発表年:2010年
ez的ジャンル:ハイブリッド系女性SSW
気分は... :発売元の売り方には???
今回はシカゴ出身の女性シンガー・ソングライターNatalie Oliveriの日本独自デビュー・アルバム『Eclectic Soul』です。
Natalie Oliveriはシカゴ出身。2007年のカレッジ卒業後から音楽活動を本格化させた模様です。2009年に8曲入りのデビューEP『Eclectic Soul』をリリースしています。最近ではジャジーHip-Hopファンにはお馴染みWisdom OneとJust Jから成るシカゴのユニット1773の最新作『Sound Soulstice』でNatalie Oliveriがフィーチャーされています。
今日紹介する『Eclectic Soul』はデビューEPに5曲の新録+リミックスを追加した日本独自のデビュー・アルバムです(ジャケはデビューEPと同じもの)。新録の中には木村カエラ「バタフライ」の英語カヴァーも含まれています。
そのカヴァー1曲を除き、楽曲は全て彼女のオリジナルです。ソウル/R&B、ジャジーHip-Hop、クラブ・ミュージック、ジャズ、ラテン、ポップス、フォークと多様な音楽スタイルを取り入れた内容は実にバラエティに富んでいます。英語のみならず、スペイン語で歌われる曲もあります。正直、アルバム全体のまとまりはありませんが、個々の楽曲の素晴らしさや彼女の豊かな才能を存分に堪能できます。
本作で残念なのは、日本の発売元の売り出し方ですね。
発売元が強調するのは、"木村カエラ「バタフライ」の英語カヴァー収録"と"Common「Go」と同ネタ使いの新曲"の2点。これでは彼女の魅力・才能が全く伝わってきません。木村カエラのカヴァーはあくまでオマケでしょ!解説も入っていない手抜きも含めて、発売元のお粗末な仕事ぶりには失望するばかりです。
そんな状況ですが、Natalie Oliveriが才能ある女性シンガー・ソングライターであることは間違いありません。デビューEPの8曲を聴いてもらえれば、彼女の才能とキュートな歌声に魅了されるはずです。
デビューEPの8曲は彼女のサイトで試聴できます。
http://www.natalieoliveri.com/
また、YouTubeにあったデビューEPのEPK(Electronic Press Kit)も紹介しておきます。
http://www.youtube.com/watch?v=PDU_DaDAWNI
全曲紹介しときやす。
「Boyfriend」
ダンサブルなビートと切ないメロディとキュートな歌声にグッとくるキャッチーなオープニング。エレクトロとフォーキーを自然に融合させているハイブリット感覚がいいですね。
「Closer」
60年代ポップスやモータウンを彷彿させる軽快なレトロ・ソウルに仕上がっています。Verzatile & Charles Hammondをフィーチャー。
「Never Too Late」
ラテン・テイストのジャジーなメロウ・チューン(おそらく)ヒスパニック系のルーツを持つ彼女らしい1曲なのでは?Anthony Braccoをフィーチャー。
http://www.youtube.com/watch?v=-4oUB8PSKDA
「He's Not You」
この曲は日本向けに追加された曲です。哀愁モードの仕上がりです。
「Walk Away」
SSWらしさという点では、この曲が一番雰囲気があるかもしれません。エレピとセミアコによるシンプルなジャジー・サウンドをバックに彼女のキュートな歌声を堪能できます。
「Too Good To Be True」
Verzatile & Rico SisneyをフィーチャーしたメロウなジャジーHip-Hopチューン。前述のEPK映像でも観ることができますが、吐息まじりのスキャットも交えてラップに絡むNatalieの姿は実にスムーズですよね。
「Puertas Del Corazon」
スペイン語で歌われるスパニッシュ・モードのダンス・チューン。クラブ・ミュージック好きの人は気に入る1曲だと思います。
「Lust」
Rico SisneyをフィーチャーしたメロウなジャジーHip-Hopチューン2曲目。彼女のメロウ・サウンドとキュートなヴォーカルはジャジーHip-Hopとの相性抜群ですね。
「Muchacha」
♪ム・チャ・チャ〜♪哀愁のラテン・チューン。Natalie自身が自身に流れるラテンDNAをかなり意識していることが窺える1曲です。Soulatinaをフィーチャー。
ここまでのうち、「He's Not You」を除く8曲がデビューEPからの8曲です。この8曲にアーティストNatalie Oliveriの本質的な魅力が詰まっています。これ以降の曲は本編とは別のオマケとして楽しみましょう。
「Super Star」
エレクトロ・ダンス・チューン。この路線が彼女にマッチしているかは別として、アルバムのアクセントにはなっています。
「I Feel So」
発売元が"Common「Go」と同ネタ使いの新曲"と騒いでいる曲。Linda Lewis「Old Smokey」のエレピ・フレーズが引用されています。曲・演奏自体は悪くないし、Natalie本人には何も問題ないのですが、発売元のせいで素直に楽しむことができません。
「Butterfly(English Version)」
木村カエラ「バタフライ」の英語カヴァー。何でこのカヴァーが必要なのか理解に苦しみます。YouTubeに映像もありますが、正直、彼女のアーティスト・イメージを崩すだけなので紹介したくありません。
「Boyfriend(Thaory Pan demic Remix)」
「Boyfriend」のリミックス。個人的には断然オリジナルの方が魅力的だと思います。
個人的には日本独自追加の5曲には不満だらけです。それでもオリジナルEP8曲が素晴らしいことには変わりありません。
早く正式なデビュー・アルバムをリリースして欲しい、期待の女性アーティストです。