてくれます。

「Honeysuckle Rose」
Andy Razaf/Thomas Waller作。ElisのヴォーカルもThielemansのハーモニカ・口笛も入っておらず、男声スキャットの入ったインスト。もしかしてこのスキャットがThielemans?よくわかりません。

「A Volta」
ElisとThielemansとの共演4曲目。『Elis Regina in London』でも歌われていたRoberto Menescal/Ronaldo Boscoli作品。エレガントなオーケストレーションが印象的であった『Elis Regina in London』ヴァージョンと比較すると、ElisのヴォーカルにThielemansのハーモニカが寄り添う切ない雰囲気にグッときます。
http://www.youtube.com/watch?v=LEYID7k51FA

Elis Regina作品の過去記事もご参照下さい。

『Elis, Como e Porque(Como & Porque)』(1969年)
コモ・イ・ポルケ+4

『Elis Regina in London』(1969年)
イン・ロンドン

『Em Pleno Verao』(1970年)
エン・プレノ・ヴァラオン

『Elis』(1974年)
人生のバトゥカーダ
posted by ez at 14:00| Comment(2) | TrackBack(0) | 1960年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする