
発表年:2010年
ez的ジャンル:生音Hip-Hopの雄
気分は... :タイトル曲がサイコー!
唯一無二のHip-HopバンドThe Rootsの2年ぶりの新作『How I Got Over』です。
これまで当ブログで紹介したThe Roots作品は以下の4枚。
『Do You Want More?!!!??!』(1994年)
『Things Fall Apart』(1999年)
『Game Theory』(2006年)
『Rising Down』(2008年)
本作『How I Got Over』はDef Jam移籍第3弾アルバムとなりますが、前々作『Game Theory』(2006年)、前作『Rising Down』(2008年)とは多少異なる印象を受ける仕上がりです。
『Game Theory』、『Rising Down』の2枚では、政治的・社会的なメッセージとそれを際立たせるダーク&へヴィでアブストラクトなトラックが目立ちました。
本作『How I Got Over』でも哀愁モードの楽曲が多いのですが、そうした中にもポジティブな空気が流れているのと同時に、よりサウンドの幅が広がっている気がします。
この変化の要因となっているのが、アメリカの深夜トーク番組『Late Night with Jimmy Fallon』への出演です。人気コメディアン/俳優のJimmy Fallonがホストを務める人気番組の専属バンドとしてレギュラー出演するようになり、Hip-Hopの枠を越えた様々なミュージシャンと共演する機会が増えたようです。この共演がグループの音楽的な糧となったようです。
本作におけるグループのメンバーはBlack Thought(mc)、?uestlove(ds)、Kamal Gray(key)、Frank "Knuckles" Walker(per)、Captain Kirk Douglas(g)、Damon "Tuba Gooding Jr." Bryson(sousaphone)、Owen Biddle(b)の7名。
また、本作には多彩なゲストが参加しており、それが前2作と異なる印象を与えている面もあると思います。
常連Dice Raw、Phonte、Blu等のラッパーや、The Rootsプロデュースの新作を制作中のJohn LegendといったR&Bシンガー以外にも、Dirty Projectors、Monsters Of Folk、Joanna Newsomといったロック/フォーク系アーティストも参加しています。さらにバック・コーラスには、かつてThe Rootsが設立したレーベルMotiveの第一弾アーティストとして契約したJazzyfatnasteesの元メンバーMercedes Martinezも参加しています。
より懐の深いバンドとして進化していくThe Rootsの成長を実感できる1枚です。
まずはタイトル曲「How I Got Over」を聴いてみて下さい。この1曲のみでも相当シビれるはずですよ!
全曲紹介しときやす。
「A Peace Of Light」
『Late Night with Jimmy Fallon』に出演したブルックリンのロック・バンドDirty Projectorsのヴォーカルに魅了された?uestloveが、同バンドの女性メンバーAmber Coffman、Angel Deradoorian、Haley Dekleの三人と録音したアルバムのプロローグ。キュートなコーラスと?uestloveのドラムがアルバム全体への期待を高めてくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=8jDEkfNdEwM
「Walk Alone」
Truck North、P.O.R.N.、Dice Rawをフィーチャー。前2作のダークな世界観を受け継いだ哀愁モードの仕上がり。
http://www.youtube.com/watch?v=JDNARPuZ-6E
「Dear God 2.0」
ロック・バンドMonsters Of Folkをフィーチャー。彼らのシングル曲「Dear God」をサンプリングしています。「Dear God」のヴァージョン2.0といった位置づけかもしれませんが、幻想的な哀愁感が漂うオリジナル「Dear God」と比較すると、リアルな哀愁といった感じですね。Mercedes Martinezのコーラスが盛り上げてくれます。チェロはLarry Goldが演奏しています。
http://www.youtube.com/watch?v=32Qr5oKKP-M
Monsters of Folk「Dear God」
http://www.youtube.com/watch?v=8BnFowzj9ck
「Radio Daze」
オススメその1。Blu、P.O.R.N.、Dice Rawをフィーチャー。?uestloveの叩き出す格好良いビーツに乗って、各ラッパー達のマイクリレーを堪能できます。?uestloveサイコー!
http://www.youtube.com/watch?v=vIeqznH5jgs
「Now Or Never」
オススメその2。PhonteとDice Rawをフィーチャー。最近のThe Roots作品ではあまり聴くことができなかったジャジー・ソウル・グルーヴを堪能できるのが嬉しいですね。
http://www.youtube.com/watch?v=ZyLzQrors9g
「How I Got Over」
オススメその3。タイトル曲はDice Rawをフィーチャーしたソウルフルな仕上がり。シングルにもなりました。突き進む格好良さはアルバムでも随一ですね。?uestloveのブレイクがサイコーです!アルバムで一番のお気に入りです。こんなThe Rootsを待っていました!今月、自分の気持ちを盛り上げたい時に繰り返し本曲を聴いています。名曲!
http://www.youtube.com/watch?v=zI4D1QOLGuM
「DillaTUDE: The Flight of Titus」
故J Dillaへ捧げたメロウなインスト。
http://www.youtube.com/watch?v=v_-hcKI76kM
「The Day」
オススメその4。Blu、Phonte、Patty Crashをフィーチャー。Patty CrashのキュートなヴォーカルとBlu、Phonteのスムーズなフロウによるジャジー・グルーヴ。Phonte好きの人は気に入る1曲だと思います。
http://www.youtube.com/watch?v=FS88jxG1CJo
「Right On」
オススメその5。美人ハープ奏者/シンガー・ソングライターJoanna Newsom参加で話題の1曲。彼女のデビュー・アルバム『The Milk-Eyed Mender』収録の「The Book of Right On」をサンプリングしています。「The Day」からのシームレスな流れがいい感じです。
http://www.youtube.com/watch?v=EgUTLQdcC_o
Joanna Newsom「The Book of Right On」
http://www.youtube.com/watch?v=fDQIGraR3aI
「Doin' It Again」
オススメその6。当ブログでも紹介したJohn Legend「Again」(アルバム『Once Again』収録)をサンプリング。John Legend大好きの僕としては嬉しい1曲です。
http://www.youtube.com/watch?v=nSpOpHpQuzQ
「The Fire」
前曲でのサンプリングに続き、本曲ではJohn Legendをフィーチャーしています。哀愁ソウル・モードの仕上がりにグッときます。
http://www.youtube.com/watch?v=KzKIUJZr1x4
「Tunnel Vision」
素晴らしいコーラスワークを聴けるインタールードのような小曲。
http://www.youtube.com/watch?v=sy3duJGz2gA
「Web 20/20」
Peedi Peedi、Truck Northをフィーチャー。タイトルからも想像できるようなエレクトロ路線の仕上がりです。
http://www.youtube.com/watch?v=1dr2zwVpbsE
「Hustla」
CDのボーナス・トラック。STSをフィーチャーしたエレクトロ・チューン。個人的にはこの路線はThe Rootsには似合わないと思いますが・・・
http://www.youtube.com/watch?v=pSF_7y3FKT4
The Roots作品の過去記事もご参照下さい。
『Do You Want More?!!!??!』(1994年)

『Things Fall Apart』(1999年)

『Game Theory』(2006年)

『Rising Down』(2008年)
