2010年07月25日

Marcos Valle『Esphera』

久々のソロ新作はBlueyの息子がプロデュース!☆Marcos Valle『Esphera』
ESPHERA
発表年:2010年
ez的ジャンル:ブラジル最高のメロディ・メーカー
気分は... :根拠のない自信!

ブラジルを代表するシンガー・ソングライターMarcos Valle、待望の新作『Esphera』です。

当ブログでこれまで紹介したMarcos Valle作品は以下の4枚。

 『Vento Sul』(1972年)
 『Previsao Do Tempo』(1973年)
 『Vontade De Rever Voce』(1981年)
 『Pagina Central』(2009年) ※Celso Fonsecaとの共演作

『Esphera』はソロ作としては『Contrasts』(2003年)以来、約7年ぶりの新作となります。

本作のプロデュースを務めるのはDJ Venomとしても知られるDaniel Maunick。数日前紹介したIncognitoのリーダーJ.P. "Bluey" Maunickの息子です。

当ブログでは以前にDanielのプロデュースしたSabrina Malheiros『New Morning』(2008年)を紹介しています。"21世紀ボッサ"と呼ぶに相応しいクラブ・テイストのサンバ/ボッサ・サウンドの『New Morning』『ezが選ぶ2008年の10枚』に選ぶほどのお気に入り作品でした。Sabrinaの1st『Equilibria』(2005年)もDanielがプロデュースしています。

ちなみに前述のSabrina Malheirosの2枚のアルバムは、本作と同じJoe Davisが運営するFar Out Recordingsからのリリースです。本作『Esphera』でもJoe Davisはエグゼクティブ・プロデューサーとしてクレジットされています。

Sabrina Malheirosは、Azymuth(Azimuth)のベーシストAlex Malheirosの娘であり、AzimuthはかつてMarcosのバック・バンドを務めていました。そのように考えると、DanielがMarcosをプロデュースするというのは何か不思議な縁を感じます。

Daniel Maunickのような若い才能に自身のアルバムを任せるMarcosの姿勢に感心させられます。こうした感性があるからこそ、いつまでも若々しい作品を創り続けることができるのでしょうね。そうしたことも含めてFar Out Recordingsからアルバムを出しているだと思いますが。

レコーディング・メンバーはMarcos Valle(vo、key、g)以下、Mazinho Ventura(b)、Renato Massa(ds)、Robertinho Silva(per)、Julio Diniz(per)、Patricia Alvi(vo)といったレギュラー・メンバーに加え、Marcelo Camelo(g)がゲスト参加しています。

Marcelo Cameloは、リオ出身の人気ロックバンドLos Hermanosのリーダーであり、当ブログではMaria Rita作品で何度か紹介しています。本作では演奏以外にソングライティング面でもMarcosと3曲で共作しています。

"円熟"なんて言葉は無縁!いつまでも若々しいMarcosのセンスを堪能しましょう!

全曲紹介しときやす。

「Vamos Sambar」
Marcos Valle/Marcelo Camelo作。ストリングスも含めてスケールの大きさを感じるオープニング。メリハリの効いた展開がいいですね。

「Na Pista」
Marcos Valle/Ronaldo Bastos作。僕好みの1曲。メロディアスかつリズミック!Marcos Valleワールドを存分に堪能できます。

「Prefixo」
Marcos Valle作。Danielのアイデアで『Vento Sul』収録の「Democustico」エッセンスを取り入れた仕上がりになっています。「Democustico」はクラブ方面から人気のある楽曲ですね。個人的にはSerge Gainsbourgっぽい雰囲気の曲という印象が強いですが・・・。そんな「Democustico」からクラブ系リスナーがグッとくる要素を抽出して、2010年版Marcos Valleサウンドに上手く取り入れた仕上がりです。まさにプロデューサーにDanielを起用した成果の1つでしょう。

「Papo De Maluco」
Marcos Valle/Joyce作。一瞬Joyceとのデュエットか?なんて期待してしまいましたが、女声ヴォーカルはPatricia Alviです。逆にPatriciaの方がMarcosの公私にわたるパートナーなので呼吸はピッタリですが。アルバムの中では最もキャッチーな夏向けの1曲だと思います。

「Eu Vou」
Marcos Valle/Marcelo Camelo作。それほど派手な曲ではありませんが、アルバムで一番完成度が高い曲という気がします。個人的にはアルバムで一番のお気に入りです。夏の夕暮れに聴きたいですね。Mazinho Venturaのベースが効いています。

「Estatica」
Marcos Valle作。Marcosのリズミックなピアノに誘われるインスト。ホーン・セクションも入ったクラブ・テイストのサンバ・チューンに仕上がっています。Danielの手腕が存分に発揮されていますね。

「Novo Acorde」
Wanda Sa/Marcos Valle/Paulo Sergio Valle作。哀愁モードのアコースティック・チューン。ロマンティックなストリングス・アレンジもグッド!

「Baiao Maracatu」
Marcos Valle/Ronaldo Bastos作。どこかミステリアスな雰囲気が漂います。この打ち水のようなヒンヤリ感はでも猛暑の昼間に聴くといいかも?

「Arranco Toco」
Marcos Valle/Paulo Sergio Valle作。淡々としたクール・サウンドをバックに、Marcosがラップのようなヴォーカルを聴かせてくれます。聴けば聴くほど面白さを感じる1曲です。

「Esphera」
Marcelo Camelo/Marcos Valle作。タイトル曲はMarcelo Cameloのギター・ソロをフィーチャー。そこへMarcosとPatriciaの男女スキャットが絡んできます。



Marcos Valleの過去記事もご参照下さい。

『Vento Sul』(1972年)
ヴェント・スル

『Previsao Do Tempo』(1973年)
Previsao Do Tempo

『Vontade De Rever Voce』(1981年)
ヴォンタージ・ジ・レヴェール・ヴォセ

『Pagina Central』(2009年)
パジナ・セントラウ [ボーナス・トラック付]
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2010年07月24日

Jean Carn『Jean Carn』

人気曲「Free Love」を含むPIR第一弾アルバム☆Jean Carn『Jean Carn』
ジーン・カーン(紙ジャケット仕様)
発表年:1977年
ez的ジャンル:フィリー・ソウルの歌姫
気分は... :自分で解決しないとね!

今回はフィリー・ソウルの歌姫Jean CarnのPIR第一弾アルバム『Jean Carn』(1977年)です。

Jean Carn(本名:Sarah Jean Perkins)は1947年ジョージア州コロンバス生まれ。

幼い頃から音楽を学んでいたJeanでしたが、本格的に音楽の道を志すようになった頃に、ジャズ・ピアニストDoug Carnと出会い、程なく公私に渡るパートナーとなった二人は結婚し、Black Jazzレーベルから3枚のアルバムをリリースします。そのうちの1枚『Revelation』(1973年)は当ブログでも紹介済みです。また、Earth,Wind & Fireの最初の2枚のアルバムでもJeanの声を聴くことができます。

Doug Carn feat.Jean Carn「Infant Eyes」
 http://www.youtube.com/watch?v=38OXtiRZ2ig
Doug Carn feat.Jean Carn「Revelation」
 http://www.youtube.com/watch?v=s9pZoRhRQA4

やがてDoug Carnと別れたJeanは、セッション・ヴォーカリストとして活躍するようになります。そんな中、Norman Connors『Saturday Night Special』(1975年)でMichael Hendersonとデュエットした「Valentine Love」が、Jeanにとって大きな転機となりました。

Norman Connors feat. Michael Henderson & Jean Carn「Valentine Love」
http://www.youtube.com/watch?v=moICyNJpd7Q

それまでジャズのフィールドが活動の中心であったJeanでしたが、「Valentine Love」のヒット(全米R&Bチャート第10位)でソウル・シンガーとして注目されるようになり、Gamble & HuffのPhiladelphia International Records(PIR)とのソロ契約に成功します。

そして、PIRを代表する女性シンガーとして、『Jean Carn』(1977年)、『Happy To Be With You』(1978年)、『When I Find You Love』(1979年)、『Sweet And Wonderful』(1981年)という4枚のアルバムをリリースしています。

その後、Motownから『Trust Me』(1982年)、Atlantic系のレーベルから『Closer Than Close』(1986年)、『You're A Part Of Me 』(1988年)といったアルバムをリリースしています。特に『Closer Than Close』からのシングル「Closer Than Close」はJean初の全米R&BチャートNo.1に輝きました。この時期にJeanは"Carn"から"Carne"へとアーティスト名を変えています。

Jean Carne「Closer Than Close」
http://www.youtube.com/watch?v=o4SIhVVr0_I

今回紹介するPIR第一弾アルバム『Jean Carn』(1977年)は、総帥Gamble & Huffをはじめ、Dexter WanselMcFadden & Whiteheadという後のPIRを支えることとなる強力プロデューサー陣が制作を手掛けています。

ヒット曲「Free Love」ばかりが注目されますが、アルバム全体としてもなかなか楽しめる1枚だと思います。

全曲紹介しときやす。

「Free Love」
本作のハイライト。シングルとして全米R&Bチャート第23位となったダンス・クラシック(Gamble & Huff作)。PIRの歌姫Jeanに相応しい最高のフィリー・ダンサーをGamble & Huffが用意したといった感じですね。
http://www.youtube.com/watch?v=TNIwvZ08lVA

「No Laughing Matter」
笑い事では済まされないシリアスな(?)ラブソング。何処となく切ない思いが込み上げるミディアム・スロウに仕上がっています。
http://www.youtube.com/watch?v=5-S-OjeNARA

「I'm In Love Once Again」
Dexter Wansel作/プロデュース。哀愁モードのメロディアスなラブソングです。
http://www.youtube.com/watch?v=T0AhctaXpA0

「Don't You Know Love When You See It」
McFadden & Whiteheadがソングライティングで参加している哀愁モードのバラード。Jeanの歌唱力を存分に堪能できます。
http://www.youtube.com/watch?v=klgR0r7DQ6Q

「Where Did You Ever Go」
Dexter Wansel作/プロデュース。ライナーノーツにも書いてありましたが、ミュージカルの挿入歌を連想させる壮大なバラードです。
http://www.youtube.com/watch?v=U7Z_UkagASs

「You Are All I Need」
Dexter Wansel作/プロデュース。海辺の効果音と共に始まる哀愁メロウ・チューン。Dexter Wansel絡みの3曲の中では一番好きです。
http://www.youtube.com/watch?v=y4oXZk2Itws

「If You Wanna Go Back」
Gamble & Huff作のキャッチーなダンス・チューン。ディスコ/ソウル系のコンピ・アルバムにも収録されているダンス・クラシックです。Gamble & Huffの曲作りの巧みさとJeanのヴォーカルの魅力が上手く結びついた名曲だと思います。
http://www.youtube.com/watch?v=-BHKolyftTA

「You Got A Problem」
個人的には「Free Love」、「If You Wanna Go Back」に次いで好きなダンス・チューン。聴いているとポジティヴな気分になれるのがいいですね。問題は自分で解決しないとね!
http://www.youtube.com/watch?v=jWDfWKwF_8M

「Time Waits For No One」
McFadden & Whitehead作/プロデュース(実際にはVictor Carstarphen加えた3名)。イントロがフィリーらしくてグッときますね。派手さはありませんでが、魅力的なダンス・チューンに仕上がっています。
http://www.youtube.com/watch?v=LyNsgH9MNF4

最近、『Trust Me』(1982年)も初CD化されました。
TRUST ME
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2010年07月22日

Bobby Caldwell『Cat In The Hat』

ミスターAORの2nd。名曲「Open Your Eyes」収録☆Bobby Caldwell『Cat In The Hat』
ロマンティック・キャット(紙ジャケット仕様)
発表年:1980年
ez的ジャンル:ミスターAOR
気分は... :マイアミの風!

"ミスターAOR"Bobby Caldwellの3回目の登場です。

『Bobby Caldwell』(1978年)、『Carry On』(1982年)に続いて紹介するのは、1980年リリースの2nd『Cat In The Hat(邦題:ロマンティック・キャット)』です。

やはりBobby Caldwellと言えば、『Bobby Caldwell』『Cat In The Hat』『Carry On』(1982年)の3枚に尽きるという気がします。

この頃の日本での人気の高さは凄まじかったですよね。
ビルボードTop40をチェックするようになっていた当時中学生の僕は、アメリカでは大して売れていないのに、日本で何故こんなに人気があるのだろうと不思議に思ったものです。

本作『Cat In The Hat』発売直後に所属するT.K.レコードが倒産してしまい、Bobbyにとって商業面では必ずしもハッピーな時期では無かったようです。しかし、音楽面では前作『Bobby Caldwell』の好調ぶりを持続しています。

「What You Won't Do For Love」のようなキラー・チューンはありませんが、アルバム全体として充実した内容になっています。

さらにHip-Hopファン必聴の「Open Your Eyes」が収録されているのも嬉しいですね。

プロデュースはBobby Caldwell自身とSteve Kimball。演奏面ではBobbyがマルチ・プレイヤーとしてかなりの部分を一人で演奏していますが、George "Chocolate" Perry(b)、Ed Greene(ds)、Joe Galdo(ds)、Andy Newmark(ds)等のサポート・メンバーも参加しています。

やはり、Bobby Caldwellのアルバムは他のAOR作品にはないマイアミの風が吹いています。それが実に心地好い・・・

全曲紹介しときやす。

「Coming Down From Love」
邦題「センチメンタル・サンダウン」。アルバムからシングル・カットされ、全米チャート第42位となりました。彼らしい洗練されたブルー・アイド・ソウルに仕上がっています。力まない余裕たっぷりのヴォーカルが大好きです。Murs & 9th Wonder「Barbershop」でサンプリングされています。
http://www.youtube.com/watch?v=k76-l2eWKrU

「Wrong Or Right」
AORファンはグッとくるアーバンな疾走感が魅力です。さすがミスターAORといった仕上がりの1曲ですね。
http://www.youtube.com/watch?v=GjgcK0c4yOY

「To Know What You've Got」
哀愁モードのメロディアスなAORチューン。前曲に続きAOR気分を満喫できます。
http://www.youtube.com/watch?v=A8XlKjar5do

「You Promised Me」
Steely Dan「Haitian Divorce」(アルバム『The Royal Scam』収録)からインスパイアされて作った1曲。そう言われれば、レゲエ調であった「Haitian Divorce」をトロピカル調にした雰囲気ですよね。Bobby節を堪能できる1曲です。
http://www.youtube.com/watch?v=4Hkun1Neq9I

Steely Dan「Haitian Divorce」
 http://www.youtube.com/watch?v=ATTU-g_hiNk

「It's Over」
タイトなサウンドが印象的なミッド・チューン。Bobbyのファルセット・ヴォーカルを堪能しましょう。
http://www.youtube.com/watch?v=51Qn_sC86nU

「Open Your Eyes」
今日的には本作のハイライトかもしれませんね。僕にとっても一番のお気に入り曲です。アーバン・テイストの中にもハートウォームな温もりを感じるメロディアスなバラード。バックがシンプルな分、Bobbyのソウルフルなヴォーカルを堪能できるのがいいですね。
http://www.youtube.com/watch?v=bi8O_uRpelQ

本曲を有名にしたのは、当ブログでも紹介したCommon「The Light」でしょうね(アルバム『Like Water For Chocolate』収録)。故Jay Dee(J Dilla)のベストワークとも呼びたい作品で、「Open Your Eyes」が効果的にサンプリングされています。それ以外にDwele(あるいはPlatinum Pied Pipers名義)のカヴァーも忘れられませんね。最近リリースされたDJ Asparagusによるトライバル・ビートなハウス・リミックスも要チェックです。

Common「The Light」
 http://www.youtube.com/watch?v=W_-qRcHAhzk
Dwele「Open Your Eyes」
 http://www.youtube.com/watch?v=KA6NlwBFtLs

「Mother Of Creation」
アルバムの中では地味な存在ですが、なかなか小粋なAORに仕上がっています。いかにもマイアミ産AORって雰囲気が僕好みです。
http://www.youtube.com/watch?v=vIcln0YH1qg

「I Don't Want To Loose Your Love」
ラストは素敵なバラードで締め括ってくれます。実は「Open Your Eyes」次いで好きな曲です。『What You Won't Do For Love』のラストを飾った「Down For The Third Time」もそうでしたが、アルバムの余韻に浸れる締め括り方が心憎いですね。

『Bobby Caldwell』(1978年)
イヴニング・スキャンダル

『Carry On』(1982年)
シーサイド・センチメンタル(紙ジャケット仕様)
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2010年07月21日

Luciana Souza『The New Bossa Nova』

SSW/ポップス系の作品をジャジーなボサノヴァ・サウンドで聴かせてくれます!☆Luciana Souza『The New Bossa Nova』
New Bossa Nova
発表年:2007年
ez的ジャンル:ブラジリアン女性ジャズ・ヴォーカル
気分は... :今日はしっとりと・・・

今日はしっとりとしたジャズ/ボサノヴァ・ヴォーカル作品Luciana Souza『The New Bossa Nova』(2007年)です。

シンガー/ギタリスト/コンポーザーWalter Santosを父親に、詩人Tereza Souzaを母親に持つブラジル、サンパウロ生まれの女性ジャズ・シンガー/コンポーザーLuciana Souzaの紹介は『Tide』(2009年)に続き2回目となります。

本作『The New Bossa Nova』はVerve移籍第一弾アルバムであり、夫のLarry Kleinが全面プロデュースしています。

本作では、Joni MitchellJames Taylor、Leonard Cohen、Sting、Elliot Smith、Steely Dan、Randy Newman、Michael McDonaldThe Beach Boysといったお馴染みのアーティストのカヴァーが中心です。Joni MitchellWalter BeckerSteely Dan)はLarry Kleinと関連が深いアーティストですね。

こうしたシンガー・ソングライター/ポップス系の作品をジャジーなボサノヴァ・サウンドで聴かせることで、ジャズ/ボサノヴァの裾野を広げることを狙った作品といった印象を受けます。

Luciana Souza(vo)以下、Chris Potter(tn)、Romero Lubanbo(g、cavaquinho)、Edward Simon(p)、Antonio Sanchez(ds、perc)、Matt Moran(vib)といったメンバーがレコーディングに参加しています。また、James Taylorがゲスト・ヴォーカルで参加しています。

ブラジル音楽好き、ジャズ・ファンよりも、シンガー・ソングライター好きの人が聴いた方が楽しめるアルバムだと思います。特にカヴァーのオリジナルをご存知の方は、かなり楽しめると思います。

全体としては、しっとりと落ち着いた大人のジャジー・ボッサ作品に仕上がっています。

全曲紹介しときやす。

「Down To You」
オープニングはJoni Mitchellのカヴァー。オリジナルは当ブログでも紹介した『Court And Spark』(1974年)に収録されています。オリジナルも好きなので、本カヴァーにはかなりグッときました。ここではしっとりと落ち着いた雰囲気で聴かせてくれます。JoniとLucianaの声質が似ているせいか、Joniがジャズ・シンガーとなって歌っているような気がしてきます。
http://www.youtube.com/watch?v=wglf711CJvo

Joni Mitchell「Down To You」
 http://www.youtube.com/watch?v=xwMIkG0oY6s

「Never Die Young」
James Taylorのカヴァー。オリジナルは『Never Die Young』(1988年)のタイトル曲です。JT本人が参加したデュエットとなっているのが嬉しいですね。ある意味、本作のハイライトかもしれません。ハート・ウォーミングな雰囲気が伝わってくる好カヴァーです。小粋なアレンジのバックもグッド!
 http://www.youtube.com/watch?v=jT00-NkYCJE

James Taylor「Never Die Young」
 http://www.youtube.com/watch?v=ITxBcs6lI4Q

「Here It Is」
Leonard Cohenのカヴァー。オリジナルはSharon Robinsonがプロデュースした『Ten New Songs』(2001年)に収録されています。ミステリアスな雰囲気を持ったオリジナルですが、ここではクールなボッサ・チューンに仕上がっています。ボサノヴァという点では本カヴァーが一番雰囲気があるかもしれません。
http://www.youtube.com/watch?v=Mu5mzoSGCFQ

Leonard Cohen「Here It Is」
 http://www.youtube.com/watch?v=1hiEXwyto4k

「When We Dance」
Stingの1994年のシングルをカヴァー。個人的にはオリジナルは大して良いと思っていなかったので、エレガントな憂いのある本カヴァーにかなりグッときます。

Sting「When We Dance」
 http://www.youtube.com/watch?v=CYEkZLgAE3s

「Setellite」
若くして亡くなった天才シンガー・ソングライターElliot Smithのカヴァー。オリジナルは『Elliot Smith』(1995年)に収録されています。オリジナルとの比較という意味では、本カヴァーが一番面白いかもしれません。

Elliot Smith「Setellite」
 http://www.youtube.com/watch?v=EBsLeM5opm4

「Where You Blind That Day」
Steely Dan作品のカヴァー。オリジナルは『Gaucho』収録の「Third World Man」です(当初の曲名が「Where You Blind That Day」でした)。正直、本曲がこんなに素晴らしいボッサ・ジャズに生まれ変わるとは思いませんでした。その意味ではかなりグッときましたね。

Steely Dan「Third World Man」
 http://www.youtube.com/watch?v=a0eBurafADk

「Love Is For Strangers」
Walter Becker/Larry Klein作のオリジナル。
Larry KleinはWalter Beckerのアルバム『Circus Money』(2008年)のプロデューサーを務めており、Lucianaも同作にゲスト・ヴォーカルとして参加しています。カヴァー曲が目立つ本作ですが、しっとりとした大人のジャジー・チューンに仕上がっている本曲も魅力的です。

「You And The Girl」
Luciana Souza/Larry Klein作のオリジナル。何故かSSW作品のカヴァーに聴こえてしまいます(笑)
http://www.youtube.com/watch?v=8wdDHQeshnY

「Living Without You」
Randy Newman作品のカヴァー。オリジナルは『Randy Newman』(1968年)に収録されています。Harry Nilssonヴァージョン等でもお馴染みですね。この曲Lucianaには「Down To You」同様にJoni Mitchellの雰囲気がありますね。

「I Can Let Go Now」
Michael McDonaldのカヴァー。オリジナルは当ブログでも紹介した『If That's What It Takes』に収録されています。この曲はMichaelのスモーキー・ヴォイスで聴き慣れていたので、しっとりとした女性ヴォーカルで聴くと新鮮ですね。
http://www.youtube.com/watch?v=MwblLcBuM1M

「God Only Knows」
The Beach Boys『Pet Sounds』(1966年)収録の大名曲のカヴァー。アルバムの流れを考えると、このセレクトは少し意外な気もします。でも案外ボッサ・アレンジが似合っているところが面白いですね。

The Beach Boys「God Only Knows」
 http://www.youtube.com/watch?v=NDfH_J4MAUQ

「Waters Of March」
Antonio Carlos Jobimの名曲「三月の水」をカヴァー(原題「Aguas de Marre」)。当ブログでは以前にArt Garfunkelのカヴァーも紹介しています。ラストに王道ボッサを配するあたりに本作の狙いが見えてくるのでは?

未聴の方は、本作に続くVerve移籍第二弾アルバム『Tide』(2009年)もチェックしてみて下さい。

『Tide』(2009年)
Tide
posted by ez at 09:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 2000年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年07月20日

Incognito『Positivity』

グループが絶頂期に達した1枚!名曲「Still A Friend Of Mine」収録☆Incognito『Positivity』
Positivity
発表年:1993年
ez的ジャンル:バカンス系Acid Jazz
気分は... :ポジティブに行こう!

ギタリスト/マルチプレイヤー/プロデューサーであるJean-Paul 'Bluey' Maunick率いるIncognitoの2回目の登場です。

『Tribes, Vibes And Scribes』(1992年)に続いて紹介するのは、1993年リリースの『Positivity』です。

90年代から今日までコンスタントに作品をリリースし続けるIncognitoですが、グループの黄金期は『Tribes, Vibes And Scribes』(1992年)、『Positivity』(1993年)の2枚でしょうね。

アシッド・ジャズ・ブーム、Maysa Leakという希代の女性ヴォーカリストの在籍、J.P. "Bluey" Maunickの創作意欲等の条件が重なり、充実した作品をリリースし続けたのがこの時期のIncognitoでした。

僕も勿論リアルタイムでこれらの作品を聴いていましたが、『Positivity』の日本での人気ぶりには正直驚き、逆に少し引き気味になっていた記憶があります。

今日改めて聴いてみてると、名曲「Still A Friend Of Mine」をはじめ、単なる流行もので終わっていない魅力的なアルバムであることを再認識させられます。

本作におけるグループのメンバーは、Maysa Leak(lead vo)、Mark Anthoni(lead vo)、Sarah Brown(supporting vo)、Richard Bailey(ds)、Thomas Dyani(per)、Randy Hope Taylor(b)、Patrick Clahar(ts、ss)、Fayyaz Virji(tb)、Kevin Robinson(tp、flh)、Graham Harvey(key)、Peter Hinds(key)、J.P. "Bluey" Maunick(g、vo、key、b、programming)の12名。

その12名のメンバーがそれぞれポーズをキメて、ジャケの表裏に6名ずつ写っています。これは以前に当ブログの特別企画記事でもご紹介した通り、Chico Hamilton Quintet『Blue Sands』(1955年)のジャケを模したものです。

Chico Hamilton Quintet『Blue Sands』(1955年)
ブルー・サンズ

今日では過小評価されがちなグループですが、先入観なしに聴くと魅了されること間違いナシなアルバムです。

全曲紹介しときやす。

※盤によって曲順等が一部異なります。
 ここではUKのオリジナルCDの曲順で紹介します。

「Still A Friend Of Mine」
オススメその1。シングル・カットもされた本作のキラー・チューン。グループを代表する人気曲ですね。僕も本作のジャケを眺めると、真っ先に本曲のメロディが頭の中で流れてきます。キャッチーなメロディ、Maysa Leakの素晴らしいヴォーカル、爽快なライト・グルーヴ全てが噛み合った完璧な仕上がり!今聴いてもその魅力が全く色褪せないエヴァーグリーンな名曲ですね。
http://www.youtube.com/watch?v=WlpQMvHoFCk

「Smiling Faces」
ラテン・フレイヴァーのライト・タッチなジャズ・ファンク・チューン。Patrick Claharのソプラノ・サックス・ソロがなかなかグッときます。

「Where Do We Go From Here」
オススメその2。今回久々に聴き返して、"この曲こんなに良かったっけ?"とサプライズだった曲。バカンス・モードのライト・グルーヴはこれからの季節にピッタリ!

「Positivity」
オススメその3。タイトル曲はこの時期のUKらしいクラブ・テイストのアーバン・グルーヴ。軽くグラウンドビート調な感じが大好きです。
http://www.youtube.com/watch?v=T1Akny2e_HY

「Deep Waters」
哀愁モードのミッド・チューン。憂いを持ったMaysa Leakのヴォーカルを堪能しましょう。
http://www.youtube.com/watch?v=b8KlOZEgtKs

「Pieces Of A Dream」
オススメその4。個人的には「Still A Friend Of Mine」に次ぐお気に入り!夜の街に繰り出したくなるエレガントに洗練されたグルーヴ感がたまりません。
http://www.youtube.com/watch?v=7LiDRI-Qy2c

「Talkin' Loud」
いかにもアシッド・ジャズなジャズ・ファンク・チューン。今聴くと、このタイプは多少ワンパターンに聴こえますが・・・

「Thinking 'Bout Tomorrow」
オススメその5。スリリングなリズム隊にグッとくるインスト・チューン。インスト・チューンではこの曲が一番好きですね。
http://www.youtube.com/watch?v=8lLAvZxC3pQ

「Do Right」
オススメその6。Ray Haydenがミックスを担当。Ray Haydenらしいクラブ仕様のダンス・チューンに仕上がっています。当時のUKクラブ・ミュージックがお好きな人であればグッとくるはず!
http://www.youtube.com/watch?v=gNypuZInzLI

「Inversions」
ストリングを配したフュージョン調のインスト。

「Better Days」
オススメその7。Kevin Robinsonのミュート・トランペットをフィーチャーしたインスト。実はミュート・トランペット入りのクラブジャズって大好きなんです(笑)

「Keep The Fires Burning」
パーカッシヴなミッド・チューン。当時Caron Wheeler、EFUA等こういうエスニックな雰囲気の曲って結構ありましたよね。

「Givin' It Up」
オススメその7。Roger Sanchezがリミックスしたハウス調のダンス・チューン。当時乗りに乗ってていたRoger Sanchezの勢いを感じる仕上がりです。
http://www.youtube.com/watch?v=CckGg7sRu3Q

「Still A Friend Of Mine (Acapella) 」
「Still A Friend Of Mine」のア・カペラ・ヴァージョンです。

『Tribes, Vibes And Scribes』(1992年)
Tribes Vibes + Scribes
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