発表年:1980年
ez的ジャンル:パステル系AOR
気分は... :パステル・メッセージ!
今回は2008年に惜しくも亡くなったシンガー・ソングライターPaul Davisが1980年にリリースした『Paul Davis』です。『パステル・メッセージ』という邦題の方がお馴染みかもしれませんね。
Paul Davis(1948-2008年)はミシシッピ州生まれ。60年代後半にセッション・ミュージシャンとして活動するようになり、1970年にシングル「Mississippi River」でデビュー。それに続くシングル「A Little Bit of Soap」(The Jarmelsの1961年のヒット曲のカヴァー)が全米チャート第52位のヒットとなっています。同じ1970年にデビュー・アルバム『A Little Bit of Paul Davi』をリリースしています。
その後、『Paul Davis』(1974年)、『Ride 'Em Cowboy』(1975年)、『Southern Tracks And Fantasies』(1976年)といったアルバムをリリースしています。
そして、1977年にリリースした『Singer of Songs-Teller of Tales』からシングル・カットされた「I Go Crazy」が全米チャート第7位のヒットとなり、Paul Davisの名が広く知られるようになりました。
その後、『Paul Davis』(1980年)、『Cool Night』(1981年)とったアルバムをリリースし、『Cool Night』からは「Cool Night」(全米チャート第11位)、「'65 Love Affair」(全米チャート第6位)という2曲のヒットが生まれました。
その後は目立った活動を聞かなくなりましたが、カントリー方面などで活動していたようです。2008年に心臓発作により死去。享年60歳でした。
やはり、映画『なんとなくクリスタル』のサントラにも収録されていた「I Go Crazy」や「Cool Night」、「'65 Love Affair」といったシングル・ヒットの印象から"クリスタルなAOR"といったイメージの強い人ですよね。本人の風貌はどう見てもカントリー&ウエスタンみたいな感じですが(笑)
「I Go Crazy」が収録されたアルバム『Singer of Songs-Teller of Tales』にしても、『アイ・ゴー・クレイジー』と題された花のイラストでクリスタル・モードな国内盤(1981年発売)のイメージが強く、オリジナル・ジャケがPaul自身のうっとおしい姿のものであると知ったのはかなり後のことでした。
当時、「I Go Crazy」はTop40に40週チャート・インしていた楽曲としても知られていましたね。確か、その記録を抜いたのはSoft Cell「Tainted Love」だったと記憶していますが・・・
さて、今日紹介する『Paul Davis』(1980年)ですが、『Singer of Songs-Teller of Tales』と『Cool Night』の間に挟まれて、地味な存在のアルバムかもしれませんが、アルバム全体の完成度ではPaul Davis作品中でも一、二位を争う出来栄えなのでは?
目立ったシングル・ヒットはありませんが、彼のカントリーやソウルからも影響を受けた温かみのある甘いヴォーカルが、AORサウンドと実にマッチしています。
派手さはありませんが、じんわりと心に沁みてくるアルバムです。
まさに"パステル・メッセージ"という邦題がぴったりな1枚だと思います。
全曲紹介しときやす。
「Do Right」
オススメその1。邦題「パステル・メッセージ」。アルバムからの1stシングルとして全米チャート第23位まで上昇しました。一般には本曲がアルバムのハイライトだと思います。ライト・タッチのミディアムAORに仕上がっています。Paulのジェントルなヴォーカルがじわじわと胸にきます。終盤のコーラスワークもグッド!
http://www.youtube.com/watch?v=Xy9zJP6SgMY
「Cry Just A Little」
オススメその2。アルバムからの2ndシングル。甘く切ないAORチューン。「I Go Crazy」がお好きな人であれば、気に入る1曲だと思います。
http://www.youtube.com/watch?v=PbVwsWrZ908
「He Sang Our Love Songs」
オススメその3。僕の一番のお気に入り曲。何となく切ない疾走感にグッときます。彼の魅惑のヴォーカルとAORサウンドがばっちりハマった1曲だと思います。
http://www.youtube.com/watch?v=fkszkpV7wUk
「All The Way」
巧みにキーボード・サウンドを配したミディアム・スロウ。じんわりと心に沁みてきます。
「Too Slow To Disco」
この時期はSSW/AOR系のアルバムにも、こういったディスコを意識した曲が入っていましたね。今聴くとご愛嬌といったところでしょうか(笑)
「Let Me Know If It's Over」
僕的にはサウンドが少し仰々しい気もしますが、それもこの時代らしくていいのかもしれません。
「Do You Believe In Love」
オススメその4。Roberta Flackとのデュエット「Tonight I Celebrate My Love」、Regina Belleとのデュエット「A Whole New World (Aladdin's Theme)」でお馴染みの男性ソウル・シンガーPeabo Brysonとの共作曲。PaulとPeabo Brysonはかつてのレーベル・メイトであり、そんな繋がりでこの共作が実現したようです。これがなかなかグッドなライト・タッチのAORチューンに仕上がっています。同時期にヒットしていたRobbie Dupree「Steal Away」がお好きな人であれば気に入ると思います。
「So True」
Will Boulware作。作者Will Boulware自身もバック・ヴォーカルで参加している爽快ライト・グルーヴ。晴れた日の朝に聴くとピッタリですね。
「When Everything Else Is Gone」
オススメその5。ラストもWill Boulware作品。Paulの甘いヴォーカルを堪能できる小粋なAORバラードになっています。 Paul Davisの場合、声質自体がとても魅力的なのでメロウなエレピの音色と実にマッチします。
それにしても『Singer of Songs-Teller of Tales』のオリジナル・ジャケには驚きます(笑)
『Singer of Songs-Teller of Tales』(1977年)
『Cool Night』(1981年)