2010年09月30日

N'dambi『A Weird Kinda Wonderful』

存在感抜群の女性R&Bシンガー☆N'dambi『A Weird Kinda Wonderful』
ウイアード・カインダ・ワンダフル
発表年:2005年
ez的ジャンル:ネオソウル系ディーヴァ
気分は... :この存在感!

今日はスケール感のあるヴォーカルでネオソウル/R&Bファンから評価の高い女性シンガーN'dambiの紹介です。

N'dambi(本名:Chonita Gilbert)は1970年、テキサス州ダラス生まれ。

Erykah Baduとは学生時代からの友人であり、Erykahの『Baduizm』(1997年)、『Live』(1997年)にも参加しています。

そして、『Baduizm』も手掛けていたMadukwu Chinwahのプロデュースで、デビュー・アルバム『Little Lost Girl Blues』(1998年)をリリースします。その後、2nd『Tunin' Up & Cosignin'』(2002年)、3rd『A Weird Kinda Wonderful』(2005年)と作品毎に評価を高めています。

"メジャーと契約しない最大の大物"と言われていましたが、名門Staxと契約して4th『Pink Elephant』(2009年)をリリースしています。

Erykahの盟友ということやジャケの雰囲気から想像がつくように、存在感のあるソウル・ディーヴァですよね。

これまでリリースしてきた4枚のアルバムはそれぞれ魅力がありますが、おそらくジャジーなオーガニック・ソウルを堪能できる2nd『Tunin' Up & Cosignin'』が一番人気だと思います。Jill Scott『Who Is Jill Scott? Words and Sounds Vol. 1』あたりがお好きな方は相当ハマると思います。しかしながら、CD2枚組全24曲というヴォリュームのため、聴くのも紹介するのも大変なので今回はスルーしました(笑)

「Call Me」(From 『Tunin' Up & Cosignin'』)
http://www.youtube.com/watch?v=7gs01B7VLbo

その点、今回セレクトした3rd『A Weird Kinda Wonderful』は好みが分かれるかもしれません。その大きな要因は、ロック・サウンドを大胆に取り入れている点です。『Tunin' Up & Cosignin'』のジャジー路線を期待する人にとっては、違和感を感じるのかもしれませんね。

個人的にはパンチの効いたアルバムという印象で気に入っています。ロック・テイストを取り入れているといっても、従来路線のジャジー&メロウな楽曲もあり、アルバム全体のバランスも良いと思います。

Prince殿下のカヴァー「Soft and Wet」が入っているのもお楽しみです。

制作にはSteve Harveyが楽曲提供およびプロデュース(1曲のみ)で参加しています。

とにかくその存在感に魅了されるヴォーカリストです。

全曲紹介しときやす。

「Young Lady」
本作らしいブラック・ロック・テイストのサウンド・プロダクションが印象的なオープニング。パンチのあるN'dambiのヴォーカルには、ハードなサウンドもマッチします。

「Can't Change Me」
オススメその1。クラブ・テイストのダンサブルな仕上がりにグッときます。こういったベクトルのディーヴァらしくていいのでは?
http://www.youtube.com/watch?v=5jhBLsvgjtA

「Hey U」
ディーヴァの貫禄十分のミディアム・グルーヴ。迫力がありますよね!
http://www.youtube.com/watch?v=0PeLbvhCtpo

「Insecurity」
オススメその2。おそらく本作で一番人気はコレなのでは?従来からのN'dambiファンも納得のジャジー&メロウ・グルーヴに仕上がっています。
http://www.youtube.com/watch?v=Zp4Zn2n8-nw

「Soft and Wet」
オススメその3。お待たせ!Prince殿下のカヴァー(殿下のオリジナルはアルバム『For You』収録)。オリジナルの魅力を引き継ぎつつ、N'dambiらしいパンチの効いたナイス・カヴァーに仕上がっています。

Prince「Soft and Wet」
 http://www.youtube.com/watch?v=bhZIfrgDV6w

「Get On Up」
オススメその4。輪郭のハッキリしたサウンド&リズムとN'dambiのヴォーカルが一体となり、実にエネルギッシュな1曲に仕上がっています。ロック・サウンド導入の効果がいいかたちで出ていますね。
http://www.youtube.com/watch?v=B5xZOcZWpkE

「Hot Oven」
アルバム中最もロック色の強い1曲。激しいサウンドに負けないヴォーカルで迫ります。

「Pointy Toe (interlude) 」
インタールード。

「If We Were Alone」
オススメその5。Keite Youngとのデュエット。妖艶な大人のネオソウル・チューンに仕上がっています。
http://www.youtube.com/watch?v=hWDQ1MRNlRc

「Love」
じっくりと歌い上げる哀愁のミディアム・スロウ。従来のジャジー・モードと本作のロック・テイストが融合したような仕上がり。

「Time Passes By」
70年代テイストのソウル・チューン。アルバムの中でいいアクセントになっています。

「Preacher Preacher」
軽快な仕上がりの中にもコクと味わいがあります。

「Stay」
ラストはエロさの漂う妖艶メロウ・バラードで締め括ってくれます。

興味がある方は、他のN'dambi作品もチェックを!

『Little Lost Girl Blues』(1998年)
Little Girl Lost Blues

『Tunin' Up & Cosignin'』(2002年) ※UK盤は全12曲のみなのでご注意を!
Tunin Up & Co-Signin

『Pink Elephant』(2009年)
Pink Elephant
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2010年09月29日

Belle & Sebastian『Tigermilk』

ベルセバ、伝説のデビュー・アルバム!☆Belle & Sebastian『Tigermilk』
タイガーミルク
発表年:1996年
ez的ジャンル:グラスゴー系ネオアコ/ギター・ポップ
気分は... :新作もリリースされますが・・・

日本でも根強い人気を誇るスコットランド、グラスゴー出身のネオアコ/ギター・ポップグループ、Belle & Sebastianの2回目の紹介です。

『The Boy With The Arab Strap』(1998年)に続いて紹介する作品として、"幻のデビュー・アルバム"であった『Tigermilk』(1996年)と実質的なデビュー作『If You're Feeling Sinister』(1996年)のどちらにするか悩みましたが、ジャケの好みで『Tigermilk』にしました(笑)

今日では彼らのデビュー・アルバムとして位置づけられている本作『Tigermilk』ですが、元々は大学の実習として制作され、アナログ盤のみ1000枚限定でプレスされたものです。このため、後年に幻のデビュー・アルバムとして話題を集め、その後CDで再発されました。

Stuart Murdoch(vo、g)とStuart David(b)のみでスタートした彼らですが、本作制作のためにStevie Jackson(vo、g)、Isobel Campbell(vo、cello)、Chris Geddes(key)、Richard Colburn(ds)が集められ、その後のグループの骨格が組まれました。

中身の方は、とても大学の実習として制作された作品とは思えない充実ぶりです。

ベルセバらしい繊細かつナイーブなネオアコ/ギター・ポップを堪能できます。一方でベルセバらしからぬ楽曲も収録されており、興味深く聴くことができます。

コアなベルセバ・ファンは『If You're Feeling Sinister』あたりの方が"らしい"作品なのかもしれませんが、個人的には本作の方が聴き易い気がします。

ベルセバと言えば、間もなく約4年半ぶりの新作『Write About Love』がリリースされますね。

『Write About Love』(2010年)
Write About Love

新作を聴く前に過去作品をチェックしてみるのも良いのでは?

全曲紹介しときやす。

「The State I Am In」
オススメその1。邦題「僕はこんなさ」。オープニングはメロディアスなギターポップに仕上がっています。繊細かつナイーブな雰囲気にグッときます。歌詞には衝撃のカミング・アウトも飛び出しますが(笑)
http://www.youtube.com/watch?v=soMbZ7eLKlM

「Expectations」
悲しげな疾走感が印象的なネオアコ・チューン。Isobelのチェロやホーンが盛り上げてくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=2H56B0Eslfs

「She's Losing It」
オススメその2。邦題「傷だらけの女の子」。「The State I Am In」同様、歌詞はビミョーですが、甘酸っぱいメロディはギターポップ/ネオアコ・ファンを虜にするはずです!
http://www.youtube.com/watch?v=1RShI_-85os

「You're Just A Baby」
オススメその3。R&Bテイストも取り入れた小気味良いロック・チューン。モッズ系の音が好きな方は気に入るはず!
http://www.youtube.com/watch?v=IpJUFdcoSqM

「Electronic Renaissance」
タイトルの通り、エレクトロニカというよりエレポップなサウンドはベルセバらしからぬ仕上がりです。でも、そこが面白いですね。
http://www.youtube.com/watch?v=gP4_BJI8OCM

「I Could Be Dreaming」
オススメその4。邦題「見てはならぬ夢」。切ないメロディにグッとくる青春ポップ・チューン。みんなが期待するベルセバ・サウンドを堪能できます。
http://www.youtube.com/watch?v=D5ZIqwpYk9Y

「We Rule The School」
オススメその5。美しいメロディ&アレンジが胸に染み渡る1曲。Isobelの美しいチェロが感動を高めてくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=hoK5QiN2vxc

「My Wandering Days Are Over」
オススメその6。邦題「彷徨える日々の終焉」。ベルセバらしい繊細かつナイーブな雰囲気に満ちたネオアコ・チューン。疾走感もあってサイコーです!
http://www.youtube.com/watch?v=qg2C5PicIXI

「I Don't Love Anyone」
オススメその7。邦題「それでも僕は愛さない」。80年代、90年代のUKロックがお好きな人であれば、このメロディにグッとくるのでは?
http://www.youtube.com/watch?v=qg2C5PicIXI

「Mary Jo」
オススメその8。曲自体はサラッとした仕上がりですが、美しいアレンジに魅了されます。軽くパーカッシヴなのも僕好み。
http://www.youtube.com/watch?v=7nYqKJ0gcas

Belle & Sebastian関連の過去記事もご参照下さい。

『The Boy With The Arab Strap』(1998年)
The Boy With the Arab Strap

The Gentle Waves『Swansong For You』(2000年)
Swansong for You
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2010年09月28日

Shuggie Otis『Inspiration Information』

早すぎたアブストラクト/ローファイ感覚☆Shuggie Otis『Inspiration Information』
Inspiration Information
発表年:1974年
ez的ジャンル:アブストラクト系ブルース/ソウル/ファンク
気分は... :20年早すぎたサウンド感覚!

今回はShuggie Otis『Inspiration Information』(1974年)です。

Shuggie Otis(本名:Johnny Alexander Veliotes)は1953年L.A.生まれ。父親は偉大なブルース・ミュージシャンJohnny Otisです。その影響で幼い時から音楽に親しんでいた彼は60年代半ばよりギタリストとして活動するようになります。

やがて、Al Kooperに見出され、Kooperとの共演作『Kooper Session』(1969年)をリリースします。当時の彼はまだ15歳でした。

その後、『Here Comes Shuggie Otis』(1970年)、『Freedom Flight』(1971年)、『Inspiration Information』(1974年)といったアルバムをリリースしていますが、商業的な成功を収めることはありませんでした。

昔は父親Johnny OtisAl Kooperの流れで語られることが多かったのかもしれませんが、90年代以降はその早すぎた先進サウンドで再評価を高めたアーティストですね。

そんなShuggie Otisの再評価を決定付けた1枚が今日紹介する『Inspiration Information』(1974年)です。

今回紹介するのはオリジナル9曲に『Freedom Flight』(1971年)からの4曲を追加収録した再発版です。ジャケもオリジナルとは異なりますが、追加曲には人気の「Strawberry Letter 23」等も含まれており、かなりお得感のある1枚です。

『Inspiration Information』の持つ感覚は、本作がフリーソウル/サバービア、Hip-Hop方面のみならず、クラブミュージックやポストロック/エレクトロニカ方面からも評価されている点からも確認できます。

実際、再発版にはGilles PetersonHigh LlamasSean O'Haganからの賛辞が記載されています。

ホーン、ストリングス等の一部楽器以外は全てOtisは演奏しています。リズムボックスを用いたアブストラクトな密室的サウンドは、ブルース、ソウル、ファンク、ジャズ等をルーツとしつつも、90年代のローファイ・サウンドやエレクトロニカを先取りしている印象を受けます。

とにかく、1974年にこんなアブストラクト/ローファイなサウンド感覚を持ったミュージシャンが居たことに驚かされますね。

20年早すぎたアルバムは、聴けば聴くほど面白さが増してきます。

全曲紹介しときやす。

「Inspiration Information」
美しいメロディとタイトなビートが印象的なタイトル曲。ジャジーHip-Hopファンはグッとくるアブストラクトな浮遊感がたまりません。
http://www.youtube.com/watch?v=mDrVSiahGqw

「Island Letter」
タイトルの通り、アイランド・ムード満点のセンチメンタルなメロウ・チューン。リズムボックスのローファイ感も印象的です。
http://www.youtube.com/watch?v=8WHrCKIj6do

当ブログでも紹介したDigable Planets「For Corners」でサンプリングされていまいsた。

Digable Planets「For Corners」
 http://www.youtube.com/watch?v=Mn-qn1yZGuU

「Sparkle City」
ファンキーなミッド・グルーヴ。音数は少ないですが、ビタースウィートな味わいにグッときますね。
http://www.youtube.com/watch?v=2gy7Thmqs_A

「Aht Uh Mi Hed」
本作のハイライトと言えば、各種コンピでもセレクトされている本曲かもしれませんね。リズムボックスの寂しげなビートが響き渡る至極の哀愁ローファイ・チューンです。寂しげな疾走感(?)に惹かれますね。
http://www.youtube.com/watch?v=BLgYEeXNLJw

Monica「I Wrote This Song」、Mya feat. Sean Paul「Things Come And Go」、Black Eyed Peas「Joints & Jam (The Joint Mix) 」、Absolute Beginner「Liebes Lied」等でサンプリングされています。

Monica「I Wrote This Song」
 http://www.youtube.com/watch?v=FuUDvJ01vxM
Mya feat. Sean Paul「Things Come And Go」
 http://www.youtube.com/watch?v=3K7awZjsIcM
Black Eyed Peas「Joints & Jam (The Joint Mix) 」
 http://www.youtube.com/watch?v=SR0aotJllQg
Absolute Beginner「Liebes Lied」
 http://www.youtube.com/watch?v=o2gRCL66uDM

「Happy House」
1分半にも満たない曲ですが、エレクトロニカな魅力に溢れた1曲に仕上がっています。

「Rainy Day」
ロマンティックなギターの音色にグッとくるインスト。当ブログでも紹介したBeyonce「Gift From Virgo」でサンプリングされており、それでお聴きの方も多いのでは?
http://www.youtube.com/watch?v=tf9OqR919LY

Beyonce「Gift From Virgo」
 http://www.youtube.com/watch?v=8xTsm5RhhGc

「XL-30」
エレクトロニカしているミニマルなインスト。1974年時点でこのサウンド感覚があったことに驚きです。
http://www.youtube.com/watch?v=3oWoVeRiKsM

「Pling!」
リズムボックスとエレピを中心としたローファイ・メロウ・チューン。

「Not Available」
聴けば聴くほど面白いメロウでアブストラクトなインスト・チューン。Otisならではのクロスオーヴァー感覚に溢れています。J Dilla「Donuts (Outro) 」でサンプリングされています。
http://www.youtube.com/watch?v=PhE5xvyr8to

次からは『Freedom Flight』(1971年)からの追加収録4曲。このセッションにはGeorge DukeWilton Felder、父Johnny Otisも参加しています。『Inspiration Information』で聴かれるサウンドの原型を確認でき、改めてShuggie Otisの先進性に驚かされる4曲です。

「Strawberry Letter 23」
1977年に全米R&Bチャート第1位、全米チャート第5位となったThe Brothers Johnsonのカヴァーでお馴染みの1曲。オリジナルである本ヴァージョンは、哀愁のメロウ・ソウルと中盤以降のスペイシー・サウンドが印象的です。
http://www.youtube.com/watch?v=IR1JQOBRrUY

The Brothers Johnson「Strawberry Letter 23」
http://www.youtube.com/watch?v=vbxUtFDKz8k

Brothers Johnsonヴァージョンは定番サンプリング・ソースとしてお馴染みですが、オリジナルである本ヴァージョンもBeyonce「Be With You」De La Soul「Much More」等でサンプリングされています。

Beyonce「Be With You」
 http://www.youtube.com/watch?v=wsvxMVKnlY4
De La Soul「Much More」
 http://www.youtube.com/watch?v=qc6LCXYAwr4

「Sweet Thang」
父Johnny Otisとの共作曲。ブルース・フィーリングを前面に押し出した1曲。彼の持つルール、DNAを感じ取ることができます。
http://www.youtube.com/watch?v=FrueloJSigo

「Ice Cold Daydream」
疾走感溢れるファンキー・チューン。今回収録された全13曲の中で一番派手な仕上がりかもしれません。
http://www.youtube.com/watch?v=GQdrMN2LLb4

「Freedom Flight」
ラストは13分近くある長尺曲。スピリチュアル・ジャズ好きの人はグッとくる1曲なのでは?
http://www.youtube.com/watch?v=aQkFnalsnG0

Al Kooper & Shuggie Otis『Kooper Session』(1969年)
クーパー・セッション

『Here Comes Shuggie Otis』(1970年)
Here Comes Shuggie Otis

『Freedom Flight』(1971年)
Freedom Flight
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2010年09月26日

Bin-Jip『Enter』

ハンガリーの4つの才能が結集したTrip Hop/Nu-Jazzユニット☆Bin-Jip『Enter』
ENTER
発表年:2010年
ez的ジャンル:ハンガリーTrip Hop/Nu-Jazz
気分は... :"芸術の秋"に相応しい1枚

今回はTrip Hop/Nu-Jazzの新譜Bin-Jip『Enter』です。
ネットで新譜をチェックする中で気になり、ゲットした1枚です。

Bin-Jipは、女性ジャズ・ヴォーカリストHarcsa Veronika、ジャズ・ギタリストGyemant Balint、ジャズ・ピアニストKaltenecker Zsolt、そしてDJのAndrew Jという4人のハンガリー出身ミュージシャン/DJが結成したユニットです。

Harcsa Veronika(1982年生まれ)は2005年にデビュー・アルバム『Speak Low』をリリース。その後2nd『You Don't Know It's You』(2007年)、3rd『Red Baggage』(2008年)といったアルバムをリリースしています。

Gyemant Balint(1983年生まれ)は2008年ノルウェーの音楽大学を卒業後、自身のトリオ等でプレイしています。

Kaltenecker Zsolt(1970年生まれ)は、ヨーロッパをはじめワールドワイドに活躍するジャズ・ピアニスト。数多くのリーダー作を残しています。

Andrew J(1971年生まれ)は90年代からDJ活動を開始し、2002年にはKaltenecker Zsoltと組み、Andrew J & KalteneckerとしてジャジーHip-Hop作品『Melodies』をリリースしています。

僕もHarcsa Veronikaのキュートな笑顔が印象的な『Red Baggage』やジャジーHip-Hop名盤の誉れ高いAndrew J & Kaltenecker『Melodies』あたりはCDショップで試聴した記憶があります。

そんなハンガリー出身のメンバーが結集して生み出したのは、Trip Hop/Nu-JazzサウンドにキュートなHarcsaのヴォーカルやKaltenecker、Gyemantによるインプロビゼーション、Andrew Jのスクラッチが絡んだ独自の音世界です。Trip Hop/Nu-Jazzの枠に収まらない楽曲もあり、彼らの持つ幅広い音楽性も楽しめます。

正直、Harcsa Veronikaにはアコースティック・ジャズのイメージがあったので、Trip Hop/Nu-Jazzサウンドをバックに歌うのは意外でしたね。

サウンド面では、Trip Hopですがダウナー・テイストはなく、フロアライクなNu-Jazzでもジャズらしいインプロが聴けるといったあたりが面白いですね。

4人のメンバーの持つ多様な個性が、足し算ではなく掛け算で有機的に結合させることに成功していると思います。

とにかく聴いていて飽きない面白さを持った作品です。
"芸術の秋"に相応しい1枚だと思います。

全曲紹介しときやす。

「Enter」
オススメその1。Bin-Jip独自のサウンドを堪能できるTrip Hopチューン。ダークなサウンドとHarcsaのキュートな歌声、Andrew Jのスクラッチが不思議な音世界へと誘います。

「Step」
哀愁のメロディと少しウエットなHarcsaのヴォーカルが印象的です。

「Heat」
このユニットが単にフロアライクなTrip Hop/Nu-Jazzサウンドのみではない、アーティスティックなユニットであることを認識させてくれる演奏です。

「Where Is She」
オススメその2。歌詞は天国へと旅立った女性へのレクイエムのようです。悲しみと安息を願う穏やかさが入り混じったサウンドが印象的です。時計を巻き戻して過去へタイムスリップするような不思議なイントロにもグッときます。

「One Word」
美しくも虚しいムードが漂うTrip Hopチューン。中盤以降のリズミカルな展開がいいですね。

「All Excuses」
オススメその3。フロアライクなNu-Jazzを期待する人向けの1曲。このユニットらしいアーティスティックな疾走感にグッときます。

「Outer Eye」
オススメその4。個人的には一番のお気に入り。疾走するNu-JazzサウンドにクールなHarcsaのヴォーカル、Kalteneckerのピアノ、Gyemantのギターが絡みます。特にKalteneckerの素晴らしいソロが聴きモノです。

「Bin-Jip」
ユニット名を冠した1曲。哀愁モードの中にも力強い意志を感じます。Harcsaのヴォーカリストとしての表現力を堪能できます。

「Keep Away」
ポストロック/エレクトロニカ調の仕上がり。Harcsaのキュートな歌声はこういった曲にもマッチしますね。

「8Days」
オススメその5。ズッシリくるアブストラクトなダンサブル・サウンドが好きです。♪Day one〜♪Day two〜♪Day three〜♪と8日間の心境を綴った歌です。もっと長尺で聴きたいですね。16Days位でも良かった(笑)

「Earthquake」
オススメその6。Gyemant Balintのギターがフィーチャーされたミステリアスな仕上がり。ミニマルな雰囲気の中で最後に大激震が起こります。

「Hair Down」
ラストはKalteneckerのピアノをバックにHarcsaのヴォーカルを存分に堪能できます。

「Varoterem」
国内盤のボーナス・トラックです。昨年亡くなったハンガリーの有名なアーティストCseh Tamasの作品をカヴァー。Harcsaがハンガリー語で歌い追悼しています。元々はCseh Tamasのトリビュート・アルバム『Eszembe Jutottal - Fohajtas Cseh Tamas Elott』に収録されていたものです。

発売元(Whereabouts Records)のサイトで試聴できます。
http://whereabouts-records.com/binjip_enter.htm

興味がある方はAndrew J & KalteneckerHarcsa Veronikaのソロもチェックしてみては?

Andrew J & Kaltenecker『Melodies』(2002年)
MELODIES

Harcsa Veronika『Speak Low』(2005年)
スピーク・ロウ

Harcsa Veronika『You Don't Know It's You』(2007年)
ユー・ドント・ノウ・イッツ・ユー

Harcsa Veronika『Red Baggage』(2008年)
レッド・バゲッジ
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2010年09月25日

Toninho Horta『Toninho Horta』

ミナスらしい音世界が魅力の2nd。Pat Metheny参加!☆Toninho Horta『Toninho Horta』
トニーニョ・オルタ
発表年:1980年
ez的ジャンル:ミナス系MPB
気分は... :心が洗われマス...

今日はブラジル、ミナス出身の人気ギタリストToninho Hortaの3回目の紹介です。

『Moonstone』(1989年)、『Diamond Land』(1988年)に続いて紹介するのは、1980年リリースの2nd『Toninho Horta』です。

彼の場合、ブラジル音楽ファンおよびジャズ/フュージョン・ファンから人気のToninho Hortaですが、ブラジル音楽ファンから人気が高いのが1st『Terra dos Passaros』及び2nd『Toninho Horta』なのでは?

今回紹介する『Toninho Horta』は、ジャケのToninhoの表情は怖いですが(笑)、ミナスらしい音空間とToninhoの美しいギターに魅了される優しい1枚に仕上がっています。

また、2曲でPat Methenyが参加しているのも注目です。僕の場合、Pat Methenyに通じるピュアな音世界にToninhoの魅力を感じているので、Metheny参加の2曲はかなりグッときます。

それ以外にもWagner Tiso(key)、Andre Dequech(p)、Jose Roberto Bertrami(syn)、Robertinho Silva(ds、per)、Paulo Braga(ds、per)、Jamil Joanes(el-b)、Luis Alves(b)、Nivaldo Ornellas(ts、ss)、Lena Horta(fl)、Raul de Souza(tb)、Paulo Guimaraes Lima(fl)、Lo Borges(vo)等がレコーディングに参加しています。

「Aqui, Oh!」「Manuel O Audaz」という名曲2曲をはじめ、Toninhoが創り出すミナスらしい音世界を堪能しましょう!

全曲紹介しときやす。

「Aqui, Oh!」
本作のハイライト。Milton Nascimentoが『Milton Nascimento』(1969年)でも歌ったミナス賛歌(同ヴァージョンにはToninhoもギターで参加)。Toninhoのギターも軽やかな爽快チューンです。特にコーラス、パーカッションで盛り上がるサンバ・モードの中盤以降がサイコーですね。Toninho Horta/Fernando Brant作。

「Saguin」
『Moonstone』にも「Sun Song」のタイトルで収録されていましたが、コチラがオリジナルです。両ヴァージョンでかなりアレンジが異なるので聴き比べるのも楽しいのでは?大胆にオーケストラを取り入れた本ヴァージョンはドラマティックで感動的です。Toninho Horta作。

「Voo Dos Urubus」
疾走するインスト・チューン。フュージョン・ファンが楽しめる1曲だと思います。Toninho Horta作。

「Caso Antigo」
ピュアな美しさにグッとくる1曲。Toninho作品の持つこの美しさはPat Methenyの音世界と共通するものがありますね。Toninho Horta/Fernando Brant/Ronaldo Bastos作。

「Prato Feito」
Pat Metheny参加曲その1。本作にはAzymuthのJose Roberto Bertramiも参加しています。ToninhoとMethenyが創り出すピュアな音空間に魅了されます。Toninho Horta/Ronaldo Bastos作。

「Era So Comevco Nosso Fim」
美しいオーケストレーションをバックにToninhoが感動的なギターを聴かせてくれる感動チューン。Yuri Popoff/Murilo Antunes作。

「Minha Casa」
雄大なパートから一気に加速するギア・チェンジにグッときます。爽快な疾走感が実に心地好いですね。Toninho Horta作。

「Bons Amigos」
美しいメロディが印象的です。Nivaldo Ornellasのソプラノ・サックスが盛り上げてくれます。Toninho Horta/Ronaldo Bastos作。

「Vento」
密かに好きな1曲。Toninhoのギター&ヴォーカルのみのシンプルな構成ですが、彼の持つピュアな魅力が伝わってきます。Toninho Horta作。

「Manuel O Audaz」
「Aqui, Oh!」と並ぶハイライト。『Moonstone』にも「Eternal Youth」のタイトルで収録されていましたが、コチラがオリジナルです。『Moonstone』ヴァージョンも素晴らしいですが、Pat Methenyの感動的なギターとLo Borgesのヴォーカルをフィーチャーした本ヴァージョンはミラクルな輝きを放っています。これぞ名曲!
http://www.youtube.com/watch?v=0hIkFkr2Kqw

Toninho Hortaの過去記事もご参照下さい。

『Diamond Land』
ダイアモンド・ランド

『Moonstone』
ムーンストーン
posted by ez at 09:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 1980年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする