2010年09月26日

Bin-Jip『Enter』

ハンガリーの4つの才能が結集したTrip Hop/Nu-Jazzユニット☆Bin-Jip『Enter』
ENTER
発表年:2010年
ez的ジャンル:ハンガリーTrip Hop/Nu-Jazz
気分は... :"芸術の秋"に相応しい1枚

今回はTrip Hop/Nu-Jazzの新譜Bin-Jip『Enter』です。
ネットで新譜をチェックする中で気になり、ゲットした1枚です。

Bin-Jipは、女性ジャズ・ヴォーカリストHarcsa Veronika、ジャズ・ギタリストGyemant Balint、ジャズ・ピアニストKaltenecker Zsolt、そしてDJのAndrew Jという4人のハンガリー出身ミュージシャン/DJが結成したユニットです。

Harcsa Veronika(1982年生まれ)は2005年にデビュー・アルバム『Speak Low』をリリース。その後2nd『You Don't Know It's You』(2007年)、3rd『Red Baggage』(2008年)といったアルバムをリリースしています。

Gyemant Balint(1983年生まれ)は2008年ノルウェーの音楽大学を卒業後、自身のトリオ等でプレイしています。

Kaltenecker Zsolt(1970年生まれ)は、ヨーロッパをはじめワールドワイドに活躍するジャズ・ピアニスト。数多くのリーダー作を残しています。

Andrew J(1971年生まれ)は90年代からDJ活動を開始し、2002年にはKaltenecker Zsoltと組み、Andrew J & KalteneckerとしてジャジーHip-Hop作品『Melodies』をリリースしています。

僕もHarcsa Veronikaのキュートな笑顔が印象的な『Red Baggage』やジャジーHip-Hop名盤の誉れ高いAndrew J & Kaltenecker『Melodies』あたりはCDショップで試聴した記憶があります。

そんなハンガリー出身のメンバーが結集して生み出したのは、Trip Hop/Nu-JazzサウンドにキュートなHarcsaのヴォーカルやKaltenecker、Gyemantによるインプロビゼーション、Andrew Jのスクラッチが絡んだ独自の音世界です。Trip Hop/Nu-Jazzの枠に収まらない楽曲もあり、彼らの持つ幅広い音楽性も楽しめます。

正直、Harcsa Veronikaにはアコースティック・ジャズのイメージがあったので、Trip Hop/Nu-Jazzサウンドをバックに歌うのは意外でしたね。

サウンド面では、Trip Hopですがダウナー・テイストはなく、フロアライクなNu-Jazzでもジャズらしいインプロが聴けるといったあたりが面白いですね。

4人のメンバーの持つ多様な個性が、足し算ではなく掛け算で有機的に結合させることに成功していると思います。

とにかく聴いていて飽きない面白さを持った作品です。
"芸術の秋"に相応しい1枚だと思います。

全曲紹介しときやす。

「Enter」
オススメその1。Bin-Jip独自のサウンドを堪能できるTrip Hopチューン。ダークなサウンドとHarcsaのキュートな歌声、Andrew Jのスクラッチが不思議な音世界へと誘います。

「Step」
哀愁のメロディと少しウエットなHarcsaのヴォーカルが印象的です。

「Heat」
このユニットが単にフロアライクなTrip Hop/Nu-Jazzサウンドのみではない、アーティスティックなユニットであることを認識させてくれる演奏です。

「Where Is She」
オススメその2。歌詞は天国へと旅立った女性へのレクイエムのようです。悲しみと安息を願う穏やかさが入り混じったサウンドが印象的です。時計を巻き戻して過去へタイムスリップするような不思議なイントロにもグッときます。

「One Word」
美しくも虚しいムードが漂うTrip Hopチューン。中盤以降のリズミカルな展開がいいですね。

「All Excuses」
オススメその3。フロアライクなNu-Jazzを期待する人向けの1曲。このユニットらしいアーティスティックな疾走感にグッときます。

「Outer Eye」
オススメその4。個人的には一番のお気に入り。疾走するNu-JazzサウンドにクールなHarcsaのヴォーカル、Kalteneckerのピアノ、Gyemantのギターが絡みます。特にKalteneckerの素晴らしいソロが聴きモノです。

「Bin-Jip」
ユニット名を冠した1曲。哀愁モードの中にも力強い意志を感じます。Harcsaのヴォーカリストとしての表現力を堪能できます。

「Keep Away」
ポストロック/エレクトロニカ調の仕上がり。Harcsaのキュートな歌声はこういった曲にもマッチしますね。

「8Days」
オススメその5。ズッシリくるアブストラクトなダンサブル・サウンドが好きです。♪Day one〜♪Day two〜♪Day three〜♪と8日間の心境を綴った歌です。もっと長尺で聴きたいですね。16Days位でも良かった(笑)

「Earthquake」
オススメその6。Gyemant Balintのギターがフィーチャーされたミステリアスな仕上がり。ミニマルな雰囲気の中で最後に大激震が起こります。

「Hair Down」
ラストはKalteneckerのピアノをバックにHarcsaのヴォーカルを存分に堪能できます。

「Varoterem」
国内盤のボーナス・トラックです。昨年亡くなったハンガリーの有名なアーティストCseh Tamasの作品をカヴァー。Harcsaがハンガリー語で歌い追悼しています。元々はCseh Tamasのトリビュート・アルバム『Eszembe Jutottal - Fohajtas Cseh Tamas Elott』に収録されていたものです。

発売元(Whereabouts Records)のサイトで試聴できます。
http://whereabouts-records.com/binjip_enter.htm

興味がある方はAndrew J & KalteneckerHarcsa Veronikaのソロもチェックしてみては?

Andrew J & Kaltenecker『Melodies』(2002年)
MELODIES

Harcsa Veronika『Speak Low』(2005年)
スピーク・ロウ

Harcsa Veronika『You Don't Know It's You』(2007年)
ユー・ドント・ノウ・イッツ・ユー

Harcsa Veronika『Red Baggage』(2008年)
レッド・バゲッジ
posted by ez at 14:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 2010年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする