発表年:1974年
ez的ジャンル:アブストラクト系ブルース/ソウル/ファンク
気分は... :20年早すぎたサウンド感覚!
今回はShuggie Otis『Inspiration Information』(1974年)です。
Shuggie Otis(本名:Johnny Alexander Veliotes)は1953年L.A.生まれ。父親は偉大なブルース・ミュージシャンJohnny Otisです。その影響で幼い時から音楽に親しんでいた彼は60年代半ばよりギタリストとして活動するようになります。
やがて、Al Kooperに見出され、Kooperとの共演作『Kooper Session』(1969年)をリリースします。当時の彼はまだ15歳でした。
その後、『Here Comes Shuggie Otis』(1970年)、『Freedom Flight』(1971年)、『Inspiration Information』(1974年)といったアルバムをリリースしていますが、商業的な成功を収めることはありませんでした。
昔は父親Johnny OtisやAl Kooperの流れで語られることが多かったのかもしれませんが、90年代以降はその早すぎた先進サウンドで再評価を高めたアーティストですね。
そんなShuggie Otisの再評価を決定付けた1枚が今日紹介する『Inspiration Information』(1974年)です。
今回紹介するのはオリジナル9曲に『Freedom Flight』(1971年)からの4曲を追加収録した再発版です。ジャケもオリジナルとは異なりますが、追加曲には人気の「Strawberry Letter 23」等も含まれており、かなりお得感のある1枚です。
『Inspiration Information』の持つ感覚は、本作がフリーソウル/サバービア、Hip-Hop方面のみならず、クラブミュージックやポストロック/エレクトロニカ方面からも評価されている点からも確認できます。
実際、再発版にはGilles PetersonやHigh LlamasのSean O'Haganからの賛辞が記載されています。
ホーン、ストリングス等の一部楽器以外は全てOtisは演奏しています。リズムボックスを用いたアブストラクトな密室的サウンドは、ブルース、ソウル、ファンク、ジャズ等をルーツとしつつも、90年代のローファイ・サウンドやエレクトロニカを先取りしている印象を受けます。
とにかく、1974年にこんなアブストラクト/ローファイなサウンド感覚を持ったミュージシャンが居たことに驚かされますね。
20年早すぎたアルバムは、聴けば聴くほど面白さが増してきます。
全曲紹介しときやす。
「Inspiration Information」
美しいメロディとタイトなビートが印象的なタイトル曲。ジャジーHip-Hopファンはグッとくるアブストラクトな浮遊感がたまりません。
http://www.youtube.com/watch?v=mDrVSiahGqw
「Island Letter」
タイトルの通り、アイランド・ムード満点のセンチメンタルなメロウ・チューン。リズムボックスのローファイ感も印象的です。
http://www.youtube.com/watch?v=8WHrCKIj6do
当ブログでも紹介したDigable Planets「For Corners」でサンプリングされていまいsた。
Digable Planets「For Corners」
http://www.youtube.com/watch?v=Mn-qn1yZGuU
「Sparkle City」
ファンキーなミッド・グルーヴ。音数は少ないですが、ビタースウィートな味わいにグッときますね。
http://www.youtube.com/watch?v=2gy7Thmqs_A
「Aht Uh Mi Hed」
本作のハイライトと言えば、各種コンピでもセレクトされている本曲かもしれませんね。リズムボックスの寂しげなビートが響き渡る至極の哀愁ローファイ・チューンです。寂しげな疾走感(?)に惹かれますね。
http://www.youtube.com/watch?v=BLgYEeXNLJw
Monica「I Wrote This Song」、Mya feat. Sean Paul「Things Come And Go」、Black Eyed Peas「Joints & Jam (The Joint Mix) 」、Absolute Beginner「Liebes Lied」等でサンプリングされています。
Monica「I Wrote This Song」
http://www.youtube.com/watch?v=FuUDvJ01vxM
Mya feat. Sean Paul「Things Come And Go」
http://www.youtube.com/watch?v=3K7awZjsIcM
Black Eyed Peas「Joints & Jam (The Joint Mix) 」
http://www.youtube.com/watch?v=SR0aotJllQg
Absolute Beginner「Liebes Lied」
http://www.youtube.com/watch?v=o2gRCL66uDM
「Happy House」
1分半にも満たない曲ですが、エレクトロニカな魅力に溢れた1曲に仕上がっています。
「Rainy Day」
ロマンティックなギターの音色にグッとくるインスト。当ブログでも紹介したBeyonce「Gift From Virgo」でサンプリングされており、それでお聴きの方も多いのでは?
http://www.youtube.com/watch?v=tf9OqR919LY
Beyonce「Gift From Virgo」
http://www.youtube.com/watch?v=8xTsm5RhhGc
「XL-30」
エレクトロニカしているミニマルなインスト。1974年時点でこのサウンド感覚があったことに驚きです。
http://www.youtube.com/watch?v=3oWoVeRiKsM
「Pling!」
リズムボックスとエレピを中心としたローファイ・メロウ・チューン。
「Not Available」
聴けば聴くほど面白いメロウでアブストラクトなインスト・チューン。Otisならではのクロスオーヴァー感覚に溢れています。J Dilla「Donuts (Outro) 」でサンプリングされています。
http://www.youtube.com/watch?v=PhE5xvyr8to
次からは『Freedom Flight』(1971年)からの追加収録4曲。このセッションにはGeorge Duke、Wilton Felder、父Johnny Otisも参加しています。『Inspiration Information』で聴かれるサウンドの原型を確認でき、改めてShuggie Otisの先進性に驚かされる4曲です。
「Strawberry Letter 23」
1977年に全米R&Bチャート第1位、全米チャート第5位となったThe Brothers Johnsonのカヴァーでお馴染みの1曲。オリジナルである本ヴァージョンは、哀愁のメロウ・ソウルと中盤以降のスペイシー・サウンドが印象的です。
http://www.youtube.com/watch?v=IR1JQOBRrUY
The Brothers Johnson「Strawberry Letter 23」
http://www.youtube.com/watch?v=vbxUtFDKz8k
Brothers Johnsonヴァージョンは定番サンプリング・ソースとしてお馴染みですが、オリジナルである本ヴァージョンもBeyonce「Be With You」、De La Soul「Much More」等でサンプリングされています。
Beyonce「Be With You」
http://www.youtube.com/watch?v=wsvxMVKnlY4
De La Soul「Much More」
http://www.youtube.com/watch?v=qc6LCXYAwr4
「Sweet Thang」
父Johnny Otisとの共作曲。ブルース・フィーリングを前面に押し出した1曲。彼の持つルール、DNAを感じ取ることができます。
http://www.youtube.com/watch?v=FrueloJSigo
「Ice Cold Daydream」
疾走感溢れるファンキー・チューン。今回収録された全13曲の中で一番派手な仕上がりかもしれません。
http://www.youtube.com/watch?v=GQdrMN2LLb4
「Freedom Flight」
ラストは13分近くある長尺曲。スピリチュアル・ジャズ好きの人はグッとくる1曲なのでは?
http://www.youtube.com/watch?v=aQkFnalsnG0
Al Kooper & Shuggie Otis『Kooper Session』(1969年)
『Here Comes Shuggie Otis』(1970年)
『Freedom Flight』(1971年)