2010年09月19日

Kem『Intimacy:Album III』

全米アルバムチャート第2位となった大人の男性R&Bアルバム☆Kem『Intimacy:Album III』
Intimacy
発表年:2010年
ez的ジャンル:大人のアーバンR&B
気分は... :久々のUS男性R&B!

男性R&Bシンガーの新作アルバムKem『Intimacy:Album III』です。

US男性R&Bシンガーの新作を紹介するのは久々かもしれませんね。
日本ではあまり話題になっていませんが、全米アルバムチャート第2位を記録しているヒット作です。

Kem(本名:Kem Owens)は1969年テネシー州ナッシュビル生まれ。ミシガン州デトロイトで育ったKemでしたが、高校卒業後はホームレス、薬物中毒、万引き犯による逮捕など苦難の道を歩んでいたようです。

その後立ち直り、音楽活動を本格的に開始したKemは、Motownとの契約に成功します。そして、自らのプロデュースで制作したデビュー・アルバム『Kemistry』(2003年)をリリースします。『Kemistry』は、全米のみで約80万枚のセールスを記録し、シングル・カットされた「Love Calls」は全米R&Bチャート第25位となりました。

続いて制作された2ndアルバム『Album II』(2005年)は、全米アルバム・チャート第3位、同R&Bアルバム・チャート第1位の大ヒットとなり、R&Bシンガーとしての地位を確立しました。その後、故Guru『Jazzmatazz Vol. 4』(2007年)にも参加しています。

『Intimacy:Album III』『Album II』以来5年ぶりとなる3rdアルバムです。

僕の場合、チャート・アクションの良し悪しで作品を聴くことはありませんが、今日のUS音楽シーンで本作のようなアルバムが上位にチャート・インするというのは驚きです。

個性的なハイ・トーン・ヴォーカルは、セクシーですが好き/嫌いがハッキリと分かれるタイプかもしれません。

彼の声質は必ずしも僕の好みではありませんが、サウンド・楽曲も含めれば大人のR&B作品としての魅力的なアルバムだと思います。その意味で、ソングライティング&プロデュースもこなす総合力こそがKemの強みかもしれませんね。

今年の男性R&Bは不作と感じていたので、余計にグッとくる1枚です。

ラストの「Golden Days」には、先日紹介したばかりのJill Scottが参加しています。

全曲紹介しときやす。

「When I'm Loving You」
オススメその1。オープニングは雨音と共にスタートする大人のアーバンR&B。ボッサ・テイストの僕好みのアレンジにのって、Kemのセクシー・ヴォーカルが心地好く響いてきます。
http://www.youtube.com/watch?v=P0N4bREfRV0

「Can You Feel It」
セクシーに迫るミディアム・スロウ。しつこくないマイルドなセクシーさがKemの魅力ですね。
http://www.youtube.com/watch?v=wia7U8mz4E0

「Love Never Fails」
オススメその2。絶品の大人のラブ・バラード。特に女性が聴くとかなりグッとくる1曲なのでは?
http://www.youtube.com/watch?v=y6JOigvJi1Y

「Share My Life」
オススメその3。アルバムからの2ndシングル。アコースティック感溢れるナチュラルな雰囲気が心地好い1曲。
http://www.youtube.com/watch?v=41pGTy2-gog

「Human Touch」
ネオソウル・テイストのジャジー・ソウル。トランペット・ソロも入ったジャジーな仕上がりにグッときます。
http://www.youtube.com/watch?v=DydohFSbw6s

「If It's Love」
Maurissa Roseをフィーチャー。あまり"ソウルフル"という言葉が似合わないKemですが、Maurissa Roseの女性ヴォーカルが加わり、ソウルフルに仕上がっています。
http://www.youtube.com/watch?v=oBz6ySzO6rg

「Why Would You Stay」
オススメその4。アルバムからの1stシングルとなった美しいバラード。全米R&Bシングル・チャート第17位となりました。Kemのハイトーン・ヴォーカルにマッチする曲です。
http://www.youtube.com/watch?v=iK0pgd0k5js&ob=av2n

「A Mother's Love」
感動的なバラード。厳かな雰囲気の序盤からゆったりとエレガントな中盤へと展開していく流れがいいですね。
http://www.youtube.com/watch?v=eMAsNXPqBFk

「You're On My Mind」
オススメその5。エレガントなアーバン・ソウル。洗練されたコンテンポラリー感が僕好みです。
http://www.youtube.com/watch?v=FCIvuMohIiE

「Golden Days」
オススメその6。ラストはJill Scottが参加したジャジーなミッド・グルーヴ。
http://www.youtube.com/watch?v=AAZhR8FSkmw

興味のある方は他のKem作品もチェックしてみて下さい。

『Kemistry』(2003年)
Kemistry

『Album II』(2005年)
Album II
posted by ez at 00:57| Comment(4) | TrackBack(0) | 2010年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年09月18日

Caetano Veloso『Cores, Nomes』

Caetanoの魅力が上手くパッケージされた1枚☆Caetano Veloso『Cores, Nomes』
Cores & Nomes
発表年:1982年
ez的ジャンル:ジェントル&メロウMPB
気分は... :ジェントル&メロウ

久々にCaetano Velosoのソロ作を紹介しますね。
セレクトしたのは1982年リリースの『Cores, Nomes』です。

これまで紹介したCaetano Veloso関連作品は以下の3枚。

 『Tropicalia:Ou Panis Et Circencis』(1968年)
 ※Gilberto Gil、Gal CostaNara Leao、Os Mutantesらとの共演作
 『Caetano Veloso』(1969年)
 『Caetano』(1987年)

振り返ると、意外に当ブログでCaetano Velosoのソロ作を紹介していませんね。
単純に"ブラジル音楽を聴きたい!"といった気分で聴くアーティストではないからかもしれません。やはり、Caetanoの圧倒的な存在感、幅広い音楽性は別格ですね。

今日紹介する『Cores, Nomes』(1982年)は、80年代のCaetanoを代表する1枚だと思います。

近年、再評価の高い弾き語りアルバム『Caetano Veloso』(1986年)あたりも考えましたが、よりポップでカラフルなサウンドを楽しめる『Cores, Nomes』の方をセレクトしました。

アルバム全体を貫く瑞々しい美しさに魅了されます。サウンドも実にカラフルでキャッチーです。

個人的には「Queixa」「Trem Das Cores」あたりのメロウネスにグッときます。それ以外にもカーニヴァル賛歌「Um Canto De Afoxe Para O Bloco Do Ile」、Djavanのカヴァー「Sina」など聴き所の多いアルバムだと思います。

ジェントルな歌声、美しいメロディ、カラフルなサウンド、Caetanoの魅力が上手くパッケージされた1枚だと思います。

ジャケも素敵ですよね。Caetano作品の中でNo.1だと思います。

全曲紹介しときやす。

「Queixa」
David Byrne監修のブラジル音楽コンピ『Brazil Classics 1: Beleza Tropical』にも収録されていたオープニング。素敵な歌とサウンドで彩られた爽快メロウはモロに僕好みの1曲です。
http://www.youtube.com/watch?v=G76ASeUGHGg

「Ele Me Deu Um Beijo Na Boca」
淡々とした歌とグルーヴィーなサウンドの組み合わせに引き寄せられる1曲。歌詞には♪Rolling Stones forever rock'n and rollin'♪なんて歌詞も飛び出します。
http://www.youtube.com/watch?v=4POUZNOjeY4

「Trem Das Cores」
Caetanoの優しい歌声と美しいメロディに魅了される名曲。2分半にも満たない曲ですが、もっと長尺で聴きたいですね。
http://www.youtube.com/watch?v=pzVYLNaCdEo

「Sete Mil Vezes」
それまでのカラフルなサウンドから一変し、シンプルなバックで歌われています。
http://www.youtube.com/watch?v=Tg9iG24I3M4

「Coqueiro De Itapoa」
Dorival Caymmi作品のカヴァー。弾き語りでサラっと聴かせます。

「Um Canto De Afoxe Para O Bloco Do Ile」
Bloco Afro(黒人によるカーニヴァル演奏集団)の名門Ile Aiye賛歌。Caetanoの息子Morenoも参加しています。パーカッションと男女合唱のみの感動的な仕上がり。
http://www.youtube.com/watch?v=9eXbh-6xxUQ

「Cavaleiro De Jorge」
ホーン隊が盛り上げてくれる爽快グルーヴ。コンテンポラリーな仕上がりが好きです。

「Sina」
Djavanのカヴァー。Djavan本人も参加しています。Djavanヴァージョンは人気作『Luz』(1982年)に収録されています。両ヴァージョンを聴き比べてみるのも楽しいのでは?Caetanoヴァージョンはキャッチー!Djavanヴァージョンは感動的!というのが僕の印象です。
http://www.youtube.com/watch?v=Rf6JqQOcwfY

Djavan「Sina」(From 『Luz』)
http://www.youtube.com/watch?v=2RAbrXJQTtU

「Meu Bem, Meu Mal」
Thomas Improtaのジャジーなピアノをバックに歌う感動的な仕上がりです。

「Genesis」
Gal Costa、Gilberto Gil、妹Maria Bethaniaも参加したファンキー・チューン。4人が共演したライブ・アルバム『Doces Barbaros』(1975年)にも収録されていました。

「Sonhos」
Peninha作品。弾き語りでしっとりと歌い上げます。
http://www.youtube.com/watch?v=KdiLL06YkJc

「Surpresa」
Joao Donatoとの共作。ロマンティックな仕上がりにグッときます。

まだ70年代のCaetano作品を紹介していないので、次回は『Joia』(1975年)か『Qualquer Coisa 』(1975年)あたりを紹介しますね。

Caetano Veloso関連作品の過去記事もご参照下さい。

『Tropicalia:Ou Panis Et Circencis』(1968年)
Ou Panis Et Circensis

『Caetano Veloso』(1969年)
Caetano Veloso (Irene)

『Caetano』(1987年)
Caetano (Jose)
posted by ez at 12:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 1980年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年09月17日

Gabor Szabo『Jazz Raga』

シタールを前面にフィーチャーしたサイケ/ラーガ・ジャズ☆Gabor Szabo『Jazz Raga』
JAZZ RAGA
録音年:1966年
ez的ジャンル:異才ギタリスト系サイケ/ラーガ・ジャズ
気分は... :不思議な音世界へ・・・

今回はハンガリー出身のジャズ・ギタリストGabor Szaboによるシタールを前面にフィーチャーしたサイケ/ラーガ・ジャズ作品『Jazz Raga』(1966年)です。最近、世界初のCD化が実現し、音楽ファンを歓喜させた1枚ですね。

Gabor Szaboは1936年ハンガリー、ブダペストの生まれ。14歳よりギターを弾き始め、1956年のハンガリー動乱を機にアメリカに移住します。バークリー音楽院で学んだ後、Chico Hamiltonの楽団で活動します。

その後、Impulse!との契約にし、1966年に初リーダー作『Gypsy '66』をリリースしています。60年代後半にはGary McFarlandと共にSkyeレコードを立ち上げています。その後もコンスタントに作品をリリースしますが、1981年にはハンガリーに戻ります。しかし、肝臓と腎臓の障害のため、1982年に故郷のブダペストで亡くなりました。

一般的には知名度の高い人ではないと思いますが、異才ギタリストとして高い評価を得ているミュージシャンですね。

意外な有名曲がGabor Szabo絡みだったりしますね。

例えば、Santanaの大ヒット・アルバム『Abraxas』に「Black Magic Woman」とのメドレーとして収録された「Gypsy Queen」はGabor Szabo作品です(オリジナルはアルバム『Spellbinder』収録)。

また、George Bensonでのお馴染みの「Breezin'」(Bobby Womack作)のオリジナルはGabor Szaboのヴァージョンです(オリジナルはアルバム『High Contrast』収録)。

さて、今回紹介する『Jazz Raga』(1966年)は前述のように、シタールを前面にフィーチャーしたアルバムです。当時流行っていたラーガ・ロックの影響を受けた作品でしょうね。

ただし、サイケ/ラーガ作品と言っても、モロにインド音楽していると言うよりは、Gabor Szabo独特の音楽ワールドにインド音楽のエッセンスを巧みに取り入れているのが魅力ですね。

レコーディング・メンバーは、Gabor Szabo(g、sitar)、Jack Gregg(b)、Bernard Purdie(ds)、Bob Bushnell(g)、Ed Shaughnessy(tabla)です。Purdieの参加が興味深いですね。

エキゾチックかつヒップな感覚の不思議な音世界を堪能できるアルバムです。

全曲紹介しときやす。

「Walking On Nails」
オープニングは哀愁モードのラーガ・ジャズ。つぶやくようなヴォーカル入りです。ヨーロピアンなテイストも混ざっているのがこの人らしいのでは?

「Mizrab」
タブラのリズムとシタールが絡む最もラーガ色の強い仕上がり。個人的にはアルバムで一番のお気に入り。

「Search For Nirvana」
寂しげな雰囲気が印象的です。ラーガ調なのにヨーロピアンな印象を受けるのが不思議です。
http://www.youtube.com/watch?v=B6fFM0jo1Ig

「Krishna」
ラーガ・ロック調の仕上がり。Purdieの豪快なドラムが全体を牽引します。
http://www.youtube.com/watch?v=6eMYIP0MOGs

「Raga Doll」
盟友Gary McFarlandの作品を取り上げています。本曲はラーガ/サイケというよりもGabor Szaboのジャズ・ギターを堪能できる仕上がりです。
http://www.youtube.com/watch?v=VYQT-UbM3EM

「Comin' Back」
軽快なテンポが心地好いですね。こういう曲って、一歩間違えると野暮ったくなってしまう危険もありますが、小粋に聴かせるあたりがGaborのセンスかもしれません。

「Paint It Black」
The Rolling Stonesの名曲カヴァー。如何にも!って選曲ですが、異才ギタリストがこの曲をどのように調理するのか!という聴き方をすると楽しいのでは?
http://www.youtube.com/watch?v=2Y2Olq6SXQA

「Sophisticated Wheels」
Gabor Szaboのプレイを楽しむという点ではグッとくる演奏なのでは?

「Ravi」
「Mizrab」と並ぶ僕のお気に入り。ラウンジ感覚の演奏が僕好みです。スタイリッシュのジャケとリンクする仕上がりだと思います。

「Caravan」
本作のハイライトかもしれませんね。Duke Ellington楽団でお馴染みのアフロ・キューバン・ジャズ名曲をラーガ/サイケ調カヴァーしています。本曲は以前にNicola Conteのカヴァーも紹介しています。原曲を知っている人でもラーガ/サイケ調の演奏に「Caravan」だと気付かない人もいるのでは?Purdieのブレイクにグッときます。

「Summertime」
ラストは有名なGershwin作品(ミュージカル『Porgy and Bess』挿入歌)のカヴァーで締め括ります。かなり妖しげなサマータイムといったところでしょうか。

他のGabor Szabo作品もチェックしたいですね。

『Gypsy '66』(1966年)
ジプシー’66

『Spellbinder』(1966年)
Spellbinder

『The Sorcerer』(1967年)
ソーサラー

『More Sorcery』(1967年)
モア・ソーサリー

『Bacchanal』(1968年)
BACCHANAL

『Dreams 』(1969年)
ドリームス

『High Contrast』(1970年)
High Contrast

『Mizrab』(1973年)
ミズラブ

『Macho』(1975年)
Macho
posted by ez at 01:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 1960年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年09月15日

Jill Scott『Who Is Jill Scott? Words and Sounds Vol. 1』

2000年代R&Bを語る上で欠かせない1枚☆Jill Scott『Who Is Jill Scott? Words and Sounds Vol. 1』
フー・イズ・ジル・スコット?
発表年:2000年
ez的ジャンル:ATOJ系ネオ・ソウル
気分は... :遂にJill Scottですっ!

ネオソウルを代表する女性シンガーJill Scottのデビュー・アルバム『Who Is Jill Scott? Words and Sounds Vol. 1』(2000年)です。

Jill Scottは1972年フィラデルフィア生まれの女性R&Bシンガー/ソングライター/詩人。

The Roots?uestloveに才能を見出され、1999年に当ブログでも紹介したThe Roots『Things Fall Apart』からの1stシングル「You Got Me」のソングライティングに参加します。

Erykah Baduも参加した「You Got Me」は、グラミーのBest Rap Performanceを受賞する名曲となりましたが、当初のレコーディングではJillのヴォーカルが収められていました。Jillの共演ヴァージョンも各種コンピ・アルバム等で聴くことができます。

こうして幸先良くキャリアをスタートさせたJillは、Common「Funky For You」、「8 Minutes To Sunrise」、Will Smith「The Rain」等でフィーチャーされ、さらに存在が注目されるようになります。

そして、2000年にデビュー・アルバム『Who Is Jill Scott? Words and Sounds Vol. 1』をリリースし、期待のネオ・ソウル・シンガーとして一気にブレイクします。

その後も『Beautifully Human: Words and Sounds Vol. 2』(2004年)、『The Real Thing: Words and Sounds Vol. 3』(2007年)といったスタジオ作をリリースし、ネオ・ソウルを代表する女性シンガーとしての地位を確立しています。

それ以外にもライブ盤『Experience: Jill Scott 826+』(2001年)、コラボ作品集『Collaborations』(2007年)といったアルバムもリリースしています。

ようやくJill Scottを紹介できました!

Erykah BaduAngie Stoneと並ぶ2000年代ネオソウルを代表する女性シンガーですが、何故か当ブログでは紹介する機会を逸していました。

1700本近く記事投稿している当ブログですが、僕の音楽嗜好で言えば最初の500本以内に紹介すべきアーティストだったという気がします。いつでも紹介できるアーティストなので次回でいいや・・・そんな思いでズルズル来てしまいました(泣)

やはりJill Scottと言えば、デビュー作『Who Is Jill Scott? Words and Sounds Vol. 1』ですね。ジャジー・ソウル・アルバムと聞いて、本作を真っ先に思い浮かべる方も多いのでは?

Jazzy Jeff率いるA Touch of Jazz(ATOJ)の面々(Jeff Townes(Jazzy Jeff)Andre HarrisVidal DavisDre & Vidalコンビ、Darren HensonKeith PelzerCarvin Haggins)をプロデューサーに迎え、極上のジャジー・ソウルを聴かせてくれます。

ATOJ以外にJames PoyserThe Grand Wizzards(The Roots)Ted Thomas, Jr.もプロデュースで参加しています。

正直言えば、リアルタイムで最初に聴いた頃は、それほど凄い作品だとは思っていませんでした。同時期に聴いたErykah Badu『Mama's Gun』Angie Stone『Black Diamond』あたりと比較してインパクトが弱い印象があったからかもしれません。あとは結構アルバムが長いので(隠しトラック、国内ボーナス・トラック含めると20曲)、それがマイナスに作用していたのかも?

そんな訳で、リリースからしばらく経ってから本作の素晴らしさにジワジワと気付いた次第です。

改めて聴き直すと、歌手であると同時に、詩人、女優(ミュージカル、テレビ映画の出演経験もある)でもある彼女の表現力の豊かさや、引き出しの多さに魅了されます。あとはATOJの面々の仕事ぶりにも関心してしまいます。

Jill Scottの代表作だけではなく、2000年代R&Bを振り返る上でも絶対欠かせない1枚だと思います。特に女性の方は気に入る1枚なのでは?

全曲紹介しときやす。

「Jilltro」
輝かしいキャリアのスタートとなるイントロ。Darren Hensonプロデュース。

「Do You Remember」
Andre Harris/Keith Pelzerプロデュース。ATOJらしいジャジー・ソウル・サウンドにのって、♪どうしてつれないの?♪とJillが語りかけます。何気ない雰囲気が素晴らしいですね。
http://www.youtube.com/watch?v=Z97o_rCDuPc

「Exclusively」
ポエトリー・リーディング的な1曲。朝のマーケットでの短いやりとりを1つのストーリーに仕上げています。Jeff Townesプロデュースによる浮遊感に満ちたジャジーな音空間がいい感じ。
http://www.youtube.com/watch?v=6DJTxXugl5s

「Gettin' In the Way」
アルバムからの1stシングル。サウンドはメロウなジャジー・ソウルに仕上がっていますが、歌詞は彼氏をめぐる女同士のバトルを歌ったものです。PVにも出てきますが、ピアスを外して戦闘モードに突入です。Vidal Davisプロデュース。
http://www.youtube.com/watch?v=OiR6sU1igKM

「A Long Walk」
アルバムからの2ndシングル。全米R&Bチャート第9位のヒットとなりました。リラックス・モードのジャジー・グルーヴが心地好いラブ・ソングです。♪The Rootsを聴くのもいいわよ♪といった歌詞も飛び出すあたりも大好きです。Dre & Vidalプロデュース。
http://www.youtube.com/watch?v=TSYMKUtNuw8

「I Think It's Better」
次の「He Loves Me (Lyzel in E Flat)」への前フリとなる1曲。現在の恋人に新しい恋人に出会ったことを告げます。Andre Harrisプロデュース。

「He Loves Me (Lyzel in E Flat)」
「I Think It's Better」からの流れで、自分を愛してくれる新しい恋人について歌っています。当時のJillの恋人で本作のアートワークを手掛けたLyzel Williamsのことを歌ったものです(二人は結婚しますが、結局離婚してしまいました)。Keith Pelzerプロデュースによるエレガント&ミステリアスなサウンドも印象的です。
http://www.youtube.com/watch?v=pY-CACRCdt8

「It's Love」
個人的にはアルバムで一番のお気に入り。ジャジーなグルーヴ感という点ではアルバムで一番楽しめると思います。クール&メロウな音空間がたまりません!Keith Pelzer/Darren Hensonプロデュース。♪ラブ・ラブ・ラブ・ラブ・ラブ・ラブ〜♪
http://www.youtube.com/watch?v=uW76q2OcCR4

「The Way」
この曲もシングルカットされました。表現力豊かなJillのヴォーカルを堪能できる素敵なミディアム・スロウです。聴き重ねるほど胸に響いてきます。Dre & Vidalプロデュース。
http://www.youtube.com/watch?v=SCerHrqWQkQ

「Honey Molasses」
不思議な音空間の中でJillが語りかけます。歌っているというよりも演じているといった感じですね。Carvin Haggins/Vidal Davisプロデュース。

「Love Rain」
ポエトリー・リーディング風の仕上がり。彼女にとっては歌もポエトリー・リーディングも並列な表現手段なのでしょうね。Vidal Davisプロデュース。このオリジナルと後述するMos Defをフィーチャーしたリミックスと聴き比べるの楽しいと思います。
http://www.youtube.com/watch?v=uzZOdcnW5Qo

「The Roots (Interlude)」
The Grand Wizzards(The Roots)プロデュース。『The Roots Come Alive』での「You Got Me」を使ったインタールード。

「Slowly Surely」
「It's Love」、「Brotha」と並ぶお気に入り。密かに人気の高い1曲なのでは?エレガント&クールなジャジー・グルーヴ感は秋に似合う気がします。Moe Koffman「Days Gone By」をサンプリングしています。Darren Hensonプロデュース。
http://www.youtube.com/watch?v=7GmFaQ5FSno

「One Is the Magic #」
スパニッシュ・テイストの仕上がりでアルバムにアクセントをつけています。Vidal Davisプロデュース。
http://www.youtube.com/watch?v=mymiKkgC2vc

「Watching Me」
Ted Thomas, Jr.プロデュース。Roy Ayers「No Stranger to Love」ネタのトラックが心地好いですね。
http://www.youtube.com/watch?v=u5OegUCe704

「Brotha」
この曲も僕のお気に入り。Joe Williams「Get Out Of My Life Woman」をサンプリングした小粋なトラックをバックに、黒人男性へ熱いメッセージを送る社会派ソングです。彼女の表現力の素晴らしさを実感できます。Keith Pelzerプロデュース。
http://www.youtube.com/watch?v=OFA7-wfmhFY

「Show Me」
ラストはしっとりとしたミディアム・スロウ。♪行動で見せなさいよ!♪とJillに迫られます!Vidal Davisプロデュース。
http://www.youtube.com/watch?v=UUNINklSItI

本編はここまでです。

「Try/Love Rain(Head Nod Remix featuring Mos Def) 」
隠しトラック扱いの2曲。「Try」はJames Poyserプロデュース。ATOJによる本編とは異なるサウンドで楽しませてくれます。「Love Rain(Head Nod Remix featuring Mos Def)」はMos Defをフィーチャーしたリミックスです(Vidal Davisプロデュース)。Hip-Hop好きの方は要チェックを”
「Love Rain(Head Nod Remix featuring Mos Def) 」
http://www.youtube.com/watch?v=nZiBF4kRRvI

国内盤にはEric Robersonとのデュエット「One Time」も収録されています。

Jill Scott feat. Eric Roberson「One Time」
http://www.youtube.com/watch?v=i3LeMb7BKBU

曲数多いので記事書くの大変でした(笑)

未聴の方は他のJill Scott作品もどうぞ!

『Experience:Jill Scott 826+』(2001年)
Experience:Jill Scott 826+

『Beautifully Human: Words and Sounds Vol. 2』(2004年)
ビューティフリー・ヒューマン

『Collaborations』(2007年)
Jill Scott Collaborations

『The Real Thing: Words and Sounds Vol. 3』(2007年)
Real Thing: Words & Sounds 3
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2010年09月14日

Digital Underground『Sons Of The P』

2ndもP-Funkネタ満載☆Digital Underground『Sons Of The P』
Sons of the P
発表年:1991年
ez的ジャンル:P-Funk系Hip-Hop
気分は... :ドルフィンズ開幕白星スタート!

Shock Gを中心としたHip-HopグループDigital Undergroundの2回目の登場です。

デビュー・アルバム『Sex Packets』(1990年)に続いて紹介するのは、2ndアルバム『Sons Of The P』(1991年)です。

Digital Underground(DU)と言えば、"P-Funk好きが作ったHip-Hop"といった感じでFunkadelicParliament等のP-Funkネタを使ったトラックと、お馬鹿モードのラップで90年代前半のHip-Hop黄金期を飾ったHip-Hopグループの1つでした。また、一時期2Pacが在籍していたグループとしても知られています。

僕も『Sex Packets』は大好きで当時かなり聴いていました。今でも「Humpty Dance」「Doowutchyalike」といったクラシックは大好きで聴いています。

「Humpty Dance」(From 『Sex Packets』)
 http://www.youtube.com/watch?v=xylYIkhGEAY
「Doowutchyalike」(From 『Sex Packets』)
 http://www.youtube.com/watch?v=QJ0FWt0omQc

今日紹介する『Sons Of The P』(1991年)は、『Sex Packets』の後、6曲入りEP『This Is an EP Release』(1991年)を挟んでリリースされた2ndアルバムです。

正直、『Sex Packets』と比較すると、殆ど忘れ去られたアルバムかもしれません。確かに『Sex Packets』のようなインパクトはありませんが、きちんと聴けばP-Funkネタのトラックに溢れたDUらしいHip-Hopを楽しめるアルバムに仕上がっています。

P-Funk軍団の総帥George Clintonの参加も要チェックです。また、Naughty By NatureもTreachもゲスト参加しています。

良くも悪くも90年代前半らしいHip-Hopアルバムです。
P-Funkの息子達によるHip-Hopを楽しみましょう!

全曲紹介しときやす。

「The DFLO Shuttle」
オススメその1。オープニングは2Pacもフィーチャーされています。腰にくる重くうねるトラックが格好良いですね。The Meters「Funky Miracle」ネタ。

「Heartbeat Props」
オススメその2。Funkadelic「Freak Of The Week」ネタやトラックのブリブリ感が、いかにもP-Funk好きのHip-Hopという感じで大好きです。

「No Nose Job」
オススメその3。アルバムからの2ndシングル。お馬鹿モードのPVも含めて、DUらしさ全開の仕上がりです。Parliament「Aqua Boogie」、Dyke & The Blazers「Let A Woman Be A Woman, Let A Man Be A Man」ネタ。
http://www.youtube.com/watch?v=7O8AyJ2rvy8

「Sons Of The P」
P-Funk軍団の総帥George Clintonをフィーチャー。ネタもParliament「Flash Light」Zapp「More Bounce To The Ounce」というP-Funkの王道を行きます。その割には少し大人しい気もしますが・・・

「Flowin' On The D-Line」
地を這うかのようなへヴィなトラックが印象的です。Prince「Housequake」Parliament「Aqua Boogie」ネタ。

「Kiss You Back」
オススメその4。アルバムからの1stシングルにもなったクラシック。Funkadelic「(Not Just) Knee Deep」ネタのトラックが実にキャッチーです。いつ聴いてもユル〜い感じがDUらしくて大好きです。同じ「(Not Just) Knee Deep」ネタのDe La Soul「Me, Myself & I」とセットで聴きたくなりますね。
https://www.youtube.com/watch?v=qei_zG_kkUI

「Tales Of The Funky」
オススメその5。Funkadelic「One Nation Under A Groove」ネタのユルユル・トラックがクセになるP-Funkモード全開のファンキー・チューンです。

「The Higher Heights Of Spirituality」
インタールード的なトラック。

「Family Of The Underground」
オススメその6。Sly & the Family「Family Affair」ネタのクール・トラックにのって、ポッセカット的な楽しさを堪能できます。P-Funk度は低いですが、格好良さでいけばアルバム随一かも?

「The D-Flowstrumental」
P-Funkテイストに溢れたインスト・チューン。

「Good Thing We're Rappin'」
ラストは約11分半の大作です。ゴリゴリと押しまくります。

『Sex Packets』(1990年)
Sex Packets

昨日よりNFLの第1週が本格的に開幕しました。
我がドルフィンズはアウェイでビルズに15対10で勝利しました。
TV放映が無いのが残念ですが、ハイライト動画をチェックした限りでは守備陣が奮闘したようですね。次週バイキングス戦は攻撃陣にも爆発して欲しいです。

それ以外では昨シーズンのAFC王者のコルツがまさかの黒星スタートとなりました。チームの中心であるQBマニングは素晴らしい出来だったようなので、それ程心配する必要はないのかもしれませんが・・・
posted by ez at 02:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 1990年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする