2010年10月08日

Pat Metheny『Secret Story』

構想6年・・・圧倒的なスケール感を持った感動作☆Pat Metheny『Secret Story』
Secret Story
発表年:1992年
ez的ジャンル:究極のデトックス・ミュージック
気分は... :秘境へ・・・

久々のPat Methenyです。

これまで紹介してきたPat Metheny(Pat Metheny Group)作品は以下の4枚。

 『Offramp』(1982年)
 『First Circle』(1984年)
 『Still Life (Talking)』(1987年)
 『Letter from Home』(1989年)

今日紹介するのは1992年リリースの『Secret Story』です。

Pat Methenyのエントリーで毎回書いていますが、『First Circle』(1984年)、『Still Life (Talking)』(1987年)、『Letter from Home』(1989年)、『Secret Story』(1992年)の4枚は、僕にとっての究極のデトックス・ミュージックです。

これまでは紹介してきたアルバムは、Pat Metheny Group(PMG)名義のものばかりでしたが、本作はPat Metheny名義の作品です。と言うよりも、London Orchestraをはじめ、多数のミュージシャンが参加している一大プロジェクト作品と説明した方が適切かもしれませんね。

Steve Rodby(b)、Paul Wertico(ds)、Lyle Mays(key)、 Armando Marcal(per)といったPMGメンバーも参加していますが、PMGの枠で収まらないよりスケール感の大きな音世界の構築を試みた意欲作です。構想6年ということだけあって、Methenyにしかできない緻密に構築されたサウンドで我々を異次元の音世界へと誘ってくれます。

Pat Metheny作品は聴いていると大自然の映像が思い浮かんだり、世界中を旅している気分になるものが多いですが、本作もそんな気分を存分に堪能できます。特に本作は秘境を旅している気分になりますね。

全14曲76分を越える大作ですが、聴き終えると素晴らしいドキュメンタリーを観終えたような深い感動に包まれます。

全曲紹介しときやす。

「Above The Treetops」
カンボジアの霊歌「Buong Suong」をベースとしたオープニング。カンボジアの子供たちの声をサンプリングした神秘的な音空間の中を、Methenyのギターが美しくも切なく響き渡ります。このオープニングを聴いただけでマインドがリセットされます。
http://www.youtube.com/watch?v=RVl_zZvPT-A

「Facing West」
Lyle Mays(p) 、Armando Marcal(per)といったPMGメンバーが参加しています。PMGの諸作品がお好きな人であれば気に入るであろう、雄大な躍動感が魅力です。前向きモードになりたい時に聴きたい1曲です。『レールウェイストーリー』のBGMにもピッタリな感じですね。
http://www.youtube.com/watch?v=j8imgW-7f0M

「Cathedral In A Suitcase」
壮大なスケール感と緻密なサウンド構築にグッときます。雄大な大自然を目の当たりにし、圧倒される旅人の気分になります。
http://www.youtube.com/watch?v=jDJBqyPx33o

「Finding And Believing」
変拍子を用いたエスニック・フュージョン(?)とでも呼びたくなる1曲。1曲のみでかなり腹一杯になる充実の仕上がりです。London Orchestraによる中盤の雄大なストリングスも素晴らしいですね。Will Lee(b)& Steve Ferrone(ds)とPMGのSteve Rodby(b)& Paul Wertico(ds)という2組のリズム隊を起用しており、各パートを聴き比べるのも楽しいのでは?Mark Ledfordのヴォーカルにもグッときます。
http://www.youtube.com/watch?v=F55OKMRL3kk

「The Longest Summer」
ただただ美しい1曲。お待ちかね!Methenyのギターシンセのソロも存分に堪能できます。本曲も「Finding And Believing」同様、2組のリズム隊を起用しています。
http://www.youtube.com/watch?v=gC084hF1ivU

「Sunlight」
ライトタッチのフュージョン・チューン。「Above The Treetops」と並んで僕のリピート回数が多い楽曲です。さり気なさの中にMethenyらしい緻密に計算された音世界が展開されます。「Facing West」同様、聴いていると元気と勇気が湧いてきます!
http://www.youtube.com/watch?v=PWVbD3w4wAA

「Rain River」
エレクトリック・シタールが印象的なミステリアス・チューン。人類未開の大自然を連想させるMethenyならではのスケール感と音像感を持った1曲です。
http://www.youtube.com/watch?v=J5gE-lePvBU

「Always And Forever」
Charlie Haden(b)、Toots Thielemans(harmonica)参加の美しいアコースティック・バラード。MethenyのギターとThielemansのハーモニカのダブル感動でウルっときます(笑)
http://www.youtube.com/watch?v=b_a3FxR0IwQ

「See The World」
PMGを連想させる透明度の高いフュージョン・チューン。クレジットを見る限り、一番参加メンバーの多い楽曲です。それだけ複雑に構築されているのでしょうね。Methenyのギター・ソロを存分に堪能できます。
http://www.youtube.com/watch?v=16JSqXY5O-0

「As A Flower Blossoms (I Am Running To You) 」
矢野顕子さん参加曲。タイトルは彼女が歌う♪花のように咲いてあなたのもとへ駆けて行く♪というフレーズを英語にしたものです。
http://www.youtube.com/watch?v=K3wPRd85mIA

「Antonia」
アコーディオンの旋律が味わい深い仕上がり・・・と書きたいのですが、このアコーディオン・サウンドはMethenyがシンクラヴィアで弾いているものです。ヨーロッパの田舎町の光景が想起されます。
http://www.youtube.com/watch?v=W7EyCk2_Jc4

「The Truth Will Always Be」
隙間だらけの音空間が様々な音色でジワジワと埋められていきます。生物や植物の成長を早回しにした映像を観ながら聴くとピッタリな気がします。
http://www.youtube.com/watch?v=a6qSJtwT3qI

「Tell Her You Saw Me」
アルバムのフィナーレを予感させる美しい1曲。全てを優しく包み込んでくれます。
http://www.youtube.com/watch?v=GBuzcYWrVo0

「Not To Be Forgotten (Our Final Hour) 」
London Orchestraによる美しいオーケストレーションでアルバムは幕を閉じます。アルバムの余韻を堪能しましょう。
http://www.youtube.com/watch?v=xdlGd0N6d18

2007年には未発表の音源5曲を追加収録した再発盤がリリースされています。

Pat Metheny Groupの過去記事もご参照下さい。。

『Offramp』(1982年)
オフランプ

『First Circle』(1984年)
ファースト・サークル

『Still Life (Talking)』(1987年)
Still Life (Talking)

『Letter from Home』(1989年)
Letter from Home
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2010年10月07日

Curtis Mayfield『Give, Get, Take And Have』

ラブソング路線へ変更したCurtis作品☆Curtis Mayfield『Give, Get, Take And Have』
ギヴ・ゲット・テイク・アンド・ハヴ+1(紙ジャケット仕様)
発表年:1976年
ez的ジャンル:ラブソング路線カーティス
気分は... :チェンジ!

久々のCurtis Mayfieldです。
当ブログで紹介したCurtis作品は以下の6枚。

 『Curtis』(1970年)
 『Curtis/Live!』(1971年)
 『Superfly』(1972年)
 『Back To The World』(1973年)
 『Got To Find A Way』(1974年)
 『Something To Believe In』(1980年)

7枚目に紹介するCurtis作品は『Give, Get, Take And Have』(1976年)です。

当初、先日紹介したJohn Legend & The Rootsによるカヴァー・アルバム『Wake Up!』に収録された「Hard Times」の作者Curtisヴァージョンが収録されている『There's No Place Like America Today』(1975年)を紹介しようと思ったのですが、何となく気分で『There's No Place Like America Today』の次の作品となる『Give, Get, Take And Have』をセレクトしてしまいました。

辛辣な社会メッセージでアメリカ社会に警鐘を鳴らした『There's No Place Like America Today』から一転し、ラブソング中心の『Give, Get, Take And Have』に対する評価は極めて低いですね。きっと70年代Curtis作品の中でも最も後回しにされがちな1枚かもしれません。

"ニューソウル名盤"との評価が高い『There's No Place Like America Today』ですが、チャート・アクションは振るいませんでした。それがCurtisに路線変更を決意させたのでしょう。それが明確に打ち出された作品が本作『Give, Get, Take And Have』です。結果的には路線変更してもチャート・アクションは不振でしたが・・・

脱社会派路線やディスコ・サウンドの導入などが批判の対象となっているのかもしれませんが、"ニューソウル"という重荷から解放された軽やかなCurtisに出会えるのが本作の魅力だと思います。

レコーディングには、Henry Gibson(congas、bongos)、Donnelle Hagan(ds)、Kitty Haywood Singers(back vo)、Rich Tufo(key)、Floyd Morris(key)、Joseph Scott(b)、 Gary Thompson(g)、 Phil Upchurch(g)が参加しています。特にKitty Haywood Singersによる女性コーラスがアルバム全体に華やかな雰囲気を与えています。

決して代表作ではありませんし、いきなり聴くようなCurtis作品ではありませんが、低迷期の1枚としてスルーしてしまうには惜しい1枚です。

名盤の誉れ高いCurtis作品が素晴らしいのは勿論ですが、脇の作品でもいろいろ楽しめるのがCurtisの魅力だと思います。

先入観なしに聴けば、充実の全8曲ですよ!

全曲紹介しときやす。

「In Your Arms Again (Shake It)」
アコースティック・ギターとエレクトリック・ギターの生み出すファンキー・グルーヴとKitty Haywood Singersによる女性コーラスにグッとくるグルーヴィー・チューン。前作からの路線変更を印象付けるオープニングです。

「This Love Is Sweet」
タイトルの通り、ラブリー&スウィートなラブソング。温かく、優しく、柔らかなミディアム・スロウにグッときます。ここでもKitty Haywood Singersのコーラスが盛り上げてくれます。

「P.S. I Love You」
素敵なストリングス・アレンジが印象的なラブソング。Curtisのファルセット・ヴォーカルがスウィートに響きます。

「Party Night」
シングル・カットされたディスコ・チューン。Henry Gibsonのパーカッションが実に気持ち良いですね。"ニューソウル"なCurtisがお好きな方からは批判の対象となる楽曲なのでしょうが、大好きな1曲です。こうしたディスコ・アプローチは『Do It All Night』(1978年)でさらに強化されることになります。

「Get a Little Bit (Give, Get, Take and Have)」
曲調は"ニューソウル"っぽいですが、♪Good! Good!Good!♪と迫るラブ・ソングです。このあたりのグルーヴ感は"ニューソウル"なCurtisがお好きな方も気に入るのでは?

「Soul Music」
個人的には一番のお気に入り。ホーン&フルートの音色が心地好いライト・グルーヴにグッときます。ポップでライトなアレンジが本作を象徴していると思います。

「Only You Babe」
シングル・カットされ、全米R&Bチャート第8位となりました。CurtisとKitty Haywood Singersのコンビネーションが絶妙なスウィート・ラブソングです。

「Mr. Welfare Man」
本作の中で最も社会派の楽曲かもしれません。当ブログで紹介したJurassic 5「Gotta Understand」のサンプリングソースになっています。

Curtisの過去記事もご参照下さい。

『Curtis』(1970年)
Curtis

『Curtis/Live!』(1971年)
Curtis/Live!

『Superfly』(1972年)
Superfly (1972 Film)

『Back To The World』(1973年)
Back to the World

『Got To Find A Way』(1974年)
ガット・トゥ・ファインド・ア・ウェイ 74年作

『Something To Believe In』(1980年)
サムシング・トゥ・ビリーヴ・イン+1(紙ジャケット仕様)
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2010年10月06日

L'Altra『Music Of A Sinking Occasion』

静寂の音世界が特別な感情を呼び覚ます・・・☆L'Altra『Music Of A Sinking Occasion』
Music of a Sinking Occasion
発表年:2000年
ez的ジャンル:シカゴ音響系ポストロック/スロウコア/サッドコア
気分は... :心の奥に封印していたものが・・・

今回は密かに愛聴し続けている1枚、L'Altra『Music Of A Sinking Occasion』(2000年)です。

L'Altraはシカゴ出身のグループ。結成時のメンバーは、Lindsay Anderson(vo、key)、 Joseph Costa(vo、g)、Ken Dyber(b)、Eben English(ds)の4名。

1999年にデビューEP『L'Altra』をリリース。その後、デビュー・アルバム『Music Of A Sinking Occasion』(2000年)、2ndアルバム『In the Afternoon』(2002年)をリリースした後、DyberとEnglishが脱退し、Lindsay AndersonJoseph Costaの男女デュオとして活動するようになります。

2005年にTelefon Tel AvivのJoshua Eustisプロデュースによる3rdアルバム『Different Days』をリリースしますが、その後グループは活動休止状態となります。その間にLindsayとJosephはそれぞれソロ・アルバムをリリースしていましたが、今年に入り5年ぶりの新作『Telepathic』をリリースしています。

と簡単なプロフィールを書きましたが、今回紹介する『Music Of A Sinking Occasion』以外はきちんとフォローしているグループではないので、詳しいところは知りません。

しかしながら、『Music Of A Sinking Occasion』だけは、リアルタイムで購入以来長く愛聴しているお気に入り作品です。

ネットで見ると、スロウコア/サッドコアのグループということらしいですが、僕は正直そのカテゴリー自体がよくわかっていません。当時、シカゴ音響系の作品をよく聴いていた僕は、本作もそうした流れのポストロックという感覚で購入した記憶があります。実際、TortoisやThe Sea and Cakeあたりとツアーを回っていたこともあるようですね。

明るくもなく、派手さもない音ですが、聴いていると妙に落ち着くと同時に、心の奥に眠っていた特別な感情が湧き上がってきます。音数が少ない分、逆に音のない間の余韻や僅かな音像の変化に感動しますね。また、JosephとLindsayの切ない下手うまヴォーカルにグッときます。

現在の僕の音楽嗜好からすると頻繁に聴くタイプの音ではありませんが、それでも急に本作が聴きたくなり、ふとCD棚から手にすることがあります。きっと心のバランスを求めて、本作を聴いている気がします。

細く長く愛聴している1枚です。

全曲紹介しときやす。

「Music of a Sinking Occasion」
タイトル曲はドラムンベース調の仕上がりのインスト。その意味でアルバムの中では特異な楽曲です。チェロやトランペットが響く、アーティスティックな仕上がりが大好きです。

「Little Chair」
美しくも切ないL'Altraならではの音世界を堪能できます。静寂の音空間にJosephとLindsayのヴォーカルが切なく響きます。

「Room Becomes Thick」
フォーキーな味わいながらも不思議な音世界へと誘われます。よくわかりませんが、心の奥に封印していた感情が胸に込み上げてきます。

「Slow as Cake」
Lindsayの繊細なヴォーカルを聴いていると、ジワジワと心が解き放たれていきます。

「Motorme」
音数が少ない分、逆に感性が研ぎ澄まされる気分になります。明るい音ではないのに、聴いていると心が安らいでくるのが不思議ですね。
http://www.youtube.com/watch?v=uF5UgbBtKhA

「Lips Move on Top of Quiet」
美しいピアノが切なくも妖しく響く中盤以降の展開にグッときます。
http://www.youtube.com/watch?v=Ig4vaN_qpog

「Handwashing for Good Health」
Lindsayのヴォーカルが誘うフォーキー・チューン。

「Say Wrong」
ポストロックらしい音響ワールドを堪能できます。淡々としながらも音像の変化にグッときます。こういうの大好き!

「Movement」
L'Altraの魅力が凝縮された1曲。JosephとLindsayのヴォーカルに心が和らぎ、静かなる感動が湧き起こります。

「Music of a Sinking Occasion.Final」
美しいピアノの響きでアルバムは締め括られます。

『L'Altra』(1999年)
L'Altra

『In the Afternoon』(2002年)
In the Afternoon

『Different Days』(2005年)
Different Days

『Telepathic』(2010年)
TELEPATHIC
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2010年10月05日

Cheryl Lynn『In The Night』

Ray Parker, Jr.をプロデューサーに迎えた3rd☆Cheryl Lynn『In The Night』
イン・ザ・ナイト(紙ジャケット仕様)
発表年:1981年
ez的ジャンル:シティ・ビート系ディスコ/ソウル
気分は... :「Got To Be Real」も好きですが...

今回はダンス・クラシック「Got To Be Real」でお馴染みの女性ディスコ/ソウル・シンガーCheryl Lynnの3rdアルバム『In The Night』(1981年)です。

最近、一連のアルバムが国内盤紙ジャケ仕様で再発され、CDショップで見かけることが多いですね。『In The Night』(1981年)も再発された1枚です。

Cheryl Lynn(本名:Lynda Cheryl Smith)は1957年L.A.生まれ。

女性教師を目指していたLyndaでしたが、周囲の薦めでTV番組の「ゴング・ショー」に出演し、見事優勝を果たします。そしてTVでそのパフォーマンスを観て惚れ込んだMarty Paichが彼女へコンタクトし、Totoのデビュー・アルバム『Toto』への参加を要請します。そしてヒット曲「Georgy Porgy」の中でも彼女の歌声を聴くことができます。

音楽ファンはご存知のように、Cheryl Lynnというアーティスト名は"Lynda Chery"という彼女を本名を、Marty Paichが誤って"Cheryl Lynn"と記憶してしまい、それがそのままアーティスト名となりました。

そして、Marty Paich/David Paichのプロデュースで1978年にデビュー・アルバム『Cheryl Lynn』をリリースします。シングル「Got To Be Real」(Cheryl Lynn/David Foster/David Paich作)は全米R&Bチャート第1位、全米チャート第12位のミリオンセラーとなり、一躍レディ・ソウル/ディスコ・クイーンとして注目を浴びるようになりました。

「Got To Be Real」
http://www.youtube.com/watch?v=i8RewEiNLZg

その後、『In Love』(1979年)、『In The Night』(1981年)、『Instant Love』(1982年)、『Preppie』(1983年)、『It's Gonna Be Right』(1985年)、『Start Over』(1987年)、『Whatever It Takes』(1989年)、『Good Time』(1995年)といったアルバムをリリースします。

やはり、「Cheryl Lynn=Got To Be Real」というイメージが強い人ですよね。この永遠のダンス・クラシックは、いつ聴いても色褪せない普遍的な魅力を持ったミラクルな曲ですね。

しかしながら、あまりに「Got To Be Real」のインパクトが強いすぎて、常にそのイメージが付きまとってしまったのも事実ですね。

その意味では「Got To Be Real」収録の『Cheryl Lynn』から入るのが良いのかもしれませんが、アルバム単位で考えると、Ray Parker, Jr.プロデュースの3rd『In The Night』(1981年)や、Luther Vandrossプロデュースの4th『Instant Love』(1982年)あたりの方が楽しめると思います。Jam & Lewis好きの僕としては、彼らが関与した『Preppie』(1983年)、『It's Gonna Be Right』(1985年)も気になりますが・・・

今日紹介する『In The Night』は前述のように、Ray Parker, Jr.をプロデューサーに迎えたアルバムです。CherylとRay Parker, Jr.の出会いは「Got To Be Real」のセッションが最初だった模様です。当時Ray Parker, Jr.は、本作と前後してRay Parker, Jr. & Raydioの「A Woman Needs Love(Just Like You Do)」が全米チャート第4位、R&Bチャート第1位の大ヒットとなり、ノリに乗っていた時期でしたね。

CherylとRay Parker, Jr.の相性は抜群という気がします。ダンス・チューンからスロウまでCherylの持つシンガーとしての魅力を上手に引き出し、さらにそれを実に洗練されたサウンドでまとめ上げています。

レコーディングには、Arnell Carmichael(back vo)、Darren Carmichael(key)、Larry Tolbert(ds)といったRaydioのメンバーをはじめ、Greg Moore(g)、David T. Walker(g)、Wah Wah Watson(g)、Marcus Miller(b)、James Gadson(ds)、Kamau Peterson(p)Michael Sutton(p)、John Barnes(key、syn)、George Dream(key)、Michael Boddicker(syn)、Greg Jackson(p、strings syn)、Sylvester Rivers(p、bass syn)、Ollie E. Brown(per)、J.D. Nicholas(back vo)、Gene Page(strings)等の豪華メンバーが参加しています。

本作からは「Shake It Up Tonight」「In The Night」の2曲がシングル・カットされています。

「Got To Be Real」だけではないCheryl Lynnの魅力を堪能しましょう!

全曲紹介しときやす。

「Shake It Up Tonight」
Michael Sutton/Brenda Sutton作。アルバムからの1stシングル。全米R&Bチャート第5位となったディスコ・クラシック。Gene Pageの華やかなストリングス・アレンジと洗練された疾走感にグッとくるスケール感の大きなダンス・チューンに仕上がっています。Chubb Rock「Party Right」の元ネタです。
http://www.youtube.com/watch?v=TETznfG-O-s

「Show You How」
Cheryl Lynn/Linda Booth/John Barnes作。しっかりと聴かせてくれるバラード。ソウル・シンガーCheryl Lynnの実力を実感できる仕上がりです。
http://www.youtube.com/watch?v=WdhdheOZsCc

「In The Night」
Ray Parker, Jr.作。タイトル曲はアルバムからの2ndシングルとなったクラシック。中山美穂ファンであった僕としては、映画『波の数だけ抱きしめて』の挿入歌の印象も強いですね。Michael Boddickerのシンセ・サウンドが印象的なアーバン・テイストのブラコン・チューンに仕上がっています。
http://www.youtube.com/watch?v=nYi_4e0F8BE

「Hurry Home」
Cheryl Lynn/Greg Jackson作。ジワジワと胸に染み渡るバラード。
http://www.youtube.com/watch?v=vLL5QWn4YRY

「I'm On Fire」
Ray Parker, Jr.作。彼の作り出す洗練されつつもファンキーなグルーヴ感にグッとくる1曲。シングル2曲を除けば一番のお気に入り。
http://www.youtube.com/watch?v=xgHUfnCl0nQ

「With Love On Our Side」
Kamau Peterson/Ray Parker, Jr.作。哀愁モードのバラード。後半のDavid T. Walkerのギターがいい味出しています。
http://www.youtube.com/watch?v=01TSn-nZIJQ

「If You'll Be True To Me」
Ray Parker, Jr./Cheryl Lynn作。軽快なダンス・チューン。曲調的には僕が苦手なタイプの曲ですが、力強いCherylのヴォーカルで救われています。
http://www.youtube.com/watch?v=3bxO4jcYlyE

「What's On Your Mind」
George Dream/Cheryl Lynn作。軽くラテン・フレイヴァーの効いたアップ・チューン。爽快な躍動感が僕好みです。

「Baby」
Ray Parker, Jr./Cheryl Lynn作。ラストはブリブリのファンク・チューンです。Yo-Yo「Givin' It Up」のサンプリング・ソースにもなっています。

再発CDには「Shake It Up Tonight」のシングル・ヴァージョンがボーナス・トラックで追加収録されています。

他のCheryl Lynn作品もチェックしてみて下さい。

『Cheryl Lynn』(1978年)
シェリル・リン(紙ジャケット仕様)

『In Love』(1979年)、
イン・ラヴ(紙ジャケット仕様)

『Instant Love』(1982年)
インスタント・ラヴ(紙ジャケット仕様)
「Say You'll Be Mine」
 http://www.youtube.com/watch?v=6Q_sdGYDhq4
「If This World Were Mine」
 http://www.youtube.com/watch?v=8UxtyceGnEQ

『Preppie』(1983年)
プレッピー(紙ジャケット仕様)
「Encore」
 http://www.youtube.com/watch?v=2OuXbM93bLQ

『It's Gonna Be Right』(1985年)
ゴナ・ビー・ライト(紙ジャケット仕様)
「It's Gonna Be Right」
 http://www.youtube.com/watch?v=zAdc1Etn5As
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2010年10月04日

Judy Roberts Band『The Judy Roberts Band』

人気曲「Never Was Love」、「You Light Up My Life」収録!☆Judy Roberts Band『The Judy Roberts Band』
The Judy Roberts Band
発表年:1979年
ez的ジャンル:ブラジリアン・フュージョン
気分は... :You Light Up My Life

現在、サッカー、イングランド・プレミアリーグ「チェルシー対アーセナル」の大一番を生放送でTV観戦中!前半を終えて、1対0でチェルシーがリード!

アーセナル・ファンの僕ですが、チームの完成度という点でチェルシーの方が1ランク上という気がします。チェルシーは敢えて積極的な補強をしなかったことが、逆に功を奏しているようですね。アーセナルはセスク不在が大きいですし、まだまだチームが出来上がっていない印象です。と言いつつ、後半のアーセナル逆転を期待しています。

今回はクラブジャズ/サバービア好きにはマストな1枚、Judy Roberts Band『The Judy Roberts Band』(1979年)です。

Judy Robertsはシカゴ出身の女性ジャズ・キーボード奏者/シンガー。彼女はジャズ・ギタリストBob Loewyの娘です。

子供の頃からジャズに慣れ親しんでいたJudyは高校卒業すると、自身のトリオを結成します。1968年には自身のアルバムをレコーディングしますが、お蔵入りになってしまったようです。そのため、ロック・ファンにはお馴染みのギタリストHarvey Mandelのアルバム『Get Off in Chicago』(1972年)が彼女の演奏を聴くことができる最も古い作品みたいです。

そして、1979年に初のリーダー作となる本作『The Judy Roberts Band』をリリースします。

その後『The Other World』(1980年)、『Nights In Brazil』(1981年)、『Trio』(1983年)、『You Are There』(1985年)、『I'll See You in my Dreams』(1988年)、『My Heart Belongs to Daddy』(1990年)(※父Bob Loewyとの共演アルバム)、『Route 66』(※Neal Serokaとの共演アルバム)(1995年)、『Circle Of Friends』(1995年)、『Santa Baby』(※Jackie Allenとの共演アルバム)(1999年)、『Autumn Leaves』(※Jackie Allenとの共演アルバム)(2001年)、『In The Moment』(2002年)、『Two For The Road』(2003年)(※Greg Fishmanとの共演アルバム)等のアルバムをリリースしています。

80年代後半にGilles Petersonのコンピ『Jazz Juice』シリーズで本作収録の「Never Was Love」が取り上げられたことで、一気に再評価が高まったアーティストですね。

クラブジャズ・ファンに人気が高いのは『The Judy Roberts Band』『The Other World』『Nights In Brazil』『You Are There』あたりでしょうか。僕の場合、リラックスした雰囲気のアコースティック・ジャズを楽しめる『Circle Of Friends』あたりも愛聴しています。

さて、『The Judy Roberts Band』ですが、前述のクラブ・クラシック「Never Was Love」収録ということで外せない1枚ですね。アルバム全体としてはこの時代らしいフュージョン・アルバムに仕上がっていますが、やはり「Never Was Love」「You Light Up My Life」「Fantasy」といったブラジリアン・テイストの楽曲に惹かれますね。

レコーディング・メンバーはJudy Roberts(key、syn、vo)、Neal Seroka(g)、Sean Silverman(b)、Phil Gratteau(ds、per)、Tony Carpenter(congas、per)です。Judy自身がプロデュース&アレンジを務めています。

やはり、いつ聴いても「Never Was Love」「You Light Up My Life」にはグッときます。

全曲紹介しときやす。

「Never Was Love」
オススメその1。本作のハイライト。前述のようにJudy Robertsの名を世に知らしめた人気曲です(Russ Long作)。Sean Silvermanのグルーヴィーなベースがリードする軽快なブラジリアン・グルーヴは文句無しに格好良いですね。スペイシー感覚もあるフュージョン・サウンドにのって、Judyのヴォーカルが伸びやかに響き渡ります。当ブログで紹介したStefania Ravaのカヴァーもグッドですよ!
http://www.youtube.com/watch?v=aTWRKDcrZBc

「Thumbs」
Sean Silverman作のジャズ・ファンク。この時代らしいシンセ・ファンクに仕上がっています。

「Fantasy」
オススメその2。Leon Russellのカヴァー。オリジナルはLeon Russell/Mary Russell『Wedding Album』(1976年)に収録されています。ソウルフルなオリジナルも絶品ですが、ブラジリアン・テイストの本ヴァージョンも大好きです。Judyは『Wedding Album』が相当お気に入りらしく、次作『The Other World』でも「Rainbow in Your Eyes」をカヴァーしています。コチラも人気曲ですね。
http://www.youtube.com/watch?v=tQesu8OBnig

「Goodbye Porkpie Hat」
Charles Mingus作品のカヴァー。ジャズ・ヴォーカル作品らしい仕上がりです。Neal Serokaのギター・ソロがいい感じです。

「You Light Up My Life」
オススメその3。「Never Was Love」と並ぶ本作のハイライト。個人的には一番のお気に入りです。Debby Booneの大ヒット(邦題「恋するデビー」)でお馴染みの楽曲ですね(Joe Brooks作)。そんな有名曲を素晴らしいボッサ・チューンとして聴かせてくれます。気を抜いていると「恋するデビー」と同じ曲だと気付かないかもしれない至極のカフェ・ミュージックです。
http://www.youtube.com/watch?v=9kpxUizeA_E

「Dandelion」
Judy Roberts作。ミステリアス・モードのメロウ・フュージョン。エレピの音色が心地好いです。

「Yes Indeed」
Neal Seroka作。ファンキーなリズム隊が印象的なフュージョン・チューン。フュージョン全盛時代の演奏といった感じですね。

「Watercolors」
オススメその4。Belle Beach/Judy Roberts作。ラストは素敵なメロウ・チューンで締め括ってくれます。黄昏モードな雰囲気にグッときます!
http://www.youtube.com/watch?v=-n0A-AGrmyo

興味がある方は他のJudy Roberts作品もチェックを!

『The Other World』(1980年)
Other World

『Nights In Brazil』(1981年)
Nights in Brazil

『You Are There』(1985年)
You Are There

『Circle Of Friends』(1995年)
Circle of Friends

『In The Moment』(2002年)
In The Moment
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